SF名文句・迷文句第58集

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鐘の音は確かに不気味でしたが、沈黙はそれ以上です。まるで世界の終わりのようです。

 出典: コニー・ウィリス「ドゥームスデイ・ブック」(大森望訳)

紹介 :TAKA 様
HP :

コメント:
 ヒューゴー・ネビュラ・ローカス賞3章受賞。伊達じゃありません。
 黒死病吹き荒れる中世ヨーロッパに、間違ってタイムトラベルしてしまい、さらに帰る方法がなくなってしまった主人公と、彼女を何とかして助けようとする担任の教授。またその教授にも降りかかるなぞの伝染病。過去と未来を行ったりしながらラストに向けて加速する物語。結構泣けます。

駄弁者:
 タイムパラドックスが原則的に発生しないような設定で、従来のタイムトラベルものとは違った楽しみ方になるのですが、それにしても物語の上手さに脱帽しました。私はとくにダンワージー教授が好きなキャラクターですね。
 ちなみにご投稿の文句が出てくるのは物語も終盤近く。この先に待つ悲劇を予感させずにはおかない一文です。



偉大なチェスをやっているんだわ。世界中総がかりの。これが世界だとしたらね。まあ、おもしろい!わたしも仲間入りしたいわ!仲間入りさえできたら、歩だってかまわないわ。もちろん、いちばんなりたいのは女王だけど。

 出典: ルイス・キャロル「鏡の国のアリス」(岡田忠軒訳)

紹介 :TAKA 様
HP :

コメント:
 世界をチェスボードに見立て、その盤上でさまざまな駒たちと出会い。そしてとうとう8段目に達したとき彼女の頭上には王冠が輝きます。誰もが一度は読んでいそうで、実はそうでもないこの作品、秀逸です。

駄弁者:
 そういえば、私も漠然とした話を知っているぐらいでちゃんと読んでいないです。
 世界がチェスボードだとして、だれか駒を動かしている奴がいるんですかねえ…。動かしているつもりで実はポーンその1、という奴は結構いそうです。



納豆からしめんたいきざみネギバナナチョコ生クリーム入りクレープ1つくださいっ

 出典: とり・みき「クレープを二度食えば」

紹介 :紫苑 様
HP :

コメント:
 教育実習生・若宮夏生とのテニス勝負に負けた主人公・梶尾真へのペナルティは、原宿・竹下通りのクレープ屋で↑のクレープを注文して残さず食べることでした
 出典元はボーイ・ミーツ・ガール&タイムスリップなSFです
 台詞はゲテモノですが読後感は爽やかで、思えばSFに嵌ったきっかけはこの作品でした
 個人的にほぼ主人公と同年代の時に読んだ事もあって、タイムスリップものというと夏への扉と並んでこれがいまだに印象深かったりします

駄弁者:
 まあ、まちがってもクレープに嵌ったきっかけにはならないでしょう。
 「SF大将」だけしか知らないと、とてもボーイ・ミーツ・ガールをやるように思えなかったりします。



お前の番だよクレイトー

 出典: 星野之宣「はるかなる朝」  同名短編集に収録 「MIDWAY 歴史編」にも収録

紹介 :Mr.Spock 様
HP :

コメント:
 沈み行くアトランティス大陸を脱出するため別れ別れに宇宙船に乗り込む幼い恋人アトルとクレイトー。そして過酷な運命は2人に悲しき再開をもたらす・・・・短編ながら「夏への扉」のアンチテーゼのように時間の残酷さを描いた名作です。  では長寿と繁栄を。

駄弁者:
 星野之宣からのご投稿は久しぶりです。
 1975年と古い作品ですが、3年前に出ていた「MIDWAY 歴史編」にも収録されていたようですね…買っておけばよかったかな。



ドイツの技術は〜世界一ィィィ!!

 出典: 荒木飛呂彦「ジョジョの奇妙な冒険」

紹介 :Mr.Spock 様
HP :

コメント:
 主人公ジョセフのライバル、ナチスドイツのシュトロハイム少佐のきめゼリフ(?)。映画「博士の異常な愛情」のストレンジラブ博士とターミネーターを足して2で割ったような怪演におもわず笑ってしまったものです。
 ルチ将軍といいこれといい、私はどうも敵役の絶叫セリフに弱いようです(笑)。では長寿と繁栄を。

駄弁者:
 SFかどうかということもさることながら、これが入ってしまうと以降の名文句が「オラオラオラオラオラオラオラオラ(以下略)」と「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄(やはり以下略)」に占領されてしまいそうなので、これ限りにしようと思ってます。



おれもお前も 名もない花を
踏みつけられない 男になるのさ

 出典: 山川啓介作詞「宇宙刑事ギャバン」主題歌

紹介 :水谷秋夫 様
HP :

コメント:
 カッコイイとは、こういうことさ!

駄弁者:
 宇宙刑事は市街地以外では戦えないことになってしまいますが。
「ただ一輪の花のために デュークフリードは 命をかける」
という歌詞もありましたね(グレンダイザー)。
 息子につきあってみていた母が「やっすい命やな〜」とつぶやいていたことが、幼心にはっきり刻み込まれてしまったせいで、このようなコメントする人間に育ってしまいました。



ドミニク「コブラ、スキーはできて?」
コブラ 「できるかだって?俺がオリンピックに出れば金メダルでオセロができるぜ。」

 出典: 寺沢武一「コブラ」

紹介 :Mr.Spock 様
HP :

コメント:
 日本の作品の主人公でこれだけ不敵なセリフをさらりと言えるのは彼ぐらいでしょうね(敵役には結構多いんですけどね・・・まちがってもアムロやヤン提督は言わないほうが良いでしょう)。
ところで冬季五輪では1人で64個も金メダル取れないんですけど…当然夏季も入れてということですね…まさかコブラさん女性の部にも出るんでしょうか?
 では長寿と繁栄を。

駄弁者:
>アムロやヤン提督は言わないほうが…
 言うとすればスレッガー中尉かシェーンコップ中将ですかね。…カッコよく死ぬ用のキャラばっかしか。



Queen of Queen♪

 出典: アニメ「新竹取物語 1000年女王」エンディングテーマ

紹介 :Mr.Spock 様
HP :

コメント:
松本零士原作アニメには変な歌詞が付き物なのでしょうか?
BGM:「チャンピオン」アリス
では長寿と繁栄を。

駄弁者:
 ヘンデルのオラトリオ「メサイア」にある「King of Kings(ハレルヤ)」のもじりでしょうか?「Queen of Queens」にならないといけないのですが。
 松本アニメの変な歌詞といえば「ハーロック」OPの「命を捨ぅてぇてー 俺は生ーきるぅ」が思い浮かびますね。命捨てたら、生きてへんやん。



「ええ」と、ようやく彼女は答えた。「ええ、そうですね」

 出典: ブルース・スターリング「火星の神の庭」(小川隆訳) 「蝉の女王」に収録

紹介 :くうねるよむとぶ 様
HP :

コメント:
 最後の一言のために書いたSFで一番よかったのはやはり「アルジャーノンに花束を」であるが、余りにも有名すぎ又二行になっているので最後の一言・一行の一番よかったのはこの作品この言葉です。(昔読んだ本の文句はほとんど忘れたので最近読んだ本という注釈がつくかも)

駄弁者:
 「蝉の女王」、持っていたので読み返してみました。
 人類を超越する変容を遂げたポストヒューマンの各派閥が、火星クレーターを舞台にテラフォーミングの競技会を行う。そこで勝ち残った<パターン主義者>のミラゾルは、競技会の裏に隠された事実を発見する。
 ご投稿の文句は、ミラゾルの諦めと受容、あるいは「神」の仲間入りをする瞬間、というところでしょうか。
 連作短編集「蝉の女王」にはこの他にも面白い作品があるのですが…。同じシリーズの長編「スキズマトリックス」が手にはいるのに、こっちが品切れというのが残念です。



「先生は一銭にもならないのに助けに来てくれたんだよ。すっごいケチで考えてる事は自分の欲望を満たすことだけ、本当だったら無償で人のためなんか死んだって動かない人なんだよ」

 出典: うすね正俊「砂ぼうず」

紹介 :みどり 様
HP :

コメント:
 砂ぼうずの弟子・小泉太湖の台詞。それにしても、目の前で弟子にこんなこと言われる砂ぼうずって…

駄弁者:
 そういう人間に弟子入りしている自分はなんやねん、というのは当然のツッコミでしょう。
 砂漠化した世界に生きるには、しごくまともな処世術だとは思いますが。



信じられない…………東亜重工の情報処理機構はAIよ……個性を持っているわ。とても危険なことなのよ管理機構に知性や個性を持たせるというのは。

 出典: 二瓶勉「BLAME!」

紹介 :みどり 様
HP :

コメント:
 そうなんでしょうか? 個性を持った管理機構というと、『戦う都市』のブレーン(名前忘れた)が真っ先に思い浮かんだもんで…

駄弁者:
 私は最近シリーズがでている米田純一の「プリンセス・プラスティック」を連想しました。あれも巨大な兵器システムの制御を、人格をもったバイオロボットに委ねているのは、ハッキングに強いというのが(少なくとも表向きの)理由になっていたはず。
 けど、私はどっちかというとご投稿の文句に賛成かな。外部からのハッキングより、その個性自体の信頼性に不安が残ります。



『敵は強敵だ。おれたちをとことん、ばかにする気だぞ』

 出典: 神林長平「宇宙探査機 迷惑一番」

紹介 :みどり 様
HP :

コメント:
 最近、再文庫化された神林長平氏の初期作品から。余りにも御都合主義的なプロジェクトに巻き込まれた雷獣迎撃小隊が哀れ。

駄弁者:
 そういえばこの方の作品でコメディ調のは、最近の作品では「敵は海賊」以外に見かけないような気がするんですが…。



「近い将来メイドロボットは発売されるだろう。
 しかも毎年のように新機種も発売されていくハズだ。
 その都度お前は買い替えるっていうのか!!」

 出典: 古賀亮一「ニニンがシノブ伝」

紹介 :御宗銀砂 様
HP :
http://homepage1.nifty.com/mimune/

コメント:
 作品は明らかにSFじゃないんですが、このさり気ない言葉に深いSFマインドを感じるのは…アレ、私だけですか?(笑)

駄弁者:
 すいません、私はあんまり感じないんですが(笑)
 メイドロボの価格帯は、PCよりは自家用車に近い感じになるんじゃないかな〜。毎年買い換えることはなくとも、税金やロボ検が気になるようになるのでは。



遠くへ。その想いは〜地球初の想いは〜さながら伝染病のように、カンブリア紀の海をただよう。どこかへ行かねば。まだ白紙のままの、どんな想いも持たない生物の中にしみ渡る。どこかへ行くんだ。遠くへ。そして、時は流れる。歴史は移る。

 出典: 新井素子「ネプチューン」  「いまはもういないあたしへ…」に収録

紹介 :TAKA 様
HP :

コメント:
 また投稿させていただきます。自分自身SF読みというよりもミステリ(広義の)読みなのであまりストックはないのですが。過去はよく読んでいたので、その遺産より、新井素子の今はもういないあたしへ…の一節より。
 生命はなぜ移り変わるのか。そして、なぜ先へ先へと続いていき、決してその場に留まれないのはなぜか。
 その理由がもしこの様なものなら、行き続けていかなければ行けないのも、結構いいなと思えます。

駄弁者:
 私は広義も狭義もなくSF読みで、ミステリはたまに読む程度なのですが…困ったことに新井素子は全然読んでなかったりします。
 なお、ご投稿の作品は82年度星雲賞受賞。出世作というところでしょうか?



科学の子

 出典: 手塚治虫「鉄腕アトム」

紹介 :御宗銀砂 様
HP :
http://homepage1.nifty.com/mimune/

コメント:
「科学」への素朴な憧憬を、ぎゅっと凝縮した一言だと思います。
 ひねた私なんぞには、そんな考え方ができること自体、ある種のあこがれを感じたりして。

駄弁者:
「こころやさし ラララ科学の子」
という主題歌、谷川俊太郎の作詞なんですよね。
原作の方ですでにこの言葉が使われていたんでしょうか。ちょっと覚えていないんですが。



「たしかに使い古された言葉…
これほど安易に使われすぎた言葉はないだろう…
しかしそれでもあえていおう!
この世で最も強く最も美しいものは愛だと…」

 出典: 車田正美「B‘t X」

紹介 :吉本 様
HP :

コメント:
 これは機械皇国を裏切った四霊将の一人、鳳・ラフィーネが敵である七魔将の一人、凱にこの世の真理とは愛であると告げた後に続けた言葉です。数ある車田作品の中でも屈指の名台詞だと思います。

駄弁者:
 真実だからからこそよく使われ、よく使われるからこそ陳腐にもなる、というもの。
 しかし皮肉なことを言わせてもらえば、使う人によって意味や範囲が異なるような言葉だから、強くも美しくも、弱くも醜くもなるわけで。



己で、己の足で。己が!己が望むことを!己の望むように!己で考え!己で選び!己で決めろ!己を信じ、己を頼め。己で荷を背負い、己で責を負い、己で守れ!己の意思で、判断で、誇りを持って己のために生きよ!それが、それこそが、新しい国ぞ。新しい国の姿ぞ。(中略)王朝最後の王としてお前に伝える。今この瞬間をもって、この国をお前たちに明け渡す!ただしお前にやるのではない。百万の民に、民の手に返すだけだ。俺に言われたくはないだろうが、タタラよ!この戦で無駄に流した血をいつまでも背負っていけ。国をなすための痛みと、流した血をいつまでも心に枷とせよ。忘れるな。

 出典: 田村由美「BASARA」23巻

紹介 :TAKA 様
HP :

コメント:
 一応未来の地球を描いているので、SFだと判断しました。
 物語もクライマックス近くでの赤の王の血まみれの叫びです。
 12国記の風の万里 黎明の空のラストシーンでの陽子のせりふ「己という領土を治める唯一無二の君主に」と似通ったせりふで己で立つことの困難さを噛締めることができます。

駄弁者:
 全27巻完結の大作少女マンガより。正直SFというにはツラいものがあると思いますが…。
 20世紀末に文明が崩壊してより300年後の日本。砂漠化した山陽地方の一小村・白虎の村に更紗と、国を救うと予言された運命の子タタラの兄弟は暮らしていた。だがある夜、赤の王の軍勢が村を襲い、タタラは更紗の目の前で殺される。村人たちを救うため、更紗はタタラを名乗って革命に立ち上がる…。
 中国地方が砂漠化している設定というのは、なかなか他では見られないと思いましたが…鳥取砂丘が拡大したのかと、馬鹿なことを考えてしまいました。
 ご投稿の文句については「新しい国の姿」というよりは、国そのものの否定になってしまうのでは、とも思えるのですが、個人に向けた言葉ととれば、厳しい名言。
…しかし、こういうラストっぽいセリフを23巻でやってしまったのだとしたら、残りの4冊では何をやっていたんでしょう?



これが前例っす

 出典: 坂本康宏「歩兵型戦闘車両ダブルオー」

紹介 :NAL 様
HP :

コメント:
 公務員生活30年前例がないことを盾にとって巨大ロボットに装備された劣化ウラン弾の発射を禁ずる中間管理職上司に対する止めの言葉。
 後始末は、上司がやったんだろうなあ。

駄弁者:
 前例うんぬんはともかく、劣化ウラン弾はまずいんじゃないかなあ…。
 ちなみに出典は、第3回日本SF新人賞の佳作受賞作。



この大宇宙とはなんと不思議なのだろう

 出典: グレッグ・ベア「宇宙大作戦・コロナ」(斉藤伯好訳)

紹介 :NAL 様
HP :

コメント:
 航宙日誌にカーク船長が記した言葉。
 スタートレック宇宙はだからこそ、魅力に満ちているのですね。

駄弁者:
 NALさんがSTからのご投稿とは珍しい。
 観測ステーションでの人工冬眠事故の連絡を受けたカークら<エンタープライズ>は、急遽そのステーションへと向かう。そこで彼らが遭遇したのは、宇宙の原初から存在する生命体「コロナ」だった…。
 グレッグ・ベアらしく、ハードSF色の濃い作品でした。スタートレック小説としては、ややなじめないところがあったかも知れませんが。



「いいかい、これは鉄鉱石。これは黄鉄鉱。これは粘土、これは石灰、そしてこれは石炭だ。自然がわたしたちに与えてくれたものだ。一緒に仕事をしようって、自然が提供してくれたんだ――明日から、わたしたちが仕事をする番だよ!」

 出典: ジュール・ヴェルヌ「ミステリアス・アイランド」(手塚伸一訳)

紹介 :グラニット 様
HP :

コメント:
 この作品は、『海底二万海里』の続編という側面はあるにせよ、ジャンル的には海洋冒険小説ですね。
 でもヴェルヌって、特にSFじゃなくても、無駄に(笑)科学の話を作中でやってる。科学啓蒙という意識は、ガーンズバックとかの時代の作家よりもずっと高かったんじゃないかな、と思うくらい。
 『ミステリアス・アイランド』のストーリーは、絶海の孤島に漂流した5人(プラス犬一匹)が島を開拓していく、というものです。その際の武器は、主人公サイラスの科学知識。海賊の襲撃など、冒険小説のハラハラドキドキもありますが、モノを作る楽しさとか喜びの方が前面に出てます。
 科学で島を開拓していく、という展開は、まあラストを除けば(笑)科学の勝利宣言といえなくもありません。名セリフは技師サイラスによるものです。自然の対立項に人間を持ってくる、という西洋科学の基本的スタンスが、非常にわかりやすく表現されていると思います。

駄弁者:
 対立項というか、鉱物が人間に提供されるべく生まれたもの、という考え方が当時らしいと思います。
 現在、自然は俺たちにも労働基準法が必要だって言ってるようですが。



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