読後駄弁
2004年読後駄弁3月〜4月


・サイモン・コンウェイ・モリス「カンブリア期の怪物たち 〜進化はなぜ大爆発したか〜」,講談社現代新書,1997.3
スティーヴン・ジェイ・グールド「ワンダフルライフ」のアップデート+反論本として読んでみた。…刊行されてから7年も経っているから、アップデートとして読むのは不適当かもしれないが。
 「ワンダフルライフ」への反論としてはだいたい2章分があてられていて、バージェス頁岩の生物群はグールドが主張したような、現在の動物とはまったく別系統の「奇妙きてれつ生物」ではないことなどが解説されている。

・ジェローム・K・ジェローム「ボートの三人男」,中公文庫,1976.7
 今度出るコニー・ウィリス「犬は勘定に入れません」のモチーフらしいので雰囲気づくりにと読んでみたのだが、これが望外に面白い。
 題名どおり友人同士の三人男(と犬一匹)が、日頃の疲れをいやすためと称してテムズ川の川下りに出かける話。…けど実は川下りそのものよりも、語り手の回想シーンなどの脇道にニヤリとさせられる好エピソードが多かったりする。テムズ川沿いの名所案内的な色も濃いので、実際の光景を知っている人間にはより楽しめるんじゃないだろうか。

・水見稜「夢魔の降る夜」,ハヤカワ文庫,1986.9


・ニコラス・ストイチェスク「ドラキュラ伯爵 〜ルーマニアにおける正しい史伝〜」,中公文庫,1988.7


・オラフ・ステープルドン「シリウス」,ハヤカワ文庫,1976.4
 科学者トマス・トレローンが作りだした、人間と同等の知性と感情をもった天才犬・シリウス。トレローンはシリウスを娘プラクシーと同様の家族として育てるが、やがて「将来のため」として彼を牧羊犬訓練に出そうとする…。
 猫が出てくるSFに名作は多いが、犬のはあまりないな、と思っていたのだが…ありました。それも私が読んでなかっただけで古典中の古典(1944年作)。
 単に犬の登場するSFとしてのみならず、人間以外の知性との関係のあり方を描いたものとして十分傑作に数えられるんじゃないだろうか。感情的に深い絆をもちながら、常に誤解と緊張を孕んでいるシリウスとプラクシーとの関係に終始引きつけられる。

・シオドア・スタージョン「不思議のひと触れ」,河出書房新社,2003.12


・T・J・バス「神鯨」,ハヤカワ文庫,1978.10


・グレゴリイ・ベンフォード「ファウンデーションの危機 (新・銀河帝国興亡史1)」(上下),ハヤカワ文庫,2004.3


・山本弘「神は沈黙せず」,角川書店,2003.10


・トム・クランシー「教皇暗殺」(1〜4),新潮文庫,2004.2-4
 1981年に実際に起こった教皇狙撃事件をベースに、事件を阻止しようとするジャック・ライアンらCIAの極秘作戦を描く。
 暗殺計画そのものより、計画の鍵を握るKGBの亡命希望者をいかに脱出させるかがメインの話になる。亡命希望者がCIAに接触をはかるまでや脱出作戦の細かな進行などは、さすがこの道の先駆け、緊迫感もリアリティも充分に感じられる。
 しかしストーリーには緊迫感があるけど背景の世界観については、アメリカ人には緊迫感より安心感を感じさせるものなんじゃないかなあ、と。正義と自由の代弁者たる我がアメリカ、頼りになる(けど自国の上をいくことはない)同盟国、暗く重苦しいかつての敵国。このシリーズを読むたびに、面白いんだけどなんだかなあ、と思うところである。

・コニー・ウィリス「犬は勘定に入れません」,早川書房,2004.4


先頭に戻る
2004年1月〜2月の駄弁を読む  2004年5月〜6月の駄弁を読む
タイトルインデックスに戻る ALL F&SF 歴史・歴史小説 その他