「辺境」


 さて、カーペンターの動機は公憤だったのか私怨だったのか。彼は死に直面しながら考えるが、しかしそのどちらか一方でなくてはならない、ということもないだろう。善人がいついかなる時も正しい意図のみで正しい行いだけをし、悪人が常にその逆をするということなら、世の中簡単でいいのだが。
 しかしだからと言って、人の行動すべてをそういうふうに容認してしまっては、社会とか共同体とかいうものは成り立たない。この場合、カーペンターの行動は善で、横領者やその息子の不良少年たちは悪でなくてはならないのである。
 それとは別に、人は自分のとった行動を重荷として背負っていかなくてはならない。カーペンターが少年たちの父親を奪ったこと、少年たちが身動きできない障害者を置き去りにしたこと、これは彼ら各々に一生ついて回る。たとえそれが社会的善であっても、たとえ当事者以外に漏らされることがないとしても。  なんか説教臭い駄弁になってしまった。不本意だ。また書き直すかも知れない。
 作品ラストの一節はとってつけたようで何となく浮いている。うまい終わり方が思いつけなかったので適当に誤魔化した、という感じもする。
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