「手を叩いて歌え」


 久々の、SFマガジン掲載だけで言えばじつに10年以上ぶりのカード作品。大きな感動や衝撃はないものの、きれいな終わり方を見せてくれる小品だとは思う。素直に「いい話だったなあ」で済ませてしまえばいいのだけれど……どうも主人公の行動が、年寄りの自分勝手でしかないように感じられてしまう。
 外部の優しい意図がきっかけで、相手も人生の最期で満足を得られたのだから…ということで免罪されているけど、若い頃のチャーリーとレイチェルにとってみれば、人生の重要部分を死に際の自分たちにのっとられるという、相当ひどい仕打ちになるんじゃないだろうか。人生の最後で収支があえばすべてOKとは、少なくとも今の自分には思えない。
 紹介のセリフは、レイチェルのことを思い出そうとしたときのチャーリーの述懐より。物語を代表するセリフではないのだが、主人公の言葉なかではもっとも素直に首肯できたものである。
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