SF名文句・迷文句第218集

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「ここで、乗艦許可を申請していただくことになっています、中佐」少尉と呼ばれた女性が答えた。
「だが、わたしはすでに乗艦している」
「それはそうですが──」
「わたしを乗せてきたシャトルは、すでにここから八百キロ離れ、一秒ごとに遠ざかりつつある。ここで乗艦を拒否されたら、わたしはどうすればいいんだ?」
「拒否するはずがありません、中佐」少尉はうろたえた。
「ならば、許可を申請する必要はなかろう」

 出典: マイク・レズニック「スターシップ −反乱−」(月岡小穂訳)

紹介 :司書の駄弁者
HP :

コメント:
 で、これが下で触れた伝統にケチをつける主人公のお言葉。
 並外れた活躍をしながら、独断専行にはしるため上層部に嫌われ、辺境に左遷されたコール中佐。副長として着任した老朽艦<セオドア・ルーズベルト>のハッチでの一幕です。
 このやりとりが出てくるのは作品の冒頭で、虚礼に縛られない反骨の主人公を強調したかったのかも知れませんが、私は良いイメージは抱けませんでした。言っていることに理があったとしても、新任の中佐が初対面の少尉にかける言葉としては、底意地が悪いとしか思えません。
 ここで決定的にマイナスイメージをもってしまったせいもあって、せっかく「キリンヤガ」以来久しぶりのレズニックの新刊だというのに、あまり作品を楽しむことができませんでした。



「乗艦の許可をいただけますか?」……(中略)……「乗艦を許可します」

 出典: デイヴィッド・ウェーバー「新艦長着任!」(矢口悟訳)

紹介 :柴崎 薫 様
HP :
http://www.asahi-net.or.jp/~PH4M-TIRK/

コメント:
 新しい指揮艦を貰った主人公、オナー・ハリントンが自分の指揮艦に乗り込むシーンで副長と交わされる会話です。200年前の英国海軍で行われていた、そして今も行われている儀式が何百年後も行われている! 科学技術はもちろん、文化も価値観も変わっている中、変わらずに保たれているものもあるというのが、何となく嬉しくて、このやりとりを推薦します。

駄弁者:
 同じアメリカのミリタリーSFで、この風習にケチをつける人物がいたのを思い出して、同ジャンルでも見解は様々だな、と面白く感じました。とはいえ私としては、コメントの言葉に賛成です。元々の意味は薄れたとしても、伝統を尊重する意味が全くなくなるわけではないですね。



「私が時となる」

 出典: タイトー製作「サイキックフォース2012」

紹介 :ゆめうつつ 様
HP :

コメント:
 サイキッカーと呼ばれる超能力者たちが、核に代わる軍事兵器として国家権力に追われる時代。サイキッカー・キースはサイキッカーの理想郷を築くためにサイキッカー集団「ノア」を結成、人類への反旗をひるがえす。しかし、ノアの同志「時つかい」ウォンはノアを裏切り同胞を軍に売り渡す。そして自らは軍サイキッカー司令官となり世界征服を狙う……。
 ゲーメスト大賞を受賞した3D対戦格闘ゲームから。
 キャラクターの一人一人が「雷」「音」「光」「闇」「重力」といった超能力技を駆使して戦います。
 今回取り上げたのは時間を操る「時使い」(相手の時間の進みを遅らせ防御しにくくしたり、相手の時間を止めて自分だけがやりたい放題できる!!)ウォンが対戦相手に1本も取らせずに完勝した時に高笑いしながら宣言する台詞です。
 この台詞を聞くと、ウォンの強大な能力の誇示と野望達成への絶対的な自信が操作するプレイヤー(私)を満たし、悪の魅力に取りつかれそうになります……。

駄弁者:
>相手の時間を止めて自分だけがやりたい放題できる!!
 ギャグなんかSFだと、やりたい放題やりすぎていつしか自分だけが年を食ってしまうというオチが定番なんですが…。格闘家としては、使いすぎに注意したい能力なのでは。



もしおれたちのソロン王国が滅んでいないとしたらどうする?
たとえ悪い奴が支配していたとしても、おれはソロン王国へ帰りたい。
故国というのはそういうもんじゃないのか?

 出典: 石森章太郎原作・雪室俊一脚本「氷河戦士ガイスラッガー 第16話『夕子の羽衣』」

紹介 :土左衛門 様
HP :

コメント:
 DVD化記念の投稿です。3万年前、現在の人類が生まれる前に南極に栄えた超文明ソロン王国。インベム星人の侵略を受けたソロン王国は、強化改造人間・サイバロイドによる特攻隊ガイスラッガーを結成するが、冷凍睡眠テストの際天変地異によりそのまま目覚めず、ソロン王国は滅亡、インベムも氷河期に入った地球を利用価値なしと判断して放棄。それから3万年、再び地球を利用価値のある星と判断したインベムは侵略を開始、時を同じくしてよみがえったガイスラッガーは、既に変えるべき故郷が消滅した衝撃に耐えながら、地球人志岐博士の協力を得てインベムと再び戦うのだった。
 天女伝説の三保の松原に謎の布がかけられ、それを目標にインベムの円盤が出現。その布をかけたという少女、夕子は円盤が自分を迎えにきたという。180歳(!)で死んだ祖母の遺言で、布をかければ迎えが来てくれると思ってかけたのだという。分析の結果、布はインベムのものであり、彼女は地球にかって飛来したインベムの子孫だったのだ。インベムへの帰還を望む彼女を止めようとするガイスラッガーだが、ひとりオノ・リキだけは彼女をインベムに帰してあげようと主張する。それが今回のセリフです。「同じ国に生まれ、こうして同じ国に育った私たちにはわからん事だよ……」という志岐博士のセリフも重いです。
 インベムは夕子を皇帝の血を引いているから受け入れると申し入れるが、それは真っ赤な嘘。インベムでは王朝交代があり、夕子は亡命した前王朝の子孫であり抹殺命令が発せられていたのだ。そうとは知らずインベムの円盤に乗り込む夕子に、インベムの士官は銃を向ける。彼女を救おうと戦うガイスラッガーだが、夕子の乗った円盤は墜落してしまう。だが、そこで彼らは夕子の純粋な心がインベム兵士の心を動かしたことを知るのだった……。反骨の脚本家、雪室俊一氏の送り出した重いエピソードです。

駄弁者:
 題名になんとなく覚えはあるし、放映年代からして1、2回は見ていそうな気はするんですが、話などは全然覚えていませんでした。石森原作だけあって、なんか変身能力や加速装置を使いそうなキャラデザインです。
>故国というのはそういうもんじゃないのか?
 すでに亡い故国だと、余計そう思うのかもしれませんね。現にある故国だと、どうしても不満の方が先にたってしまって…。



「お父様のお考えはムウ人と同じです。そんなお父様が、真琴は嫌いです。嫌い、嫌い! 大嫌いです!」

 出典: 押川春浪原作・関沢新一脚本・本多猪四郎監督「海底軍艦」

紹介 :ゴジリスト中小路 様
HP :

コメント:
 良い意味で原作を大きく捩じ曲げてくれた、東宝SF冒険活劇より。
 内容は179集の砂漠の狐さんのコメントを参照していただくとして、艦長の神宮司大佐(演・田崎潤)が最終的にムウ帝国撃滅の為に出撃することを決めたのは、実に、一人娘の真琴(演・藤山陽子)の口から出た上記の文句であった。幼い頃に海軍軍人の父と別れ、その父の反乱行動を黙認した上官に育てられ、やっと再会出来たと思ったら、夢に見た父は死んだも同然。目の前の老紳士は二十年前に時計が止まったきりの、軍服姿の亡霊だった……そりゃ涙ポロポロこぼして叫びたくもなるでしょうよ。そして、そんな娘の叫びを聞けば、父親だって頭が冷える、いや、目が覚めるってもんです。
 海底軍艦轟天号の動力源は「原子力」という設定になっていたが、本当に轟天号を動かしたのは「娘の涙」だったというオチ。私はこれを「原子力」ならぬ「女子力」と呼びたい……。

駄弁者:
>「原子力」ならぬ「女子力」
 うまい! 轟天号(原潜だったんだ…)のドリルより、男親の心を鋭くうがったというところですか。
 実は画面に映っていないところで神宮司大佐はorz状態だったとか…。



あるいは、この世界と対峙する際に必要なテーブルマナー

 出典: ディズニー・ジャパン/ジーニーズアニメーションスタジオ制作「ファイアボール」

紹介 :陸ドム 様
HP :

コメント:
 DVDの解説書にて明らかにされた『ファイアボール作戦』についての一節。
 『無機、有機、全ての生命体から、あらゆる劣等感を取り除き、彼らが特別な理由が無くとも幸福感を抱くための、一度も実行された事はないが、史上もっとも残酷な軍事作戦』
 だそうですが、略すとテーブルマナーになってしまうようです

駄弁者:
 yutubeで全話見たけど、話の内容からは、タイトルの意味が全然うかがえませんでした。
…これを聞いても、やっぱりいまいちよく分かりませんが。



未来は、巨大で、無機質で、なまあたたかい

 出典: ディズニー・ジャパン/ジーニーズアニメーションスタジオ制作「ファイアボール」

紹介 :陸ドム 様
HP :

コメント:
ファイアボールのパッケージに書かれていた文章を。
なんかイヤな未来だなぁ(笑)

駄弁者:
 無機質でなまあたたかいのは、頷けますが、どのあたりが巨大だったかなあ。…執事の図体?



「イデは…科学特捜隊の隊員失格であります。今日限り、退職します…」
「イデ。何を言うか。君は立派な科学特捜隊の隊員だ。我々の仲間だ」

 出典: 金城哲夫脚本・円谷一監督「ウルトラマン 第13話『オイルSOS』」

紹介 :ゴジリスト中小路 様
HP :

コメント:
 まだまだあります、ムラマツ隊長の名文句!
 中東方面に出現したオイル怪獣ペスターが日本に接近、東京湾内で目撃された。ムラマツ隊長は二次災害を防ぐ為、怪獣を一旦湾外へおびき出してから叩く作戦を立案。湾内での発砲を厳禁した。が、イデ隊員がうっかり湾内で発砲。猛り狂ったペスターは火を吐きながら京浜工業地帯に上陸し、精油所は大火災に見舞われる。ムラマツ隊長が精油所の所長から責められるのを見て責任を感じたイデ隊員は、単身、炎の中へ飛び込み、消火を始めた……で、結局、ハヤタ隊員がウルトラマンに変身してペスターにとどめを刺し、ウルトラ水流で消火完了。イデ隊員も救出された。上記の台詞は、その時のイデ隊員とムラマツ隊長のやりとりである。
 勝手な行動は許されないことだが、自分なりの方法で落し前をつけようとした部下の心根にだけは或る程度理解を示している訳で、これがまたムラマツ隊長の魅力である。この後、二人のやりとりはこう続く。
「キャップ、本当ですか?」
「ああ、本当だとも」
「あぁ〜……よかったぁ(失神)」
めでたし、めでたし。

駄弁者:
 いいシーンにもオチがついてしまうイデ隊員のキャラの方が、なんか印象に残ってしまいます。



終わりはしない。
ハルカの夏休みは終わらない。
それは、いつまでも、いつまでも続く。

 出典: 秋山瑞人「鉄コミュニケイション」

紹介 :汽笛 様
HP :

コメント:
 滅亡した世界でロボットと暮らす最後の人類かも知れないハルカ。
 彼女が出会った、彼女にとってかけがえのない「二体の友達」との別れの後。
 もしかしたら、イーヴァやルークに出会ってしまったハルカこそが一番悲しいのかもしれません。どうであれ、一番失ったのはハルカなのですから。
 もちろん、これによってハルカは、多分人間の誰にもある「別れ」を知ることが出来たのかも知れませんが。
 ともかくこれからハルカは成長して老いてやがて死ぬのでしょう。
 ずっと夏休みのまま。変わらない日常の中で、イーヴァやルークのことを思い出しながら、もしかしたら、思い出せなくなってゆきながら。

駄弁者:
 「ずっと夏休みのまま」成長して老いるというのは、かなり絶望的なディストピアにも思えます。クレリックたちはハルカを支え続けることができるでしょうか(マンガ版には、他の生き残りも登場するみたいですが)。



一体何の冗談か、看板にはこう書かれていた。
『世界人類が平和でありますように』

 出典: 秋山瑞人「イリヤの空、UFOの夏」

紹介 :汽笛 様
HP :

コメント:
 この看板のメッセージは作品中に(恐らく)二回出てきます。
 今どころか昔の小学生でも書かなそうな言葉です。
 しかしこの作品の世界観を考えるとあまりにも皮肉ですし、同時に切実でもあるでしょう。
 特に浅羽や伊里屋や榎本達にとっては。
 二回目にこの看板が出てくるのは、壊れかけた伊里屋の手を引いて歩いた最後の道。その終着点としての海へと至る、トンネルの入り口。
 個人的には「犬を愛するものさ」のあのなんとも言えない悲しさを思い出しました。

駄弁者:
 浅羽が最後に辿り着く結論が、看板とは逆の「彼女を犠牲にしたあとの人類や平和など知ったことか」だったことを知って、もう一度読み返すと皮肉さが増しますね。
>「犬を愛するものさ」
 そういえば、浅羽と伊里屋が出会うのは「子犬作戦」でしたね。けど、エリスン「少年と犬」を引き合いに出すのはちょっと違うような…。



絹を受け入れてくれていたのは、家という「場所」ではなく、芹沢望という「人」だった。

 出典: 上野遊「彼女は帰星子女 2」

紹介 :山家 様
HP :

コメント:
 宇宙人と地球人のハーフである福山絹は、宇宙人の父とは不仲で、地球人の母は亡くなっておりある意味天涯孤独に近い状況です。そうした中、ホームスティしていた芹沢家が水害により破壊され、宇宙船に帰ろうと一旦、決意するのですが、主人公の芹沢望の温かさに触れ、望の傍に留まることに決めます。
 確かに、住む家が無いと辛いですが、それよりも自分を受け入れてくれる温かい家族、人がいないともっと辛いな、とつくづく感じてしまいました。

駄弁者:
 宇宙人のハーフと地球人のカップルが直面するのが、宇宙的危機ではなくて水害、というのは、地味ながらなかなか面白いんじゃないでしょうか。
 今年が伊勢湾台風50年にあたるせいで、図書館で当時の資料を扱う機会が多かったんですが、被害写真とかみていると、災害直後の地に留まろうとするのは、結構決断力がいるんじゃないかと感じます。たとえ受け入れてくれる「人」がいたとしても。



「他の星はどんなだ。」
「岩だらけだ。生命などほとんど見られない。」
「殺風景だな。その方がよほど醜いではないか。」
「そうかな。殺し合うことのない、適度な量の生命があるのだぞ。お主らはどんな景色を美しいと思うのだ。」
「春の景色だ。このように緑の若芽がいっせいにもえだし、花が咲き乱れ、蝶が舞い、鳥がうたう。」
「それ、やはりそうだろう。生命に満ちあふれている。お主らはその春の景色の中で演じられている、ひとつひとつの生命の熾烈なたたかいになぜ思い至らんのだ。そこでは生命同士が生きるために殺しあっているのだぞ。咲き乱れる花のかげに、咲きそこない、枯れ死んでしまった生命があるのだ。醜いぞ。このうえなくおぞましい景色ではないか。」

 出典: 半村良「妖星伝」

紹介 :ジョー・チップ 様
HP :

コメント:
 将軍吉宗の治世。紀州への道中、宇宙人星之介は地球人俊作にこんな醜い星は見たことがない、と言う。そのやりとりの中でのセリフ。
 食物連鎖とか、弱肉強食とか、生きている以上仕方がない、全宇宙共通の真理だろ?と勝手に思っていたら、そんな星は地球だけだった…。高校生の時、これを読んですごい衝撃を受けました。
 地球の生命は醜く、存在価値はゼロという事実を容赦なく突きつけられてもなお、生きる意味を問い続ける人々に心を打たれます。

駄弁者:
 私、この作品は未読なんです。ずいぶん勿体ないことをしている気がしてきました。
>このうえなくおぞましい景色ではないか
 「生物多様性」という言葉がもてはやされていますが、これも宇宙人からしたら「過剰に多様」ところでしょうか。あるいはほっといたら、地球も宇宙人の審美眼にかなう星になっていくかも知れませんが…。
 いや、最初から生命が適度な量だったならそれも美しいのかも知れませんが、殺し合いの結果として生命が減ってしまった姿は、「それはそれでおぞましい」と言われてしまうんじゃないかと思います。



地球がリングだ!

 出典: 今川泰宏監督「機動武闘伝Gガンダム」

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 ガンダムファイトは戦争の代替手段とはいえ、競技大会の体裁を取っていますのでたった7箇条ですが規則があります。基本的にはサバイバルイレブンと呼ばれる11ヶ月の予選と1ヶ月の決勝大会に共通するルールですが。決勝には特別ルールが適用される時があります。
第1条 頭部を破壊されたものは失格となる
第2条 相手のコクピットを攻撃してはならない(過失は罪に問われない)
第3条 破壊されたのが頭部以外であれば、修復し決勝リーグを目指すことが出来る
第4条 ガンダムファイターは己のガンダムを守り抜かなくてはならない
第5条 1対1の闘いが原則である
第6条 国家代表であるガンダムファイターは、その威信と名誉を汚してはならない
そして第7条がこれでした。
 試合中に周囲を破壊しても罪に問われず、また入出国は自由という意味なんですが、それだけじゃなかったんです。コーナーポスト状の人工衛星が4つ軌道上に浮かんでいて、怪しげなリングロープ状のビームが間をつなぐという、文字通り「地球がリング」!比喩として地球をリングに例えることは有ったかもしれませんが、文字通りリングにしてしまったのは、この番組くらいではないでしょうか。前の番組がVガンダムという重苦しい番組であったので、その路線を期待していたガンダムファンからブーイングが起きたのも当然の演出でしょうね。

駄弁者:
 OPに出てくる衛星とビームは、背後の地球と比較するとムチャクチャ大きいんじゃないかと思いましたが…。その後、ネオジャパンのコロニーの形(日本列島そのもの)を見て、そんなことに口を出すのは「愚の骨ッ頂ー! 」と反省。



「できるあいだは彼らを享有することです」とラシャヴェラクは静かにいった。「彼らがあなたがたのものであるのは、もうそう長いことではありませんからね。」
…(中略)…どんな時代のどんな親たちにも与えられてきただろう助言だった。

 出典: アーサー・C・クラーク「幼年期の終り」(福島正実訳)

紹介 :トオコ・モリエ 様
HP :

コメント:
 SFは、センス・オブ・ワンダーだ、ってことで。
 今回のテーマは、再び「SF・家族の情景」。
 地球より遙かに進んだ科学技術を持つ異星人・オーバーロードにより繁栄を謳歌する人類。だが、オーバーロードの真の目的は「人類」の繁栄ではなかった。投稿の文句は、オーバーロードの「真の目的」が顕現し、自分の子供が人類とは異なる「種」に「進化」した親が「これから子供をどう扱ったら良いのか」と問うたとき、それに答えたオーバーロード(ラシャヴェラク)の言葉と、それに続く文章。「地の文が尻切れトンボだぞー」と仰る方もおいででしょうが、私が感動した部分だけを抜き出したので、ご容赦を。そうです、子供は、いつまでも、「親のもの」「親の子供」というだけではいないものなのです。きっと、いろんな時代の親が、この親御さんのような感慨を抱いたことでしょう。たとえ、これ程劇的でなくとも。でも、最近の親どもを見ていると、ねえ。

駄弁者:
 言葉そのものはどの時代にもあったことでしょうが、「彼ら」を指すのががすでに人類ではなく「あなたがた」を指すのが残された人類全体とあっては、とうてい同じふうには聞けません。ご投稿の文句に続くのが「しかしいまそれは、前にはついぞ感じられなかった脅威と恐怖とを帯びた助言だった。」というのも頷けます。
 しかし、恐怖とともに若干の好奇心をも感じてしまったというのは、私が単なる読者にすぎないせいでしょうか。



「人間は素晴らしいものだがなぁ……一人もいなくなってしまうんですか。この地球上から……」

 出典: 松林宗恵監督・八住利雄・木村武脚本「世界大戦争」

紹介 :ゴジリスト中小路 様
HP :

コメント:
 196X年、日本国政府の努力も空しく、ついに人類は第三次世界大戦に突入した。ニューヨークが、東京が、ロンドン、パリ、モスクワが、巨大なキノコ雲と共に消滅していく……!
 貨物船の船員高野(演・宝田明)は、戦争勃発前に横浜を出港していて直接被爆は免れたものの、太平洋上から、遥か水平線の彼方で展開される世界の終わりを目撃することとなった。彼等にはもはや帰るべき祖国が無い。いや、北半球のほとんどの国が壊滅している。やがて南半球にも放射能が及び、地球は完全に滅びるだろう……。それでも彼等は「日本へ、東京へ、帰ってみよう」と決意し、180度針路を変える。その時、最高齢の船員である炊事班長(演・笠智衆)が寂しそうに呟いた一言が上記の台詞である。そして映画は焦土と化した東京の全景で終わる。
 彼等の航海は『復活の日』や『渚にて』の潜水艦乗組員と同様、過酷なものとなるだろう。しかし私は信じたい。彼等が一人でも多くの生存者を発見・救出し、協力し合ってサバイバルしていくであろうことを。破壊の為の戦いが止んだ後に始まる、生きる為の戦い。それこそが、真の人間の素晴らしさだと思うから。

駄弁者:
 からっとした寂寥感の感じられる言葉だと思います。泣く演技を嫌ったという笠智衆に似合ったセリフですね。



ローカルの星人だ

 出典: ジョージ・ルーカス監督「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」(戸田奈津子訳)

紹介 :Y 様
HP :

コメント:
 関税法案の撤回を求めてナブーを封鎖した通商連合を説得するため元老院の特使として派遣されたジェダイ・マスターのクワイ=ガン・ジンと彼のパダワン(弟子)であるオビ=ワン・ケノービは通商連合の船で毒ガスによって殺されかけ、ドロイド軍の船に紛れてナブーの地上に逃げます。
 そこでクワイ=ガンは両生類のような皮膚と突き出た目、ウサギのような耳を持ったエイリアンを成り行き上押し倒…じゃなくて命を助けることになって一緒に行動していたのですが直後に合流したオビ=ワンに案の定このエイリアンに付いて聞かれ、それに対する答えがこれ…ですがよく分かりません。
 ちなみにこれは日本語字幕での表記であり、吹き替えでは「さあ、何かな」と答えています。
 原語では「A local.」となっており、gooの英和辞書によると「地域住民」というような意味のようですが。

駄弁者:
 ふつうに「原住民だ」ぐらいにしとけばいいものを何でまた。「〜星人」って言いたかったんでしょうか。
 しかしまあ、このローカルの星人が、ゆくゆくは元老院で皇帝独裁の端緒を開く役割を演じてしまうとは、フォースをもってしても気づかなかったんですねえ…。



「誰だ、おまえ…?」
「ゼブラーマン、です」

 出典: 三池崇史監督・宮藤官九郎脚本「ゼブラーマン」

紹介 :ゴジリスト中小路 様
HP :

コメント:
 三池監督、クドカン脚本、そして哀川翔アニキ主演による異色のヒーロー映画より。
 女子高生の制服をハサミで切り裂く変態通り魔(演・柄本明)が宇宙人に肉体を乗っ取られ、怪人カニ男と化した。そのカニ男とゼブラーマン(演・哀川翔)とが初めて対峙した時の会話が上記の台詞。この時点では主人公はまだ本物のヒーローになりきれておらず、やや自信無さげな感じであった。映画館の客席のあちこちからクスクス笑いが聴こえたが、私としては「ヒーローの初登場って、案外こんなものかもしれないなぁ」と素直に感心したものである。
 さすがアカデミー脚本賞(『ピンポン』)と岸田戯曲賞(『鈍獣』)を受賞するだけのことはある。宮藤官九郎の紡ぎ出す台詞はふざけているようで奥が深い。

駄弁者:
 「、です」というあたり間の取り方に、絶妙の心許なさが(笑)。
 主人公が超人的ヒーローではなく、それにあこがれて真似ているだけの一般人。しかもその彼が単なる悪人だと思って退治しているのが、実は宇宙からの侵略者だったりする…なんてひねりまくった設定なんだ。



僕は宇宙の全てを見てきたわけじゃない。
でもそれなりに、自分の作ったルールがある。
あいつが宇宙の裏から来たといったなら信じたが、宇宙の出来る前といった。
あり得ない。僕のルールに合わない。
だからこそ旅を続けているのかもな。自分が間違っていると知るために。

 出典: マット・ジョーンズ脚本「ドクター・フー 第23話『地獄への扉』」(平田勝茂訳)

紹介 :土左衛門 様
HP :

コメント:
 事態の解決のカギを探して惑星の地下に降りていくドクター。いつかアイダに問われるままに自分の旅の目的を語り始めるドクター。
 最後の一行が、アメリカのSFTVとイギリスのSFTVを分けるところなのかもしれません(最近はアメリカのSFTVはそうでもないみたいですが)。どこかで自分の知ることがすべてではないという虚無。
 もっとも、そういう自己認識に到達するまでに英国人がやらかしたことはアメリカ人の比じゃないんでしょうが……。

駄弁者:
 自分のルールに合わないから直ちに認めないというのではなく、自分が間違っている可能性をポーズだけにしろ保留している点に好感がもてます。
>アメリカのSFTVとイギリスのSFTVを分けるところ
 まあ、表現がストレートなのか屈折しているのかの違いだけで、実際やっていることは大して変わらんじゃないかとも言えてしまいますが。



「ビースト」だってんなら尋ねるけど、どの「ビースト」、ん?
おたくが消えてから宇宙も大変でね、星の数より多くの宗教が生まれた。
……、おたくはどこの悪魔?

 出典: マット・ジョーンズ脚本「ドクター・フー 第23話『地獄への扉』」(平田勝茂訳)

紹介 :土左衛門 様
HP :

コメント:
 ドクターとローズが迷い込んだのは宇宙のはるか果ての宇宙探査基地。そこはブラックホールの周りを惑星が回っている「あり得ない惑星」。ドクターは探査隊員のアイダと地下に降りていくが、その惑星に閉じ込められてきた「ビースト(悪魔)」と名乗る何者かが目を覚ます。そこは「ビースト」を閉じ込めるために作られた牢獄だったのだ……。
 「ビースト」を前にパニックになる探査隊員たち、だがドクターは平然とビーストにこう尋ねます。「おたくはどこの(どの宗教の)悪魔? 」
 神も悪魔も人間の作ったもの。この場でこう言ってのけるドクターはさすがです。

駄弁者:
 人間の作ったものだったら、どこかの宗教で悪魔だったとしても、別の宗教では神様だったりするかもしれませんしね。
 その点、本物の悪魔がいてくれた方が、話が簡単で良かった?



「だめだ! ウルトラマンは強い!」
紹介 :ゴジリスト中小路 様 → 第157集


勝者が敗者との約束を守る保証なんてないのに

 出典: 夏海公司「葉桜が来た夏 4」

紹介 :山家 様
HP :

コメント:
 確かに、と思わず肯いてしまいました。人類の歴史上、勝者が敗者との約束を守ったほうがむしろ少ないかもしれません。そういう現実からすれば、人類はつくづく信用のならない相手と宇宙人から見られてもしょうがない気がします。

駄弁者:
 昔、吉岡平の「宇宙一の無責任男」シリーズで、勝者が条約無視を問われたことは一度もない、戦争は要は勝ちゃいいのである、とあったのを思い出しました。
 ご投稿の作品よりずっとおちゃらけた話ではありますが、この言葉に限り通底するものはあるかなあ、と。
>人類はつくづく信用のならない相手と
 地球人特有の性向なんでしょうかね。そうであってほしいような、ほしくないような…。



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