SF名文句・迷文句第6集

新たなる旅立ち(ってほど大層なもんか?)

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「買ってもいいよ、でもなにを売っているんだね?」
クラパウチェスはびっくりしてたずねた。
「こっかのしみちゅさ」
子供は答えると、上衣の裾から国家動員計画書の端をそっと引っぱり出してみせた。

 出典: スタニスワフ・レム「宇宙創世期ロボットの旅」(吉上昭三・村手義治訳)

紹介 :ふいごのマロウ 様
HP :

コメント:
 ”哲人”「スタニスワフ・レム」・・・。好き嫌いのとても分かれる人・・・。
 「退屈」を感じるか「知的興奮」を感じるか・・・
 短編には、「ソラリス」とはちがった味わいがありますよ。
 ただ、パロディまでかたっくるしいんだな〜。正座してよまなきゃまずそうな感じ。わたしは、好きなんだけど・・・。
 名前の「スタニスワフ」って響きもとっても好き。
 「秦平ヨン」シリーズは入手困難かな〜?

駄弁者:
 ついこのあいだまで書店に置いてあったような気がするのに、いつのまにかなくなっている「宇宙創世記ロボットの旅」。
 ご投稿の文句だけ見ると、気楽そうなんですけどね…。



「ぐわお」

 出典: 筒井康隆「都市盗掘団」  「日本ミステリ珠玉集(上)」に収録

紹介 :ミルル 様
HP :

コメント:
 強烈インパクトのあるセリフ?雄叫び?です。

駄弁者:
 さて、未読の私としては、どうコメントすべきでしょうか? 知ったかぶりするより、
「うがあ☆」
とでも返しておくのがいいような気もするのですが。
 …それも何ですので、一応、読みました。短かったし。
 戦争の後、陥没した香港の銀行を盗掘する男たちの話。。女性をめぐる諍いから、壁面爆破用の爆弾をモロにくらった主人公。だがその前日、怪しげな「不死の酒」を飲んでいた主人公たちは、朽ちつつも死ぬことはなく……。



「ありがとう」とデンフェルドはいった。
「なにが?」
「ぼくに神様をくれて」

 出典: フリップ・K・ディック「フロリクス8から来た友人」(大森望訳)

紹介 :まお 様
HP :
http://village.infoweb.ne.jp/~fwgc6069/players/index.html

コメント:
 こんどこそ、本当に本当に、最後にします(いったい、いくつ送ってしまったんだ・・・^^;)。
 どこかでディックがR・A・ハインラインの「人形つかい」に影響をうけた、と書いていたのを思い出し、「ああ、これか!」と。
 ディックの悪夢世界にはいくつかのパターンがあるけれど、そのうちのひとつがこれ。異世界からなめくじのような生物がやってきて、人間の脳を操る、という……。この作品内でも、作品名を出さないまでも「人形つかい」についてふれている。ので、ハインラインファンの人にも、一読の価値があるのではないだろうか。
 (しかし、この台詞を引いてきたのは・・・・・本当によかったんだろうか・・・・←読んだ人にはわかる悩み。この台詞のある位置が位置だから^^;)

駄弁者:
 6……。6……。うーむ、ネタ切れだ。
 侵略者が本物と入れ替わったり、意識を乗っ取ったりするのは、ほとんど一ジャンルをなしていますね。ほかにもウィンダム「呪われた村」とかフィニィ「盗まれた街」とか。しかし、この間読んだ「盗まれた街」は私にはいまひとつ、でしたが。



D・D「オレは気配りのゆきとどいた詐欺師紛いのずる賢い野郎なんか大嫌いだ!」
トマス「ボクだって要領が悪くて優柔不断な意地っ張りなんか嫌いだ!」

 出典: 三原順「Sons」

紹介 :まお 様
HP :
http://village.infoweb.ne.jp/~fwgc6069/players/index.html

コメント:
 「ムーンライティング」シリーズの、少年版。
 狼男の祖父をもち、狼男に憧れ、けれど人間の血が混じっているから自分は狼男にはなれないんだ……といっていたトマス。しかし彼は新月の晩、豚男に変身する。……んだから、これはきっとSFでしょう!(我ながらかなりの無理が)
 お互いに「相性が悪い」といいあいながら、しっかりとした友情で結ばれているD・Dとトマス。うらやましいかぎりです。

駄弁者:
 5HITS COMBO …ちょっと苦しいか。
 これは「SF」、あれは「SFじゃない」と言い出すとドロ沼必定なのですが、はい、わたしも非常に無理があると思います。
 本当に「相性が悪い」相手ならわざわざ面と向かって「嫌いだ」などと言ってやるような親切なマネはしないでしょう、きっと。



「昼寝をしているよ」

 出典: 中井紀夫「昼寝をしているよ」 「山の上の交響楽」に収録

紹介 :まお 様
HP :
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コメント:
 うーん、連続投稿し過ぎかも。
 能なしワニシリーズが好きで、あるとき、中井紀夫の講演会(?)にまでいってしまった過去がある。そこで「駅は遠い」を読んでくれたことに感動し、帰り道、さっそく買いましたわ、この短編集。星雲賞に輝いた表題作も捨て難いんですが、今回は名台詞として……「昼寝をしているよ」を。主人公がやってきたある町では、住む人々はだれしももうひとりの自分というものがどこかに存在していると考えている。だから、あいさつは「彼は元気?」「昼寝をしているよ」。なんだか、心がほっとする短編集です。

駄弁者:
 4連撃。
 「もうひとりの自分」の存在は不安のタネというのが多い気がするのですが、逆もアリなわけですね。
 私としては、「もうひとりの自分」に仕事をまかせ、自分が昼寝をしていたい…。



ピア「だって、私の言った嘘の方が、ホントの理由よりも私らしいでしょう……つまり……親切なピアより、意地悪なピアの方が、みんな……自然に……」


ソロモン「ボクはめったに愚痴など言わないのですが……それは辛い事や哀しい事がないからではなく、むしろボクはほとんどいつも哀しい思いで暮らしているのです」

ピアのママ「他人の家の柵を何年前にペンキの塗りかえしようと庭を野原みたいにしようと放っといてほしいわ! くやしいから私 庭に豆をまいといたの! それなら庭とわかるでしょ。お花じゃ隣の連中まで楽しませるから」

 出典: 三原順「ルーとソロモン」

紹介 :まお 様
HP :
http://village.infoweb.ne.jp/~fwgc6069/players/index.html

コメント:
 これってSFかなあ……うーん。でも、化け物みたいな犬が主人公ですもの(ごめん、ソロモン!)。
 さすが三原順、名台詞の宝庫でどれにしようかとさんざんまよい。ええい、めんどうだ、たくさん送ってしまえ(すいません駄弁者さま)、と。台詞のある主要三人から。
 とくに気にいっているのは、ピアの台詞。わがままでいじわるなピア。だけど、彼女のいじわるには裏表がない……というより、逆に「表」のほうでこそ、いじわるなピアを演じてしまうときがある。だからこそ、ソロモンも「食ってやる!」と叫びながら、ついついピアを許してしまうのでしょう……。
 ママさんのバイタリティもさすがです(笑)。

駄弁者:
 3連発。
 ピアのセリフ。「本当のわたし」でさえ周囲(ときには自分)に対して演じて見せている「わたし」だったりします。実は「我思う、ゆえに我あり」ではなく「我々思う、ゆえに我あり」なんだ、とは確か大学の講義で聴いた言葉ですが…。
 ところで、花でなく豆が植わっていたら、それは「庭」でなく「畑」なのでは。

 なお、ひとつの投稿に連続しない2つ以上の名文句を出すのは、以後禁じ手とします。ページが見にくいし、コメントもつけにくいので。あしからず。



「人間がいるから言葉があるのではない。言葉があるから人間がいるのよ」

 出典: 神林長平「七胴落とし」

紹介 :まお 様
HP :
http://village.infoweb.ne.jp/~fwgc6069/players/index.html

コメント:
神林長平は「敵は海賊」など、ユーモラス(?)な作品を書く一方で、異様な閉塞状態におかれた世界や、「言葉」に執着をみせる。最近の作品は特にこの「言葉」に重きをおいているような気がするのだけれど……。
 近頃(99年7月初旬)、掲示板で話題になっているようなので、選んでみました。

駄弁者:
 2連打。
 たしかに神林作品は「言葉」をテーマにしたのが多いですね。「言壺」や「言葉使い師」など。どちらも未読なんですが、気力がたまれば読んでみたい作品です。



「たしかにそうだわ。今こそ、はっきりしたわ。私だ、私は本物じゃない。そうよ、そうよ。私が、あの……人造人間のひとりなんだわ……。私は今まで、知らなかった!」

 出典: ボンテンペルリ「信じやすい少女の心」 「わが夢の女」に収録

紹介 :まお 様
HP :
http://village.infoweb.ne.jp/~fwgc6069/players/index.html

コメント:
 ナンセンス、アブノーマル・グロテスク。奇妙キテレツ痛快な短編集、と銘打たれたボンテンペルリの短編のひとつ。ある日、「わたし」は美しい魚を眺めている少女ミンニをからかうつもりで、こんなことをいう……「あの魚は、つくりものだ」と。そして、かれは冗談をさらに発展させ、この世の中には鳥も、他の動物も、人間すらも、「つくりもの」がいる。かれらはごくふつうの人間のふりをして、世間に紛れ込んでいるのだ……と。その考えにとりつかれたミンニは、出会うひとごとに相手が人造人間ではないかと疑い、気が狂う。そして、ついに叫んだ言葉が、これ。
 あ。これって……そうです。ディックのシュミラクラ(アンドロ羊とか)の話とよく似てる! と、思いません?

駄弁者:
 一発目。イタリア文学から…ですよね?
 ディックと似ていると言えば、私が連想したのは短編「にせ者」。私が最初に読んだディック作品なんですが、ちょうどミンニと正反対なんですね。主人公にその意識はないのに周りの人間が彼を「おまえはにせ者だ!」と言い出すという。



「さよなら、ダニイおじさん」
「さよならじゃないよ、リッキィ。またあしたとおいい。ぼくたちはきみを待ってるからね」

 出典: ロバート・A・ハインライン「夏への扉」(福島正実訳)

紹介 :りんご 様
HP :

コメント:
 100点突破おめでとうございます。
 この作品の読後感は最高ですね。マイケル・ベイの映画と共通するモノがある。深くツッコンじゃいけないという・・・
 ということで、これは迷文句です。あえて。
 ダン、なんて自己中なんだ。君にとっちゃ明日でも、11才の健気な少女は10年も待つんだぞ。しかもこの子は6才の頃から彼一筋・・・うーん、すごい。ま、頭いい上に金持ちで良かったね。しかも運もいいんだか悪いんだか、いいんだな(笑)。最強だなこの男。

駄弁者:
 ありがとうございます。
 「最強だなこの男」のコメントは笑えました。
 コールド・スリープよりタイムマシンより、リッキィの存在がこの作品最大の驚異です。
 実は、リッキィは交際っていた相手にてひどくフられて、ショックで幼時退行したあげく、勢いでコールドスリープにはいった…などと考えるのはもってのほかです。



「夢を・・見たよ・・」
「ええっ?」
「数え切れぬ夜の狭間で、ただ、お前の夢だけを見ていたよ・・・」

 出典: 林宏樹(原案・監督)・OVA版「神秘の世界エルハザード 第一夜「混戦の世界エルハザード」および第七夜「永遠の世界エルハザード」

紹介 :W^2 様
HP :

コメント:
 はじめまして。SF名文句・迷文句集100点突破おめでとうございます。
 それでは、投稿させていただきます。
 このセリフが使われているシーンは出展の通り、劇中に(視聴者には)2回あるのですが2回目でセリフの重みにじんときてしまいました。
 未見の方はぜひご覧になってください。
(注:ちなみにTV版「神秘の世界エルハザード」は別物です。)

駄弁者:
 こちらこそ、はじめまして。ありがとうございます。
 「エルハザード」ですか。たしかノヴェライズもありましたよね。
 物語の最初と最後に同じ文句を持ってくる、というのは巧い演出です。2回目ではじめて真の意味に気づくという…。

 しかし、映像作品は「名前は知っているけど、見てない」ものばかりだなあ…。



「怖がらせてごめんなさいごめんなさいごめんなさいおねがいだからもうやめてぼくはあなたが怖いこの部屋が怖いねえ声をきかせてエステエステエステおねがい」

 出典: オースン・スコット・カード「ソングマスター」(冬川亘訳)

紹介 :ふいごのマロウ 様
HP :

コメント:
 こういう心境になったことありませんか?
 はぁ・・・やっぱ<愛しき>カード様の文章には気軽にコメント書けませぬ。

駄弁者:
 感情を自分のコントロール下におく<節制>は、ソングマスターにとっては必須の技術だった。だが、それをあまりにも完璧にマスターしたアンセットは、相手の必要とする歌を正確に歌う自動人形のようになってしまう。アンッセトの育ての親・エステは彼の<節制>を壊す決意をする。<節制>が壊れるか、それとも先にアンセットの精神が崩壊するか、それはぎりぎりの賭だった…。
 名文句は<節制>と精神の両方ともに極限状態にあったアンセットの言葉より。「ソングマスター」中、最も緊迫するシーンのひとつです。



「ドース!」(ハリ・セルダン、最後の言葉)

 出典: アイザック・アシモフ「ファウンデショーンの誕生(銀河帝国興亡史7)」(岡部宏之訳)

紹介 :テンダーのゲーム 様
HP :

コメント:
 基本的な時系列としては『ファウンデーションの誕生』は『ファウンデーション』より前ですが、このあたりだけ『ファウンデーション』の「心理歴史学者」の後のはずです。(第一ファウンデーション[ガール・ドーニックたち]が第二ファウンデーション「ワンダ・セルダンたち」の後押しによりターミナスへ送られてしまっていますから、そのはずです。)
 彼の創った心理歴史学は人類を個人としては扱わない一種非常なところがあるというのに、この言葉はどうでしょうか。
 元々は「ロボットもの」の方が好きで、ロボット工学の基本原則を第零条から空で言えるような輩ですので、ダニール・オリヴォー(”R”をつける気にはなれません)が一番のお気に入りでしたが、この最後の作品でハリ・セルダンが一番好きになりました。
 ドース・ヴェナビリも捨て難いですが、それでもハリ・セルダンが一番です。
 よく考えれば彼女にしたってハリ・セルダンがいなければただの……でしかなかったはずなのです。
 と、いうわけで心理歴史学者や、ツィストの達人としてではなく、この言葉ゆえにハリ・セルダンは銀河帝国興亡史上最高の人物です。

駄弁者:
 まだ「ファウンデーションへの序曲「〜の誕生」を読んでない人のため、コメントを一部伏せさせていただきました。あしからず。
 死の床で自分が創り上げた「心理歴史学」と人類の未来を幻視するセルダン。しかし最後の最後で彼が叫んだのは、先立たれた「愛する人」の名前だった…。
 なんか、こう略して書いてしまうとベタな感じですが、シリーズをちゃんと読めば感動できます。

 ところで、グレッグ・ベアやディヴィッド・ブリンが書いたファウンデーションの続編は訳されないんでしょうか?



考えるな、実行せよ。

 出典: フランク・ハーバート「砂丘の大聖堂(DUNE第6部) 」(矢野徹訳)

紹介 :テンダーのゲーム 様
HP :

コメント:
 ベネ・ゲセリットの言葉は大抵が詭弁まがいですが、これは気に入っています。(これも少し詭弁っぽい)
 某ジェ○イマスターの名言にも似たものが在ったような気もしますが、気にしないでください。ほかに“恐怖は心を殺すもの〜”もよく“使って”いますが、もう出ていたので止めました。
 ところで、どうして『砂漠の異端者』と『砂丘の大聖堂』は絶版なのでしょうか?

駄弁者:
 見たことないな、と思ったら第6部からですか。第3部「砂丘の子供たち」までしか読んでないので…。
 詭弁というか、使われる時と場所によるでしょう。学校の体育の授業で言われたら腹が立つこと請け合いです(笑)。
 予知能力を育てる修道会(と言えば、単純化しすぎですが)、ベネ・ゲセリット。私が読んだ第2部、第3部あたりでは肚の分からない、どこか邪悪さも秘めた集団でしたが、シリーズ後半はどうだったんでしょうか?
 ちなみに、フランク・ハーバート「DUNE」シリーズは、映画化された「砂の惑星」のあと、「砂漠の救世主」「砂丘の子供たち」「砂漠の神皇帝」「砂漠の異端者」「砂丘の大聖堂」と続きます。新刊で入手できるのは多分「砂の惑星」のみ。これだけでも全4冊ですし、この時点で話はいったん完結しているので、読みごたえは充分あります。けど、続編を復活させるなら、徐々にでも全部やってほしいものですね。



礼拝式からでてきたかれはいった。
「九十九パーセントまでは愚にもつかないことだ。そして一パーセントは何か別のものだ。でも何だろう?」

 出典: オラフ・ステープルドン「オッド・ジョン」(矢野徹訳)

紹介 :ふいごのマロウ 様
HP :

コメント:
 すべての宗教、いや物事はそんなもんかも。
 孤高の作家、オラフ・ステープルトン。
 「オッド・ジョン」「シリウス」「スターメーカー」「最初と最後の人間」。この四作品しか邦訳がないと思われますが、どの著書も内容が濃いです。
 特に「スターメーカー」がおすすめ。宇宙のはじまりから終わりまでを物語にしてしまっています。人類なんかそっこーで滅びます。話のスケールが大きすぎて比較できる作品がありません。
 ただ、どの本も手に入りつらいと思います。

駄弁者:
 その1パーセントに触れるために、多分残りの99パーセント…儀礼とか、聖典とか…があるんでしょうね、多分。もっと直接的に「1パーセント」に触れ、究極的には合一しようというのが、イスラムのスーフィーとかの神秘主義、というところでしょうか。
 ステープルドンも未挑戦のひとつ。私には歯ごたえがありすぎるような気がして…。「スターメイカー」は、国書刊行会が1990年に出してます。これなら手にはいるかも。少なくとも、ウチの図書館では所蔵してます。「シリウス」は早川のSF全集に収録されていましたね。…となると、出典の「オッド・ジョン」が一番手に入りにくいかも知れません。



でも、だまってたって聞こえるよ。ライムがほんとに言いたいことだもん。聞こうと思えばいつだって聞こえるよ。

 出典: わかつきめぐみ「So What?」

紹介 :踊るらいぶらりあん 様
HP :
http://www02.u-page.so-net.ne.jp/pb3/muji-san/

コメント:
 白い画面とほんわかした雰囲気が魅力のわかつきめぐみの作品です。阿梨のじいちゃんが作っているタイムマシンが暴走して、空間が歪んだせいで他の星の住人であるライムが地球に引っ張られてきてしまって…。というSFの道具立てはポコポコ出てくる作品です。文句はその最終話、星間運送屋のにーちゃんたちの助けを借りてライムが自分の星に戻るとき、阿梨に「忘れない」と言った言葉への阿梨の返事。なんとなく「星の王子様」を彷彿とさせる言葉だと思いませんか。

駄弁者:
 久々のご投稿、ありがたや。やはり少女マンガはSFの穴場のようですね。とくにほのぼの系。
 私の読書経験では、「ジョナサンと宇宙クジラ」のロバート・F・ヤングあたりが書いてそうなセリフですね。そう言えば、出典の「So What?」はおろか、「星の王子様」でさえちゃんとは読んでいない…。



愛の歌をささやきかけられて、少年は彼女の胸のなかでむせび泣いた。
「あなたを助けてあげるわ」彼女は歌のあとで言った。
「わたしにできる限りの力で、あなたを助けてあげるわ。あなたにもう一度きっと、声をとりもどさせてあげる」

 出典: オースン・スコット・カード「ソングマスター」(冬川亘訳)

紹介 :ふいごのマロウ 様
HP :

コメント:
 恋人に振られ、仕事を失い、大金を失い、友人を失い、自転車にのれば歩行者とぶつかり怪我させ、自宅に帰れば水道管が詰まって逆流しており、部屋全体に15センチほど貯水されており、床にちらかしっぱなしだったレムもシマックもステープルドンもラッカーもホーガンも水没しており、隣の住人に被害を与え、大家にこっぴどく叱られ、がっちり金ぼられ、あとで保険がきいた事をしったものの、すでに隣は引っ越ししており、ネット用に中古で購入した9821XnはRSー232Cポートだけうまく認識せず、白いモノリスと化し、自己嫌悪と他者嫌悪と謝罪疲れで、のーみそが機能停止し、ぼーぜんと夢遊病者のごとく北海道をさまよっていたとき、とある田舎の駅の待合室の本棚に、この<ソングマスター>はありました。

正直いって、カードの作品は、クールに読めば、いくらでも欠点を指摘することができます。

ですが、私にとっては、<SF>ではなくて<愛の歌>なのです。
もし、<ソングマスター>と出逢わなかったら・・・

駄弁者:
 そう言えば、このシーンのアンセットも、父のごとく仕えた皇帝ミカルを殺され、彼を継いだ皇帝リクトルスの友情を失い、故郷ソングハウスにさえ拒まれ、おのが存在の全てだった歌さえ歌えなくなるという、最悪の境遇でした。そこにさしのべられた救いの手。
 マロウさんのようなハードな経験と共にあるわけではないですが、私にとっても「ソングマスター」は最初に触れたカード作品として思い出深い一品。理想の父親像が語られることの多いカード作品ですが、この「ソングマスター」はアンセットを育てたエステ、この名文句を発するキヤ=キヤなど、母親的イメージの濃い作品だと思います。



さはあれ、心は人を悼む!

 出典: コードウェイナー・スミス「スズダル中佐の栄光と犯罪」(伊藤典夫訳)「鼠と竜のゲーム」に収録

紹介 :たけうま 様
HP :

コメント:
立て続けで申し訳ありません。片方がああいう(笑)内容なのでちょっとバランスがとりたくなりました。謎の病原体によって異形のものになってしまった人類の末裔、アラコシア人。彼らは伝説の「人」を憎み、いつの日か滅ぼすことを願っています。しかし、心のどこかではそのむかし、祖先は「人」であったことを覚えている、そんな彼らの哀しい心の叫び。
 スミス作品の魅力はその「グロテスクな美しさ」にあると思います(だから私のベストは「ママ・ヒットンのかわゆいキットンたち」)。もう一つ忘れてはならないのが「猫がかわいい」こと(笑)。この作品でも猫(?)が活躍します。

駄弁者:
 元は地球人だが、宇宙を航海するうち、女性すべてが不治の癌に罹るという業病に遭遇したアラコシア人。彼らは性転換により雌性そのものを捨てさるという道をとった。まともな地球人の想像を絶する環境、家族制度で世代を重ねるうち、彼らは戦闘的な「怪物」と成り果てる。彼らの「地球伝説」では女性は殺されるべき奇形であり、家族とは抹殺されるべき汚れだった。しかし遠い過去の記憶は、彼らの歌に上の一節を含ませるのである…。
 というのがご投稿のアラコシア人。出典は、このアラコシア人を撃退するのにスズタル中佐が用いた、想像を絶するある手段についての話です。
 わたしは、この作品の書き出しも好きですね。「この物語を読んではいけない。……」の一節。巧みに人を惹きつけます。



「御心配なく。唯のオーガズムですよ。地面は堅いけど、かすり傷をおうぐらいのものでしょう。すぐにおさまります。」

 出典: 草上仁「ベター・ハーフ?」 「こちらITT」に収録

紹介 :たけうま 様
HP :

コメント:
 警察組織の育成と監督のために、未開惑星ケイトンへ派遣されたカスガ警視は、着任早々ケイトン人のバラバラ死体と思しきものに遭遇する。その現場で、突如倒れ苦しみ始めるケイトン市長。すわ、新たな殺人か、と色めき立つ警視達に野次馬の一人が言ったのが、上の言葉。警視達の困惑振りが目に浮かぶようで(笑)。
 おいおい明らかになって行くケイトン人の抱腹絶倒驚天動地の生態(性態?)、すぐに辞表をかきたがる常識人カスガ警視と動き回るたびにモノをぶっ壊す助手ビッパの絶妙のコンビネーション、何度読んでも窒息しそうなほど笑える作品です。
 日本SF界のマイスター、何でもこなしてしまう草上さんですが、本領はこういった軽快なコメディでしょう。しかし、その著書がすべて目録落ちとはどういうことじゃあ!ちょうど「東京開化えれきのからくり」も刊行される事だし、復刊しましょう、早川さん。

駄弁者:
 あれ、「ITT」目録落ちでしたか。ええと(文庫解説目録参照)…あ、本当だ。もったいない。
 ご投稿の出典も笑えましたが、私はあの短編集では、表題作の「こちらITT」が好きですね。会社の苦情処理のやりとりだけで一作やってしまうという…。
 SFマガジン500回記念号に収録の「五百光年」も、とぼけた味が良。まだまだいける作家・作品だと思うのですが。



「俺、シグナルのこと兄貴だって思ってるよ。他の誰が何て言おうとそう思うよ」

 出典: 大清水さち「ツインシグナル」

紹介 :図書室のねーちゃん 様
HP :

コメント:
 何だかこのところ立て続けのような……(^^;)友人に「おもしろいよ〜」と言われて読んではまってしまった(笑)作品です。一見ただの「人間じみたロボットがでてくる少年マンガ」にみえて細かい舞台設定はしっかりSFしてました。(元ネタにダニールが入ってるそうで……)
 スタトレTNGでもデータについてそういう問題を扱ってましたが、独立したパーソナリティを持つ人間形態ロボットがでてくる作品では「ロボットは道具か?否か?」というテーマは一度は扱われるような気がします。「信彦(主人公)の兄」として「設定された道具」でしかない、そういわれ反論したものの、「自分たちは『道具』でしかないのか?」と悩むシグナルに信彦が言ったこの言葉は、シグナルだけでなく他のロボットたちにとっても「救い」だと思うのです。
 まぁ……Dr.クェーサーの言い分も「正しい認識のひとつ」ではあるんだけど……。

駄弁者:
 ご投稿が立て続けでも、更新が途切れますとね…。ごめんなさい。
 最初から道具として作られていないデータは別でしょうが、「ロボットが道具である」というのは、どうしても「事実」。しかし、ロボットを家族、兄弟と信じる人間にとっては、ロボットは「真実」その通りの存在なのであって、「事実」はこの場合重要じゃないでしょう。「ペットが飼い主に愛情を感じているか」なんかについても同じ事が言えるでしょうね。
 ただ、水を差すようですが、それは人間にとって「救い」であったとしてもロボットにとっての「救い」になるかどうかは、微妙なところだと思います。
 ご投稿の場合(って読んでないから見当違いの可能性もありますが…)、信彦が、「兄貴」のシグナルがロボットであることをどこまで受け入れられるか、にかかっていると思います。「鉄腕アトム」の天馬博士はロボットを息子に見立てて失敗してますし…(この場合、人間にとってすら「救い」になってません)。自分にないものを求められたロボットが悲劇に陥る、というのも一つのストーリィとして考えられるわけです。



第一条
 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条
 ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条
 ロボットは前掲第一条及び第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

 出典: アイザック・アシモフ「われはロボット」(小尾芙佐訳)

紹介 :司書の駄弁者
HP :ここ

コメント:
 区切りの意味も込めて、101点目は誰もがみんな知っている「三原則」。ここからアシモフSFを代表する数々の名品が生まれました。
 あとから「第零条」なんてのもできましたが、もとからある三ヶ条だけの方がすっきりしていていいですね。
 「われはロボット」に登場するロボットの中では、「われ思う、ゆえに…」のQT1号(キューティ)が面白くて好きです。1台欲しい、とは思いませんが…。



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