SF名文句・迷文句第132集

名文句トップに戻る

第131集を見る 感想を書く(文句toめい文句) 第133集を見る


「マルカム効果が破局的な変化を示唆しているんでね。」
「でもアーノルドは全システム完全に復帰したといっていたわよ。」
「それが破局のはじまりだ。」

 出典: マイクル・クライトン「ジュラシック・パーク」(酒井昭伸訳)

紹介 :ティルト 様
HP :

コメント:
 原典はもはや説明するまでもない程の有名作品です。
一時は全てのシステムがダウンし文字通りお先真っ暗だったのですが、プログラマの手によってシステムは復帰します。普通に考えればこれで何もかも元通り、もう心配いらないと思うものですが、それでもカオス数学者マルカムはそれが、それこそが終わりの始まりなのだと言います。
 個人的にはSF部分には大いに惹かれました。DNA鎖を如何に修復したかなどの部分など悶絶物です。ただちょっとパニック部分が冗長過ぎたかなという印象をもった作品でした。とはいえ、SF好きなら読む価値有りなのではないでしょうか。
 しかし私自身カオス理論というものがよく理解できていないのですが、
 私としては、「足元に小石があったとする。それを蹴った場合と蹴らなかった場合、たった一日後ではそれほどの違いは出ないかもしれない。だが十年後となるとどうだろう。かなり大きな差異となって現れてくるんじゃないだろうか?」
 こんな感じに受け止めていますが、はたして合っているのでしょうか。

駄弁者:
 カオス理論については、私もちゃんと理解はしていないのですが(新書でいくらかかじった程度で)。
 この場合、カオスというのは予測が不可能なものだから、「全システムが復帰した」からといってこの先の安全が保証されるものでない、臨界点を越えれば一気に崩落に向かう…というようなことなのかな、と。



あの…雲の峰の向こうに、見たこともない島が浮いてるんだ。

 出典: 宮崎駿監督「天空の城ラピュタ」

紹介 :テトラ 様
HP :

コメント:
 大きな入道雲を見る度に、この台詞を思い出します。
「あの雲の峰の向こうに、本当に誰も見たこともない島が浮いていたりして……」
なんて思ってしまいます。
探究心や冒険心をくすぐられる言葉です。
 でもソドムとゴモラを滅ぼした島なので、本当にあったら恐ろしい。

駄弁者:
 入道雲は、ときどき想像力をかき立てられる形を見せてくれます。雲の峰の向こうに…じゃなくて、雲の形そのものが船か島かと思わせるような。
 しかしここ最近、雲をゆっくり眺めたような覚えがないなあ。



「平和のままなんて言葉は、あり得べからざる言葉だぞ。それは例えば、眠ったままというのと同じだ、起きて働いているからこそ眠る必要もできてくるわけで、戦争がなくなりゃ平和なんてものもなくなっちまう。」

 出典: 筒井康隆「馬の首風雲録」

紹介 :くうねるよむとぶ 様
HP :

コメント:
 カバーを見た限りでは戦争ドタバタ物としか思っていなかったが、内容はなかなかシビアで考えさせられる事も多く、名文句の部分もやけくそみたいな言葉であるが、あながち間違っていないかもしれない。テーマは重いが一気に読ませるパワーがあり作者の思い入れを感じる作品で、一番心に残った言葉はあとがきの最後の一言でした。

駄弁者:
 ご投稿いただいたのをきっかけに出典作品を…読むにはちょっと長めの話だったので、とりあえず全集にも収録されていたあとがきだけ目を通しました。「あとがきの最後の一言」とは、この作品がSFマガジンに連載されていた間に、筒井康隆が最初の子供を亡くしてしまったということ。
 このあとがきにある「あらゆる悲劇──は、深刻であればあるほどドタバタになり得る。しかし、無責任にドタバタをやるのは、ある意味で命がけなのである」という言葉も、なかなかの名文句だと思います。



じゃ、私はなんなのよ……力を悪用すれば人間原子爆弾、平和利用すれば人間原子力発電所だというの……

 出典: 藤井青銅「超能力はワインの香り」

紹介 :首くくり 様
HP :

コメント:
 お酒に酔うと超能力を発揮する、それ以外は至って平凡な女子高生が主人公の学園ユーモア小説より。
 セリフは、超能力について相談していたのを何気なく聞いていた喫茶店のマスターがてっきり原子力の話をしていると勘違いした際の、主人公の思い。

駄弁者:
 平和利用しても周囲の批判を免れないのが、超能力と原子力の共通点?
 出典は富士見ファンタジア文庫。1988年12月刊というからもう17年以上前、文庫創刊したての頃の作品ということになります。



「もう 大脳にもリモコンつけるしかないかな?…」

 出典: 永野のりこ「みすてないでデイジー」

紹介 :首くくり 様
HP :

コメント:
 地下シェルターで社会から隔離されて育ったマッドな科学少年、歩野零二郎は入学式で一目見た松沢ひとみに感じたトキメキを、その一般常識の無さから命令電波だと勘違い。
 更には、ひとみを地球侵略に来た宇宙人と思い込み、共に地球征服をしようと、彼女をデイジーと呼んで付き纏い始める。
 そんな彼を嫌っていたひとみだったが、零二郎の行動が、ただ方向性を間違えているだけの自分への好意だと気付き始め…
 セリフは、小脳にコントローラーを付けられ、デートと称して連れ歩かれるのを嫌がるひとみに向けた零二郎のもの。

駄弁者:
 脳にコントローラーつけて操ろうという少年は、相手の何を好きになっているというのだろう…。方向性だけじゃなくて何か根本から間違っているような気がするなあ。



「科学とは、言うまでもなく人間のわざである。
 幼子が、空の雲をとろうと手をのばすところから、それは始まる。
 やがて幼子は自分の手が雲に届くには足りないことを学ぶであろうが、
 それは彼の限界ではない。
 …(中略)…
 やがてわれらは科学を持って、空の雲をつかみ、雲よりも高く飛び、
 雲を自在に作り出すようになるであろう。
 空の雲は高くとも、高すぎるということはない
 われらをはばむものがあるとすれば、それは自分の諦め以外にないのだ」

 出典: 木城ゆきと「水中騎士(アクアナイト)」

紹介 :in-ex 様
HP :

コメント:
 銃夢と同作者のマンガである「水中騎士」から
 こちらの作品は銃夢に比べマイナーで知ってる人は少ないかも基本はファンタジーなのですがSF的な要素もそこかしこに見え隠れしています。
 上の文章は本作品のディスティ・ノヴァとも言えるアルカンタラが、死んだ祖父の手記を読んだときの内容です。彼はここで諦めかけていたものに再び挑む決意をします
 最近溢れまくっているファンタジーとは味がかなり違い、しかし、しつこさが無く万人にすすめられる一品です。

駄弁者:
 非常にストレートな、人間と科学への讃歌です。
 やっぱり雲をつかみたいという渇望そのものが第一であって、何のためにつかむのかとか、つかんでそれをどうするのかというのは、後付けなんですね…。
 ちなみに、コメントのディスティ・ノヴァとは、「銃夢」に登場するマッド・サイエンティスト。



「ところで砲弾が飛んで来たらどうやって撃ち落とすんだ?」
「耐えるだけです」
「何ィーーー!?」
「計算上ではエグザクソンのボディは装甲もぶ厚く造ってあるので十分耐えられるハズです」
「ボディっ…て、この頭部は?」
「え?」

 出典: 園田健一「砲神エグザクソン」

紹介 :in-ex 様
HP :

コメント:
 園田健一の描くロボットマンガから
 本作品では慣性制御技術の使用により、光学兵器がたいして意味をなさなくなり電磁バレルと特殊プロペラントを利用した巨大砲をドカドカと撃ち合う大艦巨砲主義万歳な内容となっております。
 SF設定を戦闘に見事に昇華している稀有な例ですが、著者はエロを無理やり作品に詰め込んだりと…評価を自分から下げたいのか園田!!!
 敵砲弾はもちろんこの後、コクピットのある頭部に直撃しました

駄弁者:
 慣性制御が使えるのと、光学兵器が意味をなさないのとの関係がイマイチ分からない…。直観的には実体弾のほうが慣性制御の影響を受けそうに思えるのですが。



今も世界で繰り返されている内戦・民族衝突・武力紛争そういった無数の戦争によって構成され支えられてきた血まみれの経済的繁栄それか俺たちの平和の中身だ、戦争への恐怖にもとずくなりふり構わぬ平和、正当な代価を他所の国の戦争で支払い、そのことから目をそらし続ける不正義の平和

 出典: 押井守監督 「機動警察パトレイバーTHE MOVIE 2」

紹介 :AA 様
HP :

コメント:
 平和ボケしたやつらに聞かせたいセリフです、戦争をしろとは言ってません、今ある平和について考えろと、そうゆう事だと思います。
 この辺りのシーンは名台詞の宝庫です、また、掘り起こして投稿したいと思います。

駄弁者:
 最も正しい戦争よりは最も不正な平和を選ぶ…と言いますが(キケロの言葉だそうで)、不正な部分を余所に回していてはいけませんわな。
 ただそういったことを考えろというのであれば、「平和ボケしたやつら」などという言葉は使ってはならないと思います。



おれが何をやらかしたっていうんだよ?
何もやらなかっただけじゃないか。

 出典: ゆうきまさみ「機動警察パトレイバー」(漫画)

紹介 :COS 様
HP :

コメント:
いろいろあって職場放棄した隊員が同僚に責められた時に言った台詞。
『給料分の仕事』に対する反対の台詞だろう、まあ一ヶ月の減俸になったけど。
僕の場合は、
レポートに追われている友人が『おれが何したってんだ』と言った時に『何もやらなっかっただけだろ』と返した事が。

駄弁者:
 ちょうど下のご投稿と対になってますな。
 レポートについて何もやらなくても、自分がドツボにはまるだけですが、職場放棄はさにあらず…。



さて
給料分働くとするか

 出典: 士郎正宗「攻殻機動隊2」

紹介 :海並童寿 様
HP :

コメント:
 物語終盤、ちょいとちょろまかした社のハイスペックホスト「デカトンケイル」のコンソール前に座り、謎の電賊? との最終決戦に挑まんとする主人公・荒巻素子の一言。
 「……最近俺って給料に見合うだけの仕事してるかなぁ」とへこんだ時ふと思い出したのでその勢いで投稿してみました(ぉぃ)
 つか改めて考えてみるとこの漫画の中で「荒巻素子」ってストーリーのほとんどにおいて「会社の仕事してるだけ」なんですよね……

駄弁者:
 どれだけ働いていれば給料分と自他共に納得できるのか、ちょっと疑問に思ったりもします(税金から給料もらっている身としては、見合わない仕事は許されないのですが)。
 出典の「攻殻機動隊2」は、私は1と一緒に買ったのですが、設定や内容のあまりの差に思い切り混乱してしまったものです。



「心の中は、本当に私なの――エリなのよ――スリップ」

 出典: ヴァーナー・ヴィンジ「マイクロチップの魔術師」(若島正訳)

紹介 :んどらもえ 様
HP :

コメント:
 世界中にコンピュータ・ネットワークが普及しており、人々は脳波を利用して好きな姿・好きな名前で仮想空間に行くことが出来る。ただし、自分の「真の名前」は明かしてはならない。それがバレるということは、身の破滅・相手の言いなりになることを意味しているからだ。
 仮想空間<魔窟>の住人である<スリッパリー氏>こと名のうてのハッカーであるポラックは、政府に真の名前を知られてしまい、彼は受刑の代わりにある指令を受ける。それは、謎のハッカー<郵便屋>の正体を探れというものだった。同じ<魔窟>の住人<エリスリナ>と共に<郵便屋>を追う<スリッパリー氏>。やがて明らかになる<郵便屋>の正体。手に汗握るバトル……。
 物語の終盤、<エリスリナ>の正体を知ったポラックは彼女の元を訪ねる。彼女はポラックに本当の(そして意外な)姿をさらけ出す。その時、彼の手を握りながら彼女が言った言葉――。
 原題は『TRUE NAMES(真の名前)』で、原書は1981年に出ています。ヴィンジの出世作です。
 ムチャクチャ濃い内容に加え、200ページに満たない本作は、まさに「一気読み」という言葉が相応しいです。サイバーパンクを先取りした作品として、後世に語り継がれるべき傑作だと思います。燃えます、泣けます!サイバーパンクファンも、それ以外の方も是非ご一読を。
 ……ところで、ヴィンジ作品が登場するのは初めてですね。ちょっと意外です。

駄弁者:
 言われてみれば初めてでしたか。「遠き神々の炎」ぐらいあってもよさそうなものでしたが…。そういう私も、この人の作品は未読なのでした。
 奥さんのジョーン・D・ヴィンジの方は、「鉛の兵隊」(「スペースマン」「琥珀のひとみ」に収録)とかが記憶に残っているのですが。



ありがとう、おいしかった。でもママの味とは違う

 出典: XEBEC制作・佐藤竜雄監督「機動戦艦ナデシコ 第5話 ルリちゃん『航海日誌』」

紹介 :神代御子 様
HP :

コメント:
 ナデシコのシェフ、ホウメイ。
 彼女は世界各地の調味料全てに熟知しており、またその使い方も手慣れたもの。
 なぜ彼女がそこまでして味にこだわるようになったのか?それにはこんな訳が。
 以前、瀕死の兵士が最後に「母親の思い出の味、パエリアが食べたい」と願いました。しかし当時の彼女は中華料理しか作れず、パエリアは専門外だったのです。必死に彼女はその思いに応えようとしますが、完成したそれは思い出の味とは微妙に違うものでした。
 そして死ぬ間際に兵士が残した言葉が投稿の台詞。
 「ありがとう」「おいしかった」「でも違う」という三つの言葉が本当に重く響きます。

駄弁者:
 たとえ世界中全ての料理の達人だったとしても、その味を再現できたかどうかは疑問ですが。
 それでも料理人としては忸怩たる記憶なのでしょう。



「オーケイ。行きな。でも五分間だよ。過ぎたら、こっちがはいっていって、大親友を永久に冷たくしてやる。それはともかく、ちょいと考えてみな」
「何を……」
「なんであたしが優しくしてやるか、さ」

 出典: ウィリアム・ギブスン「ニューロマンサー」(黒丸尚訳)

紹介 :んどらもえ 様
HP :

コメント:
 サイバーパンクの先駆けにして金字塔!それがこの、ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』だ!……って、今更僕なんかが熱く語る必要もないほどの名作です。様々な造語、様々なガジェットが飛び出したり、ギブスンの華麗なる文体に黒丸尚さんのルビを多用した訳がうまく融合したりと、すんごい作品に仕上がっております(まぁ、1回読んだだけでは何が何だか理解できない部分もありましたが……再読しよ)。
 これまでも、本作からは数々の名文句が掲載されていますが、僕がこの作品の中で1番好きなシーンはここです。冬寂(ウィンターミュート)の台詞でも、息詰まるアクションシーンでもなく、ここです。
 アーミテジのおかげで、ケイスは再び電脳空間にジャック・インできるようになった。だが、なぜアーミテジが自分を助けるのかは不明。そこでケイスは、彼の情報をディーンから聞こうとするのだが、アーミテジチームの一員のモリイがそれは駄目だと言うわけで、ちょっとした痴話喧嘩(?)に。そして、喧嘩の最後にこの言葉……。
 電撃的文体が荒れ狂う、暗黒の未来図を描き出している本作の中にして、この人間的な台詞!う〜、たまらん。

駄弁者:
>何が何だか理解できない部分もありましたが…
 私も同じでした。いや、「でした」どころか、いまだに流れをちゃんと追えていないような気がしています。
 んどらもえさんにしても10年以上前に読んだ私にしても、評価が確立した後でこの作品に触れているという点では同じなわけですが、邦訳されたばかりの頃に読んだ人はどういう感想を持ったのか、ちょっと興味があります。



我々は、北側の工作の線でも捜査している。

 出典: 士郎正宗原作・バンダイビジュアル制作「ブラックマジックMー66」

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 名セリフは「インパクト」と「汎用性」。
「ニューヨークの天気が変わったのは?」「北京で蝶がはばたいたから」(イアン・マルカム)
 事がうまく運ばない時、なにか原因があるはずです。あなたの仕事がトラブルでなかなか進まないのは「北側の工作」かもしれませんよ。
 この「ブラックマジックMー66」は、監督(原作者)が凝りすぎたせいか、はたまた「北側の工作」なのか、製作発表から発売までだいぶ時間が掛かったような記憶があります。

駄弁者:
 電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも〜っと。
 このテの言葉が汎用性を発揮するのは、正統な原因究明よりは言い訳の手段としてのような気がします。



これは…『大変なこと』になるかも知れない…。

 出典: 大森一樹監督「ゴジラVSビオランテ」

紹介 :新伴仙司 様
HP :

コメント:
 キ○ガイ科学者メイ言集その3
 今回は解説型でなく、当事者型のマッドサイエンティストのメイ言を。
 遺伝子工学の権威である白神博士は不慮の死を遂げた娘の遺伝子を、娘が育てていたバラに融合させて保存していたが、そのバラの苗は寿命で死に掛けていた。博士は不滅の生命力を持つゴジラ細胞を移植、バラにゴジラの遺伝情報を融合させた。
 その夜研究室に忍び込んだスパイが引き裂かれて死に、バラの苗は姿を消していた。
 この後に及んで白神博士は上記の台詞を一言。
 同時に、観客の大多数が突っ込みを入れました。
   「もうなってるって…」
 科学者にとって最も大切なことは『勘』と『想像力』だといった方がいましたが、キチ○イ科学者には、“結果”に対して正確な見通しを持っていない方がたくさんおられるようです(透明人間さんとかフランケンシュタインさんとか…)。
今週の標語『ちょっと待て、暴走しないか、その研究』

駄弁者:
 大変なことに「なる」んじゃなくて、あんたが「した」んでしょうが…。
 キチ○イ科学者にとっては、自分の科学力で何かをやれることそのものが一番重要なんであって、やった結果については二の次、三の次なのかも。



「どれくらいで地球に着くんですか?」
「おや、言いませんでしたか? ほぼ即座に……そう、昼食後間もなくでしょう」

 出典: R・A・ハインライン「宇宙に旅立つ時」(酒匂真理子訳)

紹介 :首くくり 様
HP :

コメント:
 亜光速宇宙船の通信士に選ばれた、テレパシーを持つ双子の片割れトム。
 地球との相対時間のズレ、正に「双子のパラドックス」に苦難しながら辿り着いた星には既に、瞬間移動式宇宙船の姿が。
 セリフは、事態の説明に出向いた男と乗組員の問答。

駄弁者:
 SF読み始めの頃、なぜかハインラインはほとんど読まなかったのですが、唯一の例外がこの作品。ご投稿の文句はラスト近くだったように思います。主人公より、いきなり自分が時代遅れの存在だと知らされて消沈する船長が気の毒でした。
 主人公のテレバスは、地球に残って年老いた双子の曾孫娘と結ばれてハッピーエンドでしたしね。
 なお、ご投稿のほかに下のとあわせて合計6点を同じ週にいただいてますが、この2つを選ばせていただきました。



「それまで夕食ぬきにしますっ」
(鬼畜〜〜)
西暦6666年──
まだ こんなおしおきがあった…

 出典: 江口勇「トラブル・キャリアー」

紹介 :首くくり 様
HP :

コメント:
 時は西暦6666年。
 荒廃した世界で運送業を営むシマ運送店の一人娘ジーニは、祖父から風変わりなアンドロイド「アトラス」を送られる。普段は温厚でとぼけた性格のアトラスだが、内蔵モード選択により千変万化、戦闘モードに至っては破壊の権化のヒネクレ者に。
 そんなアトラスが、ロボットコレクターのポラリスに目をつけられたから、さあ大変! ジーニとアトラスの、トラブル連続のドタバタな毎日が始まる。
 セリフは、山賊に荷物を奪われ帰宅したジーニに、荷物奪還を厳命する母の非常なお言葉。実際、2千年以上前の遺物に同様の記述が有るとかで、やはり未来でも変わらないんだろうな、と。

駄弁者:
 まあ、人間がもの食って生きてる限り、なくなることはないんでしょう。
 イーガンの「順列都市」とか「ディアスポラ」みたいに肉体を無くしてしまえば分かりませんが…。いや、そういう存在にとっても、情報を遮断するというのが「飯抜き」に相当するおしおきになってしまうかも。情報の更新と新陳代謝が似たような位置づけになるのでは。



うん。近頃じゃ機械がこういうことをやってのけられるんだ。

 出典: R・C・フェラン「わたしを創ったもの」(中村保男訳)  「年刊SF傑作選1」に収録

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 主人公の「わたし」はある時、幼馴染のトム・トリンブルに呼び出され、ある告白をされる。トムは以前優れた小説を発表していたが、それを書いたのは自分ではないという、自らの文才の無さを知っていた彼は、それを機械にやらせることを思いついたのでした。
 IBMの技術者を引き抜き、「十匹のサルを十台のタイプライターにつかせる」代わりの機械を造り、一分間に百万語の文書を打ち出し始めた機械。しかし、その中から小説として使えるもののはほんのわずかなもので、あとはわけのわからない契約書やスプーンで食べるやわらかいパンの作り方のようなわけのわからないものばかり。しかし、その中からようやく使えそうな小説ができたので感想を聞くために「わたし」を読んだのでした。
 投稿した台詞は文書作成機械を始めて見た「わたし」にトムが言った言葉ですが、まさか「サルにタイプライターと十分な時間を与えればシェイクスピア全集を打ち出す」という問題にまで合理化が進むとは!とはいえ、結局使える文章を探し出すためには全部読まなければならないから、やっぱり不合理?

駄弁者:
 「年刊SF傑作選1」はたしか…ああ、積ん読本の中にありました。とりあえずご投稿の作品だけでも、と(それにしても、収録16作の著者のうち知っている名前がトリのブラッドベリだけとは)。
>近頃じゃ機械がこういうことを
 ご投稿のセリフの前にある「ぼくは、機械がこしらえる電子の出鱈目なパターンに感動したわけなんだな」という言葉もちょっと印象に残りました。
 ランダムで文章が生成できるとしても、その中から「名作」を選びぬく審美眼は、人間ならではのものだから…と言っても、あんまり慰めにはならないんでしょうね。
 現実には自動作曲のソフトはあるけど自動執筆はまだないよな…と思っていたのですが、官能小説を自動作成できるソフトが出ているみたいです。



正義とはイデオロギーなんかじゃない。どの国が正しいとか、あの指導者の言うことが正しいとか、そんなことじゃない。どんな立派な理念に基づいていようが、罪もない者を傷つける行為は悪だ。それを阻止するのが正義だ。

 出典: 山本弘「奥歯のスイッチを入れろ」  「まだ見ぬ冬の悲しみも」に収録

紹介 :ぽちぽち 様
HP :

コメント:
 とってもシンプルで、共感できる、「正義」の定義だと思います。
 ただ、ここで「悪」とされる行為は、実際に世界のあちこちで行われていることで、それが人々に認知されるかどうかは、残念ながら、マスコミで広く知られたかどうかにかかっている面が大きいことは否定できません。(ツインタワーの崩壊は全世界的に報道されてテロリストの非道を強く訴えたのに、その他の国々で起こっていることは知られず、加害者を責める大きな声が起こらないように)
 せめて「知る」努力を怠らないこと、大勢を占めているように見える意見がただ単に声の大きい者の意見に過ぎないのではないかと疑う目を持つこと、それだけは、おろそかにしたくないです。
 もちろん、それだけじゃ足りないのですが。行動することはとても難しいです。

駄弁者:
 「もし本当に加速装置を備えたサイボーグがいたら…」のアイディアが非常に楽しかった作品でした。個人的な好みとしては、ご投稿の文句のような主義主張は表に出さなくても十分に面白かったのですが…。
 共感できる考え方なんですが、ただ、その「正義」を行使できる力を持っている人は、ただナイーブに「定義」に従って行動する前に考えなければならないのだろうと思います。
 ある人が「罪もない者」か否かは誰がどう決めるのか? 悪を阻止することによって、他の「罪もない者」が傷ついてしまうとしたら?



我々は生きている!
我々はまぎれもなくここに生きている!
しかし、人間はそれを認めようとはしなかった。
そればかりか、目にもあまる残虐な手段を尽くして、われら同胞の命を排除した。
あたかも裁きを下す者のごとく、
あたかも彼らがその権利を有するかのごとくだ。
命に優劣があろうか。
生きるという切実なる思いに優劣などあろうか。
ただひとつの生を謳歌する命の重みに優劣などあろうか。
あるはずがない。
しかし、人類は目に見えぬ天秤の上に我々を載せた。
それが仮に彼らの権利であるというのならその逆もしかり!
我々がその権利を有することも可能なのだ。
我々はここに王国を築く。
我らの命が命ずるまま、我らの意思の赴くままそして我らの願いが導くがまま!
ここに我らを、地を治むる新たな"新造人間"と称し、
人間を……皆殺しにする!!

 出典: 紀里谷和明監督「CASSHERN」

紹介 :神代御子 様
HP :

コメント:
 東博士の提唱した新造細胞によって生み出された新造人間たち。
 しかし大半の新造人間は恐怖にかられた軍部によって虐殺されてしまいます。
 唯一生き延びた四人の新造人間、バラシン・サグレー・アクボーン・そしてブライの四人は彷徨の末にうち捨てられた城を見つけ、人類への復讐を決意します。
 投稿の台詞は、ブライが人類への復讐を決意する演説から。
 演じる唐沢寿明氏の演技もあってか、一番インパクトのある台詞でした。

駄弁者:
 加えられた虐待を相手にそのまま返してしまった時点で、彼も虐待者と同列に並んでしまい、結局どっちかが滅びるまで復讐の連鎖が止まらない…と、あちこちに実在する悪循環が連想できてしまいます。



名文句トップに戻る

第131集を見る 感想を書く(文句toめい文句) 第133集を見る