SF名文句・迷文句第12集

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「簡単な仕事さ」

 出典: 佐藤大輔「皇国の守護者(3)灰になっても」

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
「翼龍」にまたがった<帝国>の爆撃手,ヘルマン・レイター・ファルケ大佐の「仕事前」の台詞。ちなみに出撃は日中です。
 ・・・シリーズ全体のポイントは,「近年まれに見る,複雑な性格の主人公」「東洋的価値観と西洋的価値観の正面衝突」「英国冒険小説を思わせる戦闘描写」でしょうか。
BGM:「月の爆撃機」ザ・ブルーハーツ

駄弁者:
 こっちは一転して簡単明瞭。プロフェッショナルを感じさせる一言ですね。
 ところで、<帝国>の翼竜ですが、名前がスツーカだったりフォッケウルフだったりしないでしょうね…。



ユーリアは右眉を僅(わず)かにあげ,口をとがらせて言った。
「小胆なのね,やはり。いいえ,他にも小さいものがあるに違いないわ」
「ええ,殿下。まさにそのとおりです」新城は微笑を浮かべつつ答えた。
「ですが,他人の欠点をあげつらっていい気になっている莫迦娘の玩具(おもちゃ)になるような大胆さを持ち合わせる必要性を僕は感じません」

 出典: 佐藤大輔「皇国の守護者(2)勝利なき名誉」

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 広大な領土に封建体制をしく<帝国>の侵略と,「権力なき権威者」のもとで貿易を営む島国<皇国>の防衛をえがくファンタジー戦記小説から,<帝国>の東方辺境領姫ユーリア・ド・ヴェルナ・ツアリツィナ・ロッシナ元帥(女ラインハルト?)と彼女の捕虜となった<皇国>の陸軍独立捜索剣虎兵第一一大隊指揮官・新城直衛(しんじょう・なおえ)大尉(当時)の会話。
 お姫様のスカウトを,主人公が断る場面です。
 BGM:「やるか逃げるか」ザ・ブルーハーツ

駄弁者:
 SFの世界を舞台にした架空戦記があるなら、ファンタジーのそれもあるわけです。「皇国の守護者」の世界では翼竜や剣歯虎が登場し、人類はナポレオン時代程度の科学技術をもっています。ファンタジーの世界観に近代的兵制というのは、ユニークだと思います。しかし抵抗を感じる人も多いでしょうね。
 大尉のセリフは、ちょっと言い回しが長々としすぎているように感じます。言っている内容は、痛快なんですが。



科学の壁じゃああ〜〜っ!!

 出典: 原作:柳田理科雄 漫画:筆吉純一郎「空想科学大戦!」

紹介 :テンダーのゲーム 様
HP :

コメント:
 身長50m・体重2万tの怪獣と音速で飛ぶ人型ヒーロー。他にも滝壷裏の発射台や合体戦闘機、加粒子砲、etc...この漫画ではこれでもかというぐらいに特撮モノ的な物が出てきては、台詞の「科学の壁」に打ち砕かれていきます。また、その打ち砕かれかたが半端じゃなくて笑えます。
 個人的に気に入っているのはサ○ダーバード2号的斜め発射台。なんとあれは使うと推力が半減するという恐ろしい代物だったのです。冷酷にして、そのせいでかえって爆笑ものの「科学の壁」この作品、ある意味ではハード・SFかも・・・・(違うかな、やっぱり)

駄弁者:
 ゴジラやガメラといった大怪獣、巨大化するウルトラマンや変身する仮面ライダー、人が乗って戦う巨大ロボットや地上をマッハの速度で駆け抜けるスーパーカーなどなど、特撮・マンガでおなじみの面々を科学的に検証するとどうなるか?抱腹絶倒の「空想科学読本」シリーズ。私も最初のと第2巻は読んで大笑いしました。特撮の設定がメチャクチャなのは当然で、それをあれこれ言うのは本来ヤボなんですが、それを承知で笑って楽しむのがこのシリーズのいいところ。
 私が爆笑したのは、設定通りだとすると空気よりも軽くなってしまうガメラや、実際使うと地球を滅亡に追い込んでしまうウルトラマンの技を紹介したところ。どちらも出典の「空想科学大戦」ではなくて第1巻の「空想科学読本」に載っていたものですが。
 そう言えば、ラリィ・ニーヴンが短編集「無常の月」で似たようなのをやっていましたね。 



気楽になるのは容易いことだ。魂を無くせばそれですむ。

 出典: 上遠野浩平「ブギーポップ・リターンズ・VSイマジネーターPart1」

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 魂を無くしてでも気楽になりたいと願う人は、案外多いのかもしれないな。
 ヒゲの小男を独裁者に選んだドイツの民衆や、日本のヒゲダルマの信者のように。
 BGM:「まぼろしの世界」ドアーズ

駄弁者:
 オウムと並べるのは、当時のドイツ人に対してあまりに酷というものでしょう。ナチス・ドイツに期待したくなる状況、というのは確かにあったのですから。



「私は最初にスイッチを入れられて以来、”三原則”に加えて、みっつの生命の規則に従って行動しようと努めてきました」

 出典: A.B.コーヴァー,I.アジモフ「電脳惑星4・天才は殺される」(黒丸尚)

紹介 :ふいごのマロウ 様
HP :

コメント:
 三原則以外にも”みっつ”も規則がある!
 ロボットからこの言葉を聞いた人間は、胃が縮みあがるのを感じます。さて、その三つの規則とは何か?
 謎が謎を呼んだまま、全八巻のうち前半の四巻だけ翻訳して絶版!
 そういえば、何で角川文庫だけは”アシモフ”じゃなくて”アジモフ”って書くんだろうか?謎だらけ。

駄弁者:
 翻訳シリーズでは未訳をのこしたまま中断、というのは珍しくないとはいえ、この生殺しはちょっとつらいですねえ。最初から読んでなければ、たいして気にもなりませんが。
 「アジモフ」についてはこちらの方が発音に忠実、というのを聞いたことがあります。しかし、目録をつくる側としては、こういうこだわりは、ちょっと余計…。入力の面倒が増えるし。



ジェームズ・ハーウッド・ガーナ−博士は、アメリカ合衆国の名において、いわゆる<月の暗い半面>の領土宣言をおこなった。世界の半分をだ!

 出典: ジョン・W・キャンベルJr.「月は地獄だ!」(矢野徹訳)

紹介 :ふいごのマロウ 様
HP :

コメント:
 ジョン・W・キャンベルJr.
 偉大な編集者としてSF史に名を残しています。
 しかし、SF作家としても、なかなかの腕前でした。この「月は地獄だ!」は現在でも楽しく読むことができます。
 ・・・作品中に、アメリカ以外の国の固有名詞が、まったくでてきませんが。

駄弁者:
 1938年からSF誌「アスタウンディング」の編集者をつとめ、アメリカSFの黄金時代を築いたキャンベル。アシモフの「夜来る」やロボット三原則のアイディアは、彼の示唆で誕生したということです。
 そのキャンベル自身のSFで、現在新刊が手にはいるのはこの1冊。
 原書の出版は1950年ですね。スプートニク・ショックより7年も前とあっては、アメリカ以外の国が出てこなくても、まあしょうがないか。10年後だったら、いくらお話でもこうまで無邪気に月に星条旗突き立てることはできなかったでしょう。



わたし、薙草(ちぐさ)。SF魂(だま)を集めるために、旅してるの。

 出典: SFマガジン’99年9月号/第39回日本SF大会「ゼロコン」のページ

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 SFMの「日本SF大会のページ」は、毎年さまざまな趣向が凝らされていて楽しめます。
 連作形式(?)の今回も、例外ではありません。
 BGM:「アクセル」飯塚雅弓

駄弁者:
 私も持ってますけどね、SF魂。
 集めたSF魂は利子を付けて返してくれるんでしょう、きっと。
 しかし、この薙草さんのイラスト、ちょっと狙いすぎじゃないでしょうか?まちがえてキャラもえ魂ばかり、集めないように。



「おれは世界中のみんなを愛している。ほんとうだ、神様に誓ってもいい。 おれはみんなを愛している、おまえたちみんなを!」

 出典: ハーラン・エリスン「世界の中心で愛を叫んだけもの」(浅倉久志訳)同名短編集に収録

紹介 :おりま 様
HP :

コメント:
 なんて事のない台詞ですが、これが飛行機を爆破させたり、観衆の中で機関銃(だったかうろ覚え)をぶっ放した大量殺人鬼の台詞と思うと、なんだかな・・・とつっこみたくなります。奥が深いです。ところでこの短編集、以前早川に注文したときは在庫がなかったはずなのに、某人類補完アニメのおかげで再版されて、手に入れることができました。人類補完機構シリーズも右に同じです。便乗商法も、時には役に立つな・・・と思いました。

駄弁者:
 人間の思考を越えた彼方にあるどこか「交叉時点(クロスホエン)」。狂気と暴力の源泉はそこにある…。ヒューゴー賞受賞作からのご投稿。奥が深いというか、正直言って訳の分からないところもあるんですけどね。アニメに釣られて買ってしまった人は、困ったことでしょう(…怒った人も少なくないんじゃなかろうか)。
  しかし…このセリフを発するウィリアム・スタログには、「ぼくはここにいていいんだ!」などと思ってほしくないなあ。



「・・・生きていることがむなしいなんて、おれはぜったいに思えない・・・」
その言葉を思いだすと、シンはむしょうに笑いたくなってきた。こうやって、なんどもなんども、人はくりかえし問うのだろうか、おなじ問いを・・・

 出典: 上橋菜穂子「精霊の木」

紹介 :大ちゃんの妻 様
HP :

コメント:
 シンとリシアはナイラ星の先住民ロシュナールの血を引いていた。リシアが「アガー・トゥー・ナール「<時の夢見師>−過去を夢見るもの」として目覚めたときから二人の冒険が始まる。(ブックガイド風の紹介)
 これは全てが終わった後、滅び行く先住民の一人として孤独に死んだひいひいひいおじいさんを思って、シンが考えたことです。
 児童文学ですが、SFとしてもいい出来だと思います。ちょっと悪役が類型的なのですが。
 基本的に前向きの話が好きなので、恥ずいくらい前向きなのですが、これを名文句投稿第1弾としました。

駄弁者:
 私も前向きな方が好きですね。児童文学だととくに。
 滅び行く民族の最後の一人、というと今はどうしても「キリンヤガ」のコリバを連想してしまいます。彼もやはり人生を「むなしい」とは考えなかったのではないでしょうか。



二人は同時に母国語で叫んだ。
『terre!』
「地球だ!」

 出典: 野尻抱介「私と月につきあって」

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 「宇宙飛行士は体重が軽い方がいい」→「じゃあ、女子高生を採用しよう!」をコンセプトに、将来ありうべき宇宙開発の現場を、最新のデータを駆使してえがくヴェルヌ型サイエンス・フィクション<ロケットガール>シリーズ第三弾。
 今回のミッションの目的地は、月の北極。あとがきにいわく「二十世紀最後にして最高の月探検SF」。
 ・・・ところで「野尻抱介」(のじり・ほうすけ)というペンネームは、「天文学者」(てん・ぶんがくしゃ)もしくは「星の詩人」の野尻抱影(のじり・ほうえい)とは関係ないそうです。
BGM:「ムーンライト・エピキュリアン」高橋洋子

駄弁者:
言葉はちがえど、感動は同じ、と言うところでしょうか。
「宇宙飛行士は体重が軽い方がいい」…そりゃま、確かに。頭が軽かったらダメでしょうが。



「僕を信じるのか?きみにとってぼくは一番信用できない人間だ。僕を筋肉(ブローン)に選ぶだと?こいつは傑作だぜ!」

 出典: アン・マキャフリー「歌う船」(酒匂真理子訳)

紹介 :りんご 様
HP :

コメント:
 200点突破おめでとうございます。いやあ、早いですねぇ。
 コメント気に入って頂いて嬉しいです。励みになります。
 さて、「歌う船」シリーズ1作目から。乙女チックというか、ロマンチックな作品でした。いろんな要素が入ってておもしろかった。上の台詞は本気で罵り合いながら、実はいかに愛しているかということを告白してるとこの一部。羨ましい・・・。
 けど、一歩間違うと怖いよねぇ・・・なんて事考えるのは邪道です(笑)。ところで生脳でいる限り不死にはなれないと思うんだけど。

駄弁者:
 ありがとうございます。また技ありなコメントを期待しています。
 さてご投稿、「歌う船」は私もけっこう楽しんだ作品です。先天性の障害で機械の助けなしには生きられないが宇宙船の「脳(ブレーン)」として活躍する少女ヘルヴァの冒険、そして皮肉屋の監督官ナイアル・パロランとのロマンス。ちなみに名文句にある「筋肉(ブローン)」というのは、動ける肉体をもたないヘルヴァたち「脳」のパートナーとなる乗員のこと。
 この一節のあるラストあたりを、今ざっと読み通してみたんですが、こんな熱烈な告白は、つくり話でもそうめったにはないですね。もっとも罵る方もそれに比例して華やかです。「陰険で、卑劣で、無節操で、図々しい」「浮気な、二枚舌の、縮れ毛の、発育不良の、ブリキ尻の偽善者」ときますからねぇ…。はたから見て心臓に悪いぞ、このカップル。



「おかえりなさい、シャーマン少尉。恋人は元気でしたか?」

 出典: 神林長平「今宵、銀河を杯にして」

紹介 :砂 様
HP :

コメント:
 はじめまして。すごいHPを発見してしまって、興奮してます。
 興奮ついでに私も送らせてもらいます。
 地球に帰りたがっていた少尉に、偽の恋人との時間を過ごさせたアムジの台詞です。
 感情は本物だ、と言われればたしかにそのとおりですよね。アムジの口のうまさには全編とおしてうなりっぱなしでした。

駄弁者:
 こちらこそはじめまして。ありがとうございます。(しかし、褒めてもらった部分までコメントに載せる私も、いいかげん厚かましいよな…。)
 兵士たちとコンピュータ制御の戦車との交流を描く「今宵、銀河を杯にして」からのご投稿。「雪風」は戦闘機でしたが、こっちは戦車ですね。「雪風」の方がかなりハードなテーマを扱っているのに対し、こちらはかなり楽に読めそうな印象があるのですが、さて、どんなもんでしょうか。神林長平は軽そうな話に見せて実は結構深い、というのがわりと多いので、これも一筋縄ではいかない作品かも知れません。



南郷は確信した。
地球連邦は内乱を欲している。

 出典: 佐藤大輔「地球連邦の興亡[1] オリオンに自由の旗を」

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 「地球人と異星人との最初の接触戦争」「日米英連合 対 国連諸国の第三次世界大戦」「国連諸国壊滅後の、地球連邦の惑星植民」「ネイラム第一氏族との星間戦争」を経て、25年にわたった「第一次オリオン大戦」は終結。時に西暦2197年。
  わざわざ異星人を登場させておきながら、かれらとの戦争が終わる直前から筆を起こすあたりに、作者の曲者ぶりがうかがえるというか。
それにしても、戦後処理というのはいつの時代も、戦争より難しいものなのですね。
BGM:「リエンツィ」ヴァーグナー

駄弁者:
 SF色の濃い架空戦史、シミュレーション小説という感じの話ですね。
架空戦史ものは学生時代に何冊か読んだことがありますが、その後、粗製濫造の代名詞のようになってからは手を出さなくなりました。最近少しは淘汰されたようですが。
 ファーストコンタクトまでした後で、同じ星の国家どうしで戦争なんかやってるなよ、という気がしないでもないですが…。宇宙人に会えば地球人どうしの対立が昇華されるなんて、やっぱり幻想なんでしょうか。


 


「どうしてこんな傑作が書けたのですか?」
キイスは困った顔をして答えた。

「どうして書けたのか、もしあなたに判るなら教えてくれませんか?私ももう一度あんなのを書いてみたいんです」

 出典: アイザック・アシモフ編「ヒューゴー賞傑作集No.2」(稲葉明雄訳?)

紹介 :ハヤト 様
HP :

コメント:
 ダニエル・キイスがヒュ−ゴー賞を受賞する際にアイザック・アシモフとの間に交わされたあまりにも有名なエピソード。
 人間、一生に一度しか切れないカードがあるとしたらダニエル・キイスにとってのそれは「アルジャーノンに花束を」こそが、まさにそうだったのだろう。それにしても、これほどの名作をなぜ文庫化しないのだろう?と思っていたら「ダニエル・キイス文庫」で発刊ですって。どうして普通にハヤカワ文庫から出さないんだろう?

駄弁者:
 キイスが「アルジャーノンに花束を」(中編版)でヒューゴー賞を受賞したときのセリフ。なかなか洒落てますね。
 私は他には前述の短編集「心の鏡」と「24人のビリー・ミリガン」しか読んでないですが、多分それ以外のものも「アルジャーノン」を越えてはいないでしょうね…。
 キイス文庫、キイスの著作を全部文庫化した後はどうするのでしょう?



つぎの瞬間、彼の坐っていた木の板はチャーリイの両脚の下側をつよく押しつけ――彼は月光に照らされるわが家の屋根を見おろしていた。 

 出典: ジャック・フィニイ「大胆不敵な気球乗り」(福島正実訳)

紹介 :ゆきろう 様
HP :
http://www.geocities.co.jp/Bookend/3124/

コメント:
 家族が10日ほどの旅行に出かけ、一人で留守番している中年男が、勤めから帰って庭のイスに寝そべっている。丘に沿った上昇気流に乗って静止している鷹の姿を見るうち、ふいに、空に浮かぶ事に対する強い欲求に駆られる。百科事典で調べ、材料を買い込み、3日で自家製の気球を完成させる。その夜、彼の初めての飛翔の瞬間。
 きれいで素敵な文章だなぁ、と感動しました。
 ああ、自家製の気球!秘密の、深夜の空中散歩…ブラッドベリを思わせる、詩的な幻想世界です。この後の飛行の描写が、また、たまりません。
 でも、やっぱりフィニイ。結局は生煮えな浮気話。ストーリー自体は、やや興ざめでした。

駄弁者:
 気球で飛ぶというのは、他の飛び方とはひと味違ったものがありますね。
 飛ぶことをもっとも楽しんでいる、というか。



黄金の船と──彼がただひとり、全人類をあざむき、諸世界の称賛を浴びることもなくなしとげた武勲について瞑想する。そのほうが電流よりも、はるかに大きな快楽を与えてくれるのではないだろうか。

 出典: コードウェイナー・スミス「黄金の船が――おお!おお!おお!」(伊藤典夫訳)「鼠と竜のゲーム」に収録

紹介 :テンダーのゲーム 様
HP :

コメント:
 普段、テデスコ提督は脳の快楽中枢にパルス電流を差し込むという大変SF的自堕落な生活を送っています。そしてひとたび地球に脅威が迫ると全長1億5000万qを誇る人類補完機構の秘密兵器“黄金の船”を飛ばすのですが、本当に飛ばすだけ・・・・
 なんと黄金の船はダミーで、実際は敵があちこちに出現する黄金の船の大きさに焦っている間に、補完機構は極悪非道な手段で大虐殺・・・・
 そうやってすべてが終わり、テデスコ提督はまた普段の生活に戻ろうとしたとき、ちょっと思ったわけです。
 ヴァーチャル・リアリティーがいくら発達しても、やはり実体験に勝ることはないと言うことでしょうか。
 それにしても全長1億5000万q、超々弩級の張りぼて戦艦。この発想はすさまじすぎる。

駄弁者:
 すでに何回か言っていますが、「黄金の船」は「補完機構」の中でも好きな作品の一つです。
 初めて読んだときは笑いました。補完機構のお偉方たちはセコい発想を壮大に実現するのが得意ですねぇ…。
 しかし、1億5千万キロの宇宙船を一発の命中弾も被ることなしに繰船するテデスコは、ものすごい名パイロットだと思います。
 なんと、テンダーのゲームさんはコメントと一緒に「黄金の船」のイメージイラストまで描いて下さいました。これであのデカさだと考えると、気が遠くなるな…。



「この宇宙に、男が女を理解できる世界がどこかにあるだろうか?」
「ゲセン」

 出典: アーシュラ・K・ル・グィン「踊ってガナムへ」(小尾芙佐訳)「内海の漁師」に収録

紹介 :テンダーのゲーム 様
HP :

コメント:
 最初の質問だけならなんの変哲もないのですが、その答がいかにもハイニッシュ・ユニバース(ル・グィンのSFシリーズ)な感じで素敵です。
 ご存じの通り(?)ゲセン人は両性具有なわけでして、SFの場合こういう答もありかもしれませんね。
 ちなみに「内海の漁師」は「ないかいの“すなどり”」と読むのがよろしいようで。

駄弁者:
 男の立場にある両性具有人は、女の立場にある同種人を理解できるでしょう。
 しかし、ずっと片方の性でいる男や女を、果たして彼らは理解できるでしょうか? 両性具有人というのが、男性でも女性でもあるのか、それともそのどちらでもない第三の存在なのかは、考える余地があるかも知れません。
 ところで、「闇の左手」に出てくるゲセン人は私にはたいてい男性のように読めてしまったのですが、これは私自身が男性であるせいなのでしょうか。別の短編「冬の王」に出てくるゲセン人は女性的だとのことですが。



「しかし、新刻敬──君の意志の強さは見事だ。君のような人がいるから、世界はかろうじてマシなレベルを保っている。世界に代わって感謝するよ」

 出典: 上遠野浩平「ブギーポップは笑わない」

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
「SF/ホラー/ミステリ━━熱き愛のトライアングル!!」
(ジェイムズ・エルロイの小説風に)
BGM:「丘の上の若者」シューベルト

駄弁者:
 アニメ化あり、実写化の話ありと、今一番旬のライトノベルなんじゃないでしょうか。
こうまで流行ると自分で読む気がなくなってくる…少なくとも、今すぐ読もうとは思わなくなってまう。私がひねくれものと言われる所以です。
 …それはそうと、名文句より短いコメント、というのも初めてなのでは。



「他人をほめるときは大きな声で、悪口をいうときはより大きな声で」

 出典: 田中芳樹「銀河英雄伝説」

紹介 :図書室のねーちゃん 様
HP :

コメント:
 そういえばこの名(迷)言、誰も書き込んでなかったと思ったので。
 実践すると人間関係ぶっこわれることで有名なビッテンフェルトさん家の家訓。
 早く他のシリーズも決着つけてほしいなぁと願いつつ投稿しました(^^;)。

駄弁者:
 おお、久々の銀英伝。
 家訓もさることながら、オーベルシュタイン元帥の悪口だと一層声が大きくなる提督閣下なのでした。
 しかし、この人の家って、騒々しかったでしょうねえ……。
 田中芳樹のシリーズもので決着ついているのは、これとマヴァールぐらいなのでは。



「ここは、ひとつの文明が滅びた場所だ」錆(さび)を含んだ静かな声が漂ってきた。
「去りゆくものをとどめるのは叶(かな)わぬ技だが、失われたものに対する礼ぐらいはわきまえたらどうだ」

 出典: 菊地秀行「風立ちて”D” 第一章 冬の村」

紹介 :W^2 様
HP :

コメント:
 渋い(と思っている)セリフをもう一つ。
 20世紀末に勃発した全面核戦争後、「人類」に代わって「吸血鬼」が文明を築き上げ、それがほぼ崩壊している西暦12000年代が舞台。
 このころはまだ”D”氏もそこそこ喋ったり、必殺”微笑み返し”をここぞ!というところで使ったりしてたんだが………作品で語られないところでよほど凄絶な体験を繰り返していたんだろうなぁ。そのわりには、生体エネルギー炉”人面疽”さんはあまりかわってないような気が………

駄弁者:
 「D」の舞台って遠未来だったんですね。異世界ものだとばかり思ってました。ま、いまから1万年後で文明も交代してるのでは、異世界と違いないでしょうが…。
 まだソノラマ文庫が緑色の背だった頃から続いている、長寿シリーズですね。



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