SF名文句・迷文句第2集

いや、本当に2集ができるなんて思ってませんでした。

フォームに戻る

第1集を見る  感想を書く(文句toめい文句)  第3集を見る


「おとといは兎を見たわ。きのうは鹿。今日はあなた」

 出典:ロバート・F・ヤング「たんぽぽ娘」(伊藤典夫訳) 

紹介 :まお 様
HP :なし

コメント:
 長期品切れシリーズ(もういい加減にやめようと思います)。タイムトラベルを扱った切ないラブ・ストーリー。最後の真実に到達したときの喜びもまた、すばらしいものです。どうして長期品切れなんだ、集英社! ハヤカワみたいなことをするんじゃない! って、思います。この短編集では他に「翼のジェニー(ケイト・ウィルヘルム)などが初心者・女の子むけSFとしておすすめ。 なお、わたしが選ぶ本がみんな長期品切れなのは、言い訳ではありませんがわざとではないです。・・・たぶん。

駄弁者:
 この作品、SFマガジンのオールタイム・ベストにもランクインされていましたね(それでも品切れ)
 集英社で少女向けってことは、コバルトでしょうか。意外と隠れた名品の多い文庫ですね、あれは。
 女の子にすすめるSFというのも、なかなか考えますね。いまでも出版されているものなら、マキャフリィ「歌う船」連作や、ティプトリーの冴えたやりかた辺りが手堅いところでしょうか。まあ結局は個々の好みで、あまり男女は関係ないのかも知れませんが。
 ところでこの名文句、前後の状況はどんなだったのでしょう?こんなとき、知らないというのは寂しいもんです。



いずれ真実がわれわれを自由にしてくれるだろう。
しかし、自由は冷たく、うつろで、人をおびえさせる。嘘はしばしば暖かく、美しい。

 出典:ジョージ・R・R・マーティン「龍と十字架の道」(風見潤訳) 「サンドキングス」に収録

紹介 :まお 様
HP :なし

コメント:
 長期品切れシリーズ(苦笑)。「サンドキングズ」所収。マーティンの作品は一般的に醜悪だとされているものの中に美を見出す、という特徴があるような気がするのですが(「フィーバー・ドリーム」など)。カトリックの高校を出た私がいうのもなんですが、聖書、ことにユダがここまで美しく異化されたものって他にはないのでは? 「サンドキングズ」所収作品では、一番好きなものです。そういえば、いま思いつきましたが〈嘘つき〉の設定には、半村良に通じるものを感じます。

駄弁者:
 うーむ、未読の作品が続くなあ。
 マーティンと言えば、SFマガジンの499号で掲載された「モーゼ合戦」が記憶に新しいです。あれは軽く楽しめて良かったですが。
 投稿の名文句、なんか深いですね。ここで言われている「暖かく、美しい」嘘、というのはキリストの言行とか聖書とかを指しているのでしょうか?違っていたらごめんなさい。



「あなたには、もう魂がないのよ」

 出典:イアン・ワトスン「わが魂は金魚鉢の中で泳ぎ」(佐藤高子訳) 「スローバード」に収録

紹介 :まお 様
HP :なし

コメント:
 連続して送ってます、ごめんなさい。「スロー・バード」所収。SF馬鹿話系作品の中でも、わたしはラファティなどより、ワトスンやベイリーのほうが好きなのですが、駄弁者さまはいかがですか? 「スロー・バード」には他にも傑作がいくつもありましたが、名(迷)台詞はこれにつきる、と思って選ばせていただきました。最近、ワトスンの作品を見かけないですね、そういえば。悲しいです。それにしたって、咳をしていたら白いタンみたいな「魂」が飛び出し、挙げ句それを金魚鉢で飼う(?)なんて、ワトスンにしか思いつかないですよね、きっと。

駄弁者:
 連続何回でもどうぞ。そうですね。わたしもラファティよりベイリーの方が肌にあっています。ベイリーだと「時間衝突」だとか。「時間が斜め方向に進む」なぞ、著者自身が意味分かって書いているのかすら疑わしくなるような大ボラですね。
 ワトスンは「川の書」3部作を途中まで読んだだけなのですが、あの作品でも結構ぶっとんだ宇宙旅行をやっていたと記憶しています(やっぱり魂がらみの)。短編集「スロー・バード」はチェック外でしたが、名文句を見てちょっと興味がわきました。しかし例によって入手困難。やはりここは図書館頼みか…?



「これは大ぜいの人たちを救うチャンスなんだ。きみにとって大切な・・・いまのは取り消すよ。もし、きみが会っていたら、きっと大切に思っただろう人々だよ」
「ばかばかしい、そんなことを言いだしたら、人類の約半分がそれに当たるじゃない!」

 出典:ジョン・ヴァーリィ「へびつかい座ホットライン」(朝倉久志 訳)

紹介 :まお 様
HP :なし

コメント:
 初めて送らせていただきました。「へびつかい座ホットライン」は、初めて読んだヴァーリイ作品で、それだけに忘れられないものです。でも、個人的には短編集のほうがいいと思う・・・。一番のお気に入りは、やはり「ピクニック・オン・ニアサイド」でしょうか。なお、この「へびつかい座」は「バービーはなぜ殺される」を読まないとわからない部分もあると思うのですが、同感していただけます? いかがでしょう?

駄弁者:
 いやあ、以前にも書いたとおり、「へびつかい座」は探しているけどまだ手に入れていないんですよ。図書館で借りるという手はあるんですが、なるたけ自分の蔵書にしたいタチでして。 しかも、「バービーはなぜ殺される」も未読なんです。私ももまだまだだな…。
 ところで私がこのセリフを言われたら、「会ったら大切に思っただろう」人類の約半分に自分が入っているのか非常に気になるだろうと思います。



「 どうやら、死は、私になんの感慨も与えないらしい。
 ただ、私はかつてこれほどの静寂をしらない。」

 出典:宿輪淳一「夏の日の静けさとともに」(SFマガジン98年2月号に収録<リーダーズ・ストーリー>)

紹介 :JUN 様
HP :なし

コメント:
 すいません。SFマガジン500号のリーダーズ・ストーリィにのせていただきました。著作権は私にはありません。

駄弁者:
 おおーっ。ついに作者様じきじきの投稿です。
 「夏の日の静けさとともに」。生物探査機の壮大な旅と、小さな夏の風物詩(しかし最近は見かけませんが)との対照が私には印象的でした。名文句は最期の観察を終えた探査機が淡々と眠りにつくラストから。



「しかし、私は、驚くべき奇蹟の時代はまだ永遠の過去のものとなってしまったわけではない、ということを固く信じていた。」

 出典:スタニスワフ・レム「ソラリスの陽のもとに」(飯田規和訳)

紹介 :JUN 様
HP :なし

コメント:
 はじめて読んだSFなのです。いや、本自体読書感想文のため以外で読んだことなかったんです。この最後の一文を読み終わったときなぜか涙が流れました。それ以来小説(主にSF)を十四年間読んでいますがあれ以上の感動には出会っていません。

駄弁者:
 同じ作品から2つ目の名文句が登場するのはこれが初めてですね。「ソラリスの陽のもとに」ラストの一文です。
 SFに限らず、そのジャンルで初めて出会った作品が何か、というのは重要ですよね。その作品次第でジャンル全体に対する先入観を持ってしまうことは多いでしょうから。それが評価の高い「名作」ならいい、とはいかないのが難しいところです。たとえば私が最初に「ソラリス」を読んだとして、同じように感動したかは疑問です(実は私、苦手なんですよ)。その点、JUNさんは最初に波長の合うSFに出会えて非常にラッキーだったと言えるでしょうね。



「考えてみると、愛はいつも問題外だった。
しかし、わたしは人間に抱きしめてもらった最初のコンピュータだ。ありがとう、ヒルディ」

 出典:ジョン・ヴァーリィ「スチール・ビーチ」(浅倉久志訳)

紹介 :カタノ 様
HP :
http://village.infoweb.ne.jp/~fwid6659/index.htm

コメント:
『スチールビーチ』ラスト近く、主人公ヒルディと、セントラルコンピュータCCの、最後の邂逅の場面。
この場面の科白には泣かされます。ジョン・ヴァーリイって、世界一「コンピュータに泣かせる科白を言わせるのが上手い作家」だと思うのですが、いかがでしょう。

駄弁者:
 性転換や自意識を持つコンピュータなどアイディア満載の長編「スチール・ビーチ」より。一つの世界の中央コンピュータが意識を持ったとき、彼(彼女?それ?)が絶対のがれられない感情とは、「孤独」。
 長編好きの駄弁者にしては珍しく、ヴァーリィは短編で親しんでいる作家です。「ブルー・シャンペン」や「残像」など情感あふれる作品が記憶に残っています。しかしこの「スチール・ビーチ」のほかに「ティーターン」「ウィザード」や「へびつかい座ホットライン」など、長編も多いんですね。私は「へびつかい座〜」を読みたいんですが 書店ではもう手に入らないし、古本屋でも見かけないし…。



「かれは歴史など考えてもいないよ。かれは、ただ月に行きたいだけなんだ」

 出典:ロバート・A・ハインライン「月を売った男」(矢野徹訳) 「デリラと宇宙野郎たち <宇宙史1>」に収録

紹介 :司書の駄弁者
HP :ここ

コメント:
 またハインラインか、とは言わぬが花。
 月に行きたい一心で企業を興し、あの手この手の奇抜な手段で資金を作り難題を解決していく主人公。しかし彼は自分の成功ゆえに――自分抜きでは企業が立ちゆかなくなるがゆえに、自分自身が月に降り立つことを断念せざるを得なかった。「それでも、彼の名は歴史に残るだろう」との言葉に対し、彼の同僚が口にしたのがこのセリフ。
 ただ、夢と憧れのみ――ちょっとクサいですが、男のロマンというやつです。



「子がそいつを食うのか?」ガーム船長は深い嫌悪の色をまざまざと見せてたずねた。
「そうではありません。このものから出る液体を子供が摂取するのです」
「生体から出る液体を摂取する?おえーっ、えっ、えっ!」

 出典:アイザック・アシモフ「この愛と呼ばれるものはなにか」(深町眞理子訳) 「サリーはわが恋人」に収録

紹介 :司書の駄弁者
HP :ここ

コメント:
 アシモフからもう一点。
 地球人の子供が母乳で育つことを知った、とある宇宙人の反応。ちなみにこの宇宙人は発芽による無性生殖で増えるらしいです。
 この作品自体は別に傑作でも何でもなく、私が特に好きというわけですらありません。ただ、至極当然の前提をあえてとっぱずして考えるという発想は、私がSFに魅せられた理由の一つです。アシモフの短編集をパラパラとめくっていて偶然目を留まったのがこのセリフでした。



「彼女はわたしがその感情を操作することなくわたしを好いた。わたしを嫌悪するでもなく、なぐさみの目で見るでもなく、わたしを哀れんだ。わたしを好いてくれた!」

 出典:アイザック・アシモフ「銀河帝国の興亡」(厚木淳訳)

紹介 :司書の駄弁者
HP :ここ

コメント:
 アシモフの代表作の一つ<ファウンデーション>より、シリーズ中私が最も好きなキャラクター、ミュールのセリフです。
 ミュールは人間の感情を「ダイヤルを合わせるように」自由に操る能力を持つミュータント。その能力をフルに使って彼は宇宙征服の一歩手前までにこぎ着けた。最後の脅威となり得る<第2ファウンデーション>の捜索は、しかし、ひとりの女性によって阻まれる。彼女に対してだけは自分の能力を使わなかった、それがミュールの挫折の原因だった……。
 これも読んだのは中学の時でしたね。シリーズは「ファウンデーションの彼方へ」「〜と地球」「〜への序曲」「〜の誕生」と最近まで続いていました。「〜への序曲」なんかも好きなんですが、一番印象が濃いのはやはり、ミュールのエピソードを含む最初の3部作です。アシモフが亡くなってファウンデーションも打ち切りか、と思っていたら、グレッグ・ベアやディヴィッド・ブリンが続きを引き継ぐとのこと。読みたいような、読まずに済ませた方が無難なような……。
 なお、<ファウンデーション>はハヤカワと創元の両方から訳が出ています。私が読んだのは創元の方。両方読んだことのある方、どちらの訳が良かったですか?



「この世で一番、強い台詞さ。どんな正論も雄弁も、この一言にはかなわない。……(中略)……つまりな、
それがどうした、というんだ」

 出典:田中芳樹「銀河英雄伝説」

紹介 :司書の駄弁者
HP :ここ

コメント:
 これも名文句の多い作品だと思うんですが、メジャーを嫌う人が多いのか、投稿がないので自前で。請う、後続。
 伊達と酔狂の革命家、アッテンボロー提督の、御存知「最強のセリフ」。このセリフそのものが強いというより、難局に際してこのセリフ言ってのける人こそが最強というものでしょう。
 ところで私がはじめて「銀河英雄伝説」を読んだのは中学3年の時。9、10巻を買ってきて読んだのは私立高校受験の前日でした。…とにかく、決着付けておかないとテストなんぞ受けられる状態じゃなかったもので。「受験?それがどうした!」とは、とてもとても言えませんでしたが。



「民主主義は、ひとりの人間よりも百万の人間の方が賢明だとの仮定にもとづいている。なんだって? 何かを見落としているらしいな。
独裁政治は、百万の人間より一人の人間の方が賢明だとの仮定にもとづいている。これまた、なんだって、だ。いったい、だれが決めるんだい? 」

 出典:ロバート・A・ハインライン「愛に時間を」(矢野徹訳)

紹介 :早城菱人 様
HP :
http://www.cypress.ne.jp/hishito/

コメント:
 主人公、ラザルス・ロングの覚え書きより抜粋。
いかにも、ハインラインらしい言葉だなぁと思う。
この他にも、「性交は一度もしないより、する方がいい」とか、らしい名文句が満載されております。

駄弁者:
 不死人ラザルス・ロングを主人公とする大長編「愛に時間を」からの名文句です。たしか「メトセラの子ら」の続編でしたね。どっちもまだ読んでませんが。
 ハインラインは作品に格言や警句をちりばめたがる傾向があるようで、名文句が多いですね。私もハインラインの他の作品で名文句の候補は2、3あるのですが…ま、おいおいこの場で出すことにしましょう。
 ところでこの名文句ですが、確かに彼らしい言葉です。「月は無慈悲な夜の女王」なんかでも似たようなことをいっていたと思います。私自身はどちらかというと賛成できないですが。民主主義は一人より百万人の方が賢明だとの仮定に基づいているのではなく、一人より百万人の方が愚かになりにくいという仮定に基づいているんじゃないでしょうか。



「・・・たのむよ、ルーシ、ぼくを人間にもどしてくれ。きみの声を聞かせてくれ。生きていること、人間であることの温かみを、味わさせてくれ。おねがいだ!」

 出典:コードウェイナー・スミス「スキャナーに生きがいはない」(浅倉久志訳)「鼠と竜のゲーム」に収録

紹介 :ケン 様
HP :
http://www.sh.rim.or.jp/~shayol/

コメント:
 スキャナーのマーテルが妻に一時的に人間に戻るためのクランチをせがむセリフです。スキャナーの哀しみ苦しみがよく表れている一文だと思います。
 私はこの短篇を読んで、描かれた世界の異様さに惚れ込んで、あっという間にスミスの虜になってしまいました

駄弁者:
 掲載が遅れてすみません(…最近、こればっかしや)。
 <人類補完機構>シリーズの冒頭を飾る名品、「スキャナーに生きがいはない」から。ちょっと解説がいるでしょうか?
 スキャナーとは、虚無の宇宙空間でも苦痛を感じることなく船を操れるよう、視覚以外の全感覚を切断し、肉体の制御も機械に委ねたサイボーグの職能集団のこと。彼らが人間としての五感を取り戻せるのは、非番に特殊な装置を使ったときのみ。クランチと呼ばれるそれは強度の習慣性を持つらしく、スキャナーたちは過度の使用を制限されている…。無感覚の世界で過ごすスキャナーにとってみれば、日常の何でもない触覚や味覚が、どんな麻薬にも勝る快楽になってしまうわけです。

 余談ですが、私はいつもスキャナーのイメージと「スタートレック・TNG」のボーグのイメージとを重ねて想像してしまいます。「スキャナー〜」が映像化されたら(されないでしょうが)、きっとあんな感じになるんじゃないでしょうか。 



「天命をもって主上にお迎えする。御前を離れず、詔命に背かず、忠誠を誓うと誓約申し上げる」

 出典:小野不由美「十二国記」シリーズ

紹介 :踊るらいぶらりあん 様
HP :
http://www02.u-page.so-net.ne.jp/pb3/muji-san/

コメント:
 厳密に言うとSFじゃないです、でも、ま、iSekai Fantasy ということで勘弁して下さい。(^_^;)
 このシリーズは、おそらく「山海記」なんかをベースにしているであろう中国系の異世界が舞台です。そこでは麒麟が王を選び、王が玉座にいて仁政を行わないと国が荒れて妖魔が出るという世界。
出した台詞は、シリーズ中で各国の麒麟が、自分の選んだ王に対し、誓約を交わすときの言葉。選ばれた人ががこれに対して「許す」と言えば、その時点で王になる条件が整います。それぞれの国の王の即位までを綴る物語が、そのまま登場人物の成長物語にもなっているというお得な(?)シリーズ物です。たまにセンチメンタルに走るきらいがありますが、物語世界が骨太でしっかりしているから私は大好き。
 作者は言葉に対する感覚の鋭い人で、いわゆる「名文句」に値するようなセリフをそこかしこにちりばめる人ですが、書評を書こうとしてシリーズ既刊分全部読み返してみてやっぱりこのセリフがシリーズの要かなぁ、と思って。

駄弁者:
 毎度ありがとうございます。異世界ファンタジーを入れてしまうのは守備範囲の広げすぎかも知れませんが……ま、いいか(いい加減)。
 「十二国記」は前から面白いとの評判を聞いているのですが、まだ手をつけずにいるシリーズの一つ。中国風の世界観なので私の好みにはあっていそうなのですが、さて。貸してくれる人、いないでしょうかね。
 「天命」の思想は実際にも中国君主制の理念。異民族王朝の清が中国を支配するときに主張した正当性も「天命が明から清に移ったから」というものでした。雍正帝なんかは清支配を弾劾した在野の儒学者に対し、かなり本気でこの天命論をぶった説諭を書いています。
 もっとも、この話のように麒麟のスカウトがあればいいのですが、それがなければ「天命」は当人の自覚(ないし、思いこみ)次第。自称「天命」保持者たちの殴り合いとばかし合いが、歴史の常だったりします。




「わたしは問答無用とみて、もう何もいわなかった。マイナス一の平方根を掛けることのできる人間と議論しても無駄である」

 出典:E.R.バローズ「金星の海賊」(厚木淳訳)

紹介 :aya de sai 様
HP :

コメント:
 SFにはよくある台詞なのかもしれない。ましてやバローズならきっと他のシリーズでも言っているに違いない。 それでもこの台詞が出てくるたびに、「確かにマイナス一の平方根は掛けられない…」と、唸ってしまうのである

駄弁者:
 掲載が遅れましてすみません。
 でました、E・R・B、古典中の古典。「ペルシダー」や「火星」「金星」シリーズを知らない人でも、「ターザン」と言えば、ああ、あの、と思うでしょう。
 投稿の名文句、なかなかうまい表現です。しかし、結構いるもんですよ、マイナス1の平方根を掛けたり、人に掛けろと言って聞かなかったりする虚数iな性格の方は。




「あなたがたが知覚したものをどう整理するか、ある時点から別の時点へどのように旅をするのか、その問題はあなたがたに残しておくことにする。」

 出典:サミュエル・R・ディレイニー「エンパイア・スター」(米村秀雄訳)

紹介 :溝口哲郎 様
HP :
http://www.mita.keio.ac.jp/~h9703313/

コメント:
 ご無沙汰しております、溝口@書物の帝国です。
 この本を友人に貸していたのでちょっと投稿が遅れました。この本自体が読者によって解釈が絶対に異なる本で、一つの生命体みたいな本です。そんな自分が感激した本なので是非最後の台詞を読んでもう一度悩みたいと思い、投稿しました。この作品の最後を飾る、素晴らしい言葉だと思います。

駄弁者:
 こちらこそご無沙汰しております。それと、掲載が遅れてすみません。
 ディレイニーは、「バベル17」「ノヴァ」「アインシュタイン交点」と読んだのですが、この「エンパイア・スター」はまだですね。本屋では見ませんからきっと品切れなんでしょう。読んだ中では「バベル17」なんか好きですね、浅くも深くも読めるあたりが。一方、「アインシュタイン交点」は悔しいことにどこを楽しんで読んだらいいのか、よくわかりませんでした。「エンパイア・スター」もかなり深そうな感じですが…?
 オールディス「一兆年の宴」によると、良いSFというのは読者を悩ませたり考え込ませたり、とにかく相応の努力を要求する、しかしそれだけの報酬は与えてくれるもの、だということです。ディレイニーの一連の作品もそういったものの一つなのでしょう。




「寄せてはかえし
 寄せてはかえし
 かえしては寄せ
 夜をむかえ、昼をむかえ、また夜をむかえ」

 出典:光瀬龍「百億の昼と千億の夜」

紹介 :ケン 様
HP :
http://www.sh.rim.or.jp/~shayol/

コメント:
 私をSFの世界に引きずり込んだ作品です。
 中学生の頃に初めて読んで、スケールの大きさに感動したのを今でも覚えています。
 この一文が物語のすべてを語っているような気がして、私にとって忘れることのできない名文句の一つとなっています。

駄弁者:
 東洋的、仏教的世界観をベースにした日本SFの代表格「百億の昼と千億の夜」から。結構古い作品ですが、支持率高いですね。
 投稿の名文句は作品の序章と末尾に登場します。特に序章の最初と最後、あの独特のリズム感は邦文ならではのものです。翻訳を経ていてはちょっと出せない味わいでしょう。
 私が読んだのは高校生ぐらいのときだったかなあ。形而上的なテーマの割に立ち回りが多い展開だったように覚えています。もう一度読んでみてもいいかも知れません。




「我々はボーグだ お前たちを同化する 抵抗は無意味だ」

 出典:スタートレック・ザ・ネクストジェネレーション

紹介 :司書の駄弁者
HP :ここ

コメント:
 スタートレック・TNGで最強の敵として登場する機械生命体”ボーグ”の決まり文句。彼らは各個体では自我を持たない、一種の集合意識を共有する存在で(だから「私」とは言わず常に「我々」)、他種族を自分たち同様の機械生命体として”同化”することを目的とした征服を繰り返します。その軍事力は圧倒的。
 サイバーパンクの影響を受けた外貌と、どんな友好通信を送っても何を話しかけても上の言葉でしか応答しない徹底した没個性はテレビでも迫力十分でした。去年上映された映画「スタートレック・ファーストコンタクト」もボーグものでしたが、映画よりテレビのボーグの方が恐い、という評判です。
 テレビ放映された一話に”I,borg”(邦訳題名「ボーグ・No.3」)というのあります。遭難して集合意識から離れてしまったあるボーグの個体が、<エンタープライズ>に救助され乗組員と交流するうち自我を持つようになるというエピソード。いかにもスタートレックらしい楽天的な話で私は好きなのですが、「ボーグの怖さがだいなしになってしまった」と不評も多いとのこと。人の好みは様々です。

紹介 :上奈山諸宇
HP :

コメント:
 東海地区で深夜に放送されていた番組から投稿です。私はスタートレックはよく知らないのですが、楽しく見ていました(受験で最終回あたりが見えなかったのが残念)。ヴォイジャー号にキューブから通信を入れたボウグの子供たちの台詞です。ボウグは子供でも同じ台詞吐くんだなーと思いました。ちなみにトゥヴォックが一番好きでした。



「何処かの誰かが、親切にもこの世の終わりをカウントダウンしてくれてるわけですよ。何光年も彼方から、水素ビームでね。」

 出典:J・G・バラード「時の声」(吉田誠一訳)

紹介 :寿 ゆうき 様
HP :
http://www.geocities.co.jp/Technopolis/2665/es5.html

コメント:
 SFを駄目にしたといわれようと、大好きなんですよ、バラード。「時の声」はなかなかSFしてる方の作品で短編では一番のお気に入りです。破滅SFもずいぶん読みました。『百億の昼と千億の夜』が長編ではお気に入りです。似たような味の作品は「世界の中心で愛を叫んだけもの」「ガーンズバック連続体」なんかでしょうかね。スタイルのかっこよさでこれらはタメはってると思います。

駄弁者:
 さきの高橋様よりわずか15分遅れで届いたご投稿。惜しかったですね(惜しくないか)。
 60年代<ニューウェーブ>を代表するSF作家、バラードからの名文句です。こういういかにもSFなセリフ、いいですね。でもバラードの作品で「いかにもSF」というのは珍しいんじゃないですか?
 などと知ったかぶっていますが、私は実はバラードのSFを一冊も読んだことがないんです。読んだのは非SFの「太陽の帝国」だけ。周りの評から苦手意識ばかり先に立ってしまって。

<追記>



「いいか、よくおぼえとけ。人生の九十八パーセントはクズだよ。だけどがっかりするんじゃない。残りがちゃんとあるんだからね、坊や」

 出典:大原まり子「銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ」 同名短編集に収録

紹介 :高橋 寿幸 様
HP :
http://www.bekkoame.or.jp/~taka_no6/

コメント:
 私の人生で一番役に立ってるセリフDeath。でももうそろそろ、「あれ、実はあれが2%だったのかな?」なんてー心配をはじめてる年頃ですね(笑)
 作品自身が心に突き刺さってる中・短編は山ほどあるんですがセリフだけだとこれで決まり。
 似たような感触の作品で「ジョナサンと宇宙クジラ」「広くてすてきな宇宙じゃないか」「さよなら、ロビンソン・クルーソー」があります。

駄弁者:
 第2集、栄えある(栄えはあっても見返りはない)第一番。拍手、拍手。
 ちょうどこの間「銀河ネットワークで〜」を買ったところですよ。読もう読もうと思いつつまだ「積ん読」状態。いい機会だから今読んでるのが終わったら次はこれにするとしましょうか。
 多分「残りの2パーセント」は、過ぎてみないとそれと分からないものなんでしょうね。だいたい100パーセントでどれだけあるのか自体、最期にならないと分かりません。



第1集を見る  感想を書く(文句toめい文句)  第3集を見る

フォームに戻る