第1章、2章、3章を読んで「ああ、カードだ」と思った。話の筋には直接関係しない、主人公3人の幼時体験が語られている。これがあるとないとでは、話の見方が全く違ってくるだろう。離婚していた主人公の男女が危機を経て互いの絆を再確認していくあたりは、それだけみれば「お約束」パターンなのだが、カードにかかると上等の心理劇になる。潜水基地<ディープ・コア>の危機より彼らの葛藤の方が読みごたえがあるぐらいだ。(まあ、「二本のろうそく」あたりのエピソードはちょっと陳腐だが…)また、主人公と対立することになるSEALのコフィーも、第3章がなければただの石頭である。その他の脇役もカードはできる限り丁寧に描こうとしている。ただ、おおもとのストーリーで彼らの活躍があまり与えられてない以上、カードの得意のディティールづくりもやや不発気味である。
異星人<建設者>たちの真理、行動の説明は文章ならではのことだろう。映画の方は見ていないのだが、この部分が映画に反映されているならたいしたものである。傍観を決め込もうとした<建設者>たちが、一人(と言っていいのかどうか知らないが)の同胞の説得で、人類に対して行動に出るあたりの展開はカード風味の感動を味わえる。これがなければ<建設者>はただの神秘的でお人好しなエイリアンにすぎなくなってしまう。
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