SF名文句・迷文句第18集

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第17集を見る 感想を書く(文句toめい文句) 第19集を見る


わたしは、どこかほかのところの魔法の国のことを考えていた。
どこかほかのとろには移民取締警察はない。
赤地帯も死地帯もなければ、イギリスの公務員とも関係がない。
どこかほかのところでは、穀類はつねに食べても安全だし、牛が小屋の中で嘔吐するのを見ないですむ。
どこかほかのところでは、人々を病気の軽重で分類することはないし、ブルーグラムを書くこともない。
どこかほかのところでは、人々はたがいに、わたしとアンのような愛し方をしていない。
そこでは空は清浄で、死は老人のもてあそぶものである。
どこかほかのところでは、人々は、自分たちが存在する権利は当然のことだとみなして、それが特権だなどとは考えない。

 出典: W.ストリーバー&J.W.クネトカ「ウォー・ディ」(関口幸男訳)

紹介 :屋良一 様
HP :

コメント:
 主人公二人はサン・フランシスコ国際空港で、外国と行き来している人間にインタビューしようとして不信尋問を受け、不法入州者として逮捕される。
 名台詞はストリーバーが収容所に護送される途中で、何時射殺されるのかと怯えながらふと夢想したことです。
 結局二人は1分足らずの裁判で2年以上の重労働と州外追放の判決を受けました。その後二人はインタビュー記録を守り、新聞に公表するため、命からがら脱走に成功。ネヴァダ州に逃げ込みます。
 ちなみにブルーグラムとは、放射能から身を守り安全に生活する方法について書かれた政府広報類で、安全な場所で製作されますが、必要な場所には配布されません。誰も危険を冒して放射能汚染された土地に配達したがらないからです。

駄弁者:
 夢想するのが実際に行ける可能性のある現実の国ではなく「魔法の国」というしかないところが、せつないですね。とくに最後の一節が泣けてきます。



「…わたしに会うまでに、カナダがどうなったか、少しでも考えたことがありますか?あなた方のせいで、われわれがどんな目に遭ったかを?われわれカナダ人がいたんだということすら、ちっとも思い浮かびもしなかったんじゃありませんか?どうでした?」
われわれは、その真実を認めないわけにはいかなかった。考えもしなかったことを。

 出典: W.ストリーバー&J.W.クネトカ「ウォー・ディ」(関口幸男訳)

紹介 :屋良一 様
HP :

コメント:
 難民列車の中で異常なことに唯一人クリーニングの効いた上品な服を着ている男・・・カナダ・ロイヤル銀行の行員ジャック・ハーパーはインタビューに答えて、カナダの資金援助でアメリカの自動車産業を立てなおす為に来ていると言い、食堂車のメニューは耐えがたいと文句をつけ、コカ・コーラを薦める給仕に食中毒はご免だと言う。
 面食らうインタビュアーに対して「あなた方のたった20分間の戦争のために、カナダはえらい目にあったんです」と言い、カナダ経済が破滅したこと、辛苦の据えに立ち直り、今こうやってアメリカに(相応の対価を求めつつ)救いの手を差し伸べているのだと言う。
 インタビューの最後を名台詞で締めくくり、後は硬い笑みを浮かべて黙々とスープを飲みます。
 作中に出てくる外国人で最も正直に語った人物です。ハワイの日系人もこんな気持ちだったのではないでしょうか。

駄弁者:
 さっそく予告通りの「ウォー・デイ」より。
 じっさい、カナダ人はアメリカのことについて、アメリカ人はカナダのことについて、どういう感情を持っているんでしょうかねぇ。アメリカの方はともかく、カナダの方にはなんかアンビバレンスなものを感じたりするんですが。 



文章を書く事を単なる事業と考えている人間にどう答えたらいいのか、頭をひねっていた時、この場合にあてはまりそうな文句を思い出した。「あの・・まあ・・こういうことですよ」とどもりながら、「プロの作家になるのは娼婦と同じでね。ちゃんとできるかどうか、まずやってみることです。金を取るのはそれから。」

 出典: シャーリン・マクラム「暗黒太陽の浮気娘」(浅羽莢子訳)

紹介 :メックデウス 様
HP :

コメント:
 変化球御無礼です(ハヤカワ・ミステイアス・プレスより)。「ルビコン」開催中のホテルで、招待作家が殺される。探偵役となるもう一人の新人作家(にして工学博士)が、彼の代理でスピーチ代わりの質疑応答にかり出される一幕です。SF大会に足を運んだ事の無い私には、勉強になる楽しい一冊でした(半分程進まないと人が死なないし)。
 アメリカ人気質、SF(とファンタジーと各種ゲームの)ファン気質、ファンダムから足を洗いつつも、他人顔のできない人たち、イベント管理者の苦悩と喜び等々。正直好漢とは言いがたい登場人物も多いのですが、またそれぞれが愛おしいのです。私、素人役者でして、三谷好喜という劇作家を気に入っています。人物描写の程よい誇張加減が彼の台本のようで、個人的にはお勧めしたい一冊です。「『ルビ』コン」というのも戦争好き(感心しない自称だなあ)にはニヤリでした。ルビ・・?どこの大会でしょうね。

駄弁者:
 「暗黒太陽の浮気娘」は、私も楽しんだ作品です。犯人をひっかけるのにD&Dを使うというのがまた何とも。
>ルビコン
 「川を渡っちゃった人たちの集まり」っていうことなんでしょかねぇ…。



”暗黒作戦”――この名には不吉な響きがあるとフェアリーは思った。もっと、ふさわしい暗号名を選べばいいだろうに。”スターファイア”とか”未来の希望”、たとえ”勇敢な気ちがい沙汰(ギャラント・ルーナシィ)”だって、もう少しは元気のいいものだ。
 ”暗黒作戦”。
 あと数分で、かれらは大地をとびたつ力を手に入れたかどうかわかるのだ。

 出典: エドモンド・ハミルトン「虚空の遺産」(安田均訳)

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 「古代文明の遺跡が月面で発見され」「地球人は、太古の星間戦争で崩壊した巨大な宇宙帝国の末裔であることが明らかになり」「遺された超技術を手にした人類は、再び宇宙へ・・・」というストーリー、にもかかわらず。
 <スターウルフ>のハードボイルドともまた違った、ペシミスティックな世界観。 むしろ、「フェッセンデンの宇宙」や「反対進化」といった、短篇群に近いものを感じます。
 <キャプテン・フューチャー>の対極に位置する、アンチヒーロー物というか。
BGM:「MOONCHILD」キング・クリムゾン

駄弁者:
 エドモンド・ハミルトンというとどうしても「キャプテン・フューチャー」(こっちはだいたい読んだはず)や「スターウルフ」(こっちは全然読んでない)といったスペースオペラを連想するのですが、なかなか渋い本格SFもあったりします。傑作の名が高い「フェッセンデンの宇宙」はSFマガジンの500号記念で再録していたので、それで読まれた方も多いでしょう(…って、私もなんですが)。
 出典の作品は、ちょっとスペオペっぽい感じもありますが。
 「キャプテン・フューチャー」だったら作戦名は「元気のいい」方になってたでしょう。



「おかしいのね。悲しいのが好きだなんて」
「さあ――きっと、悲しいからこそ、好きなのかもしれませんね」

 出典: 栗本薫「レダV」

紹介 :ゆうこ 様
HP :
http://homepage1.nifty.com/la-mer/

コメント:
 「レダ」はいくつも好きな個所があるんですが、このL.A.Sとイヴの会話がとても印象的でした。
 とりあえず、これくらいにしておきます(^^;;

駄弁者:
 4連打もの連続投稿は、久しぶりでした。
 こっちは長編ですね。たしか理想社会の影とか綻びを描いたもの…でしたっけ。
 栗本薫もたまにはこういうストレートにSF的な作品も書いてくれればいいと思うのですが。



もし今度 おまえがロケットに入れられてとばされるような時は オレも一緒にはいってやるし
殺されなきゃいけないなら 一緒に殺されてやる
でもこれからは 銃はオレがあずかってるから もう おまえは人を殺さなくてもいいんだよ

 出典: 清水玲子「竜の眠る星 3」

紹介 :ゆうこ 様
HP :
http://homepage1.nifty.com/la-mer/

コメント:
 えっと、少女漫画なんですが。
 人間に愛されるために、人間に喜ばれるために暗殺者となった高性能ロボット(アンドロイド)のエレナ。 竜王星(セレツネワ)の王族の争いに巻き込まれ...
 その彼を救ったのはやはりロボットのジャックでした。
このジャックの台詞、なにせ少女漫画ですから甘々ですけど、でも、泣けました...

駄弁者:
 ロボットが人を殺す、と聞くと反射的に「三原則はどこいった!?」と思ってしまう、アシモフ・ファンの性。べつに「われはロボット」系だけがロボットものでもないんですけどねぇ…。
 人間に愛されたいロボットが、同じロボットからの愛をうけて満たされるものなのか、とも思うのですが。



これが滅びなのだ。これが、即ち、滅びなのだよ。

 出典: 栗本薫「巨象の道」 「滅びの風」に収録

紹介 :ゆうこ 様
HP :
http://homepage1.nifty.com/la-mer/

コメント:
 続けて投稿させていただきます。
 栗本薫のSFはけっこう好きなものが多いんですが、短編集「滅びの風」の中の一編より。なんか不思議な透明感の残る作品で、エイズに感染した夫婦がなにかを求めて訪れたアフリカで巡り会った老人の言葉です。
 えーと、なんかうまく要約出来ませんが(^^;;

駄弁者:
 ここんとこ書き流しのような「グイン」しか読んでなかったので、この方の短編に結構味のある作品が多いのを忘れかけてました。「さらしなにっき」なんかも良かったと思います。
 アフリカで出てくるのが老人となると、どうも「キリンヤガ」のコリバしか浮かばなくなっている今日このごろ。



私は知っている。もう誰も残っていないことを。ダンテも、彼の仲間も。
私はもう生き続けるのに疲れてしまった。私を殺してほしい。誰でも、誰でもいい、誰か私を殺してほしい。死ぬことのできない私を、殺してほしい。
・・・・・・私をこの宇宙に射出してほしい。外宇宙に向けて、全力で。
私たちをみんな一緒に。この海を、星の海を墓標として。

 出典: 谷甲州「星の墓標(航空宇宙軍史)」

紹介 :ゆうこ 様
HP :
http://homepage1.nifty.com/la-mer/

コメント:
 はじめまして。
 ハインライン(晩年を除く)と谷甲州と栗本薫(一部を除く)と田中芳樹あたりがとくに好きな者です。  第18集までざっと見たんですが、これがなかったと思うので。
 このラザルスの台詞でぼろぼろ泣けました。ダンテ隊長たちもあっけなく亡くなってしまいましたし......

 大地震のときに本棚からなにか一冊だけ持ち出すとしたらコレ、と思って、非常持ち出し用のリュックに入れてある一冊です。

駄弁者:
 はい、はじめまして。
 「航空宇宙軍史」はまだ読んでないので、出典のあらすじでも見つからないかと関連ホームページを見に行ってみたんですが。
 話の筋は分かりませんでしたが、ダンテ隊長にやたら人気があるのはよく分かりました。



「では聞くがな! ぬしのロケットは夢やロマンを噴射して飛ぶのか!?」

 出典: 秋山瑞人「猫の地球儀その2・幽の章」

紹介 :司書の駄弁者
HP :ここ

駄弁者:
 久しぶりの自前投稿です。
 禁忌を犯して「地球儀」に行こうとする黒猫・幽。だがその犠牲となって体制側の「大集会」に殺されたのは幽自身ではなく、なんの罪もない仔猫だった。自分はただ地球儀に行きたいだけなのに、と叫ぶ幽に対し、老僧正の厳しい一言。
 ロケットの燃料や耐熱材の代償を与えることで何匹もの猫を犠牲にした、幽も「大集会」と大した違いはない、秩序を守ろうとしているだけ「大集会」の方がマシではないか、と。
 こう言われて諦めるぐらいなら、最初から社会に反するような夢など持たないでしょう。とはいえ、実際に犠牲者を目の前にしている幽には、痛すぎる言葉でした。



アルベルト「貴様との決着が、こんなもので良いはずがあるまい!!」
戴宗「・・・・・・未練、だぜ」

 出典: 横山光輝原作,今川泰宏監督「ジャイアントロボ THE ANIMATION  地球が静止する日 Episode.4 豪傑たちの黄昏―勝利の鐘、未だ響かず―」

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 ある意味、不倶戴天の敵同士とは、最大の理解者同士であるのかもしれません。
BGM:「アキレス最後の戦い」レッド・ツェッペリン

駄弁者:
 スーパーロボットからもう一点。
 うう、なんとなくカッコいいせりふだとは思うんですが、いまいち状況を把握できないです。
 「ジャイアントロボ」からは前にも一度ご投稿がありましたが(第7集参照)、水滸伝の登場人物はごっそり登場しているし(戴宗もそうですね)、敵は親玉がバビル2世でブレーンが諸葛孔明…。横山漫画総出演です。



「とうとうここまできおったか…だが、それもここまでだ!私の意地にかけても、この基地は守りぬいてみせる!!これまでの汚名を挽回するのだ!」
「…ひとつ、忠告しておいてあげよう、あしゅら男爵」
「?なんだ?」
「汚名を挽回するのは、よした方がいいと思うぞ。挽回するなら、名誉の方にしておくんだな。汚名は返上するものだ」

 出典: BANPRESTO発売,ウインキーソフト開発「スーパーファミコン版第4次スーパーロボット大戦 第19話『あしゅら男爵の最期』」

紹介 :W^2 様
HP :

コメント:
 SFというジャンルにおいて「人間が搭乗して操縦する巨大ロボット」モノは、極東の島国にのみ繁茂する徒花(あだばな)なのかもしれない。とすれば、このシリーズはさしずめ、徒花の花屋か植物園であろう。
 シリーズ全体の特徴は、往年のアニメ映画「マジンガーZ対ゲッターロボ!」のノリを拡大再生産、まさに百花繚乱雨あられ、といった感じで、オーラバトラーとヘビーメタルが切り結んだり、モビルスーツでマジンガーZの機械獣にメガ粒子砲をぶち込んだり、コンバトラーVで宇宙船艦に超電磁スピンをかましたり、ができるわけで……まぁ、実ににぎやかである。
 投稿した文句は「マジンガーZ」の名敵役「あしゅら男爵」と「無敵鋼人ダイターン3」の主役「破嵐万丈」のやりとりで、この二人が出会えばいかにもやりそう(と思えるよう)な会話である。シリーズ近作では、この文句のような敵味方の間柄を越えたほほえましい会話が弱くなってしまったのが残念である。
(続く)

駄弁者:
 お久しぶりです。
 汚名を挽回…大ウケしました。しかし、校正の甘いライトノヴェルスあたりだと、冗談抜きでこういう間違いをやっていそうで恐い。
 うちのATOKで「汚名を挽回」と打ったら『「汚名返上/名誉挽回」の誤用』とチェックを入れられてしまいました。少なくともうちのコンピュータはあしゅら男爵より賢いようです。
 外国だと「ロボット」というのは自分で動くもので、人が乗って操縦してたら「ロボット」じゃなくて「人型戦闘機」、という認識になるんじゃないかと思います。…ジャパニメーションの進出で変わってきているかも知れませんが。



流れよ我が涙、我が泉より流れ落ちよ。
そして我を儚く生かしめよ。

 出典: フィリップ・K・ディック「流れよ我が涙、と警官は言った」(友枝康子訳)

紹介 :yassy 様
HP :

コメント:
 今まで十数年数々のSFを読んで来ましたが、唯一 この文章が名文句として思い出されます
 また、この文章 は一種の詩の様で名文句と言うには少し場違いかもしれませんが、どうかお許しくださいませ。

駄弁者:
 いえいえ、十二分に範囲内だと思いますよ。
 主人公が朝起きてみると、世界中の誰もが自分のことを覚えていなかった、というディックの長編。
 私はディックといえばアイデンティティネタ、という先入観があるのですが、そのわりにこの作品は未読だったりします。…というかディックの作品は読んでいない方が多いのですが。
 長い題名にインパクトがあるので、いつも目に留まる作品ではあります。そう言えばディックの作品は長い題名が多いですね。これとか「時間飛行士へのささやかな贈り物」とか。



「たとえひとかけらでも、あれは心と命の一部なんだ。売り買いするようなもんじゃない。」

 出典: 野尻抱介「アフナスの貴石」

紹介 :第8天使 様
HP :

コメント:
 2度目の投稿となります。
 ロケットガールズ作者の、もう1つのSFシリーズである「クレギオン」シリーズから、名文句を。
 上のせりふは、アフナサイトと呼ばれる考える宝石を売れば大金持ちになれるのにという考えに対し、考える宝石だということを発見した、ロイド・ミリガンが言った言葉です。
 どのようなものにせよ、心を持ったもののほんの1部でも、売り買いすることはできない。という考えがにじみ出ているようですばらしいせりふだと思います。
 考える宝石…シオドア・スタージョンの「夢見る宝石」を連想します。

駄弁者:
 この方の作品はつい最近まで全然チェックしていなかったんですが、SFマガジンの「太陽の簒奪者」」は面白いらしいし(今年度の星雲賞だし)、新作「ビニェルの振り子」の<bk1>書評(こじましゅういちさん筆)にも惹かれるものがあるし…ううむ。



(米)大統領は、英首相と仏大統領がともに電話にでているとの報告を受けた。NATOの秘密オム二ネット通信システムもまた、EMPにびくともしていなかった。大統領は、ふたりにかいつまんで説明をした。仏大統領は、フランスと西ドイツとイギリスが実は三国間秘密条約を結んでおり、これにもとづき、この三国内にあるアメリカの全施設にはそれぞれの国の住民が陸続と立入りつつあるところだとソ連に伝えたと話した。この条約は、NATOおよびフランスが事前に知らされることなく、米ソが相互に核攻撃を開始した場合に、効力を発するものとされていたのだった。

 出典: W.ストリーバー&J.W.クネトカ「ウォー・ディ」(関口幸男訳)

紹介 :屋良一 様
HP :

コメント:
 1988年10月28日、核戦争勃発。米ソはその日(ウォー・ディ)の内に瓦解した。その5年後、小説家ストリーバーとジャーナリストのクネトカは砕け散った超大国アメリカの現状を知るべくダラスを旅立った。 第三次世界大戦後の世界をドキュメンタリータッチで描いた1984年の異色作。映画化企画の進行中にソ連が消滅したというおまけつき。
 名文句は戦争の日に大統領とともに空中指揮機に乗っていて墜落を生き延びた元国防次官ウィルソン・T・アッカーマンの証言の一部。コヴェントリー秘密条約に関する下り。
 行間から察するに日本は秘密条約からは外されていたが、事態を察するや速やかに手のひらを返し、ソ連の核攻撃で痛手を負った在日米軍を自衛隊を使って制圧。5年後の今では米西海岸を傀儡国家としている(人口の二割かたは失われたらしいが)。
 正直言って私は架空戦記物でここまでリアリティのある展開は読んだことがありません。そしてこれはこの作品の極一部でしかなく、戦後世界アメリカのあらゆる側面がインタビューの形で描かれた傑作です。新潮文庫から今でも入手できるはずですので是非御一読。

駄弁者:
 お久しぶりです。…けどあんまり「名文句」という感じではないですね(後から名文句の候補もいただきましたが、いつもどおりフォームで頂いたものを載せておきます。次のご投稿に期待)。
 テクノ・スリラーで日本が敵役だと、だいたい最初が奇襲ではじまるようです。日清戦争以来、日本が戦争始めるときはたいていコレですからねぇ…。
 しかし、在日米軍が核攻撃…ということは嘉手納も厚木も横須賀もぶったたかれているわけで、そうなると日本そのものも無事では済まないでしょう。太平洋の向こう岸をどうこうできる国力残っているのでしょうか…?



「わたしはほかの人々をその罪ゆえに蔑むような人間ではないよ」とエンダーは言った。「まだわたしが心の中でこう言わなかった者は見出してはいない、ぼくはこれよりもっとひどいことをしたのだ、と」

 出典: オースン・スコット・カード「死者の代弁者」(塚本淳二訳)

紹介 :かーく 様
HP :
http://homepage1.nifty.com/ka-ku/

コメント:
 初めまして。ひょんなことからこのページを知ってお伺いさせていただきました。
 この「SF名文句・迷文句集」をこれだけ長い期間継続されているというのはすごいことですね。
 実は私のベストフェーバリットSFも「死者の代弁者」なんです。この本を読む前は「エンダーのゲーム」でした。(^^
 なぜこの作品を気に入っているのかこのホームページを見させていただいて初めて気が付きました。「名文句」がとっても多いんです。
 駄弁者さんが挙げられた台詞にも感動しましたが、ためしに下巻だけを読み返して感動的だった台詞を拾ってみたら17もありました。(^^;
 上に挙げた台詞は、ノヴィーニャが彼女の罪が白日にさらされた代弁を聞いた後、ふとしたきっかけで代弁者があの悪名高きエンダーだと知った場面で、なぜ代弁のとき代弁者が彼女を蔑まないと感じていたかに気が付いたときにエンダーが言った言葉です。この作品の中の数ある名文句のうちの一つでしかありませんが、この台詞はエンダーが真の代弁者たるわけを表したものではないでしょうか。
 ところで作品をSF初心者の人に読んでもらいたい時ってどうやって紹介したらよろしいでしょうか?当然壮大なプロローグとしての「エンダーのゲーム」から読んで欲しいところですが、「エンダーのゲーム」は最後の方までほとんど少年の成長物語なのでお勧めポイントが全然違うような気がするのですが。

駄弁者:
 初めまして。おお、久々のカードだ。
 「死者の代弁者」には本当に名文句が多くて。私も読み返せばらくに一集ぐらいは作れると思います。
 しかし、かーくさんのおっしゃるとおり、これを人に紹介するのは結構難しかったりします。とりあえず私は「エンダーのゲーム」を読んだ人には、内容には触れずにとにかく読んでみろ、でいってます。結果は…人によって当たり外れが大きいです。ご投稿の文句にあるようなエンダーの姿勢が、自罰的にすぎる、と感じる人もいるようで。
 今年からは「ゲーム」から「影」にいくルートもできます。ひょっとしたらこっちの方がウケやすいかも。この2冊でハマってしまったところに「代弁者」というのはどうでしょう。



「司令官にひとつうかがいたいものですな。勝つことと負けないこととは、どこがどう異なるのです?」
リン・パオは悠然と答えた。
「辞書をひくんだな。他人に訊(き)いてばかりじゃ勉強にならんよ」

 出典: 田中芳樹「銀河英雄伝説外伝 ダゴン星域会戦記」 「『銀河英雄伝説』読本」に収録

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 自由惑星同盟にとっての「ダゴンの殲滅戦」とは、日本人にとっての「日本海海戦」のようなものなのでしょう。(山田風太郎や吉村昭の「明治もの」を読んでいると、明治もいいことばかりじゃないよな、とは思いますが)
 「弾劾者ミュンツァー」の最終弁論も引用したい所ですが、あれは削れる箇所がないもので。
BGM:「BALLAD OF YOUTH」リッチー・サンボラ

駄弁者:
 「読本」収録の外伝からとは、また渋い。
 「ダゴン会戦=日本海海戦」…。こっちの東郷平八郎は女好きのルーズ人間、秋山真之は人間嫌いのボヤキ人間ですが。
>明治もいいことばかりじゃないよな
 「坂の上の雲」だと、明治はいいことばかりのような気になってしまうんですけどね。



奪う側は、奪われる側に依存しているだけなのかもしれない。
地球の支配者は実は人間ではなく、植物だった。

 出典: 大原まり子「SFの呪縛から解き放たれて」 巽孝之編「日本SF論争史」に収録

紹介 :moriwaki 様
HP :

コメント:
 お初です。
 最近、巽孝之編、「日本SF論争史」を読んだので、その中から。
 搾取される側=女性性は、実は搾取する側を支配しているのではないかというくだり。
よい論文には、少なからず読者の価値観を変容させる作用があって、SFと共通する部分があると思うのですが、それをまたSF人たちがSFについての意識を変容するために書いていたりして、考え始めると訳分からなくなって非常に面白い体験をしました。

駄弁者:
 はじめまして。
 今年とうとう刊行されたSF批評の集大成からのご投稿。この本は私も読みたいとは思っているんですが、論争の元ネタになっているSFそのものをまだあまり読んでいないと思うので、しばらく保留にしています(それに値段も…)。
 伊藤典夫「スコッティは誰と遊んだ?」(カード「消えた少年たち」についての論考)などはとくに読んでみたいのですが。



 生まれ故郷を去る時、凛斗はつぶやき、レオンは叫んだ。
「予は、必ず戻ってくる」
「俺が帰ってくるまで、浮気すんなよ」
 そしてその言葉は、末永く星間興亡史に記録されることになったのである。

 出典: 羅門祐人「星間興亡史[T] 英雄たちの時代」

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
「末永く」記録するなぁ!(笑)
BGM:「IF YOU LOVE SOMEBODY SET THEM FREE」スティング

駄弁者:
 大丈夫。名を上げてしまえば、どんなセリフでも後世の誰かが意味を考えてくれます。きっと本人が思いも寄らなかった深遠な解釈を思いついてくれるでしょう。
 ところで、羅門祐人と言うと、私はいまだに「元祖羅門堂病院」の人か、と思ってしまいます。たしか弓月光がイラスト書いてたやつ。…短い寿命だったよなぁ、「ハヤカワ文庫Hi!」。
 なお、「星間興亡史」は第一部5巻がすでに完結、第二部「星間群龍伝」1巻が刊行中。



少尉どのはそんなことをお好みにならんだろう

 出典: ロバート・A・ハインライン「宇宙の戦士」(矢野徹訳)

紹介 :メックデウス 様
HP :

コメント:
 恥かきついでにもう一つお送りします。もう帰ってこないボスに敬意を表し、小隊長代理が、できる限り使うまいとする決め台詞です。小隊員も、これを聞くと、「実が縮まる思いが」する、どんなトラブルも、彼の名誉のために収束してしまう。誇り高くも悲しい言葉です。
 少し前に、典型的な、荒れたログを垣間見まして(朝のガスパールでどんなものか予習済みでしたが、今でもあるのですね、驚きました)、そこのテーマになっている作り手さんのことをだぶらせながら、少し寂しい気分でこの本を引っ張り出しました。こちらの御主人はハインライン、お好きの様ですので、こんなものも出してみます。ついでに、アーニーパイルの本も読み返してしまいました。

駄弁者:
 久々にハインラインからの名文句。この「名文句集」にハインライン出典が目立つのは、私が好きという以上に、ご投稿の絶対数の多さからです。SFに興味をもった人はたいてい彼の作品のうち何かを読むようですし、作品中には印象に残る警句がちりばめられていますし。私自身は、読んでいない作品がまだたくさんあります(この「宇宙の戦士」は読んでますが)。
 しかし、ご投稿の名文句は、使うのがちょっと卑怯な気もしますね。死んだ人を引き合いにだして隊をまとめてしまうのは。だからこそ隊長代理もできる限り使うまいとするのでしょうが…。
 ところで、アーニーパイルって、知らないんですが?



カラ元気も元気って言うじゃないか。

 出典: ゆうきまさみ「機動警察パトレイバー(サンデーコミック)」

紹介 :メックデウス 様
HP :

コメント:
 マックユーザー暦5年、ネット暦4.5日の初心者、メックデウスと申します。よそ様のホームページに参加するのも初めてですので、失礼の段お許しください。
 仕事の成果があがらず、空元気を出しては、それでまた落ち込む主人公(泉巡査、女性)に、サポートの同僚(篠原巡査、男性)がかけた言葉、の抜粋です。(うろ覚えですので、まちがっていたら御勘弁を)
 作者も注釈しての通り、本来これは山本正之氏の発言の孫引きとなります(30代の私としては、タイムボカンを懐かしく思い出します)。
 私自身このことばに、ずいぶん助けられました。なかなかに実践的な、暖かい一言だと思うのですが、いかがでしょうか。
最近少しSFから離れておりますが、たまにお邪魔するかも知れませんので、その節は御指導の程、よろしくお願いいたします。

駄弁者:
 はじめまして。初めての参加がうちのページというのは、光栄です。これからもどうぞよろしく。
 から元気をだしたせいで余計に落ち込む、というのには共感もてますね。篠原巡査のような暖かい言葉が返ってきてくればいいんですが、現実には…
「おお元気やな。んならこれもお願いするわ」(ドサドサドサ)
…うかつにから元気もだせないです(泣)。



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