O・S・カード駄弁

 当HPのメインでもありますこの駄弁は私が一番ひいきにしている(とはいえ同列首位多数)作家、オースン・スコット・カードと彼の作品の紹介をしております。カードを知らない、またあまりよく知らない、という方はまずこちらをご覧下さい。

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著作リスト(単行本のみ)

以下は邦訳作品の紹介です。あらすじとか駄弁とか余計なものはいらない、データだけ欲しいという方には、てっとりばやいリストを用意しました。

てっとりばやいリスト

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邦訳作品紹介

単行本・長編  単行本・短編   雑誌・アンソロジー収録の中短編  その他  

単行本・長編

「あなたの声の中に、ぼくは歌をききとりました」
「ソングマスター」,冬川亘訳,ハヤカワ文庫,1984 (原題名Song Master 1980)
 惑星テユの<ソングハウス>を訪れた皇帝ミカルは奇跡の歌い手、ソングバードを求めた。権力に屈する<ソングハウス>ではなかったが、ミカルに資格あり、と判断した彼らはミカルのためのソングバードを探した。そして見いだされた孤児、その名はアンセット。彼は単なる天才的歌手というにとどまらない能力を秘めていた。やがて皇帝のもとに送られたアンセットの、数奇に満ちた一生を感動的に綴る。<駄弁>
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「ぼくは彼を傷つけたくなかったんだ!なぜ彼は、ただ、ぼくをほっといてくれなかったんだ!」
「エンダーのゲーム」,野口幸夫訳,ハヤカワ文庫,1987 / 田中一江訳,ハヤカワ文庫(上下),2013(原題名Ender's Game 1985)
 昆虫型異星人「バガー」による二度の侵略を受けた人類は、バトル・スクールを設立、選び抜かれた子供達を訓練した。少年エンダーは最年少で指揮官となり、過酷な模擬戦闘で次々と勝利を重ねていく。しかし、勝つ度にエンダーの心身は傷つき、孤独を深めていくのであった。極限状態で臨んだ最終訓練の結果、彼が知った事実とは!?<駄弁>


「わたしに必要なのは真の物語だ」
「死者の代弁者」(上・下),塚本淳二訳,ハヤカワ文庫,1990 (原題名Speaker for the Dead 1986)
 人類がバガーに次いで遭遇した異星人、ピギー。人類は原始的なピギーを守るべく隔離し、一部の研究者以外の接触を厳重に禁じていた。しかし、接触していた異星人類学者がピギーによって惨殺された。原因は不明。死んだ彼の「代弁」をすべく、エンダーはピギーの住む植民星ルジタニアを訪れた。<駄弁>


「彼らに必要とされたことは、私の人生でもっとも大切な思い出なんだ」
「反逆の星」,田中一江訳,ハヤカワ文庫,1992 (原題名Treason 1988)
 遺伝子操作で驚異的な再生能力を得て、不死身と恐れられるミューラー人。その王子ラニックの胸がふくらみはじまてしまった。再生能力が暴走したのだ。過剰再生症の人間はさげすまれ、臓器輸出用の家畜として扱われる。ラニックは追放同然に故郷を去り、遍歴の旅に出るのだった。<駄弁>
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「あなたの話を聞いていると、まるでわたしたちの欲望は人格とは切り離されたもののようだわ」「そのとおり」
「第七の封印」,田中一江訳,ハヤカワ文庫,1993 (原題名Wyrms 1987)
 舞台は惑星イマキュラータ。少女ペイシェンスは幼いながらも有能な外交官兼暗殺者として王家に仕えていた。しかし太古の予言は彼女が人類の救世主、神の子を産む聖母だと告げていたのだ。いま、イマキュラータの先住種族<アンワーム>の強力な意志が彼女を呼び寄せる。ペイシェンスと交わり、自分の種族を後に残そうというのだ。人間の欲求を自由に操る<アンワーム>に抵抗することは不可能に等しい。彼女は<アンワーム>と交わりその子を産むことになるのか、果たしてその子は人類の救世主なのか、それとも…?<駄弁>


「わたしは<地球の記憶>だ。…わたしは<地球の管理者>のもとへわたしを連れ戻してもらうために、きみたち一家を選んだ」
「地球の記憶」,友枝康子訳,ハヤカワ文庫,1994 (原題名The Memory of Earth 1992) 「帰郷を待つ星」第1作
 惑星ハーモニーを密かに管理するコンピュータ<オーヴァーソウル>は自分の機能低下を察知し、このままでは世界を制御できなくなると判断した。母星地球のマザーコンピュータに接続できればこの危機は解決するが、オーヴァーソウルは単独では宇宙を旅する能力がない。自分とともに故郷を目指すべく、コンピュータは都市国家バジリカの一家族にメッセージを送った。そして、バジリカの有力者ヴォーリャマークが都市が燃える幻視を見、彼の末子ニャーファイはオーヴァーソウルの存在を実感し始めたのだった。「モルモン経」をモチーフとするシリーズ第1作。<駄弁>
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「お父様、お母様。私は正しく務めを果たしたでしょうか?」
「ゼノサイド」(上・下),田中一江訳,ハヤカワ文庫,1994 (原題名Xenocide 1991) エンダーシリーズ第3作
 人間にとって致命的なウィルス、デスコラーダをエンダーたちはいまだ克服できないでいた。一方、<スターウェイズ議会>のさしむけたルジタニア粛正艦隊は刻一刻と迫っている。星間通信網<アンシブル>を操るエンダーの友、ジェインは艦隊を止めるためそのアンシブルを遮断する。だが、それによってジェインの存在が、議会の命を神意と信ずる天才少女、チンジャオに知られてしまった。二重三重の危機に、エンダーたちはどう立ち向かうのか。<駄弁>


「苦痛の存在しない宇宙を見て、おれはいったよ。これはまちがっている…と」
「神の熱い眠り」,大森望訳,ハヤカワ文庫,1995 (原題名The Worthing Saga 1990 前半部分)
 少年レアドの住む世界には、苦痛がなかった。怪我をしてもひどい痛みは感じないし、誰かが亡くなっても長く悲しむことはなかった…これまでは。突如苦痛が蔓延した日の朝、レアドの住む村に一組の男女が訪れた。男の名はジェイスン・ワーシング。それはこの世界の神の名であった。その日以来、レアドはジェイスンの波乱の人生を夢に見せられるようになる。なぜ世界に苦痛が戻ったのかを物語るために。<駄弁>
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「オーヴァーソウルが僕たちを選んだんだ、それで、そう、たとえこわくても、ぼくはきみに求婚しているんだ」
「地球の呼び声」,友枝康子訳,ハヤカワ文庫,1996 (原題名The Call of Earth 1992) 「帰郷を待つ星」第2作
 ニャーファイらの脱出後、混乱する都市バジリカ。そのバジリカに大国ゴライーニ帝国の将軍、ムウズーの軍勢が迫る。しかし、オーヴァーソウルはニャーファイらにバジリカに戻り、彼らの家族と、未来の妻となる者たちを連れ出すよう導いたのであった。<駄弁>

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…長く深淵(アビス)を覗きこむ者は、深淵もまた覗き返す。
「アビス」,南山宏訳,角川文庫,1989 (原題名The Abyss 1989) 同名映画のノヴェライズ
 戦略ミサイル原潜モンタナが太古から深海に住む異星人<建設者(ビルダー)>と接触、沈没した。機密文書回収のため、たまたま油田掘削試験中だった海底移動基地ディープコアに協力が要請された…。カードが映画製作と平行して執筆し、独立した読み物としても鑑賞にたえる佳品。映画はジェイムズ・キャメロン監督、エド・ハリス主演。<駄弁>
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「スティーヴィが玄関にお友達を連れてきたの。クリスマス・イブに招待してほしいって」
「消えた少年たち」,小尾芙佐訳,早川書房,1997 /ハヤカワ文庫(上下),2003(原題名Lost Boys 1992) 同名短編の長編化。
 敬虔なモルモン教徒、ステップたちフレッチャー一家はストゥベンに越してきた。彼の長男スティーヴィは新しい学校にとけこめず、孤独な毎日をおくる。そんな彼にもやがて友人ができたようだ。しかしステップたちにはその友人の姿が見えない。孤独のあまり架空の友達を作りだしたのだろうか?<駄弁>


「きみは無のビジョンを見た。それからきみは何かをつくらなければならなかった」
「奇跡の少年」,小西敦子訳,角川文庫,1998 (原題名Seventh Son 1987) 「アルヴィン・メイカー」第1作
 ミラー家の「七番目の息子」アルヴィン。奇跡的な力を秘めた少年はいま、自分だけに見え対抗することのできる究極的な「破壊者」の存在を知る。それはこれまでも、おのが脅威となるアルヴィンの命を狙い続けていたのだった。……そして、これからも。平行世界アメリカの大平原で、「創造」と「破壊」の見えざる戦いがはじまる。「現在進行形のファンタジーシリーズの最高峰」とも評される大シリーズの開幕。<駄弁>


「今日起きたことそのままを伝えてくれ。もし真実を話したら、その手はきれいになるだろう」
「赤い予言者」,小西敦子訳,角川文庫,1999 (原題名Red Prophet 1988) 「アルヴィン・メイカー」第2作
 白人たちから「ウィスキー・インディアン」と蔑まれているローラ・ウォシキー。彼が飲んだくれているのは、強い力を持つからこそ感じられる「黒いノイズ」から身を守るためであった。放浪の末、ローラ・ウォシキーはある少年と出会ってノイズから解放され、自分の使命を悟る。そして少年の方も。
 だが、この二人が再びまみえたとき、悲劇は起こる…。<駄弁>


できることなら、ぼくがその一部でも背負おう。…あなたひとりで、こんなことに耐える必要はない。
「エンダーズ・シャドウ」(上・下),田中一江訳,ハヤカワ文庫,2000 (原題名Ender's Shadow 1999) 「エンダーのゲーム」外伝
 ロッテルダムのストリート・キッドだったビーンは、過酷な環境を生き抜いてバトルスクールへの入学を果たした。不自然なまでの分析力と記憶力で、バトルスクールの真実に迫ろうとする彼の能力に、大人たちは警戒心さえ抱くのだった。やがてエンダーと出会ったビーンは彼の一番の部下として、そして彼のひそかな「影」として「ゲーム」へと挑む。もう一人の天才児の目から見た、「エンダーのゲーム」外伝。<駄弁>


「すべての物語は作りごと。大切なのは、どちらの作りごとを信じるかということよ」
「エンダーの子どもたち」(上・下),田中一江訳,ハヤカワ文庫,2001 (原題名Chilren of the Mind 1996) エンダーシリーズ第4作(完結編)
 多くの犠牲と混乱を抜けて、漸く最悪の事態からはまぬがれつつあるルジタニア。だが粛正艦隊はいまや間近まで迫り、ジェインがアンシブル・ネットワークを断たれ死を迎えるのも時間の問題となった。エンダーの「子どもたち」は艦隊を止めジェインを救うため、最後の努力を続ける。一方エンダーは、彼のもとを去ったノヴィーニャを追い、余生を共におくろうとするのだが…。 <駄弁>※「ゼノサイド」未読の方は読まないで!


わが子よ、あなたには魂がある。
「シャドウ・オブ・ヘゲモン」(上・下),田中一江訳,ハヤカワ文庫,2003 (原題名Shadow of the Hegemon,2001) 「エンダーズ・シャドウ」続編
 バガー戦役の終結後、バガーの脅威によって辛うじて秩序を保っていた国際関係は、急激に分裂へと向かいはじめた。そんな中、各国が虎視眈々と狙う最高の人材──エンダーのもとバガー戦役を戦ったペトラたちが誘拐された。ただひとり、鋭い洞察力で難を逃れたビーンは事件の背後に自分の命を狙うアシルの存在を悟る。ビーンとシスター・カーロッタは”ロック”として世界的に大きな発言力をもつエンダーの兄ピーターと接触を図った…。<駄弁>


でもね、ペトラ、だまって聞いてくれ。ぼくたちは、なにかをなしとげた。なにかを作りだしたんだ。
「シャドウ・パペッツ」,田中一江訳,ハヤカワ文庫,2004 (原題名Shadow Puppets,2002) 「シャドウ・オブ・ヘゲモン」続編
 ヘゲモンに就任し世界の秩序回復を目指すピーターは、ビーンの宿敵アシルを幕下に招いた。アシルの陰謀を危惧したビーンはペトラとともにピーターの覇権政府から離脱する。そして逃亡先で彼はペトラたちの説得をうけ、「人間」としてひとつの決断をすることになる。
 一方、ピーターを守ろうとする両親の尽力をよそに、アシルはしだいに覇権政府での影響力を強めていく…。
<駄弁>


単行本・短編、連作短編集

「こっちの重力がどうだろうと、いいか……敵のゲートは下だ」
「無伴奏ソナタ」,野口幸夫他訳,ハヤカワ文庫,1985 (原題名Unaccompanied Sonata and Other Stories 1981)
 禁を犯して罰され、音楽を禁じられながらも、なお奏で、歌うことを棄てられなかった天才音楽家の生涯を描いた表題作のほか、カードのデビュー作にして出世作「エンダーのゲーム」(短編版)、美しくも哀しいメルヘン 「磁器のサラマンダー」などを収録。「これがカード?」というような異色作もあり。<収録作品>  <駄弁>
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「弟の名前を覚えていなかったんだ」ティーグは泣きはじめた。「どんな名前かも思い出せなかったんだ」
「辺境の人々」,友枝康子・深町眞理子訳,ハヤカワ文庫,1993 (原題名The Folk of the Fringe 1989)
 連作短編。限定核戦争と細菌戦で壊滅した近未来のアメリカが舞台。一匹狼のティーグとユタへ向かうモルモン教徒の一団とを描いた「西部」、軋轢を繰り返しながらもどこかあたたかい一家の物語「巡回劇団」など。<収録作品>  <駄弁>
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「…きみが水を切って飛ぶ小石のように、ほとんど体を濡らさないであちらこちらに足をつけて時の流れをぴょんぴょん飛んでいくあいだに、…おれは泳ぐよ」
「キャピトルの物語」,大森望訳,ハヤカワ文庫,1995 (原題名The Worthing Sagal 1990 後半部分)
 人工冬眠薬<ソメック>を使えば睡眠と覚醒を繰り返すことで、人は不死を得ることができる。人々はソメックを得るため、その割り当てを少しでも増やすためにに躍起になるが…。かりそめの不死がもたらす悲劇と、ソメック社会を破壊しようとする男、アブナー・ドゥーンを中心にした第一部。超能力を持つジェイスン・ワーシングの子孫らを描いた第二部。長編「神の熱い眠り」の周辺をなす連作短編集。<収録作品>  <駄弁>
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雑誌・アンソロジー収録の中短編

もしも宇宙に霊能が存在するものならば。あなたがたこそ、そうした神々です。
「死すべき神々」,野口幸夫訳,SFマガジン81年 3月号 (原題名Mortal Gods 1979) 短編集「無伴奏ソナタ」にも収録


一瞬、自分の歌声が聞こえたような気がした。しかし、それはただ狂ったように通りにそって電線を吹き鳴らしていく、最後の風にすぎなかった。
「無伴奏ソナタ」,冬川亘訳,SFマガジン81年 7月号 (原題名Unaccompanied Sonata 1979) 短編集「無伴奏ソナタ」にも収録
 音楽テストで「神童」と判定されたクリスチャン・ハラルドスン。その才能を純粋に保つため、彼は過去の名曲を含めた一切の人工的な音楽を聴くことを禁じられていた。しかしある日、彼の住む森に現れた男がバッハの音楽を聴かせてしまう。禁を破ったクリスチャンを待ち受けていたのは過酷な罰であった。<駄弁>



「決算」,伊藤典夫訳?,日本版オムニ83年 9月号 (原題名Quietus 1979) 短編集「無伴奏ソナタ」にも「解放の時」(山田和子訳)として収録


彼らの胸からその記憶が消えることはないだろう−−かつてある日、一人の身体障害者を置き去りにして、死なせようとした記憶。
「辺境」,深町眞理子訳,SFマガジン87年 1月号 (原題名The Fringe 1985) 連作短編集「辺境の人々」にも収録
 車椅子の教師、カーペンターは収穫物の横流しをしていた町の有力者を密告した。彼らは逮捕され、残された家族には厳しい日々が続くだろう。それを恨んだ彼らの息子たちはカーペンターを拉致し、増水間近の谷底に身動きのできない教師を置き去りにする。<駄弁>


「わたしの名前を教えて」「処女アメリカ…」
「アメリカ」,友枝康子訳,SFマガジン87年11月号 (原題名America 1987) 連作短編集「辺境の人々」にも収録
 二人が出会ったののは生涯に二度。一度目はユタから来たやせっぽちのティーンエイジャーと、中年のインディオ女性として。そして二度目は最後のヨーロッパ人統治州デザレットの州知事と、神の母、「聖母アメリカ」として……。<駄弁>


りっぱな人になるのよ、アルヴィン。
「ハットラック川の奇跡」,友枝康子訳,SFマガジン88年11月号 (原題名Hatrack River 1986)
 旅路のアルヴィン・ミラーとその家族はハットラック川にさしかかった。馬車で川を渡るのは危険だが、7番目の子供の出産をひかえた妻がいる今、何とかして渡らねばならない。しかし、増水した川の真中で、馬車は立ち往生してしまう。<駄弁>


「人を殺すことしかできないんだったら、生きていかなきゃならない理由なんかないもの」
「目には目を」,深町眞理子訳,SFマガジン88年11月号 (原題名Eye for Eye 1987)
 おれは<死神>そのものなんだ。おれが怒りを感じた相手はみんな癌で死んでしまう。それがどんな種類の癌でどこに発生したかまでわかるようななってきた。孤児院を出てから、おれはできるだけ人に怒りを感じないように過ごしてきた。だがある日バスの中で、一人の女性に出会った。彼女はおれの「ちから」を知っていた……。(88年度ヒューゴー賞ノヴェラ部門受賞)<駄弁>


「これがあなただ」ジョーが言った。それは<剣の王>だった。
「運命の物語」,猪俣美江子訳,SFマガジン89年5月号 (原題名The Changed Man and the King of Words 1982)
 少年ジョーがタロットカードを元に作ったコンピュータ・プログラム、それは人の「真実の物語」を告げるものだという。ジョーの父アルヴィンにコンピュータが告げた彼の「真実の物語」、それは今までの父子の関係が秘めていた悲劇を顕わにするものだった。)<駄弁>


やつはおれといっしょに街にいるところをみられても恥だとは思わないんだ。…おれにとっちゃ、真夏に気持ちのいいそよ風が吹いたようなもんだぜ。
「ドッグウォーカー」,公手成幸訳,SFマガジン90年10月号 (原題名Dogwalker 1989)
 語り手は幼いときの事件で頭の半分が人工脳のグー・ボーイ。成長が止まって体格は子ども並みの彼だが、コンピュータの個人情報パスワードを直観的に見破る能力を持っていた。元ポン引きの<ドッグウォーカー>から持ちかけられた大ヤマは、ガードの堅い連邦捜査官のパスワード。計画は見事成功したと思われたのだが……。<駄弁>


ぼくはもう泣くこともできないんだ。涙はもうなくなってしまったんだ
「消えた少年たち」,風見潤訳,新潮90年 9月号(原題名Lost Boys 1989) 巽孝之編「この不思議な地球で―世紀末SF傑作選―」(紀伊国屋書店,1996.2)にも収録 
 1983年3月1日、わたしは家族とグリーンズボロに引っ越してきた。町では何人かの子供が行方不明になっており連続幼時誘拐犯が噂されていたが、わたしは大して気にもとめなかった。しかし…長男スコッティの様子がおかしいのだ。89年度ローカス賞受賞。<駄弁>


炎となって燃えずにはいられないもの。たとえば太陽の光。そして稲妻。そして、永遠に続く、消すことのできない後悔。
「聖エイミーの物語」,田中一江訳,SFマガジン99年10月号 (原題名St. Amy's Tale 1980)
 エイミーの母エロイーズは、かつて罪にまみれた文明を炎のもとに消し去った「天使」だった。彼女は娘に語る…チャーリーのことを、もはや還らぬエイミーの父のことを。だが、語られることのなかったエロイーズとチャーリーの最後の物語とは…。<駄弁>


「ぼくは二十歳になったよ」「じゃあ、わたしたちみんなとおなじように、あなたも税金の支払いをはじめられるわ」
「投資顧問」,田中一江訳,シルヴァーバーグ編「遙かなる地平〜SFの殿堂〜1」 (原題名Investment Counselor 1999)
 20歳を迎えたエンダー。それはつまり成人として当然の…納税義務が発生するということでもあった。星々を旅する間に莫大な額になったエンダーの資産だが、彼の正体を隠すためその内容は追求不可能なまでに細分化されてしまっている。納税額の算出は複雑を極め、往時の天才少年も頭を抱えてしまったのだが…、救いの手は思わぬところから現れたのだった。「エンダーのゲーム」と「死者の代弁者」とをつなぐ一エピソード。<駄弁>


「少なくとも以上が、年老いたハイイログマの見解であります」
「笑う男」,友枝康子訳,シルヴァーバーグ編「伝説は永遠に〜ファンタジィの殿堂〜1」 (原題名Grinning Man 1998)
 西部のとある山中でアルヴィンと徒弟のアーサーは、笑い顔で熊をとにらみ合っている一人の男と出会う。自分を銃で脅したこの男――デヴィー・クロケットに、アルヴィンは少しばかり自分の「力」を仕掛けておいた。その後ふたりがたどり着いた村で、ずるい商売をする粉引きをやりこめるのに、その仕掛けは思わぬ功を奏することになる。


「しかし、おまえにあてがわれる仕事がどんなものだろうと」老人は言った。「わしにあてがわれた仕事よりひどいことはありえない」
「肥育園」,大森望訳,中村融・山岸真編「20世紀SF5・冬のマーケット」 (原題名Fat Farm 1980)
 3年ぶりにアンダースン・フィットネス・センター――肥育園――を訪れた快楽主義者バース。酒池肉林の生活で肥満しきった彼は、ここでとある「処置」をおこなって減量をした後、ふたたび歓楽へと戻るはずだった。だが「処置」の後、彼を待っていたのは、これまでとは正反対の日々だった。バースを憎悪の目で睨み鞭打つ老人、その正体は――。<駄弁>


「でも、べつの種類の魔法があるのだ。いちばん自分らしいものになる魔法が」
「王女様と熊」,中村融訳,「文藝別冊 ナルニア国物語 夢と魔法の別世界ファンタジー・ガイド」 (原題名The Princess and the Bear 1980)
 都の門の上にある彫像が、どうしてライオンなどではなく熊なのかのお話。幼なじみで互いに愛しあっていた王女と王子は、王子が国を継ぐために別れなければならなかった。やがて謀反と革命に遭った王子は王女のもとに戻ってくる。かつての美しい王子とはどこか変わってしまった彼を、王女はそれでも愛するのだが、父王のよき補佐役である<熊>は、王子が自分の国でよき支配者ではなかったことを知らせ、王女との結婚に反対する。かねてから<熊>をよく思っていなかった王女は、怒りにまかせて<熊>を追い出してしまう…。 <駄弁>


人間、年を取ると自分自身がタイムマシンなんだ。
「手を叩いて歌え」,田中一江訳,SFマガジン2010年11月号 (原題名Clap Hands and Sing 1982)
 意識のみの時間旅行を可能にする「THIEF」の発明で一財産を築いたチャーリー。年老いた彼は、若き日に恋したレイチェルへの思いを遂げられなかったことを思い出す。彼女が幸薄い人生を終えていたことを知ったチャーリーは、コンピューターの制止を振り切り、過去の自分へと意識をとばすのだった。 <駄弁>


どうすれば子供を系統立てて愛で損なうことができるだろう?
「かわいい子」,金子浩訳,SFマガジン2014年2月号 (原題名Pretty Boy 2006)NEW!
 “かわいい子”ボニートは虚栄心の大きい父親の溺愛を受けて育った。両親よりも自分のほうが偉くて、だから自分が彼らを幸せにしなければならないと考えたボニートは、その方法を探すため父親を観察し始める。だがその結果は――。『エンダーのゲーム』でエンダーを憎むボンソー・マドリッドが、バトル・スクールに入るまでの前日譚。
<駄弁>

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その他

「私的80年代SF論」山岸真訳 「80年代SF傑作選」下巻,ハヤカワ文庫,1992に収録 (Future on Fire,1991の序文を構成し直したもの)

「トールキンは何を意味するのか?」北沢格訳 「『指輪物語』世界を読む」,原書房,2002に収録


著作ではないが、カードについての特集など

伊藤典夫「スコッティはだれと遊んだ?」,SFマガジン91年 4月号、または巽孝之編「日本SF論争史」,勁草書房,2000.5(「消えた少年たち」について)

「作家の肖像・カード&ヴァーリィ」,SFマガジン94年 9月号

鹿野司「サはサイエンスのサ」,SFマガジン97年 6月号〜9月号

「『エンダーのゲーム』映画化記念小特集」,SFマガジン2014年2月号


<参考資料>
SFマガジン編集部「作家の肖像・カード&ヴァーリィ」,SFマガジン94年 9月号
小川隆・山岸真「80年代SFの流れ(その一)」(「80年代SF傑作選」上巻,ハヤカワ文庫,1992の解説)Hatrack River(カードの公式サイト)
各文庫の解説
SF書籍データベース、SF雑誌データベース検索

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「私もカードが好きです」という方、「俺はあんなの大っ嫌いだ」という方、また「読んでみたいけどお勧めは?」という方、までお願いします。

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