あまり知られていないようだが、「エンダーのゲーム」「死者の代弁者」につづく、カード3つ目のヒューゴー賞受賞作品である。確かに、前2者に比べてそれほどインパクトの強い作品ではない。カードらしいいい雰囲気ではあるが。
主人公は生体電気で人を癌にして殺すことのできる少年。生体電気というより、このごろ騒がれている電磁波を想像するほうがぴったりくる。しかし女性が生体電気で男性を籠絡するというあたり、女性からしたらすごく文句があるように思うのだが。やっぱり電波出してるヤツにはアブないから近寄らない方がいい。…ちょっと意味が違うかもしれない。
下らない冗談はさておき。カード作品の例にもれず、この少年ミックも非常にいい子である。育った環境から考えると奇跡的と言っていいぐらいだ。夜周りを警戒しながら眠ろうとするシーンがあるのだが、靴を履いたままベッドにはいるのに気がさす、というほど行儀がいい(こういう子にしつけるために、孤児院では何人が非業の死を遂げたのだろう…)。
そんなほほえましい性格の子供に相手を殺さずにいられない能力を持たせてしまうのだ。カードは登場人物を不幸にするのが好きなのだ、と勘ぐられるのも故なきことではない。もっとも最後では彼らはちゃんと救済されるのだから、この批判は当たっていない。その点は見落として欲しくないものである。
ラストにちょっとしたタネ明かしあり。ミックはちょっとがっかりしたようである。わたしも同感。
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