駄弁者の駄弁

別に知りたくもないでしょうが、駄弁者自身のことについて。それだけだとあまりにつまらなさすぎるので雑記帳を付けます。
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司書の駄弁者
生 年:1973年(下で31歳て出してるし、も、いーか)
出 身:大阪府・なまりは多分一生ぬけない
現住所:岐阜県多治見市・職場の遠さが堪えるようになりつつある。
職 業:名前のとおり。
趣 味:見ての通り。

日々雑感2004年

30歳からのSF大会入門

 8月21日・22日、岐阜は長良川国際会議場で開かれた日本SF大会G−Conに参加しました。齢31にして初めてのSF大会参加。ちゃんと置いてかれずに楽しんでいけるでしょうか。

・初心者の部屋
 同じく初参加の「眉村卓ワンダーティールーム」のY店長の車に乗せてもらって会場入り。オープニングに先立って11:00から開かれる企画「初心者の部屋」に初参加らしく参加しました。内容は…「楽しみたかったら積極的に参加しよう!」ということでした。主催氏のトークは面白かったですが、まあ初心者には不可欠、ということもなかったかな、と。ここで、やっぱり初参加のNALさんとも合流。

●オープニング
 途中から線画のオープニングのアニメ、実行委員長挨拶etc、柴野拓美賞発表と続いて星雲賞の発表。副賞は開催地にちなんで岐阜提灯2張なんですが…なんともかさばって持ちにくそうで、受賞者の方々の当惑ぶりが面白かったです。
 海外短編部門はテッド・チャン「地獄とは神の不在なり」。提灯もきっちり宅急便で送るとのことでした。「テッド・チャンの家にあれが飾ってあると思うとなんか楽しいよね」とY店長。うん、けどあの提灯、片方に受賞作名が書かれているんだが、暗い部屋に火の入った提灯が飾ってあって、ぼおっと「地獄とは神の不在なり」の字が浮かんでいる図というのは、ちょっと恐くないか…?
 海外長編部門はデイヴィッド・ブリン「星海の楽園」。うーん、あれも面白かったとは思うんだけど、なんかなあ。かといってノミネートされていたカード「シャドウ・オブ・ヘゲモン」も、SFの賞をとってほしいかと聞かれると、ちょっと悩むし(いや投票はしたんですが)。
 国内長編部門は、小川一水「第六大陸」。やっぱり「導きの星」のほうじゃなかったか…。提灯を手に「今日はスクーターなんですけどねえ」とぼやく小川一水氏、「こういう珍しい景色を撮っておかないと」と舞台から拍手万雷の客席をカメラに収めていらっしゃいました。

●テルミンコンサート・SF図書館員協会
 オープニングを終えて昼食。その後「SFアートギャラリー」などをひやかしつつ「竹内正実テルミンコンサート」へ。前座の人がスタートレックTOSのオープニングを演奏してくれたのが嬉しかったです…ちょっと音程怪しかったですが。真打ちの竹内氏は通常の演奏も見事でしたが、遠隔操作のぬいぐるみを通して演奏してみせる(曲目はなぜか「暴れん坊将軍」)パフォーマンスも良かったです。
 その後「SF図書館員協会第7回総会」へ向かったのですが、着いてみるとすでに撤収作業中。片づけ中の大澤さんと少しお話させていただきました。しかし話題といえば図書館の民間委託がどうしたのこうしたの…。SFの話をすりゃいいものを、なんか因果な職業です(つーか自分が場をわきまえてないだけか)。

●「SF者の本棚」ライブ
 「ファーストコンタクトシミュレーション」にも興味があったのですが、そっちは参加するとなると中途退出できないようなので、NALさんとともにこっちへ。
 「トンデモ本?違う、SFだ!」の山本弘氏が『センス・オブ・ワンダー=「バカ」』として「バカ」な設定・発想のSFを紹介。その関連で現実にあった「バカ」な宇宙開発、航空機開発の話も。ゲストに笹本祐一氏。トピックはこんなところでした。
・鉄腕アトム旧TV版のエピソードを紹介。「アトム」は単に「ロボットもの」ではなくていろんな「バカ」なSFのアイディアを網羅していた。リヴァイバルの方はそういう点を生かしてないような。
・デイヴィッド・イーリイ「タイムアウト」(「ヨットクラブ」所収)の紹介。核事故で消滅したイギリスを米ソが証拠隠滅のため秘密裏にでっちあげてしまおうとする話、だそうな。(後でNALさんが貸してくれました。感謝)
・「妖星ゴラス」の話。「地球移動ロケット基地」の男らしさが大好き。移動させた地球軌道平面を最後に戻さなりゃならないというのがオチなのだが、あれって別に苦労して戻す必要ないのでは…?
・アニメ「蒼穹のファフナー」の話。基本的なところがあちこちぬけている設定なんだけど、あれはわざとやっているのか。最終回にすっきりさせてくれる種明かしがあるんだろうか。
・60年代の米宇宙開発、航空機開発のスゴさについていろいろ。
・ヘンリー・カットナー「ショウガパンしかない」の紹介。つい口をついてでる歌のフレーズで、ドイツ軍を洗脳してしまおう、という話(オウム真理教の「ショーコーショーコー」みたいなのか?)。
・「バカ」な設定と笑うけど、10年15年前に現在の状況を聞いたら、きっとそんなバカなと思うに違いない。だいたい今年の新作映画が「キャシャーン」と「キューティーハニー」だと言ったら信じたか?
・SFの楽しみというのは、文学よりは手品とか特撮に似ている。特撮のメイキングをみて「こんなことやっているのか!」というのが、あれこそSFの「バカ」に通じる(<−笹本氏の言。山本氏大納得)。

 企画の合間にコーヒーラウンジに寄ってみると、「折り紙キングギドラ普及教室」に出ていたY店長が、向こうの企画で知りあったらしい方と三つ首竜の再現中。つい「なんか竜というより三つ首のツルやな〜」などと失礼なことを言ってしまいましたが、折るのはムチャクチャ難しそう。1枚の紙で折るとはねえ…。

●ライブ版SFスキャナー
 1日め最後に出たのは未訳の海外SFを紹介するこの企画。主催は向井淳氏、東茅子氏。
・ソウヤーのネアンデルタール3部作、「Hominids」「Humans」「Hybrids」。並行世界地球で文明を築いているネアンデルタール人との邂逅。ネアンデルタール人の習性とそれに根ざした文明の描写は面白そうだけど、どうもこっち側の女性とネアンデルタール人のロマンスが入るというのが、フツーぽくてなんかなあ。言いつつ、邦訳されたら読むことは間違いなし。
・ロイス・マクマスター・ビジョルドの長編ファンタジー「The curse of chalion」「Paladin of Souls」。レコンキスタ前のスペインのような世界観で、1作めは騎士のおっさん、2作めは1作めの姫さまの母親が主人公とのこと。前作メインキャラの母親を主人公に据えるって、それ「ヴォルコシガン・サーガ」でやったことじゃ…?
・キャサリン・アサロやビジョルドのヴォルコシガン最新作が収録されたSFロマンス・アンソロジー。ロマンスはどうでもいいが、ヴォルコシガン・サーガでマイルズの結婚式が舞台となると、それだけは見てみたい。
・ジョー・ホールドマン「Comouflage」。異生命体チェンジリングから見た、残酷な人間の姿。東氏が「不満」と言っていたアナログ誌のイラスト、NALさんは「寄生獣」みたい、と。なるほど確かに。
・ディック賞受賞作、リチャード・K・モーガン「Altered Carbon」。犯罪に対する刑として肉体と精神を分離され、肉体は別の人間のものとして使われ、精神は植民惑星で兵役につく主人公。地球にやってきた主人公はある死亡事件の捜査に携わることになるが…。紹介された作品の中では、これが一番興味を惹かれました。
・同じくディック賞候補作、クリス・モリアーティのデビュー作「Spin State」。「ハードボイルドでサイバーパンクなキャサリン・アサロ」というのが東氏評。
・その他短編や、オンラインマガジンのことなど。海外のオンラインマガジンでは賞の候補作などがネットで無料で読めるとのこと。うらやましいかぎりです。

 1日めは以上。合宿企画などには参加せず、あっさり帰って岐阜駅で三人で晩飯食べて解散しました。

ここからは2日め、ちょっと根がつきてきたので駆け足で。
●空想科学寄席
 とくに出たい企画もなかったのでなんとなくこの企画へ。演目3つのうち、前座のネタが一番SF色は濃かったですが、噺そのものはイマイチ。2つめはおなじみ「死神」で、これが他に比べて圧倒的に巧かったです。考えてみればこの噺は妙に理屈が通っていて、SFの匂いがあるといえばあるのかも…。3つめはウルトラマンネタ(というかダダネタ)のオンパレード。まあ面白くないこともなかったですが。
 同じ時間帯でやっていた「SFヘキサゴン」でY店長、久美沙織の優勝を当てて小さな賞状みたいなのもらってました。非常に面白かったそうです。惜しいことしたかな…。

●海底牧場707番地
 西村屋氏の、ひょっとしたら一番科学的にハードなんじゃないかと思える企画。生物の進化や大絶滅と地球全体の変動を関連づけた検証や、白亜紀に恐竜が文明を持つまでに進化できたかという話題、日本を本当に沈めることができるのか?など。すいません、最初の3分の1ほど寝てしまいました。
 日本沈没の話を半ば理解できないままぼーっと聞いていると同じ机の反対側で質問の手が上がります。見てみるとなんと小松左京氏。すごく的確な(…と思ったんですけど、多分)質問で西村屋氏とやりとりを交わしていました。えーと、確か氏は今年で73? 恐れ入るばかりです。

●翻訳家パネル
 大森望氏を司会に柴野拓美(翻訳家としては小隅黎)氏、嶋田洋一氏、古沢嘉通氏、岡田靖史氏のトーク。下訳を使うことのプラスマイナスや、翻訳家の印税率の話などウラ話的な話題がたくさん。その他記憶に濃いのは、柴野氏がニーヴン「リングワールドの玉座」がなかなか文庫化されないと嘆いていたり、おなじくニーヴンの「ノウン・スペース」シリーズで、「プロテクター」を私家版ででも出したいと言っていたこと。あれ、覚えているのはだいたい柴野氏が話されていたことに偏っているような。
 あと「訳したい作品は?」との問いで、「ハリー・ポッター…」という答えがあったのには、ウけましたがちょっと笑い声が乾いてしまった感も。

●クロージング
 企画中の各賞(センス・オブ・ジェンダー賞、ベスト地球・海洋SF、シール企画で最多のシールを集めた「煩悩皇」など)の発表のあと、暗黒星雲賞の発表。副賞には岐阜県関ヶ原にちなんで「暗黒星雲賞」と大書された幟が用意されてました。ゲスト部門では星雲賞受賞時のカメラ・パフォーマンスが幸い(災い?)して、小川一水氏がダブルクラウンに輝き、さらにかさばる荷物を背負うことに。企画部門では私が参加しなかった「SFヘキサゴン」(やっぱ惜しかった…)、そして自由部門では、「その構造の複雑さが参加者の攻略意欲を刺激した(爆笑)」会場、長良川国際会議場が受賞。

なお、大会開催中出店していた「ディーラーズ」で手に入れたのは以下の通り。
・小林泰三「ΑΩ」(文庫版) … 書店でなかなか見つからなかったんですよね。
・スタートレックパロディ本「宇宙駄作戦」 … 以前にウェブサイトなどで掲載されていた四コマなど。
・海外SF同好会「アンサンブル」会誌9号、10号
・小川一水「キャルナフカの迷宮」を収録した同人誌「Progressive25」
ちなみにNALさんは、「宇宙塵」や谷甲州ファンクラブ「青年人外協力隊」の「こうしゅうかいどう」などを買いまくっていました。

 帰りはまたしてもY店長の車にお世話になりました。2日ともありがとう。企画の大半で同行していたNALさんにも感謝。それと、今回はスタッフ参加で非常にお忙しそうだった加藤隆史さんほか大会運営の皆さま、本当にお疲れさまでした。SFづくしの2日間を堪能させていただきました。来年は横浜ですが…はい、休みがとれれば(土日ってのは職場柄ツラいけど)次も参加してみたいです。



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