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たとえばある町に、五百年に一度人が降るとしてみよう。その出来事は伝説にはなるかも知れないが、ただそれだけの話でもある。目撃した人間はやがていなくなってしまうし、結局のところ法螺か錯覚というところで折り合いがつくに決まっている。たとえば三万年に一度しかおこらない現象とかいうものがあったとして、対応する理屈を探る方法や必要があるのか俺にはわからない。
五百年や三万年を一年におきかえてみて、ほぼ似たようなものだと思う。
出典: 円城塔「オブ・ザ・ベースボール」 同名短編集に収録
コメント:
「Boy’s Surface」は駄弁者さんが取り上げていましたので、文學界新人賞受賞作にして芥川賞候補作より。あちらに収録のされている諸作品よりは、少なくともなにが起こっているかは解かるようになってます。ファウルズというこの町ではだいたい一年に一度の割合で、空から人が降ってきます。語り手はレスキューチームの背番号四番として日々パトロールをしています。支給されたバットを持って。なぜ人が降ってくるのか、それにどんな意味があるのかなんてことは当然のように明らかになりません。
「Self-Reference ENGINE」同様の馬鹿話の中で、一番印象に残ったのが投稿の文句です。一年に一度では決してありふれた出来事ではなく、ましてや人が降ってくるというとんでもない話のはずですが、ファウルズの人々は気にならないようです。
駄弁者:
私はご投稿の部分より少し前、「人が降るっていうのは人が降るってことで、つまり文字通り人が降る」という文を見て、前にご投稿いただいためい文句を連想してニヤリとしました。
人が降るという奇現象から思いつくさまざまなな説明や理由付けを片っ端から書き出して、書いた端からそれを否定していく。ほぼそれだけで小説になってしまうというのは、すごいんだか何なんだか、たぶんすごいんでしょう(笑)。
…しかし、リンクを張った既出の文句も併せてみると、つくづく饒舌な文体だなあと思います。