「無伴奏ソナタ」


 カードの作風の基本線をなぞったような作品。初めてカードに触れるなら、「エンダー」よりもむしろこちらの方が適当でしょう。指を切断したり、声を奪ったりと残酷に見えるシーンが続きますが、そういったものはひとつの象徴と考えています。あえてスプラッタな情景に固執しなければ作品の良さを見失わずにすみます。かといって残酷さから全く目をそむけてしまっては読む意味がなくなってしまうのですが。これはカードの他の作品にも言えることです。
 声を失ったクリスチャンが世界の<管理者>、しかも最高の<管理者>となるあたりは「ソングマスター」中盤から後半にかけての展開と対応しています。短編「Mikal's Songbird」「Songhouse」(両方とも未訳)とこの「無伴奏ソナタ」が合わさってできたのが長編「ソングマスター」というところでしょう。
 とったのはラスト近くの一節から。…あまりに完成されたシステムでは人は幸福になれない、陳腐ないいようですがそれだけに真実に近いのかも知れません。  <戻る>