駄弁者の駄弁

別に知りたくもないでしょうが、駄弁者自身のことについて。それだけだとあまりにつまらなさすぎるので雑記帳を付けます。
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司書の駄弁者
生 年:197X年
出 身:大阪府・なまりは多分一生ぬけない
現住所:岐阜県多治見市・職場が遠い
職 業:その名の通り。今年は寄贈資料をひたすらコンピュータ入力。
趣 味:見ての通り。SF以外も読まなあかんなあ。


日々雑感99年7月〜12月

 少し早いが、今日は館全体の忘年会。3月の送別会は転出の人を送るという準フォーマルな行事なので、形式がある程度定まってしまうが、忘年会だとその点、比較的自由である。幹事がマメだと、わりと凝った0企画になる。
 今年は席決めと余興に、今はやっている「動物占い」を利用するらしい。出席する以上、当然私の属する「動物」も調べたのだが、それというのが
「こじか(Fawn)」
である。
…こら、そこ、笑うんじゃない。
少なくとも、これで「動物占い」がたいしてアテにならないことはよく分かった。

ちなみに、余興の景品でもらったのは文庫カバーだった。私にとっては非常に使いでのあるものだ。この手の景品をもらって本気で嬉しかったのは初めてである。
(12/19)


 利用者用のインターネット端末で、利用者が見たがっているページにつながらないので、見てもらえないかとのこと。おおかた接続先のメンテかトラブルだろう、と軽い気持ちでカウンターへ向かう。
 …接続できない理由は、予想通りだった。しかし、予想していなかった問題点がひとつ。その利用者が日本語のわからない外人さんだったということである。
 「ええと…、あいしー、あいしぃ。ぷりーずうえいと、ほーあみにっと」
 端末を調べるふりをして、いったん奥の部屋に退却。実のところ調べたいのは端末の状態ではなく、それを説明するための単語である。向こうの言っていることはおおかた理解できるのだが、こっちがしゃべるとなると言葉が出てこない。誰か代わってくれる人は…いないよなあ。仕方がないので、再度カウンターへ。単語並べるだけで、分かってくれるだろうか。…分からなかったら「あいまいな日本のすまいる」でゴマかそう…。
 「ええと、のぉ・りぷらい。めいびー、あっちのサーバーいず、だうん。うい・きゃんと・あくせすなう。…」(あっちのってなんだ、あっちのって)
 とか何とか言ったら、分かったのか諦めたのか、利用者の方は去っていかれた。なんか、自分が情けないよなぁ…。
(12/7)


 今日はカード新刊の発売日。さっさと切り上げて名古屋に寄ろう、と思っていると課長からストップがかかる。先日、某図書館からきたアンケートで、こちらの回答に不備があったので至急訂正を送れ、とのこと。回答したのが自分なので文句の言えようはずもなく、取り上げたカバンを置いて仕事再開。
 さて、終わった。書店の閉店まではまだ十分時間がある。帰りなん、いざ。…というところに今度は別係の司書が「すいません、今日メールできたレファレンスのことなんですけど…」
 ううう…明日にしてくれい、頼むから。
そっちの仕事も済ましてから、ぶじ「赤い予言者」は買うことができたのだが。
(11/25)


 うちのHPの常連様・まおさんが、自分の勤めている学校図書館で東野圭吾「毒笑小説」のリクエストを受けてもらえなかったと嘆いていたので、詳しい状況を聞きたくてまおさんのHP「Players Online」日記を見に行ってみた(「Da Bench」ですでに何回も話題に上っているのでここを見に来る方はだいたいの事情は知っているだろうが、まだの方は見てほしい)。
 …おーい、誰かチャレンジャー教授を呼んでこい。まさに図書館版「ロスト・ワールド」である。まだあったんだな、こんな恐竜並のところが。蔵書の規模ばかり大きいのも恐竜の名にふさわしい。
 「ホラーは入れない」「コバルトは入れない」「映画の原作は入れない」「中学生に程度の低すぎるものは入れない」「中学生に程度の高すぎるものは入れない」…いったい何だったら買うのだろう?
 だいたい図書館は使ってもらってなんぼ、の世界だぞ!?生徒が寄りつかない図書館に文学全集や教養系の新書が完備してあっても何の意味があるだろう。
  まあ、私立の学校図書館ということで、公共図書館ほどリクエストに軽々と応じられないということはあるかも知れない。教育的配慮もあるだろうし、ミッション系なら宗教上の理由もあるだろう。それなら、はなはだしく間違っているとは思うが、理解はできる。
 だが件の「毒笑小説」が断られた理由は「中学生には程度が低すぎる」に該当するからであるらしい。東野圭吾で程度が低いはないだろうと思ったのだが、自分で読んだことがないので一応目を通してみた。…これで程度が低いとするなら、その学校は恐るべきところである。担当の司書教諭は「毒笑小説」の内容を知らないばかりか、東野圭吾の名さえ知らなかったらしい。それでよく「程度」を理由にできたものだ。
 その先生だが、勤続30年とか40年の超古株らしい。どうりで化石並の頭の固さだ(…歳をくったとき自分がそうならないことを切に願うぞ、まったく)。
(11/24)

 県図書館の先輩司書の他に学校図書館や町立図書館の人も交えて飲み会。…めずらしく同期会ではない。
 2軒目の店で、そろそろ時間かな…と思いつつ、もう一杯だけ、と過ごしてしまう。トイレに行って戻って、ふと時計を見ると、もう終電が近い。駅まで走っても…って走れる距離じゃないな。ま、いいか。明日は休みだし。
 覚悟が決まると腰も落ち着く。さらにもう一軒つきあって、解散したころには日付が変わっていた。同じく最後まで参加していた先輩司書の下宿に泊めてもらう。
 …翌日、さすがに二日酔いで、冷水とブラックコーヒーを交互にごちそうになったことは秘密である(書いといて秘密もなにもあるか)。
(10/30)

 選書をしていると、地方小出版の棚に面白い本を見つけた。…いや、読んでこれ以上に面白くない本はめったにないだろう。内容ではなくて、存在そのものが面白いのである。
「円周率1,000,000桁表」(暗黒通信団刊)
題名の通りπの値「3.1415926…」が延々と続いている、本当にそれだけの本である。
実用的な価値は、まったくない。「円周率の678,827ケタ目の数字を教えて下さい!」というレファレンスがあれば別だが。本の前書きには乱数表としての使い方がガイドされていた。…確信犯かい。
 私が一番ウケたのは帯に書かれた文句である。いわく、
「真実のみが記された書!」
ま、確かにそのとおりではあるわな。…途中でミスってなければ。

注意:これを読んだ人は図書館に「円周率の235,897ケタ目の数字を教えて下さい!」というレファレンスをしないように。
(10/26)


 11月3日の不要本リサイクルに出す本の山を整理。なんか面白い本はないかと探しつつ片づけていると、一緒に作業をしていた先輩が、「これ、なに書いてあるか読んでみて」と薄いマンガ本を渡してきた。
 「……」
 読めない。絵は「ガラスの仮面」なのだが、外国の海賊版らしく、何か分からない文字が並んでいる。おおかた、海外旅行に行った人がウケ狙いで買ってきたものだろう。先輩の方は
 「それ、アラビア語だろ?」
 と言う。いや、少なくともアラビックじゃないんですが。見た感じでは東南アジアくさい。…ついでながら、アラビア語だったとしても、私には読めない。
 「ガラスの仮面」の話を知っている人ならだいたい何を言っているのかぐらい予想つくかもしれないが、そちらもよく知らない私には全くちんぷんかんぷんである。ま、いいか。珍しいから並べとけば誰か持っていくだろ。
 それにしても、謎の言語で何事かのたまっている月影先生(…だったよな)は、やたらと迫力がある。どう見ても、黒魔術かなんかの呪文を唱えているようにしかみえない。白目むいてるし。
(10/22)


 三省堂書店にて。読みたい本が2冊。
 山内昌之「納得しなかった男〜エンヴェル・パシャとトルコ・内陸アジア〜」とアルベルト・マングウェル「読書の歴史〜あるいは読者の歴史〜」。前者が5200円、後者が3800円也(税別)。
 本を買うときは財布の中身を見ない私だが、さすがに2冊だけで1万円近いとなると二の足を踏んでしまう。2冊をさんざんひねくり回したあげく、安い方を買うことにした。「エンヴェル」の方は図書館でリクエストしよう。たぶん「読書の歴史」の方はリクエストしなくても入るが、こっちは注文しないと来ないような気がする。
(10/10)


 寄贈図書の中に「エンダーのゲーム」が混ざっていた。
 うちの図書館では持っていないので選書委員会に了承もらって受入することにした。実はうちでは「消えた少年たち」しか入っていなかったのだ。
 しかし寄贈していただいた、ということは買った人はもう要らない、ということだな?うちの蔵書にカードが入るのは嬉しいのだが、ちょっと複雑な気分である。
 ちなみにカバーは加藤直之画の新しい方。旧刷のカバー絵よりこっちが好きなので、自分のと換えてしまおうかと思ってしまった(思っただけです、はい)。
(10/6)


 1週間の出張から帰り、今日は同期の司書さんたちと飲み会(…仕事しろよな、自分)。
 この面々はみな酒については「たしなむ程度」。もっともたしなむと言っても個人差があるようで、グラス一杯のワインを「たしなむ」人もいれば、先日「たしなんだ」酒の銘柄を指折って数えている方もいるわけで…。
(10/2)


 今日の仕事も終え、帰宅の電車の中。明日は珍しくカレンダー通りの休日である。あと、20分ほどで多治見だな…と思っていたが、電車がいつまでたっても駅を動かない。大雨のため、運行が完全にストップしてしまったのである。私が乗っていた電車は多治見駅よりかなり手前の駅までしか行けないということになってしまった。その駅で降りて、1時間ほども待ったのだが、後続の電車がまったく来ない。これはタクシーを使うしかないか、と決めかけたときに、やっと1本が到着した。この列車でも多治見駅まではたどり着けないが、その手前の快速停車駅までは行けるはず。そこからタクシーにした方がはるかに安上がりだ。そう考えて電車に乗ったのが、大誤算だった。
 電車は乗った駅と当面の目的地である快速停車駅との中間の、小さな駅で停まってそのまま動かなくなってしまった。快速停車駅の手前で、さらに運行停止になったらしい。各停しか停まらない小駅で、タクシーなど一台も来ない。広い通りまで出ればつかまえられるのではと思ったのだが、駅から出るとすでに道路が冠水状態で、まともに歩くことさえできなかった。結局、くるぶしまで水びたしになっただけで、諦めて電車内に引き返す。こうなったら電車が動き出すのを腹を据えて待つしかない。読みかけの本でも終わらせることにしよう。
 で、こういうときに限って、持ってきている本が哲学の入門書だったりする。とにかく、朦朧としている頭に、フッサールやハイデガーは毒であるということが、身にしみて解った。
 電車がのろのろ動き出したのは2時間以上もたった後。ようやく我が家に着いたのは、3時近かった。本当に本当に本当に、明日…ではない今日が休日でよかった!
(9/14・15)


 DASACON2参加のため上京。
 住んでいる人には悪いが、私にとっては東京というのはどーも疲れるところである。デカいし、人は多いし(<−要するに、田舎者)。昼過ぎに着いて、秋葉原から神田をひととおり歩き回ったのだが、この時点で結構消耗してしまった。歩いたわりに収穫は少ない。秋葉原は人の多さにに嫌気がさしてまともに買い物をしなかったし、御茶水−神田の方いまいち良いのがみつからなかった。「イギリス海賊史(上下)<冒険の世界史>」(リブロポート刊)ぐらいは買えばよかったかな…。

 DASACON会場の場所に自力でたどり着く自信がなかったので、水道橋駅集合の「プレDASACON」に参加することにする。DASACONでは晩飯が出ないので、本番前に腹ごしらえでもしようというのが「プレ〜」である。何とかいう本を持っている人が目印らしいのだが、本を持っている集団がたくさんいてどれなのか分からない。あそこにかたまっているのがそれっぽいのだが…。さんざん逡巡してから声をかけてみると、よかった、正解だ。ちなみに、「それっぽい」人は「風の十二方位」の大川さん。食事の間は、この方に話につきあってもらった。
 その後、会場「朝陽館」に大挙して到着する。戸の前に「歓迎・ダサコン様」のでっかい看板。…カタカナはやめろカタカナは。ロビーで受付をやっていたのは「書物の帝国」の溝口さん。お会いできて光栄でした(けど今回はここで少し話しただけ。残念)。
 参加費を払って名札をもらって、まずは寝部屋の確保。同室になったのは清水さん、塵芥さん、そして「暴走野郎」のこじまさん。しばらく話していると、召集がかかったので大部屋へ。いるわいるわ。なんせ参加者70人だもんなあ。ここで「Kingdom of Madness」のやまなださんを発見。私がインターネットをはじめた頃からお世話になっている、しかも「名文句」の初投稿者という奇特な方。会えるのを非常に楽しみにしていたのである。このやまなださんとこじまさん、先ほどの大川さんに加えて、こじまさんのBBSの常連様・Hasterさんとでしばし歓談。ホーガン作品で面白いのはどこまでだとか、ロビンスン「レッドマーズ」はつまらんとか。あれ、私は「レッドマーズ」、嫌いではない方なのだが…。
 そしてオープニング。スタッフ代表・u-ki総統(名文句に投稿してくれた寿ゆうきさんである)のパワフルな演説。「…ある人の興味とある人の興味が連なりあってできた輪がDASACONである。全体的な一つの方向性は、なくてもいい。ノンポリシーこそが、DASACONのポリシーだ!」(言葉はだいぶ違うが、だいたいこんな感じのことをおっしゃってたと思う)おお、かっこいいぞ。
 乾杯してしばしの談笑をはさんだ後、ファンタジー作家の寮美千子・東雅夫両氏による対談。寮さんの新刊「星兎」、図書館にリクエストしたのが間に合わず、途中までしか読んでいない。一冊も読了していない人の話を聞くのはどうかと思ったのだが、これが結構面白い。作品を書くときは、まず最初に場面のくっきりしたイメージが頭にあって、文章はその場面まで辿り着き、イメージを翻訳するためのものなのだという。私は創作の経験はあまり積んでないから分からないが、そんなものなのかな。
 対談のあとはノンストップで「いちおうメイン企画」の架空書評勝負決勝戦。これは、課題として出された架空のSFについて参加者が書評を書き、その優劣を競うというもの。実は私は発表された架空書評のうち3分の1ほどしか読んでいない。読んだ中で決勝戦まで残っていたのはニムさんの作品ぐらいだった。…やっぱサボりはいかんな。

 今度は少し間をおいた後、「古本オークション」に突入。私にとってはこれがDASACONのメイン企画だ。とはいえ、今回は懐都合と本棚都合もあるので「無差別絨毯買いまくり」は控え、ピンポイントに徹するつもり。 前に張り出された出品リストで勝負どころを最終確認。狙い目はステープルドン「オッド・ジョン」(ハヤカワ)とトム・リーミィ「サンディエゴ・ライト・フット・スー」(サンリオ)である。
 参加者がひとくせある面々なので、本につけられる値も市場価格とはだいぶ違ってくる。ゼラズニィの代表作でヒューゴー賞受賞の「わが名はコンラッド」が100円で軽々と落札されるかと思うと、Hasterさん出品の同人誌で壮絶なバトルが繰り広げられたり。そこそこ有名な本ならみなすでに読了しているので欲しがる人も少ないようだ。
 そのせいか第一の目標、「オッド・ジョン」は500円でわりと楽に落とせた。ついでに目標外だったがクリス・ボイス「キャッチワールド」も100円で落札。これは大学時代の先輩がいたく気に入っていた「ワイドスクリーン・バロック」である(ヘンな日本人がわんさか出てくるらしい)。
 さて問題は「サンディエゴ〜」である。トム・リーミィの短編集は。もはや絶版のこれ1冊のみ。相当高値での競り合いを覚悟しなければならない。すでに日付も変わったころ。夜更かしが苦手の私としてはかなりツラい時間帯なのだが、気合いをいれて臨む。
 競りは800円から。50円や100円から始まるものが多いなか、さすがの高値である。だが、それは1000円、1500円とたちまちつり上がる。私もこの程度で脱落はしない。…まあ、3000円までなら出そうか。
「…2800」
「3000」
って、考えているうちにもう限界まできてしまった。この時点で残っているのは私と、もう一人(かなり後で知ったところでは、タニグチリウイチさんだったようである)。…仕方がない、乗りかかった船だ。
「3300!」
3500、と言えないところが私のセコさだ。相手方は平気で間髪いれず3500までつり上げた。こっちは思わず頭を抱えてしまう。だが、まだだ。
「3千…700!!」 …やっぱりセコいんだろうな。
「4000」
乗りかかった船、あえなく沈没。 GAME OVER。

 ここで精魂尽き果ててしまった私は寝部屋に退却。昼間歩き回った疲れもけっこう効いている。
 部屋では、ひと足先に塵芥さんがぶっ倒れていた。私も速攻でそれにならう。

 寝たのは3、4時間ほどだろう。大部屋に戻ってみると、面々はいくつかのグループに分かれてゲームをしていたり、しゃべっていたり。u-kiさんのテンションがほとんど衰えていない、というかパワーアップしているあたりがさすがである。あ、やまなださん、沈没してらっしゃる。
 その脇ではこじまさんが、持ってきたVAIOでもはや惰性のように「Kanon」をやっている。私が寝ている間、これでかなり盛り上がっていたらしい。
 こじまさんを相手に、今年出たSFではレズニック「キリンヤガ」がよかったとか、グランド・キャリン「サターン・デッドヒート」がお勧めだとか、また昨晩と似たような話をしているうちに、とうとうDASACONも終わりが近づいた。オークションの精算をした後、エンディング。「次はDASACON、西へ!」ということだが、大阪でやるのだろうか。まさか、名古屋ってことはないだろうな…。
(8/28・29)


 こちらは夏休みが終わって、すでに1週間が経過。生徒・学生たちはまだもう少し休みが続くようだが、そろそろツケの支払いが間近に迫っているようで。
 今日のレファレンス。
「7月20日から8月12日までの岐阜の天気を教えていただけませんか!?」
いや、なんつーか…。
何に使うのか非っ常ーによくわかるご質問ですね。
(8/21)


 まっすぐ岐阜まで帰るというのももったいないので、京都に立ち寄ることにした。なお、昨日に引き続き伝道の犠牲者第1号氏が同道している。
 「京都景観の敵」として名高い新駅ビルへ。とりあえず一番上まで行ってみることにした。かなり長いエスカレーターで上っていくのだが、隣の犠牲者1号氏が落ち着つかなげなようすだ。上りきったところで、わが友は下りエスカレーターへ向かって回れ右。私は彼の背負っているザックをがっしと掴んだ。
「まだ上があるやないか」
「階段やろ、疲れてんのと違うんか?」
「いや、全然。行くで」
 実は、犠牲者1号氏はちょっとした高所恐怖症なのである。一方、私は上れるところあれば、何はともあれ上る主義だ。
「ケムリとバカは…!」
「うるさいで」
結局最上階まで上がった。さすがに眺めはいい。犠牲者1号氏も、景観を楽しむ分に異議はないようだが、しかし真下は見たくないらしい。
「こんなところに人間が立つのは、間違っている!」
「いや、高きをめざすのは、バベルの塔以来の人間の宿命だ」
…お前らの嗜好に人類の命運を託すんじゃない。

ついでに線路を隔てた向こう側、Avantiにも行くことにする。6Fのブックセンターが目当てなのだが(飽きないね、まったく…)、途中の2階で古本の即売をやっていた。軽く眺めるつもりで寄ってみた。だが…。
「おい、堀晃『梅田地下オデッセイ』があるぞ」
「ゼラズニィ『真世界』が1巻、2巻、3巻…ほとんど揃っているやないか!」
「おお!100円均一なのにサンリオSF文庫が!」
「見つけた…。2年間探していたニーヴン「魔法の国がよみがえる」ついに見つけた…」
思いの他の豊漁ぶりに、軽く眺めるどころか積み重なっている文庫を掘り返している始末。お互い10冊以上抱えてレジに持っていったが、これでも絞って買っているのである。
「で、いくか、6階?」
「いや、もう充分堪能した」
お互い購買欲を満たしたところで、気分よく解散。
しかし、最近「本を読むこと」より「本を買うこと」が趣味になってないか…?
(8/13)


 休日を利用して大阪へ。
 中学からのいわゆる「くされ縁」、伝道の犠牲者第1号氏(長いのでそろそろ別のハンドル名を考えてもらおう)と会うのは、年中行事みたいなものだ。今日はさらに掲示板「Da・Bench」の常連さん、赤石太郎さんとテンダーのゲームさんとも初顔合わせする。世に言う「OFF会」というやつだ。自分で言い出しておいてなんだが、私はこういう座を取り持つのがあまり得手ではない。退屈させてしまうのではないかと少々心配なところである。
 集合時間は午後1時、大阪駅中央口は噴水前。初対面なので、待ち合わせには何か目印になるものを持っていく必要がある。「司書の駄弁者」として、当然旗印はカード「死者の代弁者」。これをヒラヒラさせて立っていると、すぐに赤石さんが声をかけてくれた。ま、ハヤカワの青背表紙を見せびらかしているような人間が他にいるとは思えないし。まもなく、テンダーのゲームさん、犠牲者1号氏とも合流、今日の面子は無事揃った。
 場所の方は地元に一番近い犠牲者1号氏に一任してある。仕事が忙しい中、いくつか候補を考えてくれていたらしい(多謝)。その中から阪急ビルの展望レストランでランチバイキングに決定。大阪市街を一望できる非常に眺めのよい…って4人とも景色など見もしない。眼前の皿を攻略するのが第一である。
 私や犠牲者1号氏よりも、テンダーさん・赤石さんは5歳ほど年下になる。まだ学生さんだ(うらやましい)。こういう場合、若手の健啖に年長組があきれ感心する、というのがパターンである。だが、今回攻略の先陣をきっているのは犠牲者1号氏。心身ともにハードな仕事をこなす福祉施設の先生である。仕事中は食事をゆっくりとることがほとんどできないそうだ。
 彼の場合はだから、摂取したカロリーは消費しているわけで問題はない。しかし、隣で私こと司書の駄弁者が同じ分量だけ食べているというのはどうか。どうもこういう場になると、食べられるときに食べられるだけ食べておく、という下宿時代のクセが出てしまう。大丈夫なのか、運動不足なのに。赤石さんは結構平気で二人につきあってくれていたが、テンダーさんあたりは3回目のお代わりを取りにいく年長組に何か言いたげだったような…。
 そして食べながら話すのはSFのこと、持っているパソコンのこと、ゲームのこと…。初対面としては意外なほど話は弾む。年長組二人に対し、赤石さんとテンダーさんがそれぞれ話す、というパターンが多かったような気はするが、ま、この程度の偏差はしょうがないか。
 さて、時間もやや過ぎて。いつまでも食べ続ける、というわけにはいかない(まだいけそうな人もいたような気もするが)。場所を移すとして、この4人で一体どこへ行こうというのか。
 中学以来のトレッキーでSFファン・司書の駄弁者。
 その彼と(悪?)影響を及ぼしあってきた伝道の犠牲者第1号氏。
 あの月刊「ペリー・ローダン」を読み続けている強者・赤石太郎さん。
 「デューン」「リバー・ワールド」のファンで、今は「グイン・サーガ」の読破に挑んでいるテンダーのゲームさん。
 分かっている趣味の範囲で4人とも退屈しないところと言えば…
「…堂島のジュンク堂行ってみたいんやけど、ええか?」
「ええぞ、別に」
「いいスね」
「行きましょう」
と、いうわけで、駅からやや下った「堂島アバンザ」にある大書店へ。フロア面積1480坪、日本最大級の書店である。
「お、SFマガジン9月増刊、もう出ているぞ」
「どれ、おおSTもSWもペリーローダンもちゃんと特集してあるやん」
「なんでSTとSWに年表がついてるのにローダンにはないんだ?」
・・・
「…最近のハヤカワの表紙絵はちょっとセンス合わんなあ」
「おれも。けど洋書のペーパーバックよりはまし…。おい、この表紙のUFOみたいなの、何だ?」
「FOUNDATION'S EDGE…だから「ファウンデーションの彼方へ」か。ってことはこのUFOはファースター号か?」
「やっぱりアメリカ人の感覚は、わからん…」
「邦訳ハードカバー版のファースター号はよかったんだけどなあ…」
…振り返ってみると、わからん人にはとことんわからん会話である。本屋でここまで盛り上がれるのも、このメンツならではかも知れない。
 などとぶらついているうちに時間も過ぎ。赤石さんがこのあとバイトだということで、以上をもって解散。赤石さん、テンダーさん、二人ともお疲れさまでした、ありがとう。

 犠牲者1号氏…? ああ、彼とはこれから飲むのである。大阪に来たのにまだ「粉モン」も食べてないことだし、ゆっくりつきあってもらうとしようか。
(8/12)


 うちの図書館は映画のビデオを結構豊富にそろえている。もちろん「スター・ウォーズ」もあるのだが…。
「あ、スター・ウォーズのエピソード2がある!!」
 というお子さまの声。
 そ、そんなスゴいもの買った覚えはないぞ!? さすがに来世紀発売予定のビデオまでは手に入れられない。
 子供が言っているのは「スターウォーズ2・帝国の逆襲」のことらしい。それ、実はエピソード5なんだがなあ…。紛らわしいのは確かだ。

 ところで、今日は夏休みのわりにわりと空いているな、と思っていたのだが、なるほど、花火があるのか。何で夜のイベントで昼の図書館が空くのかはイマイチ不明だが…まあよし。
 なんなら毎週やってくれてもいいのだが。
(8/7)


 またも調子のおかしいインターネット端末。あれこれ試してみたが最後は結局これ。今度はRPG風に…。

 だべんしゃ  は  ふぉーまっと  の じゅもんをとなえた!

 ついでに少し離れたところでは蔵書検索用の端末も1台意識不明である。こちらは小手先ではどうしようもなく、臓器移植(ハード交換)の予定。
(7/23)


 休み。名古屋に出たのだが買うものもなく、ただ帰るのももったいないので「スターウォーズEp1」を観ることにする。…入り口で並ばされたからどんな混雑なのかと思ったら、意外と空席が多い。ま、平日だし。
映画の方は…

 序盤の、特別ストーリーに関係しない水中チェイスがいかにもスターウォーズらしい。
 いかにも悪の黒幕(あまりにもはっきり分かるので白幕と言いたくなる)なパルパティーン元老院議員。ああこいつが将来の○○か…と、早くもEp2の話を予想してみたりする。
 何かと日本の時代劇を意識するスターウォーズだが、今回もアミダラ姫の衣装はどことなくゲイシャ・ガールがはいっているような…。それとダース・モールの顔は、ひょっとしてカブキの隈取りパロディだろうか?
 見応えがあったのはそのダース・モールとジェダイ二人のチャンバラ。両刃のライトセーバーをブン回すモールがさまになっている。スピード感もなかなかの殺陣だった。

 退屈しのぎとしては十二分に面白いものだった。ストーリーは…ま、どうこういうものじゃないな。
(7/21)


 そろそろうちの図書館も夏休みモード。
 まだ夏休み期間に入っているわけではないのに、すでに自由研究ネタはほとんど貸出中の状態。
 何だか燃えていらっしゃる親御さんと、イマイチ火付きの悪いお子さまが連続してカウンターに尋ねにくる。
 「空き缶で作る太陽熱温水器のつくり方を書いた本、ありませんか?」
 いきなり限定しますね。そう都合よくそのテーマだけ扱った本はなかなか無……あるわ。探してみるものだな。
 しかし、同じ事を考えた人がいるようで、貸出中。残念でした。類書を探してみますので我慢して下さいねー。
(7/18)


 カウンター業務。ひとつレファレンスを終えた同僚が端末を指して「面白いから見て」と言う。
 うちで所蔵していない本を国会図書館の総合目録で探していたらしい。登録している県図書館・政令指定都市図書館の所蔵を一覧できるという、当館の秘密兵器である。
 探し物の書名は「高天原は出雲也」。類書や入力ミスの可能性を考えて「タカマガハラワ」というキーで検索したようだ。ヒットした書名が以下の通り。
 「高天原は阿波だった」
 「高天原は出雲也」
 「高天原は近江なり」
 「高天原は朝鮮にあった」
…どうやら、みんな自分の郷里に天孫降臨させたいらしい。これはたしかに笑える。

 ふと思いついて、「ヤマタイコクワ」で検索してみた。そうすると出るわ出るわ。
 「ヤマタイ国は阿蘇にあった」
 「邪馬壱国は阿波だった」
 「邪馬台国は筑紫にあった」
 「邪馬台国は豊後国だった」
 「邪馬台国は四国にあった」
 「邪馬台国はまちがいなく四国にあった」
 「邪馬台国は大和である」
 「邪馬台国は大和でない」(この2冊、同年の刊行だったりする)
 「邪馬台国は沈んだ」(ムーの末裔かい)
 「邪馬台国は沈まず」(これも上のと同年刊行…)
 「邪馬台国はフィリピンだ」(そして正しい発音は「じゃわたい国」だ、などと言い出すんじゃなかろうな…)
 エトセトラ、エトセトラ。

 深い…。深すぎるぞ、邪馬台国論争。
(7/10)


 夕方、以前に図書館に勤めていた人が事務室にやって来た。今度PCを買いたいのだが、どういうのがいいか聞きたいという。
 店の真ん中で目をつぶって、適当に指さした方向にあるやつにしたら、という私の的確な助言は、どうやら却下されたようである。
 しかし実際、どれも似たようなもんじゃないかと思うんだが…。
(7/8)


 講演に来て下さった児童文学作家の方から、著書でうちの図書館に入っていないものや、複本がなくて貸し出しできなかったものをまとめて寄贈していただいた。
 目録入力はいつもやっていることでもあり、さして大仕事でもないが、今回問題は、これらに急いで全面ブッカーを貼らなければならない、ということである。
 知らない人のために一応言っておくと、ブッカーというのは図書館の本の表紙によくかかっているビニールコーティングのこと。これを貼るにはちょっとしたコツが必要で、慣れないとすぐシワになったり空気が入ったりする。
 恥ずかしいことだが、私はこの作業についてはほとんど素人である。学校司書の方々が聞いたら笑うだろうが、勤めだして以来、数えるほどしかやったことがない。さらに問題なのは、私がどうしようもなく不器用だということだ。手先の不器用なことを「左手が2本ついている」と表現するのを読んだことがあるが、それでいけば私の場合、「左が2本」というレベルになる。
 だが途方に暮れていても仕方がない。何事も経験だ。ゆっくりやればそうひどい事にはならないだろう。うん、我ながら前向きだ。

 …………。

 前向きな姿勢は、2冊目までしか保たなかった。仕方ないやんか、もらい物を台無しにするわけにはいかへんのやし……。
 学校図書館に転勤になったら、これは泣くなあ…。練習しといた方がいいのだろうが。
(7/7)


nabesan@blk.mmtr.or.jp
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