SF名文句・迷文句第216集

名文句トップに戻る

第215集を見る 感想を書く(文句toめい文句) 第217集を見る


泣けてきた。泣けてきたよ…なんという美しさだ…この美しい星の上で人間は、領土や資源をめぐって殺し合いをしている。ワシも含めてそんな人間があわれでな。

 出典: 天沼俊「戦空の魂 第4巻『秋水 遥かなる宇宙へ』」

紹介 :安井賢一 様
HP :

コメント:
 終戦記念日と言う事ではありませんが。
 1945年。悪化する戦局、頻発する事故の中、小川技師部長は秋水の開発に全力を傾けていた。そして遂に完成する秋水。しかし小川技師自らが乗り込んでの初発進時にアメリカ軍の空襲が開始される。降り注ぐ爆弾の中、秋水は飛ぶ。あの大空の向こうへと!
 セリフは初めて宇宙から地球を見た小川技師の言。この後、悲しく素晴らしい結末へと繋がっていきます。
PS:小川技師。人間はまだそのあわれな事をやめる事が出来ません。

駄弁者:
 対B29用に開発された秋水が、そのB29を尻目に宇宙を目指すというのは、なかなか夢のある図だと思います。
>泣けてきた。泣けてきたよ…なんという美しさだ…
 争いをするひと全てに宇宙から見た地球を見せれば、みな同じように考えるのでしょうか。
 …たぶん、ムリなんでしょうねえ。普通なら見られないものを他ならぬ自分が見たという感動で、争う人間をあわれに思えたとしても、それを他の皆がが見たとしたら、その美しさを自分のものにしたくなって争いを再開してしまうんじゃないでしょうか。



Five!
Four!
Three!
Two!
One!
Thunderbards are go!

 出典: ゲリー・アンダーソン製作「サンダーバード」

紹介 :安井賢一 様
HP :

コメント:
 私はコレでセンス・オブ・ワンダーにはまりました。

駄弁者:
 これを聞くと自動的に「タッタカター タカタッカ ツッタカタッタッター」のテーマソングが聞こえてくるんです。
 でも「Thunderbards are go!」は英語の綴りではなく「あ、ゴー」と日本語のノリの合いの手で覚えてしまっていた私なのでした。



今年のSF大会でついに!
これまでのSFすべてを包括し あらゆるファンを納得させる
SFの定義
が発表されます!

 出典: とり・みき「SF大将 特別編 万物理論」  『別冊本の雑誌15 SF本の雑誌』に収録

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 こんな宣伝文句にまんまとつられて「大会の行われる コアなSFファンが独自のコミュニティを作っているという異形島」にいそいそと出かけてしまう主人公。
 なんだかイーガン『万物理論』というよりは、坂口安吾『不連続殺人事件』あたりのパロディみたいです。
 (不連続殺人事件:「酒が飲める」というだけで流行作家や画家が山の中の別荘に集まってくるという、昭和二十一、二年にしか成立しない設定を用い、英米型本格推理(パズラー)の典型パターン「雪の山荘、嵐の孤島」(クローズド・サークル)を巧妙に成立させた本格ミステリ)
 まあ、『万物理論』を読んでいるときも「こったら設定だら、いつ連続殺人事件が起きてもおかしくないんでないかい」とは考えていましたが。
BGM:「おはようオーパーツ」相対性理論

駄弁者:
 そんな宣伝文句が出たら、異形島だろうと栃木だろうと(ごめんなさい)駆けつけただろうなあ…。
 しかし、はたしてその「定義」はオープニングで発表を始めたとして、フィナーレまでに終えられるものなんでしょうか。『万物理論』のような「アレフ」を迎えた後も定義の羅列が続くような気がします。



どうしてだと? 先の見えるお前さんのセリフとも思えねえな。
誰もな、運命には逆らえねえんだい。そのうち、この饅頭が無性に喰いたくなりそうだ。

 出典: 半村良原作・中山乃莉子脚本「天晴れ夜十郎 第23話(最終回)『男が命をかける時』」

紹介 :土左衛門 様
HP :

コメント:
 お十夜の晩、謎の石碑とともに江戸に現れた記憶喪失の謎の男。出会った女賊・お絹によって「碑夜十郎(いしぶみ・やじゅうろう)と名付けられた彼は、「シミンのケンリ」などお絹たちにはさっぱりわからない正義感で行動、江戸の悪と戦うことに……。
 半村良さんの原作「講談 碑夜十郎」をドラマ化した本作、原作にもあった「もう一人のタイムトラベラー」のネタを膨らませて、歴史の改編を図るタイムトラベラーとの対決というドラマ独自の怒涛の展開を見せた時間SFの隠れた意欲作です(「タイムトラベラー」からの伝統? )。これはその最終回から。
 江戸の庶民を苦しめる天保の妖怪・鳥居耀蔵と対決する夜十郎。最初は金目当てで彼に付き合っていた河内山宗俊も、いつか本格的に鳥居と対決することを決意、水戸藩を陰富(無許可の宝くじ)を発行したことで脅迫して鳥居を失脚させようとしますが失敗、投獄されてしまいます。そんな彼を、何故か鳥居は「おまえは毒饅頭を牢の中で食って死ぬのだ! 」と嘲笑う。彼の将来を知っているように……。
 そして、牢内で捕らえられた夜十郎と再会、彼に「どうしてここに? 」と聞かれた時の河内山のセリフがこれです。
 自棄になってもこのセリフが出るのがしぶといというかなんというか。あ、でも先に「毒饅頭食って死ぬんだ」といわれたら食べないんじゃ?

駄弁者:
 石川英輔の「大江戸神仙伝」みたいだ、と思いましたが、こっちは神仙様ほどには未来の知識があまり役にたっていないようす。
 鳥居耀蔵は有名ですが、河内山宗俊も実在のモデルがいるんですね。もっとも名が知れているのは歌舞伎やドラマなどの創作ということですが。



部下「申し訳ございません!」
ヨミ「誰が謝れといった? 直ちにドラゴン以上のものを作れ! ドラゴンよりも数倍強力なのをだ!」

 出典: 横山光輝原作。安藤豊広脚本「バビル2世 第14話『危うし!怪鳥ロプロス』」

紹介 :土左衛門 様
HP :

コメント:
 バビル2世の3つのしもべの一つ、怪鳥ロプロス必殺を期してヨミの部下が建造したロボット・ドラゴン。竹の蛇のおもちゃみたいなカッコに似合わずめちゃ強いドラゴン、ロプロスをあと一歩のところまで追いつめながら、他のしもべとバビル2世の団結に敗れてしまいますが、これはそれを報告した部下とヨミの会話です。
 110集などでもヨミが部下に慕われている描写が出てきますが、アニメ版ではそれを一歩進めた形になっており、部下もちゃんと連れて逃げる、このエピソードのように失敗を責めるよりも次の仕事で挽回させるという、結構いい上司になってます(ただし、24話のように自分がやると危険かもと思ったものをおだてて部下に使わせた回もありますが)なんか「ヨミさまに学ぶ悪の組織のマネージメント技術」みたいなビジネス書になりそう(笑)

駄弁者:
 むやみに罰を与えたりするよりは、確かにいいのかも知れませんが、これはこれでなかなかワガママな上司に思えるのは気のせいでしょうか(笑)。



いかなる国においても、正しい歴史は百個師団の兵力に相当する。

 出典: ロバート・ハリス「ファーザーランド」(後藤安彦訳)

紹介 :山家 様
HP :

コメント:
 出典は、WWUが米独の引き分け(日本は米国の核攻撃により無条件降伏したみたいです。)に終わり、1964年まで米独の冷戦が続いているという設定のSFサスペンスです。その世界の独国立公文書館では、ヒトラーの言葉をモットーにしており、その言葉というのが、上記の名文句です。
 間違っていないとは思うのですが、何とも皮肉なモットーだなと。そもそも作品自体がある意味、嘘の歴史を舞台にしていますし。そして、主人公は正しい歴史を暴こうとして(こちらの世界でも、主人公たちが暴こうとした歴史は正しくないという人がおられますが)、ゲシュタポに目を付けられ、艱難辛苦に喘いで、何とも言えない結末を迎えるわけで。何とも皮肉なモットーです。

駄弁者:
 百個師団の力を、公開することによって用いるか、秘匿することによって用いるか…というところでしょうか。
 あるいは、そういう力が無くなって初めて、「正しい歴史」が見えてくるものなのかも知れません。



君の父親が心からの望みをとげたら──つまり不死にいたる方法をついに発見したらどうなる?全てを巻き込む呪いを実証するだけではないか?結局、もしも彼が永遠に生きるとすれば、きみはいったいいつ相続する?

 出典: デイヴィッド・ウィングローヴ「壊れた車輪 (チョンクオ風雲録5)」(野村芳夫訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 ヨーロッパを離れた反乱軍首謀者ディヴォア少佐は、シティ北アメリカの反チョンクオ組織<フランクリンの息子達>と接触する。<息子達>の幹部チャールズ・リーヴァーが手がける不老不死プロジェクト(シルバーバーグに非ず)を妨害するように、ディヴォアはリーヴァーの息子マイケルをそそのかす。
 不老不死のデメリットとして、社会に停滞がもたらされる、とは良く聞かれるのですが、ここまであからさまに言わなくても良いんじゃないか、と思うのは相続する物の無い貧乏人のひがみでしょうね。
 ディヴォアが不老不死を妨害するのは、もちろん社会の活性化などという善意から出た物ではないことが、後々明らかになります。

駄弁者:
 不老不死を求めるのはたいてい功成り名を遂げたお年寄りと相場が決まってますが、跡継ぎとしてはとんでもないというところ。まあ、欲得で活性化する社会というのもちょっとどうかと思いますが…。



古代の文献にみるような『母性愛伝説』というものは、まったく後天的なものでしかない、ということよ。

 出典: 栗本薫「レダ」

紹介 :トオコ・モリエ 様
HP :

コメント:
 全ての人間が、人工授精と人工子宮によって「製造」される未来社会。社会の衰退を憂う女性学者は「人類の可能性を探る実験」として「人間の子宮と性交による自然出産」を自らの身体を使って行う。だが、彼女は、自分の産んだ子を育てることはなかった。投稿の文句は、そうやって生まれた「自分のお腹を痛めた子」が死んだときの「産みの母」の言葉。彼女にとって「自分の子」は、生まれたときから死ぬまで、いや、その子が死んだ後でさえ、「赤の他人」でしかなかった。この小説を最初に読んだとき、それでも私は、この言葉に反発したものでした。ですが、投稿に際して読み直したときの私は、「こんな当たり前のことに何故、昔の私は反発したのだろう。」と、むしろ「その頃の未成熟な自分」に腹を立てたものでした。これ以上のコメントは、とても冷静に書けませんので、以下の参考文献をお読み下さい。今日の児童虐待問題は、この「真理」を無視しているから、解決できないんです。発想の転換が必要です。
参考文献:「母親幻想」をはじめとする、岸田秀氏の著作全般
      斉藤茂男「父よ!母よ!」
      斉藤茂男「命かがやく日のために」

駄弁者:
 一見して、以前他の方からご投稿のあった永井豪「ススムちゃん大ショック!」を連想しましたが、むしろ逆なんですね。「ススムちゃん〜」の方は本能だけが親子のつながりだったと言っているのに、こちらの方は後天的なものがすべてだと言うわけですから。
 前は本能が失われがちなのかと書いたのですが、こちらの考えでいけば、本能があるという伝説のせいで、社会的な規範が弱くなってしまっている…ということになりますか。



おやじというのは、顔を持ち声を持ち、子供が尊敬の眼で仰ぐ、大きな身体を持っているもんなんだ。悪さをしたときぶったたく拳骨を持ってるもんなんだ。おっかないが、またとないすばらしい男なんだ。

 出典: 平井和正「狼男だよ(アダルト・ウルフガイ・シリーズ)」

紹介 :トオコ・モリエ 様
HP :

コメント:
 SFは、センス・オブ・ワンダーだ、ってことで。
 「宗教」「神」がらみの投稿が続いたので、気分を変えまして。今回のテーマは、「SF・家族の情景」。
 不死身の人狼、アダルトウルフガイ・犬神明は、自分の子種をだまし取られてしまう。「(あなたの子種を使って産んだ)子供は国が面倒をみる」と、相手の女性に言われ、彼は激昂して「男親のすべきこと」をならべたてる。それは確かに「国」という「冷たい抽象物」には、できないことだった。投稿の文句は、犬神明の長広舌の中でも、私が最も感銘を受けた部分。いや、ごもっとも。とはいえ、日本のお父さんたちの中で、どれほどの人達が「男親の義務」を果たしているか、と思うと、ねえ。いえ、駄弁者さんが以前仰った事は、間違っていませんよ。とはいえ、ねえ。
参考文献:斉藤茂男「父よ!母よ!」
      斉藤茂男「妻たちの思秋期」
      本多勝一「子供たちの復讐」

駄弁者:
 ええと、以前に言ったというのがどのことなのか分からないのですが(185集?)、まあ実際に父親をやってもいない以上、あまり偉そうなことは言えないですよね。
 …とはいえ、ぶったたく拳骨の加減や方向が間違っているんじゃないかと思える事件報道には、ときどき出くわします。



「君の言うとおりだ。ハヤタのような立派な男を、神様が見捨てたりはしない」

 出典: 金城哲夫・関沢新一脚本「ウルトラマン 第1話『ウルトラ作戦第一号』」

紹介 :ゴジリスト中小路 様
HP :

コメント:
深夜、竜ケ森上空をパトロール飛行中だった科学特捜隊のハヤタ隊員は、突如現れた赤い球体(実は宇宙怪獣ベムラーを追ってきたウルトラマン)と衝突、消息を絶った。ムラマツ隊長、アラシ隊員、イデ隊員の三人はフジ隊員を本部に残し、ハヤタ捜索に出る。そして翌朝、心配して本部に駆け付けた隊員候補生ホシノ・イサム少年の「ハヤタさんは死なないよね! 生きてるよね!」という無線の呼び掛けに対するムラマツ隊長の返信が、上記の台詞。
はっきり言って気休め的発言なのだが、ホシノ少年が普段からハヤタ隊員を尊敬しているということをよく解った上での言葉のように思える。また、おそらくハヤタ隊員も悪運の強い男で、これまでに九死に一生を得たようなことが何回かあったものと思われる。
なにげない一言にも、少年への優しさと部下への信頼が感じられる。ムラマツ隊長、ステキ!

駄弁者:
 たしかに気休めですし言葉も平凡なものですが、口にする人間によって価値が出る、というところでしょうか。
 第1話めでハヤタ隊員の位置付けを手早くやっている、と見方も?



この宇宙で、未知の敵の力を常識で図る――救えないよ…

 出典: プラチナゲームズ製作・セガ発売「無限航路」

紹介 :陸ドム 様
HP :

コメント:
 外宇宙からやってくる艦隊を確認した主人公の国の政府は、保有艦船の3分の1にもなる5000隻を派遣する事に決定。
 しかし、その侵略者「ヤッハバッハ」を唯一知る人は、残りの国にも協力を要請し、この銀河系の総力を挙げてそれでも勝てるかどうかだと言います。
 しかし軍のお偉いさんは、自国のこれまでの経験からこれでも多いくらいだと言う
 人間、過大評価よりも過小評価をしがちですよねぇ…

駄弁者:
 たいていのことはそれで何とかなるからこそ常識になるんでしょうが、迫っているのが「たいていのこと」に含まれるかどうかの見極めが、また難しい。物語で起こる事件はまず「たいてい」に含まれないのですが、それは読んでいる人間だからこそ分かることですしね。



「理一さん、自衛隊のどこに勤めてるんですか?」
「人に言えないとこ」

 出典: 奥寺佐渡子脚本・細田守監督「サマーウォーズ」

紹介 :土左衛門 様
HP :

コメント:
 憧れの先輩・夏希にバイトを頼まれ彼女の田舎に向った数学少年の健二君。
 仮想世界・OZの崩壊に端を発した世界の危機に、彼女の親戚たちと協力して立ち向かうことになった彼に協力してくれる親戚の男衆が妙にかっこいいんですよね。
 その中で、陸上自衛隊員の理一おじさんが松本駐屯地から持ってきたミリ波通信車に驚いた健二君の質問に答えた理一さんの一言(にやりとするわけでもなく、穏やかな笑みでいうのがかっこいい、というか逆説的に凄みが)。絶対あんたサイバーテロ対策秘密部隊かなんかだろ。

駄弁者:
 この夏のヒット作品、初のご投稿です。いただいてからもう2か月もたってしまいましたが(すみません)、まだ映画は公開されているのでカンベンして下さい。
>人に言えないとこ
 言いさえしなければ行動で示してもいいってあたりが(笑)。



「こりゃ、女子供の仕事ですよ」

 出典: 海堂太郎脚本「ウルトラマン 第21話『噴煙突破せよ』」

紹介 :ゴジリスト中小路 様
HP :

コメント:
大武山一帯で野鳥の大量死や濃霧の中での唸り声、短期間のうちに樹木が立ち枯れを起こすなどの異変が相次いだ。通報を受けた科学特捜隊は調査に乗り出すこととなったが、その時うっかりアラシ隊員の口から出た言葉が上記の台詞である。そんな言い方をされても、女性のフジ隊員は張り切って調査に出ようとするものだから、ムラマツ隊長も「それじゃ、行ってもらうか」みたいなノリでなんとなくフジ隊員に調査を頼む。すると、そのあとからハヤタ隊員が「しかし、大丈夫かなぁ」と呟く始末。いやぁ、昔の職場は実におおらかですなぁ。今なら「同僚および上司からの性差別」で訴えられちゃうかもよ……。

駄弁者:
 一線の隊員に女性が採用されているというだけで、当時としては進んだ職場だったのかも。「女」だけでなく「子供」まで出入りしている様子が窺えるのは、進み(?)すぎててかえって問題ですが。



共棲って…何なんでしょう

 出典: 夏海公司「葉桜が来た夏3」

紹介 :山家 様
HP :

コメント:
 SFで異星人と結婚して子どもができるというのはよくありますが、この作品では異星人と共棲して同居はしても、結婚はできずに子どもができたら、別れが義務付けられています。(ネタばれにつき反転:そうしないと、お互いに(とりわけ異星人側は)滅びかねないからです。)主人公は、10代の高校生ですが、異星人のヒロインとは子どもができたら、別れる身です。お互いの政治的立場が違えば、別れずにそのまま過ごすことができるのですが(ヒロインの両親はそうでしたが)、主人公とヒロインの政治的立場は、それを許しません。相思相愛でいるのに、と考える主人公が、ヒロインの唯一の肉親の伯母に相談するシーンの科白です。伯母は、それに対して、私にもよく分かりませんと答え、2人で問答します。
 愛があれば、とか言いますが、中々そう綺麗ごとにはならないな、とつくづく考えさせられてしまいました。ヒロインはともかく、主人公は当初は共棲したくなかっただけに、何とも言えません。

駄弁者:
 「同棲」だと子どもができたらくっつかなきゃいけませんが、「共棲」だと別れなきゃいけなくなるんですね。「愛があれば…」とはいかないところは、どちらも同じようですが。



「…なにも、日本じゃなくてもいいんですからね。カナダやシベリアにはサンダに適した気候の広大な土地が、いくらでもありますからね」

 出典: 馬淵薫脚本・本多猪四郎監督「フランケンシュタインの怪獣・サンダ対ガイラ」

紹介 :ゴジリスト中小路 様
HP :

コメント:
日本の東宝とアメリカのベネディクトプロダクションの合作による、空想ホラー怪獣映画より。
京都に在るスチュワート博士(ラス・タンブリン)の研究所を脱走したフランケンシュタインの怪物は、切り裂かれても焼かれても完全再生するクローンだった。怪物は細胞分裂を起こし、一方は山で、もう一方は海で生活するようになり、やがて身長20メートルを超える毛むくじゃらの巨人に成長する。防衛当局は山の巨人を「サンダ」、海の巨人を「ガイラ」と命名。国民の生命・財産を守る為に両者の抹殺を主張する。しかし、スチュワート博士をはじめとする科学陣は「せめて狂暴性の薄いサンダだけでも捕獲・飼育を」と訴え、対策会議は真っ向から対立した。その会議の直後、喜田教授(中村伸郎)がスチュワート博士らに「国連科学委員会への直訴」という方法もあることをこっそり伝えるのだが、そのついでに付け加えた言葉が上記の台詞である。
ずいぶん無責任というか、身勝手な発言だ。日本だけが怪獣の脅威から解放されればそれでいいというのか。だいたい怪獣の飼育を「はい、そうですか」といって引き受ける国など、世界中のどこにも無いと思うのだが……いや、ひょっとしたらビッグビジネスになるかも……って、そういう発想が悲劇を産むことになるのは『キングコング』のカール・デナムや『モスラ』のクラーク・ネルソンが既に証明していたのだった。

駄弁者:
 アメリカ公開版の方でもこのセリフはあったんでしょうか。シベリアはともかく(冷戦中だしむしろ大暴れ歓迎?)、地続きのカナダの方は同意が得られないかも…。



「この銀河系を意のままに支配できると思ったまさにそのとき、数においても取るに足らぬ、血の気が多いだけの救いがたい餓鬼どもが、わがもっとも悪辣なるデスマシンを、それまで判明しなかった弱点を利用して破壊するというのだからな、その大破壊には、さすがに頭にきて、いまマシーンの製造者を告訴中だ」

 出典: ジャスパー・フォード「文学刑事サーズディ・ネクスト3」(田村源二訳)

紹介 :NAL 様
HP :

コメント:
デススターの爆発が脳裏に浮かびますが、都合よく弱点を晒し過ぎですよね。
裁判では勝てるような気がします。

駄弁者:
 「仕様です」とか「予見不可能でした」とか言うのは、皇帝陛下や暗黒卿は聞いてくれないでしょうねえ。
>数においても取るに足らぬ、血の気が多いだけの救いがたい餓鬼ども
 確かに反乱同盟軍はそんな感じだった…。デス・スターが2回目に破壊されたときなど、皇帝の作戦にカンペキはまっていたのに、力任せ(いや理力任せ?)でなんとかしてしまったし。



神や運命を無批判に信じる者は、「神のおぼしめしだ」とか「運命のいたずらだ」とか言って、思考停止の温室へ逃げ込んでしまえばすむ。

 出典: 田中芳樹「銀河英雄伝説 第6巻 飛翔篇」

紹介 :トオコ・モリエ 様
HP :

コメント:
 続けて、同じ作品から。きついですね、田中先生。
 確かに、人が「神」や「宗教」に頼るのには「そういう理由」もあるのかも知れません。「人間は考える葦である」という言葉とは正反対に、人間にとって「考える」ということは、存外、苦痛なものです。(少なくとも私は、そうです。)ですが、辛いとき苦しいとき、「己の十字架を負うすべを知り、ただ信ぜよ。」(チェーホフの戯曲「かもめ」の台詞)を思い浮かべ、何とか頑張ろうとする身には「みんなー、信仰ってものを、もっと大事にしようよ。信仰は大事なことなんだ。決して、考えることからの逃避であってはいけないんだ。」(第4集のあの文句のパクリですが)と言いたいです。そうです、「信仰」とは、「クレネのシモン」(新約聖書参照)のようなもの、己の負うべき「十字架(「自分が引き受けるべき重荷」「自分の果たすべき責務」という意味の、キリスト教用語。)」を背負うときの支えなのです。申し上げますが、あくまで「支え」であって、「己の十字架」を背負うのは、あくまで「自分」です。「己の十字架を負うすべ」、つまり、「自分は人生を、どう生きるか」ということを考えることは、「自分」のなすべきことなのです。
 信仰は、あくまで、そのための「支え棒」に過ぎません。けして、「思考停止の温室」で安穏と暮らすことではないのです。ですが、ですが、当に「思考停止の温室で安穏と暮らすこと」を「信仰」と考える人達の、何と多いことか!(私も含めて。情けない。)

駄弁者:
 思考停止と言われるとキツいですが、何でも突き詰めて考えぬくわけにもいかないので、神とか運命にかこつけて問題を棚上げする、ということはけっこうあるんじゃないでしょうか。少なくとも、サボり癖が抜けない私はそうです。
 関係ないですが「銀英伝」6巻、正伝10巻中、唯一うん万隻単位の艦隊戦がない巻で、最初に読んだ中学生の頃は地味に感じた覚えがあります。我慢できなくてすぐ7、8巻と買いにいったなあ。



特定宗教に対する狂信ほど、それと無縁な人間の反発と嫌悪をそそるものはない。

 出典: 田中芳樹「銀河英雄伝説 第6巻 飛翔篇」

紹介 :トオコ・モリエ 様
HP :

コメント:
 SFは、センス・オブ・ワンダーだ、ってことで。(今回から、このフレーズを入れることにしました。)
 第二回の投稿以来、「神」や「宗教」に係わる文句ばっかり、それも「特定宗教」の用語を使って投稿しているので、御覧になっている人々から「この人、アブない人?」と疑惑の目で見られているのではないかと慮り、そして自らを省みて、「確かに特定宗教に肩入れしすぎているな。」と考えて、反省の意味もこめて、今回は、「宗教に対する批判」をテーマに投稿することにしました。
 投稿の文句は、私の貧しい読書歴の中でも、特に宗教に対して批判的な作家、田中芳樹氏の代表作品から。自分達の元首に対してテロ行為を行った宗教団体の信徒たちに対する憲兵たちの、信徒たちに対する尋問の苛烈さの理由を述べた部分の最後の行です。これ以上の説明は無用であり、かつ、無粋というものでしょう。余りに「事実」過ぎて、笑うこともできません。とはいえ、人は、他人の「狂信」に気付き、それに反発し嫌悪し、その「狂態」振りを笑うことはできても、己の「狂信」には気付かず、その「狂態」振りに他人が反発し嫌悪していることには気付かないものです。それどころか、己の「狂信」に同調しない人々を「悪人」「罪人」「愚者」と罵倒し、暴力を含めた「力」ずくで排斥するのです。あまつさえ、己の「狂信」を必要としない人々を「ああいう不幸な人々を私達が救ってあげなくては」などと思い上がり、無理矢理、自分達の「狂信」を、その「狂信」を必要としない人々に押しつけるのです。しばしば(いや、「しょっちゅう」というべきかな?)暴力を使ってでも。「えー、そんなことないよ。少なくとも私は。」と考えている、そこのアナタ、それこそが「傲慢」という名の「自分に対する狂信」ですよ!

駄弁者:
 田中芳樹は宗教に対してというより、狂信(ときには「信念」一般)に対して批判的なんだろうと思います。宗教には良くも悪くもノータッチ。地球教徒が宗教の代表とは、さすがに書いている側も思ってないでしょうし。
>自分達の「狂信」を、その「狂信」を必要としない人々に…
 内心の信仰にとどまらず行動が伴うのは宗教の基本要素だそうですから、何でも「狂信」と決めつけるのは考え物ですが…しかしまあ、第三者的には敬虔な信仰というレベルでも、何回も戸別訪問されると面倒くさくなるものです。



「さて僕たちのうち、相手を立てて、自分の仕事を相手に合わせてもよいと思ってきたのはどちらだろう?僕さ。経済的にいって、冷静に考えれば……」
「そして伝統的には私が合わせるはずなのよ」

 出典: シンシア・フェリス「永遠にとは言わないわ」(小池美佐子訳)  『女の千年王国』に収録

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 天文学者のキャロルと鉱山技師のマイクは事実婚のまま8年を過ごしている。ある日キャロルは自らのキャリアアップと天文学的な報酬を目当てに、南極での二年間の単身赴任を受け入れる。マイクを待たせるのが重荷なのか、浮気がいやなのか判らないまま、別れを切り出すキャロルにマイクは待ち続けることを約束する。
 この作品が書かれた78年ならいざ知らず、現在では珍しくなさそうなこの状況。30年経ってSF的な現在が実現したのでした。

駄弁者:
 南極への単身赴任と男女の役割逆転では…当時としては後者がSF的だったんでしょうか。
 収録の短編集はサンリオSF文庫から出ていた女流作家のアンソロジー。ジョーン・D・ヴィンジも入っているようですが、このシチュエーションだと「鉛の兵隊」を連想してしまいます。…実際に収録されているのは「灰の中の不死鳥」という作品ですが。



お兄ちゃんはね…好きな人を好きでいるために、好きな人から自由で居たいのさ

 出典: 高橋留美子原作・押井守監督脚本「うる星やつら2 ビューティフルドリーマー」

紹介 :S 様
HP :

コメント:
 突然ふらっと見たくなって借りてきた映画より
 …なるほど、だから普段あんな行動していながらラムに危機が迫ったときはマジになるんだな、あたる…
 これまで掲載されてそのたびに「これSF?」いわれてる作品だがあえて言おう
 我思う、うる星はSFである!

駄弁者:
>好きな人を好きでいるために…
 それは、そんな行動しても好きでいさせてくれる相手がいるから言えることじゃあないか、とひがみ屋としては考えてしまうわけですよ。



名文句トップに戻る

第215集を見る 感想を書く(文句toめい文句) 第217集を見る