読後駄弁
2004年読後駄弁5月〜6月


・宮城谷昌光「香乱記」(上中下),毎日新聞社,2004.1-3


・土肥恒之「ステンカ・ラージン」,山川出版,2002.11


・エドモンド・ハミルトン「フェッセンデンの宇宙」,河出書房新社,2004.4


・栗本薫「グイン・サーガ94・永遠への飛翔」,ハヤカワ文庫,2004.4


・ロバート・リード「地球間ハイウェイ」,ハヤカワ文庫,2004.2


・マイク・レズニック「一角獣を探せ!」,ハヤカワ文庫,1990.12


・大澤武男「ローマ教皇とナチス」,文春新書,2004.2


・クリストファー・プリースト「奇術師」,ハヤカワ文庫,2004.4
 二人の対立する奇術師の物語であると同時に、物語そのものにも奇術が隠されている。
 二人のもつそれぞれの「瞬間異動」の秘密は、ある意味反則だと思うし、それが明かされてしまった後ではギャフンオチじゃないかとさえ感じられる。しかし、そういう反則をまったく華麗に見事にやってのけることこそ奇術の真骨頂。読み返してみると、「奇術のタネはしばしば卑小でささいなものである」という一文もある。伏線はきちんと張られているわけだ。
 最後のページまでまで私ほか読者を引きつけた時点で、この物語の奇術は成功している。ここは素直に拍手、拍手。
 けど「華麗で用意周到なギャフンオチ」といえば、「逆転世界」そうだったような…。

・グレッグ・ベア「ファウンデーションと混沌(新・銀河帝国興亡史2)」(上下),ハヤカワ文庫,2004.5


・高野史緒「ラー」,ハヤカワ書房,2004.5


・熊野聡「ヴァイキングの経済学」,山川書店,2003.1


・養老孟「死の壁」,新潮新書,2004.4


・と学会「トンデモ本の世界S」「同T」,太田出版,2004.6


・エティエンヌ・バリリエ「蒼穹のかなたに 〜ピコ・デッラ・ミランドラとルネサンスの物語〜」(上下),岩波書店,2004.3
 哲学のプラトン主義とアリストテレス主義との間、ユダヤ教とキリスト教との間を調停し、自由な人間知性を元にした世界観を築こうとした若き哲学者・ピコ・デッラ・ミランドラの物語。
 彼を中心として、近代的なものやオカルト的なもの、その他さまざまな思想が混然としたルネサンス世界が描かれている。
 ロレンツォ・デ・メディチや大画家ボッティチェリ、後にフィレンツェで神権政治を布くことになるサヴォナローラ、少年時代のミケランジェロなど、ルネサンスを代表する人物たちと出会いや葛藤を繰り返しながら、ピコの思想は磨かれていく。だがその純粋さゆえに極端な行動をとる彼は、世間的な名利から遠ざかるばかりか、異端のそしりさえ受ける。そして最後には、ピコの下で出世せんとの夢を絶たれた秘書により、毒殺されるのだった…。

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