SF名文句・迷文句第13集

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「大人にはな、責任てものがあるんだ」

 出典: 矢立肇(原作) 谷口悟朗(監督)「無限のリヴァイアス 第2話『よけいなこと』」

紹介 :りんご 様
HP :

コメント:
 今が旬かなということで。
 これで小説と漫画と映像制覇かな?って別にそういう基準で選んでるわけじゃなかったんだけどね。
 現在放送中のアニメです。作り方がうまいというか、今的で受けそうだと思うんだけど、知らない?私的には映像きれいだなってのとサントラ欲しいかなって感じ。
 さて、文句の解説。宇宙にいること前提ね。航宙士養成所リーヴェ・デルタ。圧壊深度を越えて沈みつつある船に浮力を与えるため、教官たちは手動でパージをするために船外へと出ていく。生徒達の考え出した唯一の方法を可能とするために。
 く〜、かっこいいぜ大人!キザなせりふまわしがまた絶妙。何もできないくせに口ばっかの生徒が、私が責任を持ちますって言った後だけに重みがあるのよ。そして見事成功させて圧死してゆく。教官ぁ〜ん、このせりふは染みたよ。

駄弁者:
 はい、知りませんでした。すいません。なので、サンライズのページ見に行きました。音楽は服部克久ですか。それはいいかも。
 言葉だけだとなんてことはないですが、状況を重ねると、こうぐっときます。こういうシチュエーションは、私も好きですねぇ。
 …いや、圧死するのがじゃなくて。



「――マリーン たくさんたくさん涙を流した人ほど幸せを感じる力が強くなるのだよ」

 出典: 紫堂恭子「ブルーインフェリア@」

紹介 :記由 様
HP :

コメント:
 僕のイチ押しの少女漫画家、紫堂恭子さんの作品から。
 環境汚染により不毛の大地になってしまった近未来で、恵まれた聖浄地リベルを舞台にした物語です。
 病弱な体に生まれつきながらも、強く生きる青年リセ。そんな彼に、自分の忌まわしい出生を知った少女マリーンは問い掛けます。「…教えて どうしたらそんなふうに強くなれるか どうしたら立ち向かう勇気がもてるか ―――教えて」と。名文句は、その問いに対するリセの答えです。「つらいかもしれないけど、そんな時にこそ本当の幸せを見つけることが出来る」そんな意味が込められています。
 ありきたりかも知れませんが、つらいときなど、とても心に響く名文句だと思います。

駄弁者:
 たしかにありきたりかもしれませんが、それが多くの人を元気づけるからこそ多く使われるし、多く使われるからこそありきたりになるのでしょう(この言い回しって、確か銀英伝にあったな…)。
 とにかく、奇を衒うだけが「名文句」じゃない、ということで。



「それは宣戦布告と解釈してよいのだな、アリアバート卿」
「それ以外にどう解釈しようがあるというのだ。気どるな、ばか!

 出典: 田中芳樹「タイタニア3 旋風篇」

紹介 :記由 様
HP :

コメント:
 久しぶりの投稿になります。「忙しくなりそうなのでお尻に火が点かないうちに」、というわけで投稿させてもらいます(笑)。
 出展は人気遅筆作家・田中芳樹先生の作品から8年以上刊行が止まっているタイタニア。
 嘲笑されたアリアバート卿が「生涯で最大の激語」を吐いた直後の会話です。いやあ、いいですね。田中芳樹作品の魅力は、演義物風の活劇もさる事ながらこういった珍妙かつ痛烈な文句にあると思うのですが、いかがでしょうか。

駄弁者:
 お仕事ご苦労さまです。
 「銀英伝」「創竜伝」「七都市物語」ときたら、やっぱりこれもないと。宇宙を支配するタイタニア一族と、一部なりゆきで彼らに対する革命を企てる面々とを描く、大シリーズ…になるはずだった「タイタニア」。
 アリアバートはジュスランに比べていまいち影が薄いし、しょっぱなに負け役ふられてるしで、どっちかというと不幸なキャラクターだと思いますが、彼なりに頑張っています。
 続きは…期待せず待ちましょうか。



    ≪観客の心得≫
原作コミックスを完読の方はこのままお進みください。
未読の方は通読の上、再びのお越しをお待ちしております。
                  劇場支配人 北条風奈

 出典: 北条風奈・大清水さち(原作)「小説『ツインシグナル』Vol.10」

紹介 :図書室のねーちゃん 様
HP :

コメント:
 金田一少年のようなホームズ役とワトソン役がわかればもとを知らなくても平気な例外もあるけれど、マンガのノベルVrは基本的に「原作を読んでいる」ことを原則にしています。そして、基本的に原作を読めばわかることは書かれません。
 原作の、シグナルと信彦の視点や彼らが主役の原作では描かれないストーリーと裏設定、そして北条さん自身のオリジナル設定が混じってSFテイストがさらに強くなっている小説Vr。
いつかこっちからも名言に書き込もうと思っていました。原作者とその友人、と言う関係が良い結果を出していたからです。
 これは誰が作品のオリジナルであるかを示した一種の儀式。実際Vol.10は原作を知らなければ全くわかりませんが、原作者を盗作していると勘違いしている人への否定のようにも思えます。この手の小説で勘違いしている人が多い中、オリジナルの強さを知っている北条さんに敬意を表してこの言葉を選びました。

駄弁者:
 メディアミックス作品はファンならではの面白さが満喫できて楽しいものです。原作の人気に寄りかかっているだけの作品も多いので注意がいると思いますが。…かつてゲームのノヴェライズで貧乏くじを引いたことのある私です。
 小説の方にはちゃんと「大清水さち」のコピーライトが入っているんでしょう?だったら「盗作」は的外れだと思うんですが。



「奥様、未来は過去の結果なのです。子が父によって生を受けたと同じように、今日は昨日の子供なのです。今日なされた行動は明日に影響します。だからこそ、過ぎ去ったものに敬意を払うものが多いのです」

 出典: E・C・タブ「キノコの惑星スカー」(鎌田三平訳)

紹介 :W^2 様
HP :

コメント:
 かつて、読んでも読んでもまだ続くシリーズとして「ペリー・ローダン」シリーズ、「グイン・サーガ」シリーズと共に並びたたえられていた「デュマレスト・サーガ」シリーズの5巻から。
 シリーズ全体としては生まれ故郷の地球を探して銀河をさまよう主人公、アール・デュマレスト。彼は地球への至る道への手がかりを行く先々の星で探しながら、ついでに情報サービス提供組織「サイクラン」の銀河系支配をもくろむ計画を潰しつつ、到着した星々(あるいは道中)で女性と「お付き合い」していく話であった、ような気がする(笑)
 まあ、「お付き合い」といってもその形は興味・憧憬・思慕・愛情・友情・欲情・執着・実験材料に義理人情等々ひどくバラエティとんでいたんだが………
 余談ながらやはり最終巻は日本では刊行されないんだろうか?

駄弁者:
 ご投稿いただいたW^2さんが教えてくれたところによると、このシリーズは既刊が31冊で、あと1冊で完結するはずなのだとか。
 到着した星々で女性とおつきあい、というのが笑えます。「惑星ごとに女あり」?



「やっと──美しさということが、分かったような気がします。美しさというのは──痛いものです!」

 出典: エドマンド・クーパー「アンドロイド」(小笠原豊樹訳)

紹介 :W^2 様
HP :

コメント:
 この作品全体に対しては今一つ印象が薄いのだがこのセリフにはなにかひどく私の琴線に触れるものがあった。
 もっともアンドロイドがこのセリフをいう原因となる詩、主人公いわく「英語のなかで一番抒情的な言葉のつながり」のどこが良いのかぜんぜんわからなくって「そこまでいうほどのものか?」と感じてしまう自分がちょっと(いや、かなり)情けない。やはり、読み手に感受性を要求する作品なんだろうなぁ………

駄弁者:
 読まれたのが翻訳だとすると、原文でこそ発揮される詩の良さというのは伝わりにくいのかも。
 もっとも、原文を読んでも意味が分からないと思うのですが、私の場合……



「族長は誰だね、おいぼれ?」

 出典: ロバート・L・フォワード「竜の卵」(山高昭訳)

紹介 :W^2 様
HP :

コメント:
 何故にこのセリフがSFに関係するかというと、中性子星(!)の表面に生息している知的生命体「チーラ」が族長の座をかけての(儀礼的)一騎打ちを申し込むときの文句だからなのである。
 もっとも、この「チーラ」達、重力670億G、磁場1兆ガウスというとてつもない環境に生息、生活速度は人間の100万倍(一生が45分!)、形状は《平均》直径5ミリの殻のないアワビに良く似ている、という人類とはとことん異質な生き物なんだが言動が妙に人間臭い。やはり元ネタ(?)のハル・クレメント著「重力の使命」のメスクリン人の書き表し方を踏襲してるんだろうか?

駄弁者:
 私も好きな作品です。
 異質な生命のはずなのにメンタリティがほとんど人間なチーラは、ハードSFとしてはマイナスポイントに挙げられてもいますが、私はそういう点もけっこう好きです。
 このセリフを発するグレート・クラックが数学を発見する場面なんかは印象に残るシーンです。



鋼丸「俺の脳はお前の脳の隣にある。そのせいか俺には、お前の考えてることがだいたいわかる。お前の見てる夢も、俺には何となくわかるんだ・・・・・・」
迅鉄「・・・・・・」
鋼丸「気にすんな。イヤな夢を見るのは、お前だけじゃねえ・・・・・・」
(句読点は引用者挿入)

 出典: 冬目景「黒鉄(二)」

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 ・・・このマンガには他にも名文句が多いのですが、SF名文句ということならコレかなぁ、と。
 鋼の迅鉄(はがねのじんてつ):一度は死んだが、通りすがりのまっどさいえんてぃすと・源吉に改造され甦った人斬り。その後、源吉が武士の意地を通して死んだため、自分のメンテナンスは自分でしている。現在、あてのない放浪生活。
 銘刀鋼丸(めいとう・はがねまる):口のきけない迅鉄の代わりにしゃべる刀。実は元人間。もちろん改造したのは源吉。
BGM:「STRENGER IN THIS TOWN」リッチ−・サンボラ

駄弁者:
 語らぬ刺客と語る刀のコンビ、というのは面白いですね。しかし、人間を刀に変えてしまうのは、すでに「改造」の域を越えているのでは。
 …やっぱり出典を全然知らないとしょうもないコメントしかでてこないな。



「人間のふるさとである青色天国の近くまで行ったが・・・・・・羽根は勝手に動いて止まらなかった。だからイガロスはコースを外れ,別の世界へ飛んで行ってしまったんだ。そのときには,もうボイジャーと名前が変っていた。ボイジャーは人間でないという意味だ。可哀想だった。本当に可哀想だった」
 ゼウスは涙を流し,ワイスカたちも泣いた。

 出典: 眉村卓「イガロス・モンゴルベエ・ヤイト」 『ショート・ショート ポケットのABC』収録

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
・・・そりゃま確かに,ボイジャーは人間ではありませんが(駄弁者さんのコメント風に)。
 ちなみに,モンゴルベエは「科学的な死にかた」をし,ヤイトは死んではいないものの酷い目にあってます。
BGM:「まるさんかくしかく」中村一義

駄弁者:
 下のとワンセットでお楽しみ下さい。
 ははは、文体模写されてしまいました。そりゃま、確かによく使っている言い回しではありますが(元祖)。



「イカロス・モンゴルフィエ・ライト。
「生れはキリスト降誕前九百年。一七八三年,パリでグラマー・スクールを卒業。ハイ・スクールは一九〇三年,キティ・ホークのカレッジを卒業。その後,地球より月に移住。きょうは神よみしたもう一九七〇年八月一日。歿年(ぼつねん)はわれらの主のおん年一九九九年夏,しあわせにも火星の土地に埋葬さる」

 出典: レイ・ブラッドベリ「イカロス・モンゴルフィエ・ライト」(都筑道夫訳) 『スペースマン 宇宙SFコレクション@』収録 SFマガジン1961年1月号にも収録

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 ギリシャ神話のイカロス・熱気球のモンゴルフィエ兄弟・そして飛行機のライト兄弟。
 かれらの空へのあこがれは,われらの宇宙へのあこがれに重なる。
BGM:「主題歌」中村一義

駄弁者:
 ロケットが初めて月に飛び立つその朝、宇宙飛行士は先人たちの姿…彼らと一体となった自分の姿をを幻視する。SFマガジンの掲載では4ページと短いですが、詩情あふれる作品です。
 これを収録している短編集「宇宙コレクション」ですが、1巻「スペースマン」にはこのほかにクラーク「だれだ?」「犬の星」やホーガン「かくて光あり」、ベイリー「空間の大海に帆をかける船」など。2巻「スターシップ」にはハインライン「地球の緑の丘」やティプトリー「そして目覚めると、わたしはこの肌寒い丘にいた」、ヴァーリィ「ブルー・シャンペン」が入っています。とにかく豪華なラインナップ。



「お前の会いたがってんのは形のある夢だよ」

 出典: やまざき貴子「キュービック・ドリーム(「アカデメイア」シリーズ)」

紹介 :たかの 様
HP :

コメント:
 はじめまして。まおさんのところからリンクして参りました。SFは入門希望者なのですが、参加したくなってしまいましたので、ちょっとだけお邪魔します。
 蘇芳に会いたくてブルーになっているモエ・ギにつっこむ友人のシオンくんのセリフ。「形のある夢」って切なくていい響きだと思うんですけど、どうでしょう?

駄弁者:
 はい、はじめまして。まおさんの「Players Online」でよく書き込みを拝見しています。こちらもどうぞ、ごひいきに。
 たまたま妹が「アカデメイア」ひとそろいを持ってましたので、出典に関係する2話「インセクター・シンドローム」「キュービック・ドリーム」だけ、とりあえず読んでみました。
 地球と月の中間軌道にある大学コロニー<アカデメイア>。学生モエ・ギはタイムマシン「ムシ」の事故で平安時代の日本に飛ばされてしまう。そこで彼は変わり者の姫君・蘇芳と出会う…というのが「インセクター・シンドローム」。その続編「キュービック・ドリーム」は、上にあるとおり。結局モエ・ギは再度遭遇した事故を奇貨に、蘇芳に会いに行くのですが…。
 話はちょっとありがちかなぁ、と思うのですが、蘇芳のキャラクターがいいですね。



この先、どんな陰謀にも意味はなくなる。戦争に勝る無意味などこの世に存在しないからだ。そう、戦争だ。素晴らしい。戦争。戦争。戦争だ。

 出典: 佐藤大輔「皇国の守護者3・灰になっても」

紹介 :室戸ひょうえ 様
HP :

コメント:
 この本もすぐ前で紹介されていましたが、あえて(またかい)。このシリーズ、なまくそ面白いです。ただ万民にはとても薦められません。クセが強すぎるのです。一応ファンタジーにカテゴライズされるのでしょうが、ここには「青い空、白い雲、吹き渡る風、そして冒険者たち」と言った定番は何一つ存在しません。 テレパシストやサーベルタイガーが戦場を駆け回り、東洋龍と西洋竜が世界に同居し、歩兵の基本装備は先込め式火打石銃(!)、蒸気機関の軍事利用は始まったばかり、長い耳のエルフ娘はいません、替わりに出てくる美人副官は両性具有者です。
 そして何よりも主人公の新城直衛が実にエグいのです。なんたってこれは一巻のセリフですが「僕らは敵とは戦わない、間にある村はすべて焼く、井戸には毒を投げ込む」ですからね。
 お気づきの方も居られるでしょうが、これって思いっきりヤン・ウェンリーの「エル・ファシルの戦い」を皮肉っています。実際この本はヤンフリークに強力に御薦めします。多分、超激怒か目から鱗のどちらかでしょう(三巻ではバーミリオン会戦も皮肉っていた)。

駄弁者:
 まあ、戦争のリアルという点を、銀英伝は追求してませんから。あれは基本的に「演義もの」ですし。最初期の題名は「銀河のチェスゲーム」だったそうです。
 書店にあったこの「皇国の守護者」をパラパラとめくってみたのですが、これを読んでファンタジーだと思う人は多分いないでしょうね。ドラゴンのいる世界でシミュレーションをやるという点で、私は昔あったゲーム(…あ、今でもあるか)「Masterof Monsters」を連想しました。またしても、分かる人は少ないでしょうが…。



「わたしは希望に頼らない。絶望も抱かない。希望と絶望の虜になれという誘惑は常に存在するが、絶対にそうはならない。そう決めている」

 出典: 佐藤大輔「地球連邦の興亡2・明日は銀河を」

紹介 :室戸ひょうえ 様
HP :

コメント:
 初めまして。室戸ひょうえと言います。最近家庭用電子頭脳を導入したので、眉村卓で検索した所ここに辿りつきました。本書は何やら既に紹介されているようなのですが、あえて書きます。本書の魅力は今まであらゆる作品で書き割り的存在でしか無かった地球連邦と言う統一政体を、これでもかとばかりに書き込んでいるところにあります。
 もう一つ。主人公の南郷一之の性格です。これがもうモロに司政官なのです。本文中では「自分自身に対する評価の基準がたいへんに厳しい、あの不幸な男たちの末端に連なっている」と書かれています。そう言う男なのです。本日書いた名文句もこの男の言葉です。
 本シリーズは現在3巻まで出版されています。伏線中心の二巻が少々中だるみしますが、三巻では「市民デモに発砲する軍隊」「船団を組んで住民を星系外に脱出」等など、どこかで目にしたような状況が山盛りで俄然面白くなります。弩薦めします。

駄弁者:
 「司政官」と似た主人公、と言われるとちょっと読みたくなってきますねぇ。この手の小説は旧軍を美化しただけの手あいが多いと聞いていますが、やっぱ偏見なんでしょうか。
 しかし、物語や登場人物よりもまず状況のシミュレーションが第一にきますから、読者を選ぶものではあるでしょうね。ハードSFと一脈通じるところがあるかもしれませんね。
 コメントにある「市民デモ〜」や「星系外脱出」は銀英伝かと思ったんですが、正解は眉村卓「消滅の光輪」でした。「司政官」ものではこれが一番好きなんですが、復刊されないなあ。



このとき,シュタミッツは,困惑とやりきれなさのあまり,原始的な汎神(はんしん)的感情のとりこになってしまったようである。路傍の花に精霊でも宿っているかのような気分になり,出征する兵士たちの命運を思いやるうち,つい花を拝んでしまった。
「どうか助けてやってください。私の手には余ります。ご加護をお願いします」

 出典: 田中芳樹「七都市物語」

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 カレル・シュタミッツ。
 毒舌を吐きまくる登場人物たち(特にユーリー・クルガン)に対する貴重な中和剤。
 上の場面だけを見ると,なんだか神経が細い人のように思えますが,実はかなり図太い男です。
 ・・・ところで,もしシリーズが再開されたら,本作や「タイタニア」にも,ヘンな宗教が出てくるのでしょうか? 「銀英伝」や「アルスラーン」や「創竜伝」のように。
 BGM:「ダンデライオン」ブランキー・ジェット・シティー

駄弁者:
 「七都市物語」は知名度こそいま一歩ですが、知っている人の評価は高いですね。「銀英伝」より好き、という人もいるようです。
 シリーズを再開してくれてもいいと思いますが、とりあえず他のを一段落させてからにしてほしいものです。こっちは連作短編のせいか、現状のまま止まっていてもあまりストレスを感じないので…。
 そういえば、梶尾伸治「ちほう・の・じだい」に「七都市」のパロディが載ってました。



「ネ、ネ、ネ、ネギー、今日もネギー アサつき、ドロつき、フカヤに、シモに ネ、ネ、ネ、ネギー、今日もネギー 明日はシャケー」

 出典: バンダイビジュアル&エアーズ「宇宙海賊ミトの大冒険2 二人の女王さま」

紹介 :屋良一 様
HP :

コメント:
 やさしいだけがとりえの平凡な主人公「光国あおい」君(生まれて15年間は男性、今女性の実は両性具有者)が、ニューヨークでモデルをやっているとばかり思っていた母親が実は見た目は11歳児だが、実年齢12011歳の宇宙海賊で、その上元銀河の王位継承権者で今は王位簒奪者の銀河パトロール局長に追われる身、と知ってパニックに陥ったのもつかの間、母を逮捕にきたパトロール少女「年賀睦月」と恋仲になったり、実の母に男にされかかったり、恋人に女にされてしまったり、地球の危機を救った上、銀河の女王様になったり。という波乱万丈の中3生活を送った1作目の続編。
 今度は46億年前の前世で夫婦だったから、と言って復縁を迫る銀河創世の女神「日怒」様登場。きっぱりお断りすると全宇宙を道ずれに無理心中する始末、何とかなだめてベビーユニバースの誕生に立会い、それを期に王制を廃止、銀河共和国を設立。初代大統領に就任しつつ恋人と「女どーしで御もろい夫婦」状態でいっしょに味噌汁をつくりながら歌う歌です。
 いやー「平穏無事な日常」って本当に貴重ですねえ。

駄弁者:
 なんつーか、「平穏無事」の言葉の意味を考え直したくなってきますが…。



「それで、君はどこでラベンダーの匂いをかいだんだ?」

 出典: 高畑京一郎「タイム・リープ」

紹介 :芒ヶ原蓬 様
HP :
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/9759/

コメント:
 元ネタが分かる人には何の補足も要らなさそう。楽ちんでいいや(笑)。
 ここを読んでる方には説明するまでもないことかと思いますが、有名な『時をかける少女』では学校の化学実験準備室でラベンダーの匂いをかぐことでヒロインのタイムトラベル現象が始まるというのがあって、それを踏まえた引用ですね。
 私が初めて本作を読んだときは『時をかける少女』をよく知らなかったので、この台詞はちんぷんかんぷんだったんですが、知った後で読み返して納得しました。
 この台詞は突如タイムリープ現象に見舞われたヒロインが、優等生だが人当たりの悪い男子クラスメイトへ相談を持ちかけた際に出てきます。当然といえば当然ながら、疑ってかかっている様子がよく表れています。
 「SFオンライン」中の記事によると、意識だけの時間跳躍というアイディアには元ネタがあるとのことですが、ともあれこのアイディアは厳密性において優れているように思えて、話自体も興味深く読めたものでした。

駄弁者:
 いえ、説明していただいてよかったです。私は「タイムリープ」も「時をかける〜」も読んでませんので…。



「…問題自体の難易はひとまず措いて、他にこれに代わる手段があるかどうかを考えるのです。代案がないとなれば、それで決まりです」

 出典: ジェイムズ・P・ホーガン「巨人たちの星」(池央耿訳)

紹介 :こじましゅういち 様
HP :
http://www.na.rim.or.jp/~majio/home.html

コメント:
 言わずと知れたホーガンのガニメアン三部作の完結編『巨人たちの星』で、ジェヴレン攻略のためにシャピアロン号を使え、とカラザーを説得するときに、シャピアロン号の科学者、シローヒンが言った台詞。常日頃、優柔不断になりがちなときに、この文句を思い出すと、物事が迷いなくびしっと決められるような気がしますです。するだけですが。
 それにしても、こういう歯切れのよさも魅力の一つだったのに、最近のホーガンったら一体どうしちゃったのさ…ううう。

駄弁者:
 敵に対する情報工作(それがどういうのかは、読んでのお楽しみ)のため、本拠地に乗り込こむ異星人ガニメアンたち。本来ガニメアンは草食動物から進化した穏和な種族なんですが、シローヒンは地球人とのつきあいが長かったせいで少々(悪?)影響を受けているのかも知れません。
 同じことを私が言うと、「難しくてもやらなしゃあないでしょ、他に方法ないんやし」と後ろ向きになるところですが。
 やっぱり「量子宇宙干渉機」や「仮想空間計画」は、初期の名作より見劣りしますか…。



「生き急げ、若く死ね──」
「──見ばえのいい死体を残したけりゃ」

 出典: スティーブ・ペリー「エイリアン・地球殲滅」(布施由紀子訳)

紹介 :こじましゅういち 様
HP :
http://www.na.rim.or.jp/~majio/home.html

コメント:
 いまや海外作品は全然出してくれなくなった角川ホラー文庫『エイリアン・地球殲滅』、宇宙コロニー海兵隊員のブラックジョークから。映画『エイリアン』の世界観を元にしているこの作品、出来自体はどうってことないんですが(笑)、この台詞だけは妙に印象に残っています。明日のわが身も知れぬ海兵隊員のジョークということを考えると、ある意味では真理のような気もしてきます。でも、印象に残った一番の理由は、そのあまりのみもふたもなさだと思うワタシ(笑)。

駄弁者:
 「暴走野郎」のこじまさん、初の投稿。お待ちしていました。
 エイリアンに襲われたら、年齢には関係なしに見ばえよく死ねないとおもうんですが…。



「私・・・・・・死ぬかもしれない・・・・・・
 機械のくせに・・・って言わないでね・・・」 

 出典: 冬目景「現国教師RC―01」 『僕らの変拍子』に収録

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 個性派マンガ家冬目景の、デビュー作を含む初期短篇集より。
 鈴木RC―01は、現国担当の教師ロボット。引用したのは、数学担当のTM―佐藤αー2との壮絶な(笑)頭脳戦(?)の後で、彼女が言い残した言葉。
 (バッドエンドではないので、御安心を)
 ・・・嗚呼、私もこんな先生に教わりたかった・・・・。
 BGM:「ぼくの好きな先生」RCサクセション

駄弁者:
 学生時代数学が大の苦手で今でも数学コンプレックスを引きずっている私としては、現国ロボットは数学ロボットに絶対勝てないような気がしたりします。
 造ることを考えたら、現国の方がずっと難しいんでしょうが。



「変化がないということにも価値があるのだ」
「でも、あれは川じゃないか。生きているものはすべて変化するんだ──たとえキクユ族だって」

 出典: マイク・レズニック「ドライ・リバーの歌(『キリンヤガ』)」(内田昌之訳)

紹介 :りんご 様
HP :

コメント:
 投稿しようと思ったらちょっとコメントに出ちゃいましたね。
 司書と同じく、私も「空にふれた少女」がお気にです。以前そうおっしゃいましたよね、確か。何か私、オムニバス長編ってすごく好きかも。つーか、単に当たりを引いてるだけ?
 過去を尊ぶのは大切な事だけど、過去に戻ってちゃ駄目だよね。歴史は繰り返す、ていうけど、同じ事をしていたらどんな事も起こるべくして起こると思う。上の科白はユートピアってのの理想と現実を言い当ててる。いやあ、余韻を残す本だった。
 にしても、最初から最後まで自慢で終わるあの作者あとがきはなんなんだ。

駄弁者:
 はい、「空にふれた少女」が私的ベストです。他の話もいいので僅差ですけども。
 出典の「ドライ・リバーの歌」は家族内での役割を失った老女が抗議のためキクユの伝統に逆らおうとする話。老女への罰として干魃をおこした呪術師コリバと、その老女との会話から。
 伝統というものが、周囲の状況とは関わりなしに存在しうると考えたのが間違いなんでしょう。地球の、アフリカの大地であれば、コリバの言うことは正しかったかも知れません。しかし、スペースコロニー<キリンヤガ>では、伝統が生まれ、存続するための動機がほとんど失われています。
 しかし、それをすべて承知の上で、それでも伝統に固執しなければならないのがコリバの辛いところなのでしょう。
 ついでながら、私もあのアクの強い後書きはあらずもがなと思います。そう連呼しなくても傑作なのにねぇ…。



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