SF名文句・迷文句第217集

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男はなぜ弱いものをいたわることができないのか。なぜ全てのものを競争の対象としてしまうのか。
男にとって、自分以外の命は全て外なるものなのだ。ほんとうは命は命の中から生まれ、無限に連鎖していくものなのに、男はそれを理解できない。男は切り離された生、一回限りの生を生きているのだ。

 出典: 村田基「フェミニズムの帝国」

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 21世紀のエイズの流行により極端に男性人口が減り、女尊男卑の社会となった22世紀末の地球。男は家庭で女性に、家族に尽くし、「男の花道」で死んでゆくのが理想像、英雄とされていた。
 日本の医学研究所に勤める英雄の息子木下いさぎは、ある日レイプされかけたところを、男性復権運動の構成員によって救われ、運動の発展のために研究所の上層部と接触するよう求められる。
 一方、男女平等社会を目指す研究所長の高原厚絵は、実験のパートナーとして木下を選んだ。実験の目的は、男女平等でありながら、男性の特質である破壊性向をおさえるもの。(ここねたばれ)人工子宮の移植により男女問わず出産の出来る、母性に満ちた世界がその目的。 実験によって、いさぎはなぜ男性が破壊的な思考を持つかを悟る。
 「男らしさ」という言葉が、乱暴な意味で使われることは確かにありますし、このごろぽつぽつある、出産してそのまま子供を捨てる事件からは男は逃げていますから、いたわりの心に欠けるのは確かなんですけど、こうも一方的な物なんでしょうか。そういえば連れ子を虐待するようにし向けるのも男だし。でも昔話で継子いじめをするのは圧倒的に母親。私は独り者なんで実感がありませんが、子持ちの方、いかがお考えですか?

駄弁者:
 前にご投稿いただいた「水晶内制度」より、男女逆転のしかたがストレートですね。
 男の本性が暴力的だというのはともかく、女がそうではないのというであれば、そもそも主人公がレイプされるようなことにはならないのでは?



あんなにすなおな泣き方にお目にかかったことはなかったからだって。

 出典: 星新一「見失った表情」  『ようこそ地球さん』に収録

紹介 :トオコ・モリエ 様
HP :

コメント:
 で、「SF・男と女」続き。今度は、日本SF界の御三家の一人、星新一の作品から。
 体内に埋め込んだ機械によって自分の表情を自由に操作する技術が開発されたが、その技術は法によって禁止されていた。その技術で異性を引きつけ、結婚にこぎつけようとした女は、摘発を受けて、昔なじみの男の前で「思い切り」泣いてしまう。しかし、男は、女に求婚した。その理由が、投稿の文句。うーん、いい話なんですけどねぇ。「やっぱり本当に人の心に訴えかけるのは、繕ったうわべの表情よりも、心の底からの真情なんだなぁ」と感動する一方で、「ふん、いまどき、男も、女も、こういう理由で結婚なんかするもんか。『涙は女の武器だ』なんて、古いぞー。」というのが私の本音です。こういうこと言うから「可愛くない」なんて言われるのかなぁ、昔っから。まぁ、星新一の作品は、素直に感動していると、思わぬ背負い投げを食らわされそうな「何か」を秘めているもんですが。ところで、「涙は女の武器だ」という文句の出典を、誰か、ご存じありませんか?

駄弁者:
 この話では表情をダイヤルで操作してますが、そんなワンタッチで選択できるほど、他人に印象づけられる人間の表情ってバリエーションが少ないもんなんだろうか、とちょっと考えてしまいました。
 しかし、ゲームキャラクターの表情パターン程度でも結構感情移入できることを思えば、異性の気を引くのに使う表情など、意外と限られているのかも知れません。
>「涙は女の武器だ」という文句の出典
 私も分かりませんでした。わりと昔から言われてそうな気もしますが…?



化粧着がゆっくりとウエストまですべり落ちた。
彼女はまるで気づかず、ベイリは必死で手帳をにらんだ。

 出典: アイザック・アシモフ「はだかの太陽」(冬川亘訳)

紹介 :トオコ・モリエ 様
HP :

コメント:
 SFは、センス・オブ・ワンダーだ、ってことで。
 今回のテーマは、「SF・男と女」。で、トップバッターは、SF界の大御所、アシモフの作品から。
 地球人刑事・ベイリは、殺人事件のため、宇宙国家ソラリアに出向する。しかし、そこは、とんでもないところだった。人々は、広大な領地で一人ずつ、数多のロボットにかしずかれて暮らすため、女性でさえ、映像を通じてなら、平気で人前で着替えるような「非常識な」ところだった。投稿の文句は、ベイリが被害者の妻と接見した場面から。被害者の妻は、ベイリが「訪ねた」(何故かっこつきか、皆さん、お分かりですよね。でも、いくら直にあっていないとはいえ、うー)とき、風呂に入っていたのですが、平気でベイリの「目の前」に出てきます。勿論、素っ裸で。その後も、私達の常識では「とても人前に出られない」格好のままで、ベイリと会話します。で、尋問の途中で、その「人前に出られない服」がずりおちて、で、ベイリは、という行なのですが、うーむ、前回の投稿で「アシモフの文章は、ユーモアがある。」と書きましたが、この作品もユーモアがあふれています。もっとも、女性と男性では、「ユーモラス」の意味合いが違うかもしれませんが。でも、子供の頃読んだ「ロボット国ソラリア」にこんな場面って、あったかなぁ?

駄弁者:
 服を着ていても「見られる」のは耐えられないのに、裸を「眺められる」のは平気、というソラリア人の感覚を印象づけるうまいシーンだったと思います(もっともこのグレディアさんはソラリア人一般とはちょっと違っていたようですが)。
 当時のアシモフにとっては、これが最大限のお色気シーンだった? まあ、それでも「ロボット国ソラリア」には載せられなかったんじゃないかと思いますが。



「軍人ですって? 幽霊ですよ。いや、僕らは輪っかに乗ったロボットかもしれない。母さんや妻にとってはね…」

 出典: チェスリー・ボーンステル原案・ジェームス・オハンロン脚色・バイロン・ハスキン監督「宇宙征服」(伊東由美子訳)

紹介 :ゴジリスト中小路 様
HP :

コメント:
 本作品は、第二次世界大戦後にアメリカへ渡ったウェルナー・フォン・ブラウン博士(言わずと知れたV2号ロケットの父)の有人火星飛行に関する論文『火星計画』と、その内容に深い感銘を受けた宇宙画家チェスリー・ボーンステルが描いたイラスト集がネタ元ということになっているが、ストーリーそのものは全くのオリジナルである。
 それほど遠くない未来。地球の周囲には、メリット将軍(ワルター・ブルック)総指揮の下、巨大な遠心重力型ステーションが建造されていた。そのステーション内では宇宙飛行士候補生たちが厳しい訓練に耐え、また、外惑星へ飛ぶ為の大型ロケットの組み立て作業も並行して進められていた。候補生の中には将軍の息子(エリック・フレミング)の姿もあったが、彼は新婚間もない身でありながら父親に呼び出され、そのまま長期宇宙勤務に就かされたことに少なからず反発を感じていた。それでも父は息子に「宇宙」という無限のフロンティアを受け継がせるべく、息子を厳しく指導し、「母さんも、おまえのリンダも、軍人の妻だ。心得ているだろう」とまで言う。そんな父親に言って返した息子の言葉が、上記の台詞。「輪っか」とは、もちろん宇宙ステーションのこと。まるで西部開拓時代の親子の葛藤をそっくり宇宙へ持ち込んだような話。そりゃ息子も有難迷惑ってもんです。

駄弁者:
 よく似たスタッフで、この作品より前にハインライン原作の「月世界征服」も映画化してますね。月ぐらいだったら息子さんの不満も小さくて済んだんでしょうが、火星となると…。



「鳥を、見た……」

 出典: 山田正弘脚本「ウルトラQ 第12話『鳥を見た』」

紹介 :ゴジリスト中小路 様
HP :

コメント:
 深夜、動物園の動物たちが騒ぎ出す。上空には大きな黒い影が…。不審に思った夜勤の飼育係が調べに出ると、何物かが彼に襲い掛かった。闇に響く悲鳴。翌朝、早番の警備員二人が全身傷だらけの飼育係を発見する。しかも、園内の檻は全て壊されていて、動物たちの姿が無い。驚いた警備員が飼育係を抱き起こして尋ねる。
「おい! どうした! 何があったんだ!」
 飼育係は息絶える直前、自分が見たものを答えた。その答えが上記の一言であり、これがそのままエピソードタイトルとして字幕になり、画面いっぱいに浮かび上がる。一体、何が起きたのか……?『ウルトラQ』全28話中、最もサスペンスフルなオープニングである。私は小学校一年生の頃、夏休みの再放送で初めてこれを見たのだが、この飼育係の最期の一言といい「夜の動物園」という子供にとっては未知でワンダーなシチュエーションといい、実に怖くて印象的な語り出しとして記憶に残っている。尤も、本編の内容は「遠い昔からタイムスリップしてきた怪鳥と孤独な少年との心の交流」という、ずいぶんリリカルなストーリーなのだが。

駄弁者:
 この回を見て飼っている文鳥に「ラルゲユウス」(あるいはクロウ)と名付けた人が、少しはいるんじゃないでしょうか。
 改めて見ても、確かに「鳥」としかいえないフォルムですね……ただし全長何十メートルの(汗)。形が既知のものだったら、どんなに大きくてもそれとして認識できるものなんでしょうか?



ついに人類は女だけになりました

 出典: 影木栄貴原作・蔵王大志作画「恋愛遺伝子XX」

紹介 :Y 様
HP :

コメント:
 最近雑誌で連載が始まったばかりの漫画から投稿していいのだろうかとも思いましたが思い切って投稿してみます。
 ちなみにこの漫画の世界観についてモノローグから引用すると
「21世紀なかば男性の持つY染色体にのみ影響するウィルスが発生した。
 それにより人類には『男性』が生まれなくなり徐々にその数も減少。
 研究の成果もなく2122年に男は絶滅した。
 残された女たちは女性だけで人類社会を維持するために女を二つに分けることを宣言した。
 仕事をし、戦い、社会、経済、国を守る男役『ADAM』と子どもを産み育て家庭を守る女役『EVE』である。
 ADAMとEVEは結婚し精子バンクを使って子どもを作り家庭を営む。
 それが政府の推進する『EDEN計画』だ」
…ということらしいです。
 ちなみにそんなまどろっこしいウィルスが無くてもY染色体というのはX染色体とは違って父親からのみ、それも最大で1個だけしか受け継げないので染色体に傷がついてもそれを直すバックアップとなる物が無いため世代を経るに従って遺伝子としての効力が弱まる事はあっても回復することは無いのだとか。
 つまりいろいろとツッコミたい所はありますが全部が全部絶対にありえないとは言い切れない部分もあるのかもしれません。
 初めて読んだときは男が滅びた原因が実はバイオハザードではなくバイオテロだったりすることはないだろうかとか思ってしまいましたが。

駄弁者:
 せっかく女だけの社会になったのに、なんでまた「男役」「女役」を作ってまで差別を前提にした制度を維持しようとするのか!? フェミニストの先生方には怒られてしまいそうです。



水島「海野さん、あの湖の水はひょっとするとたいへんなものに変わっているかもしれませんよ」
海野隊長「何?」
水島「ポリウォーターです」

 出典: 若槻文三脚本・安藤達己監督「ファイヤーマン 第11話『よみがえった岩石怪獣』」

紹介 :土左衛門 様
HP :

コメント:
 写真家の加奈は岩見湖で水が高いほうに流れる怪現象を目撃した。調査に向ったSAFの水島と岬は、採取した水のサンプルが自然にビーカーの中から流れ出たことから、驚くべき結論を導き出した。造成地の地盤強化のために使われた薬剤・ポリダーが触媒となり、湖の水をポリウォーターに変え、超流動現象を起こしていたのだ。中和剤を作ろうとするSAFだが、時すでに遅く、岩の中にしみ込んだポリウォーターが、古代怪獣スコラドンを目覚めさせていた。
 放送は1973年。存在が否定されるぎりぎりの年です。一応当時の科学知識を取り入れ、SFしようとした作品だったんですね。
 ラスト、ポリダーの使用禁止を加奈に伝えた水島は、加奈に静かに「でも開発は続くんでしょう……」と返されて沈黙してしまいます。今のうちに、少しでも消えていく水辺の光景を残しておくのだと次の撮影場所に去る加奈。良きにつけ悪しきにつけ、時代を反映した作品だったと思います。

駄弁者:
 この「ポリウォーター」って私は知らなかったんですが、科学の迷走としては有名な事件だったんですね。Wikipediaによると、一滴のポリウォーターが自然界に放たれることで地球上の水を全てポリウォーターに変化させてしまう危惧も語られたとか(あれ、ヴォネガットの「猫のゆりかご」が似たような感じ?)。



実行するだけじゃなく、思いつくだけで悪いって?

 出典: 山本弘「ダイノコンチネント 滅亡の星、来たる」

紹介 :ひらがな 様
HP :

コメント:
 今回のご紹介は山本会長の新作から。
 旅客機が唐突にタイムスリップ、恐竜時代へ。そして500年。人々は何とか生き延び日々を送っていた。
しかし。
 伝説の通り、恐竜を滅ぼす『滅亡の星』が出現。主人公は妹、幼馴染みの少女、恐竜人と世界を救う方法を求めて、旅に出る――。
 どうです、基本設定だけでワクワクしてくるでしょう?
 いや、様々に言いたいことはあります。
 山本先生趣味丸出しですねとか、あの頃の二酸化炭素分圧ってどうだっけとか、テレパスならまだしも、5世紀原始生活をするだけで《ディクリーズ・ウェイト※》が使えるようになるンか!?とか。
※グループSNE「ソードワールドTRPG」に出てくる遺失魔法。物体の重量を軽減する。
 今回の名台詞はそのツッコミどころの最たるもので、シチュエーションは(ネタバレ注意)
 こっそり恐竜人と遊んでいた主人公の妹。しかしその“遊び”の内容とは、全くの異種族である事を免罪符に性的な刺激を受けるものだった。
 これにより少女は、不道徳・淫行の罪で裁判にかけられる。
 結果は『有罪』(これが主人公の旅立ちの直接的な理由になる)。
 名文句は、恐竜人がこの裁判を貫いた基本思想を聞いて、呆れて評したセリフ。
 思想の自由>言動の自由>行動の自由のはずで、思ってるだけなら罪に問われる必要などない、人間は頭がおかしい、と。
 その考えには――明らかに自由権侵害の児ポ法とかの絡みもあって――全面的に賛同するものですが、その、作中でこうも直球で特定の欲望を全肯定しなくとも(笑)
 随分コケにしたようなこと書いてますけど、いーんですめっちゃ面白かったので。
 なお、1巻は『予言された終局』を回避すべく旅に出て終わりです。続きが気になる方は是非徳間書店に脅迫状をお出しになりますよう(笑)

駄弁者:
 このごろ刊行のピッチが早いですね。
 この作品、シェアードワールドとして企画されているものらしいですが、あまり趣味を全開にしてしまうと、他の方が参加しにくいということはないんでしょうか?(すでにシェア作家による第2弾が出ているようなので、心配無用なのでしょうが)
>思ってるだけなら罪に問われる必要などない
 「おもってるだけ」なら今後もセーフでしょうが、「もってるだけ」はアウトに…。



1980計画を知って、あなたは逃げ出した。
それからのあなたは、「太郎」を飛ばしちゃあ喜んでる。
まるで宇宙が自分の遊園地ででもあるかのようにね。

 出典: 岸田森脚本・大木淳監督「ファイヤーマン 第12話『地球はロボットの墓場』」

紹介 :土左衛門 様
HP :

コメント:
 SAFの水島博士の試作した宇宙船・マリンブルが宇宙空間で恐竜に遭遇して墜落、時を同じくして水島博士がSAF本部から姿を消した。彼を追ったSAFのメンバーが見たものは、戦時中水爆の開発に従事し、今またバローグ星人の地球侵略に協力させられていた水島博士の祖父の姿だった……。
 大量殺戮兵器の研究から逃避し、恐竜ロボット「太郎」の製作に没頭し、そのためにバローグ星人に利用され侵略の片棒を担がされ、翻弄される水島の祖父。結局彼ができたのは狂うこともできず、「太郎」を動かすことに逃避することだけ(宇宙人が協力を申し出た時点で気付けよ、と今なら突っ込みが入るでしょうけど)。
 このセリフは、最後の勇気を振り絞ってSAFに侵略計画(1980計画)を伝えようとした水島の祖父を射殺して嘲笑う宇宙人のセリフです。
 岸田森さんは、本作と「帰ってきたウルトラマン」でそれぞれシナリオを書いています。水島の祖父が文学座の長老・北見治一氏、宇宙人の声が岸田さんの芝居仲間の樋浦勉氏で、宇宙人の長台詞が続く展開はほとんど演劇で、視聴者おいてけぼりでした(笑)確かに微妙な作品ではありますが、一方でこういう過激さも持ってた作品でもあるのです。

駄弁者:
 悪夢から逃避してしまうこと自体は人間的ですが、逃避の元も方法もマッドサイエンティストの面目躍如しまくってますねえ…。



未来、たぶん日本。
“ロボット”が実用化されて久しく、
“人型ロボット”(アンドロイド)が実用化されて間もない時代。

 出典: 吉浦康裕監督「イブの時間」

紹介 :陸ドム 様
HP :

コメント:
 そういえば普段何気なくロボットって言ってますが、ドロイドとかアンドロイドとか、なんのことやら区別ついてません。

駄弁者:
 2008年からインターネットで順次公開されているアニメ作品より。
>ドロイドとかアンドロイドとか、なんのことやら
「アンドロイド」の言葉の元ネタはヴィリエ・ド・リラダン「未來のイヴ」だそうです(アニメのタイトルも、それを意識している?)。
 カレル・チャペックの「ロボット」よりも先に登場している言葉だとは、確認してちょっと意外に感じたものです。



嵐のような時代も端から見りゃただのクロニクル

 出典: 藤林聖子作詞・渡部チェル作曲「EGO 〜eyes glazing over〜」 『仮面ライダー555』挿入歌

紹介 :陸ドム 様
HP :

コメント:
 なぜかEDと言い張るライダーの必殺技の時にかかる歌から。
 いつの世も大変なのはその当時の人ですからねぇ… 私も日本が昔戦争やってたといわれても実感湧きませんし

駄弁者:
 後の時代から見て戦争が年代記にしか感じないのは、まあ仕方のないことだと思います(私だってそうですし)。
>なぜかEDと言い張るライダーの…
 ごめんなさい。一瞬「ED」が別の意味に見えてしまいました。



スーパー1よ貴様は美しい!貴様には醜い怪人たちの悲しみが分かるまい!
…(中略)…
オレは貴様が憎い宇宙開発用の改造人間として人間共の期待を一身に浴びる貴様が憎い!

 出典: 小西通雄監督・江連卓脚本「仮面ライダースーパー1 第22話『怪人墓場の決闘! メガール将軍の最後』」

紹介 :クロスケ 様
HP :

コメント:
 仮面ライダースーパー1こと沖一也は復讐の為でもないのに改造人間になることを志願した大変珍しいライダーです。そこには亡き両親の宇宙開発の夢を継ぐ情熱があったからです。
 そんな作品ですが改造人間の哀しみはやはり描かれていました。
 ドグマ王国の幹部メガール将軍は度重なる敗北によって立場が危うくなり自ら出撃します。その時スーパー1に投げかけた言葉が投稿のセリフです。
 実はメガール将軍は5年前に消息を絶った一也のいた国際宇宙開発研究所の科学者・奥沢正人、彼こそが本来改造人間第一号になるべきコードネーム「ナンバー1」だったのです。技術の未熟さと計算ミスにより手術は失敗、醜い野獣のような姿となり奥沢は全てに絶望し失踪、国際宇宙開発研究所でも記録は抹消されました。自殺をしようとしていた奥沢はドグマの帝王テラーマクロに拾われメガール将軍として生きることになったのでした。
 スーパー1は発達した今の技術なら再改造を受ければ自分のような姿になれると説得奥沢を探して一也を訪ねていた婚約者の池上妙子の呼びかけもありメガール将軍は人の心を取り戻しかけます、しかし頭に埋め込まれた服従カプセルの影響で自我を失い怪人死神バッファローの姿になり妙子を殺害、怒りに燃えたスーパー1のスーパーライダー閃光キックを受けて爆死、後には妙子の写真の入ったロケットのみが残ったのでした。
 「強いもの美しいもののみが生きる王国」を目指す徹底的な選民思想のドグマ王国『選ばれなかった』彼だからこそそんな世界で生きることを望んだかもしれません彼は一也のもしもの姿と言えるでしょう。
しかしどこをどう間違えたらスーパー1のプロトタイプが鉄の球から手足の生えたみたいな死神バッファローのようになってしまうのか…生命維持装置でもごてごてつけたのでしょうか?

駄弁者:
 メガール将軍を主人公にしても話がつくれそうですが…。その場合、国際宇宙開発研究所が悪の秘密結社役になってしまいますね(笑)。
 顔にキズが表れる程度だったら、復讐を誓いつつも正義の味方にとどまれたのかも知れませんが、全身醜くなってしまうと、それも無理?



「脱出できない? いいか、フルハシ! 慌てるんじゃないぞ! いいな!」

 出典: 市川森一脚本「ウルトラセブン 第24話『北へ還れ』」

紹介 :ゴジリスト中小路 様
HP :

コメント:
 原因不明の航空機事故が北極圏上空で続発した。家庭の事情で北海道の実家から来ていた母親をほったらかして、フルハシ隊員がウルトラホーク3号で調査に向かう。すると、既に北極の一部を占領していたカナン星人の罠が…!
 星人が発生させる人工オーロラは強力な磁力線を伴い、上空を飛ぶ航空機の計器や操縦桿を狂わせてしまう。フルハシ機の針路上には民間の旅客機が来ており、このままだと空中衝突は避けられない。フルハシ隊員は自爆装置のタイマーをセットし、機を捨てて旅客機を救う道を選んだ。が、座席の非常開放レバーが効かず、脱出できない。それでもフルハシ隊員は努めて冷静に、無線で「脱出不能」と基地へ告げる。それを聞いたキリヤマ隊長の返信が、上記の台詞である。
 実際に作品を見ると「「あんたが慌ててどうするよ!」とツッコミ返したくなるようなうろたえぶりだ。この人ホント、科学特捜隊のムラマツ隊長に比べると微妙に頼りない人である。

駄弁者:
 ここまで傍が慌てた様子だと、当事者はかえって落ち着いてしまうのかも知れません。
 もしや、それを狙った高等な統率方法?…ではないんでしょうね…。



許さないぞ。 ささ、いきましょう。
許さないだけなのね…

 出典: ゆうきまさみ「究極超人あ〜る」

紹介 :水谷秋夫 様
HP :
http://oikose.at.webry.info/

コメント:
 北朝鮮に対する各国の反応、というのを考えた時にふと思い出しました。検索をかけると思いだしたのは私だけではないらしく。
 北朝鮮に限らないのですが、許さないだけ、で済んでいる平和な間になんとかなってほしいものではあります。

駄弁者:
 個人レベルなら笑って済ませられますが、外交となると…ねえ。
 しかしまあ「許さないぞ」を口だけですまさない国が乗り出す、どこぞのように泥沼化してしまうかも知れませんし、確かに平和な間になんとかなってほしいですね。



あの船とこの星に何の違いがある?私が宇宙人なら地球の人間も全て宇宙人だ

 出典: 上野遊「彼女は帰星子女」

紹介 :山家 様
HP :

コメント:
 トリオンという宇宙人と地球人が平和裏にアポロ計画の際にファーストコンタクトしてから数十年、政府レベルの機密が公表され、遺伝子操作により生まれたトリオンと地球人のハーフのヒロインが主人公の家にホームスティすることになったという背景作品です。
 しかし、その裏にはいろいろと思惑があり、更にヒロインはトリオンからは地球人とみられ、主人公たちからはトリオンとみられます。そして、ヒロインは家出し、主人公に上記の科白をぶつけます。確かに彼女のいうとおりで、特別視する方がおかしいのですが、実際にそんな世界になったら、特別視してしまうな、と思いました。

駄弁者:
 異星人がツンデレ美少女でもトンガリ耳の兄さんでも、同じ悩みはついて回るようで。
 遺伝子操作で生まれたハーフだということを考えれば、たとえ異星人と地球人が同じ「宇宙人」として一体感を持てたとしても、彼女自身は特別な存在として取り残されてしまうのかも知れませんね。



「わたしは自分のもっている感情の豊かさのおかげで、どんなに苦痛を味あわねばならないとしても、それを捨ててしまいたくはありませんよ。苦しみは、たとえそれ自体が力を持っていないにしても、理解を生み出します。そして、その理解から愛が生まれます。こうして一つの循環の輪が閉じられるわけですよ。ルマ、あなたは本当に良い人ですね。でもぼくには必要ありません」

 出典: イワン・エフレーモフ「アンドロメダ星雲」(飯田規和訳)  『世界SF全集22』に収録

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 エフレーモフの代表作から投稿します。時に30世紀、人々は様々な困難を乗り越え、巨大な共産主義社会を形成していた時代。タントラ号の船長、エルグ・ノールは突如連絡を絶った惑星ジルダにその原因を探るべく向かっていた。出会えるはずの燃料補給船が遭難するなどの困難を経て、ジルダにたどり着いたタントラ号はそこで全面戦争によって滅亡した世界を目の当たりにした。その帰路、不時着した惑星でさらなる危機に見舞われます。
 投稿したセリフは不時着した惑星で襲撃を受け重傷を負ったエルグ・ノールの恋人ニーザを隔離状態に置くことによる悲しみを医学的「措置」で解消しようとした医者ルマに対するエルグの反論から。確かに、どんなに悲しいことでも、そこから逃避しても何の意味もありませんから。ちなみに物語は地球に住む、ダル・ヴェーテルたちの物語と一章ごと交互に語られるせいか非常に話を把握するのが大変でした。もうちょっと、読みやすくして欲しかった…。 

駄弁者:
 作品が書かれて半世紀以上たってしまった今では、ここで謳われている共産主義の理想社会というのは受け入れにくいですが、ご投稿の言葉は、時代やイデオロギーに関係なく共感を呼ぶだろうと思います。
 まあ正直、苦しみや悲しみぬきで理解や愛が得られるならそれに越したことはない、というホンネのも時代に関係なくあるでしょうが…。



「真一、お前、また!?」
「し、知らん。俺は怪獣なんか呼んじゃいない!」

 出典: 円谷プロ制作「ウルトラマンメビウス 第41話『思い出の先生』」

紹介 :ザタンゴールド 様
HP :

コメント:
 「ウルトラマン80」真の最終回とも言われる80の客演回から。
 かつて矢的猛が勤めていた桜ケ丘中学校。同校は少子化の影響で近隣の中学と統廃合されることが決まっていた。偶然再会した矢的の生徒たちは、学校が無くなる前に同窓会を開こうと考え、矢的先生も来てくれることを望む。
 同窓会のことを知ったメビウス=ヒビノ・ミライからテレパシーでそれを伝えられる80だが、彼は激化する怪獣との戦いによって教職を捨てざるを得なかった責任を感じ、生徒には顔向けできないと考えていた。
 矢的猛不在のままで始まった同窓会だが、そこに硫酸怪獣ホーが出現する。かつてホーを生んでしまった真一はまた呼んだのかと言われてしまう。

駄弁者:
 下と併せてのご投稿。
 失恋と嫉妬なんてありがちな経験なのに、怪獣が出てしまったばっかりに一生クラスメイトの記憶に残ってしまうと言うのは…ちょっと気の毒です。



愛しているから愛されたい
愛されないから腹が立つ
でも、本当の愛って、そんなちっぽけなものなのか?
人のお返しを期待する愛なんて偽物じゃないかな

 出典: 円谷プロ制作「ウルトラマン80 第3話『泣くな初恋怪獣』」

紹介 :ザタンゴールド 様
HP :

コメント:
 ウルトラマン80こと矢的猛が桜ケ丘中学校で教師を務めていた時のエピソード。
 猛のクラスの生徒である真一は、恋人のみどりをサッカー部の柴田に取られてしまい、奪い返そうと決闘を挑むも敗北してしまった。そんな彼の憎しみと嫉妬がマイナスエネルギー(人の負の感情から生まれるエネルギー)となり、硫酸怪獣ホーを生み出してしまう。
 セリフは真一に猛が語った言葉。80もウルトラの星で失恋した経験があり、それと絡めつつ語っている。

駄弁者:
 いやいやそんな小綺麗なもんじゃないですよ…と失恋した中学生に言うわけにもいかないか。
 それにしても、地球人のマイナスエネルギーでも怪獣が生まれるほどの力があるんだったら、ウルトラマンの失恋だと一体どんな事態になってしまうんでしょう?(自分の経験で諭せるんだから、負の感情がないというわけではないんだろうし)



当たりまえの状況ではつねに衣服で覆われている身体の各部分まで、ご丁寧に複製してあるのはなんのためだ?ロボットにはとうてい必要とは考えられない器官まで備わっているのはどういうわけだ?

 出典: アイザック・アシモフ「鋼鉄都市」(福島正実訳)

紹介 :トオコ・モリエ 様
HP :

コメント:
 で、「人間そっくり」なR・ダニールの裸体(?)を見て、パートナーのベイリが言った言葉。ちょっとお、ミスタ・ベイリ、あなた、どこのこと言ってんですか!
 気を取り直して(ゲホゴホ)。この後に、先程投稿した文章が続くのですが、「なんとなく、ぞっとする」前の文章と違い、ここのベイリの言葉は「なんとなく」おかしいですね。「アシモフという作家は、ユーモアにも優れている」という評価は、間違いではないようです。(当たり前だー、という声が聞こえてきそう。)それにしても、真面目に考えた場合「人間そっくりのロボットを造るとき、ロボットには必要ない人間の器官」ってなんだと思われますか、皆さん?まあ、ロボットの用途とか、予算とか、そういう様々な条件に左右されるでしょうが。

駄弁者:
 『鋼鉄都市』の時点ではともかく、『夜明けのロボット』のグレディアを考えると、必ずしも不必要な器官じゃなかったようですが…。
>ロボットには必要ない人間の器官
 人間に似せることそのものが目的なんだとしたら、不必要な器官なんてないんでしょうが、機能的にということならば、ヘソとか足の指とかは、いらないんじゃないでしょうか?



R・ダニールが人間に似ているのは、顔や手だけではなかった。全身が丹念に、正確に人間に似せて造られていたのだ。

 出典: アイザック・アシモフ「鋼鉄都市」(福島正実訳)

紹介 :トオコ・モリエ 様
HP :

コメント:
 SFは、センス・オブ・ワンダーだ、ってことで。
 今回のテーマは、SFらしく、ロボットです。題して、「人間そっくり」。
 てことで、ロボットと言えば「この人は、はずせない!」という、SF界を代表する(?)ロボットの一人(?)、R・ダニール・オリヴォー氏の裸体(?)を表現した文章から。それにしても、モデルが誰かということを考えに入れなくても、この文章だけを読んだ限りでは、何となく、ぞっとしません?人間そっくりでいながら、人間とは違う存在なんて。「どうして?何で?」と聞かれても、困るんです。うまく言葉で説明できないから「何となく」と表現するんです。勿論、R・ダニールが、性の悪い人間より、よっぽど「良心的」な存在であること、「人間そっくり」に造られた理由も分かってます。それでも、なのです。この小説に出て来る、特に理由もなくロボットを嫌う人達の気持ちも分からないでもない、と思う一方、そのことの怖さも分かって「アシモフって、偉大な作家だったのだなー。」と思いました。(今更か、って笑われそう。)

駄弁者:
>ぞっとしません?人間そっくりでいながら、人間とは違う存在なんて。
 そうですね。日本SFでのロボット代表・鉄腕アトムが、御大の描くデザインではなくて、最初から浦沢直樹「PLUTO」のようなリアルな人間風の容姿だったら、なかなか受け入れられなかったんじゃないかと思います。



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