「投資顧問」


 まさかカードの作品で、それも<エンダー>シリーズで、軽く笑える作品が読めるとは思わなかった。
 かの天才少年エンダーが、一般人共通の悩みのタネ…税金問題で頭を痛めるとは。まあ、資産が多すぎるのが問題というのは、一般人とは相当かけ離れた悩みではあるにせよ。それを助けるため――というか好機を狙っていたんじゃないかとも思えるのだが――登場するのがアンシブルのネットに住まうジェイン、というわけである。突然妙なプログラムを送りつけられたと考えているエンダーと、小悪魔然としたジェインの会話も楽しい。
 そしてこの話はエンダーとジェインとの出会いを語ると同時に、彼が「死者の代弁者」として最初の代弁をするにいたる話でもある。たまたま代弁をしていた「死者の代弁者」に向かって、当の元祖「代弁者」エンダーが、どうやったら「死者の代弁者」になれるのかを尋ねるところも、思わず笑みがこぼれてしまうシーンである。
 ここで描かれているエンダーは、旅先のどの場所でもヴァレンタイン以外の人と交わろうとしない、至極つきあいにくい人物である。彼は死者の代弁をすることで、はじめて他人の人生に触れることを覚えたのではないだろうか。「死者の代弁者」はエンダーの天職であると同時に、彼が人間社会に復帰するためのリハビリの役目も果たしたのかも知れない。
 …もっともそれでエンダーが以後つきあいやすい人物になったというわけでもないだろうが。だいたい彼が最初に税金をきちんと計算しようとするのは、彼の財産が窩巣女王の復活の地を見つけるために使われるべきだという考えからでもある。またエンダーが最初の代弁をするのは、その財産を横領しようとしてジェインに阻まれ、刑務所で非業の死を遂げた収税吏に(かなり過大な)責任を感じてしまったためだ。責任感の強さに好感をもつ一方、何でも自分で抱え込んでしまうこの性格には、ヴァレンタインならずともため息をつきたくもなる。「ほんっとにいい人なんだけどなぁ…」という感じだ。
 それに、旅先に着いたらまず興味津々で死亡記事を読むっていうのも、はたから見てあんまりいい習慣とも…(苦笑)。

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