読後駄弁
2004年読後駄弁9月〜10月


・フレデリック・ブラウン「火星人ゴーホーム」,ハヤカワ文庫,1976.11


・ダン・ブラウン「天使と悪魔」(上下),角川書店,2003.10


・スティーヴン・W・ホーキングほか「時空の歩き方 〜時間論・宇宙論の最前線〜」,早川書房,2004.7


・ポール・ルディティス「スタートレック・エンタープライズ 暗黒からの衝撃波」,ハヤカワ文庫,2004.9


・冲方丁「マルドゥック・スクランブル」(圧縮・燃焼・廃棄),ハヤカワ文庫,2003.5-7


・飛浩隆「象られた力」,ハヤカワ文庫,2004.9


・乙一「ZOO」,集英社,2003.6


・早川いくを「へんないきもの」,バジリコ,2004.8


・石井溥・大村次郷写真「ヒマラヤの『正倉院』」,山川出版,2003.5


・ジーン・ウルフ「ケルベロス第五の首」,国書刊行会,2004.7


・栗本薫「グイン・サーガ・97・ノスフェラスへの道」,ハヤカワ文庫,2004.10
 グイン捜索隊が出発するまでを、例によって長いモノローグと愁嘆場をからめて。今回は別名「宰相は辛いよ」の巻。登場したての頃からランゴバルド侯ハゾスは好きなキャラクターなのだが、苦労してるよな、この人。

・西川杉子「ヴァルド派の谷へ 〜近代ヨーロッパを生き抜いた異端者たち〜」,山川出版,2003.5


・キム・ステルレルニー「ドーキンスvsグールド 〜適応へのサバイバルゲーム〜」,ちくま学芸文庫,2004.10
 「利己的な遺伝子」のドーキンスと「ワンダフル・ライフ」のグールド、進化論をめぐって鋭く対立した二人の主張を対比させながら分かりやすく解説。筆者自身の考え方はややドーキンス寄りのようだが、大スケールの問題についてはグールドの論にも長所を見ている。うまくバランスのとれた書き方に好感をもった。

・田中芳樹「天竺熱風録」,新潮社,2004.10
 唐初期、中国からインド・ヴァルダナ朝に使者として赴き、内乱に巻き込まれながらも武力でそれを鎮圧、任を全うした名将王玄策の英雄譚。
 語り口がちょっと変わっていて講談調。昔やってたTVドラマ西遊記のナレーション「〜それは次回の講釈で…」を連想していまった(いまや通じない人も多いんだろうなあ)。それで田中芳樹節が薄れるかというとそんなことはなく、登場人物の軽妙な掛け合いの良さも、多少押しつけがましさを感じる地の文も、良くも悪くもいつもの調子を保っている。
 物語の大筋については…正直あまり新味は感じられなかった。王玄策を主人公に出すこと自体に意義があるんだろうけど…。

・塚本青史「呉越舷舷」,ハヤカワ文庫,2004.10
 伍子胥の悲劇から呉王夫差、越王勾践の「臥薪嘗胆」、西施のエピソードまで、大小の復讐の連鎖が織りなす呉越物語。
 この作者の最近読んだ2、3作(「光武帝」「裂果」など)ではたいてい歴史の裏面でカルト的な集団が動いていたりするのだが、今作はそっち方面にはあまり話を膨らませていない。…とはいえ孔子の高弟・子貢が終盤のキャスティングボードを握っていたりするところに雰囲気は残っている。

・オースン・スコット・カード「シャドウ・パペッツ」,ハヤカワ文庫,2004.10
「O・S・カード駄弁」

・小川一水「復活の地」(I〜III),ハヤカワ文庫,20046-10
 関東大震災、阪神・淡路大震災を下敷きにした災害ドキュメント風SF。やはりこの人の作品は「仕事をする人間」を描くときが一番魅力的である。キャラクターの個性や個人的なドラマよりは、彼らが未曾有の大災害に立ち向かう姿が読みどころだろう。
 19世紀〜20世紀前半の世界を恒星間世界に再現したような舞台背景も面白かった。この作品だけで終わらせるのはもったいないので、同じ世界観で書いてくれないかな…(バルカホーン航民国の設定なんか好きなんだけど)。

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