「消えた少年たち」


 話だけみればただの幽霊話なのだが、問題はカードが自分自身の家庭を舞台にしたということである。長男スコッティはもちろん架空の人物だが、「わたし」やその妻クリスティーン、スコッティの弟妹たちは実在するカードの家族である。このため「現実に子供を失った親の気持ちがわかっているようなフリをして」不快だと、かなり論議を呼んだ。私個人としては、子供もいないことだし(将来の可能性も低いし)その点気にはならないのだが、よりによって問題になりそうな方向に話を持っていかなくても、とは思う。
 カード自身はこの作品を通して、スコッティよりも末の息子、障害を持つチャーリィ・ベンを語りたかったのだという。この短編ではそこのところは、ほとんど強調されていないようだが、この話は長編版があるらしい。そちらではどうなっているのか、興味はある。

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