SF名文句・迷文句第223集

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「万事休すだ……」

 出典: 金城哲夫&南川竜脚本・野長瀬三摩地監督「ウルトラマン 第29話『地底への挑戦』」

紹介 :ゴジリスト中小路 様
HP :

コメント:
 またも報告します。ムラマツ隊長の名文句。出典は、黄金怪獣ゴルドン登場篇。
 大田山金鉱の金を喰い尽くしたゴルドンが、地上に現れて大暴れ。怪獣は素早く地中に潜り、ものすごい速さで移動しては別の地点に現れるので始末が悪い。そこで、科学特捜隊の出動となる。科特隊は新兵器『地底戦車ベルシダー』を投入。その設計者であるイデ隊員と共にムラマツ隊長も搭乗し、ゴルドンの潜む地底へ。しかし、改善すべき点多き試作車の悲しさか、ゴルドンの尾の一振りであっけなく故障してしまった(イデ隊員の言い訳めいた説明によると「前後の圧力には強いが左右からの打撃には弱い」という車体構造だそうで…)。暗い地中で立ち往生したイデ隊員とムラマツ隊長。やがて電気系統が弱り、空調機も停止。しかも、途中の洞窟内で救出した頭のおかしいゴールドラッシュ男が喚き散らしたり暴れたりして、車内の酸素を浪費する。そんな絶望的な状況の中、ムラマツ隊長が制服のネクタイを緩めながら呟いた一言が上記の台詞。
 この人にしてこの言葉ありかと思うと、なんともショッキングである。

駄弁者:
 「制服のネクタイを緩めながら」発言している様子を想像してみると、絶望的な言葉ほどには冷静さは失われていないようで、このあたりさすがと言うべきでしょうか。
 ところでこのゴルドンを倒した後に、150トンもの金塊が採集できたとのこと。日本の金の年間産出量が8〜9トン程度だと考えると…多少被害を被っても、不景気な昨今では出現してくれた方がありがたい?



「ここまでは教科書にも載っている」

 出典: ナムコ製作「ACE COMBAT ZERO THE BELKAN WAR」

紹介 :イル 様
HP :

コメント:
 本作のストーリーテラー(?)であるブレット・トンプソンがプロローグで語ったセリフ。
その後、彼は調査を進めていくうちに歴史の裏に隠された戦いを紐解いていくことになる。
 現実の世界でも多くの戦争・紛争があり、それらは様々な形で記録に残されてきました。
しかし、もしかしたら現実の世界にも誰にも知られていない戦争はあったかも知れませんね。

駄弁者:
>もしかしたら現実の世界にも誰にも知られていない戦争は…
 あったでしょうね、「戦争」と名付けられていないだけで…。
 逆に誰もが名前を知っている「戦争」でも、誰もが知らない多くのことが起こっていたに違いありません。



「知ってる? ロケットの始まりは戦争に使われるミサイルだったんだよ……」
「………」
「でも、そうやって戦争につながる危険なものを生み出しながら世界は、ここまで来たんだ……」
「シグマや……、イレギュラーもそうだというのか……? だが、それは……」
「わかってる。それはイレギュラーな考えだ……。だから、ぼくたちは戦わなければいけないんだ……」

 出典: カプコン製作「ロックマンX8」

紹介 :るーしー 様
HP :

コメント:
 「大発明はみんな兵器だ」に続いて。
 イレギュラーと呼ばれる暴走ロボットとの度重なる戦いで地球上は荒廃し、人類は月への移住のため軌道エレベーターを利用した月面開発に着手します。……しかしそのために必要な施設を管理する新世代ロボット達がイレギュラー化し、主人公のエックス達イレギュラーハンターが出動するというアクションゲームです。
 今回の名文句は、軌道エレベーター開発前に使用されていた宇宙基地で宇宙開発の資料等の管理ロボットだったイレギュラーとエックスの戦闘前の会話です。この管理ロボットは世界が破滅に向かう事を悲しんでいますが、世界自身がそれを望んでいるとも考えています。
 この言葉の裏付けなのか、最終決戦で(ネタバレ開始)今回イレギュラー化した新世代ロボット達は自分達の意思でイレギュラー化でき、またイレギュラー化した事が明かされます。(ネタバレ終了)

駄弁者:
 「イレギュラーな考え」が技術の進化としてはレギュラーだったという皮肉。
 しかしその皮肉を認識できる意識をもった兵器を作ること自体、兵器そのものの残酷さとは別の方面で酷だなあと思います。



「大発明か……。飛行機、戦車、ダイナマイト、原爆……。大発明はみんな兵器だ」

 出典: 手塚治虫「太平洋Xポイント」

紹介 :るーしー 様
HP :

コメント:
 手塚御大の戦争を鋭く風刺したヒューマンSFからの名文句です。
 コスモポリタン国のナーゼンコップ博士は、15年の歳月をかけて地上の空気が次々連鎖反応を起こして爆発する新兵器・空気爆弾(空爆)を完成させました。
 今回の名文句は、空爆の完成を「大発明」と大喜びで上層部に報告するのを聞いたナーゼンコップ博士の台詞です。
 残念な話ではありますが、戦争が技術力向上に役立っていた事は歴史が証明していて、元々軍事用に開発されたものが後に民生用に転用されるという事も少なくないのですが……。

駄弁者:
 直接軍事とは関係しないところで大発明が行われても、それが普及し発達するのは軍事利用に伴って…ということが多いように思います。
 長期間金をかけて研究できるのが軍事部門だったということなんでしょうが、認めるのはやっぱりちょっと悲しい。あとで民生用で大活躍したからといって、兵器としてのそれに殺された人が浮かばれることはないでしょうし。



「ボクはまた戻ってきた……ギルモンと会う前に」

 出典: 東映アニメーション制作「デジモンテイマーズ」

紹介 :安井賢一 様
HP :

コメント:
 デジモンアニメシリーズ第三作。デジタルワールドとリアルワールドすら飲み込む最悪の敵デ・リーパ。それを辛くも倒した松田啓人達とデジモン達。しかし、デ・リーパを倒す事でデジタルワールドとリアルワールドとの繋がりが切れてしまう。それは啓人達とデジモン達との別れを意味していた(私はこれを生で見て不覚にも涙してしまいました)。
 それから数週間後、啓人はギルモンと初めて出会ったガード下で不思議な光を見つける。そう、また物語は始まるのです!

駄弁者:
 よく知らなかったのですが、連続したストーリーではないものの5作もアニメシリーズが出ていたとは。
 原点となったゲームが、「たまごっち」+バトル要素がコンセプトだったというのをWikipediaで見て、何か時代を感じてしまいました。



「故郷だ。帰って来たぞ……」

 出典: A&Bストルガツキイ「地獄から来た青年」(深見弾訳)

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 平凡な集団の中の異能者の苦悩を描いた物語を投稿したので、今度は逆の作品から投稿します。
 果てしない戦争が続くある惑星。その戦争で瀕死の重傷を負った兵士ガークは、優れた文明を持つ惑星「地球」の人々に助けられ、地球に送られます。戦争が日常である惑星から「平和」という未知の環境に置かれたガークは環境になじめず、脱出のための様々な行動を起こします。
 投稿した台詞は、地球人がガークの要望を入れ、故郷の惑星に戻した後、彼の発した第一声から。
 「異常も日々続けば正常になる」というのは「戦場のメリークリスマス」のコピーでしたが、まさしくそれを体現したような作品でした。同時に「正常」というものは結局のところ、相対的なものなのではないか、とも深く考えさせられる作品でもありました。

駄弁者:
 戦争だろうと平和だろうと、いきなり「日常」が激変してしまえば人間はついていけない、ということなんでしょうね。



「それなら、神様、私たちを地上から一掃してしまって、改めて、もっと完全な人びとをおつくりください……でなければ、いっそ、私たちをこのままに放っておいて、私たちに自分の道を歩ませてください」
「私の心は憐れみでいっぱいだ」「私にはそんなことはできない」

 出典: ストルガツキー兄弟(A&Bストルガツキイ)「神様はつらい」(太田多耕訳)  『世界SF全集 24』に収録

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 さらに一つ、世界SF全集から投稿します。
 地球の中世さながらの惑星。そこでは封建制とファシズムがないまぜとなり、人びとを圧迫していた。
 そこには地球から派遣されてきた人々が、現地の人々に溶け込んで暮らしている。彼らの任務は消極的にではあるが血を流すことなく、社会の発展に手を貸すことだが、外部からの暴力により歴史を動かしえないことを知っている彼らは、この星では神にも等しい力を持ちながら善良な人々圧迫されていくのを黙ってみていくことしかできないのだった。
投稿した台詞は、主人公が助け出した人物が、そうとは知らずに主人公を「神」と仮託し、この世界に対しての救済をを求めた結果、全て否定されてしまったあと絶望の中お互いが呟いた台詞から。
 善良な人間ほど、苦境にある人を看過できず、苦しむ状況を表していると思います。
 そう言えば神の傲慢を描いた作品は多いけれど、神の苦悩を描いた作品は読んだこと無かったので非常に新鮮な感想を持った作品です。
 (作者名ですが、現在は「A&Bストルガツキイ」となっていますが、掲載紙に伴い、「ストルガツキー兄弟」と併載しました)

駄弁者:
 「歴史の発展法則」(今は昔、の感がありますね)に縛られている主人公が、ヒューマニズムとの板挟みに遭う…という発想、ソ連の作家の作品だと考えるとなかなかに意味深いものがあります。



(だって、世の中、悪いやつばかりじゃないか)(そいつらとつきあうなって教えたのはママなんだぜ)(だからぼく、そいつらと、どうやって話していいかわからないんだよ)(もう追い返してはくれないんだね)
(ぼくの周囲は悪いやつばかりなんだ)(ぼく、どうすればいいんだ)(みんながぼくを苛める)(みんながぼくを笑う)(追い返してよママ)(ぼくには追い返しかたが、わからないんだよ)

 出典: 筒井康隆「家族八景 『亡母渇仰』」

紹介 :トオコ・モリエ 様
HP :

コメント:
 しかし、「親が子を思ってすることに間違いはない」という「神話」を信じ込んで思い上がった親に育てられた子が、どうなるかと、いうと。
 投稿の文句は、「日本SF界御三家」の一人、筒井康隆氏の作品から。精神感応能力を持つお手伝いさん、七瀬が最後に勤めた「清水家」では、息子をこのうえもなく甘やかすと同時に、一神教における「唯一絶対の神」のごとく支配する母と、その母に絶対的に依存する息子がいた。息子は社会に出てからも、「自分の考え」を持たず、母の「いい子」でいつづけ、母は、そんな我が子を「王子様」のごとく扱い、他者にも、それを強いた。そのため、息子は「自分一人」では何も出来ない人間となり、「自分のおねだりを何でもきいてくれる」母が死んだとき、息子は幼児のごとく泣き続けることしか出来なかった。その息子が、母の葬式で(心の中で)つぶやいた言葉が、投稿の文句です。ちなみに、息子の言う「悪いやつ」とは、「自分の思い通りになってくれない他者」のことを意味しています(世の中、それが当たり前だっ)。ったく、二十七歳にもなって、これですか。うー、やっぱり、これ以上のコメントは冷静に書けそうにありません。ので、参考文献を、どうぞ。だってー、この文句を見たり、この作品を読んで、この「清水親子」を笑う親御さん達だって、いざ、「我が子」のこととなると、さあて、どうだか。あ、この国にだって「可愛い子には旅をさせよ」って言葉があったんだけどなぁ。「冬彦さん」も、「遠くなりにけり」だもんね。
参考文献:斉藤茂男「父よ!母よ!」
     本多勝一「子供たちの復讐」
     河合隼雄「母性社会日本の病理」

駄弁者:
 この作品の続編「エディプスの恋人」に出てくるお母さんがこの息子の親だったら、最強最悪のパターンですね。
>「冬彦さん」も、「遠くなりにけり」
 流行りましたねぇ。もう20年近く前の作品だから、十代の方は知らないでしょうが…。私は一度も見たことがないのですが、冬彦さんの最後のセリフは「僕は物になりたい。機械になりたい」だったそうで。この清水家の息子も、母親の物、機械で一生を送れたら(そんなことできるはずがないのですが)、幸せだったのでしょうか。



かおり……そんな……お母さんは、ただあなたの為を思って……あなたによかれと思って……

 出典: 新井素子「ひとめあなたに…」

紹介 :トオコ・モリエ 様
HP :

コメント:
 SFは、センス・オブ・ワンダーだ、ってことで。
 今回のテーマは「SF・家族の情景」。でも、今回は、気が重いなぁ。とはいえ、気を取り直して。まずは「SF界のプリンセス」こと、新井素子女史の作品から。
 母には、二人の娘がいた。長女は「よく勉強する」「完全に手のかからない」「素直ないい子」の自慢の娘。次女は我が強く、受験生なのに水泳に熱中しており、そのことで母と何度も衝突していた。そんな最中、一週間後に巨大隕石の衝突により人類が滅亡することが判明する。狂乱する人々を尻目に、長女は淡々と受験勉強を続けるのだった。「母が敷いたレール通りに」その様を見て、母は惑乱する。「私の娘は狂っていたの?私は間違っていたの?」投稿の文句は「あたしの時間を返して!何もかも、お母さんのせいよ!」と母を詰る次女に向かって、母が言った言葉。うーん、気持ちは分かるんですけどね。でも、私から見て、このお母さん、卑怯です。「この言葉」を言えば、全て免罪されるとでも思っているんですか。それに、傲慢です。「私は娘を愛している。だから、私の行為は全て正しい。」なんて(私には、そう聞こえます)。でも、同時に「このお母さんも、可哀想だ。」とも思うのです。それは、このお母さんが「親は子が可愛くて当たり前。親の行為は全て子を思ってのもの。だから無条件に許されるべき。」という「神話」に囚われているからです。
 心理学者の岸田秀氏は「人間にまつわる全ての事柄は『幻想』である」と主張されています。この場合「幻想」を「人為」と言い換えた方が分かり易いでしょう。どうして、この国の「親」も「子」も、そういう風に考えられないのでしょうか。そうしたら、この親子のみならず、もっとずっと多くの「親子」が「楽」になれるでしょうに。

駄弁者:
 「ひとめあなたに…」と言えば、前に別の方からご投稿をいただいた「由利子さんのビーフシチュー」を思い出しますが、それに比べると、今度のは極限状態でなくてもありそうな状況ですね。
 このお母さんを卑怯、傲慢と言うのは、多分その通りではあるんでしょうが、ちょっと酷な気もします。



日付が、変わってない!…

 出典: 村上もとか原作「JIN −仁−」(TBS日曜劇場)

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 「医家版幕末未来人」たる「JIN -仁-」が、TVドラマになりました。どうなるか不安半分で見始めましたが、なかなかどうして健闘しています。
 以前、主人公の南方先生を評して「過去を変えることに躊躇しない」と書きましたが、TVドラマ版では更に「積極的に変えよう」としています。なぜならそれが「現在」にいる昏睡状態の婚約者を救う事になるからです。
 過去に飛ばされた南方先生、持っていた婚約者との写真を心のささえにして日々を過ごしていました。
 彼が死ぬ筈だった人を救うたびに写真が少しずつ変わります。ポーズが変わり、更にベッドで撮った写真がソファで座る写真に。日付はそのままで。
 映画「BACK TO THE FUTURE」でも、変化する写真が行動の指針になるシーンがありましたが、これは効果的な小道具だなぁ、と感心しました。
 でも南方先生、自分で変えてしまった「現在」に、自分は存在できるんですか?
 あ、彼女が助かればそれでいいのか。

駄弁者:
 健闘のうちに放映終了してしまいました。放映中に掲載できなくて(いつもながら)すみません…。
>変化する写真
 「BACK TO THE FUTURE」のときに思ったのですが、破滅的に未来を変えてしまう選択肢を選んでしまって、写真が真っ白(あるいは真っ黒)になってしまう…ということはないんでしょうか。



学は、私の──マエスタですから。

 出典: 夏海公司「葉桜が来た夏5」

紹介 :山家 様
HP :

コメント:
 伯母から主人公を守るように言われたアポストリのヒロインは、上記のように答えます。その時、主人公は理解できなかったのが、何とも皮肉と言えば皮肉なのですが、アポストリの妹から説明を受け、主人公は愕然とします。アポストリは生涯で1度、1人とだけ結べる契約があり、その契約遂行のためなら、死を厭わないどころか、法を破り世界を敵に回すことも躊躇わない、その契約相手がマエスタなのだというのです。人間には多分分からない、と言われ、あんたが死ねば奴もためらわずに後を追う、とまで言われます。何ともアポストリの愛は、苛烈と言えば苛烈な愛だな、と思いました。そこまで、1人の異せいを愛せるのは素晴らしいと言えば素晴らしいのですが、場合によっては重荷になるな(実際に主人公にとって、途中まで重荷になりましたし)とも思いました。

駄弁者:
>場合によっては重荷になるな
 「場合によっては」どころか、ほとんどの場合で重荷になるだろうと思ってしまいました。こういうシチュエーションで、純粋な想いに感動するより先に負担を思いやってしまうあたり、性分なのかそれとも年齢のせいなのか…。



いったい、こんな返答を教え込んだプログラマは誰だろう?

 出典: 瀬名秀明「ハル 第4話『亜希への扉』」

紹介 :汗(はん) 様
HP :

コメント:
 メンテナンスが終了したロボット・ロビイを亜希に届けにいくまえ、ふと「亜希のところに帰りたいかい」と聞いたときのロビイの返答に、心のようなものを感じた良祐は、引用のように思う。
 もしかしたら、単なるプログラムなのかもしれません。最近のマックが「はぎおもと」「じゅんいく」と打ったら「萩尾望都」「荀ケ」と変換するようになったように(数年前まではだめでした)、多くのプログラマがどんどんプログラムを書き足していったおかげで、ロボットがどんどん人間と見分けのつかない反応をするようになるのかもしれません。
 そんなことを百も承知の良祐が、ロボットに心を感じた、気がした。もしかしたら、という期待を、こちらにもさせてくれる言葉です。恋に舞い上がっているせいかもしれないと、ほほえましくもなる場面です。

駄弁者:
 どんな返答だったのか、すごく気になってきました。
 題名もいいですが、少女が持っているロボットの名前が「ロビイ」とは鉄板ですね。
>最近のマックが「はぎおもと」「じゅんいく」と打ったら…
 ずっと前に年賀状を作っていたとき、「きんが」「しんねん」を「金が信念」と変換した当時のうちのATOK。持ち主が意識していないホンネまで読み取った…?



これからのロボットには、死のプログラムが必須になります。賭けてもいい。死はぼくらを、永遠の友情という地獄から解放してくれるんです。

 出典: 瀬名秀明「ハル 第4話『亜希への扉』」

紹介 :汗(はん) 様
HP :

コメント:
 2001年から2030年までの、ほんの少し未来に起こりそうな、人間とロボットをめぐる短篇集『ハル』。(書かれたのは、2000年〜2002年)
 この短篇集の中で、未来はけっして明るくはないし、ロボットの大きな進化が描かれるわけでもない。むしろその限界が強調されているようでさえある。ロボットが社会に浸透していくなかで人々が何を考え、何をするかに重点がおかれる。  第四話「亜希への扉」では、ロボット・コンサルタントの杉原良祐の事務所に、捨てられていた人型ロボットを抱えて亜希という少女が訪れる。
 引用の台詞は、ロボットの不法投棄を良祐にみとがめられた男の台詞。一人暮らしのさみしさを癒すためにロボットを同居人にしても、ロボットはプログラムされた以上には成長しない。男はロボットが衰弱し死に至るようにみえるプログラムを作ってインストールした。自分がロボットに飽きてしまう前に、看取る哀しみで思い出を残すために。
 やっぱり、人間とのふれあいにとってかわるようなロボットやコンピュータはありえない、ということでしょうか。ロボットを友達や介護者として進化させようとする向きには、否定的な意見ではあります。個人的には賛成ですが、ロボット物としては、楽しくない結論になりそうです。そういう意味では、「迷」文句になるのかな。
 そうはいっても「亜希への扉」というタイトルから期待してしまうとおり、ロボット物としてはほろにがいとはいえ、それなりに甘酸っぱい香りがして、『ハル』全体の救いとなっている、とも言えます。

駄弁者:
 成長する度合いがもっと少なければ(反応のパターンが乏しければ?)人間はそもそもロボットに愛着を持たないだろうし、愛着を持てるぐらいに成長したらしたで、飽きてしまう前の「自然死」を望むようになる。多分私もロボットを捨てた男と同じように感じることでしょうが…わがままですねぇ。
 成長のプログラムがより精緻になって人間が飽きる範囲を超えれば、問題はなくなるんでしょうか。…それもちょっと違うような気がします。



 しかし、決心することはたやすいが、小咄を覚え他人に話すことは、初めのうちは容易ではない。さらに相手を面白がらせることは、一段と困難である。なぜ困難なのか。その理由を短篇作法と関連させながら、いくつかあげてみることにする。
 第一の理由。他人とはめったに感心してくれぬ存在だからだ。この現実に直面し、実感することはいいことだ。当人がいくら苦労したからといって、相手には感心しなければならない義務はない。世の中を甘く見てはいけない。
 第二の理由。話し方がうまくないのである。さあ話すぞ、と意気ごんだら効果はあがらない。また、まわりくどくてもいけない。…(中略)…
 第三の理由。相手がすでに知っている場合が多い。つまり、平凡なのである。…(中略)…
 第四の理由。強引に持ち出すからである。持ち出したければ、さりげなく話題を誘導しなければならない。…(後略)

 出典: 星新一「短篇をどう書くか」  福島正実編『SF入門』に収録

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 ……なればこそ、作家はストーリーテリングに工夫をこらし、めい文句投稿者は、めい文句のめい文句たるゆえんを人に伝えようと、コメントに苦心するわけですが。
 「豪華執筆人による本邦初のSF入門書」(帯より)から、SF短篇のアイデアを効果的に生かすプロットを作る方法として、小咄を数多く覚え、語りの技術をコレクションするのが良い、と解説するくだりより。
 (まあ、短篇のみならず、あらゆる文章を書く上で参考になりそうな心得ではあります。Da Benchへの書き込みとか)
 しかし、いつもながらクールというか、ある種そっけなくも思える文章。
作家の人生を作風と直結させるような論法は、私の好みではないのですが(ややもするとそれは、作家の想像力を過小評価する結果になりはしませんか?)、星さんの書きぶりには、やはり、父親のつぶれかけた会社を立派につぶした((C)北杜夫)経験が影響しているのだろうかと思わないこともない。
BGM:「メッセージ」佐野元春

駄弁者:
 このテーマで、この出典著者以上に説得力のある人は、なかなかいないですね。
>第三の理由。相手がすでに知っている場合が多い。
 めい文句のご投稿の場合、小咄と違ってこの点はマイナスにならないんじゃないかと思います。知ってれば知ってたで、記憶のリバイバルを楽しめますから。



「あの御老人は、帝国からの亡命者でね。軍にとってわりと重要な人だったので、私らが惑星ハイネセンまで同行するよう、上層部うえから命令されておったのです。ですから、…(中略)…についても、私らの一存で決定できんのですよ。ご迷惑でしょうが、御諒承ごりょうしょうください」
 事情を四捨五入して過不足なく説明できるのは、パトリチェフの貴重な才能である。さらに、軍の機密の存在をほのめかせながら、けっして高圧的にならず、悠然たる態度で結果的に相手の好意的な協力を引き出してしまうあたりが、さらに貴重な為人ひととなりというものであった。

 出典: 田中芳樹「銀河英雄伝説外伝4 螺旋迷宮(スパイラル・ラビリンス)」

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 めい文句へのコメントを考えるときなどは私も「四捨五入して過不足なく説明」を心がけてはいるのですが。
 言うはやすし行うはきよし、なかなか目標どおりには参りません。
 (なお、ネタバレ防止のため、引用の一部を省略させていただきました)
BGM:「僕の言い訳」小泉恒平

駄弁者:
 正伝では下手をすると「よせよ、痛いじゃないかね」しか印象に残らなかったりする彼ですが、外伝4では活躍していました。…ご投稿の文句を見ると、意外と広報の才能があったのかなあ、とも。



「あなたは研究室で強大な力を創造したあとで、人類にこの力が悪用されるのを平然とながめ、このようにいう、《わたしは政治から離れている》」

 出典: アリアドーナ・グロモワ「自己との決闘」(草柳種雄訳)  『世界SF全集24』に収録

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 もう一つ、同じ本から投稿します。
 新聞記者、ライモン・レモニエはある日局長より呼び出されある手紙を見せられる。  その手紙は神経生理学の権威、ロラン教授の妻、ルイザから局長に助けを求めるものであった。ルイザの甥としてロラン教授の下にもぐりこんだライモンだったが、そこでみたものとは…。
 投稿した台詞は、ロラン教授がかつての同僚との討論の中で相手が発した言葉から。
 たしかにそうかもしれませんが、「包丁を使った犯罪が起こったからといって、鍛冶屋を非難するのは間違っている」以上、教授を責めるのは酷だとも思います。

駄弁者:
 こちらは女性作家の作品ですね。解説の著者紹介で、第二次大戦中ゲシュタポに捕らえられ、収容所送りの途中で脱走…と書いてあるのが目を引きました。下のゴールもレニングラード戦に参加していたとのことで、こういう生の戦争経験をしている人の書いたものだと思うと、重みが違ってきます。



私は、記憶の物理的、化学的、心理的本質や構造を明らかにしたところで、人間の無限の深みは解き明かすことはできない、と確信するようになった。人間は単に記憶だけではないし、ましてや機械メカニズムではない。

 出典: ゲンナージー・ゴール「クムビ」(飯田規和訳)  『世界SF全集24』に収録

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 主人公 ミケランジェロ・ペトロフはある日、時間研究所に勤める父から宇宙船が受信したある種の信号を解読したことを教えられる。
 その信号は、ウアザという名の地球より数万年進んだ文明をもつ惑星からのメッセージであることが判明したが、同時にある奇妙な事実も判明した。その中には無生物を表す言語が存在しなかったのだ。
 やがて父の後を追い研究所に勤め、疑似人生をシミュレートできる「クムビ」を研究する主人公の下についにウアザ人が姿を現した。
 投稿した台詞は、主人公が「クムビ」を通して得た結論で、その後、彼は自己と他者の区別とその内面に思索を巡らせます。  デカルトとライプニッツの昔から、生体機械論にはその是非が討論されていますが、この作品では単純に人間と機械との区別だけではなく、地球人と宇宙人との差異にまで考えが及んでいるように思えます。まぁ、実際ウアザ人との差が大きすぎて洒落にならんのですがね(笑)。

駄弁者:
 全集24巻は、ソ連作家3人の長編3作を収録。
>人間の無限の深みは解き明かすことはできない
 それができないことそのものに、人間の本質がある…ということのようですね。疑似人生すべてを記憶しているクムビに「忘れる」ことを覚えさせるくだりが面白かったです。
 それと、ウアザ人の社会でも共産主義が勝利していることが前提となっているあたりにもクスリときましたが、まあ、そこは流すところでしょう。



「彼らにしても、まったくあたらしい状況に立向かっているんだってことを思い出してやりたまえ」
「あたらしい?何を下らない!その昔、捕鯨船に乗りこんだ人間とどう違うっていうんだね?帆船にはじめて乗った男たちにしてもさ?…(後略)…」

 出典: クライブ・ステープルス・ルイス「やさしき天使達」(中村妙子訳)  『別世界ににて』に収録

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 地球から派遣された火星探索隊は、3年の任期をあと半年まで勤めたところで細かなミスや小競り合いが頻発するようになっていた。そんなときに地球から予定外の連絡船が送られてくる。そこには、彼らの状況を改善する道を開くために2人の老婦人が乗客として乗っていた。彼女たちの示した新しい道とは…。
 禁欲生活がストレスを生んでいるだと推測した地球側は、欲求不満を解消させるべく女性を送り込んできたのです。火星で半年もの間、見知らぬ男達の相手をするために参加したのは引退して久しい売春婦と、自らを実験台に、と考えた老心理学者。彼女たちを派遣した団体は鎮欲・不満解消・寛容婦人高級療法士連合(通称チンプンカンプン連)と名付けられており、作者としては進歩的な女性が気に入らなかった事を伺わせます。
 受け入れる側の火星組は会話のように強烈な拒否反応を起こしていますけど、でも実際に火星行きとなったらこんな古くて新しい心配もしなければならないのかも知れませんね。

駄弁者:
 図書館にあったので読んでみました。彼女たちに拒否反応を示していない唯一の登場人物「修道士」が、彼女らが来た目的を一番必要としていないというのが笑えます。
 実際、3年ぐらいだったら諸々の代替手段(笑)で何とか耐えられるんじゃないかなあ…。



尊厳が無くとも飯が食えれば人は生きられる
飯が無くとも尊厳があれば人は耐えられる
だが両方無くなると もはやどうでもよくなる
何にでも頼る
散々おれが一向一揆にヤられた手じゃもの
国をかっぱらうには一番の手よ

 出典: 平野耕太「ドリフターズ」

紹介 :屋良一 様
HP :

コメント:
 月刊漫画誌ヤングキングOURs掲載作より。
 本能寺で火の手から逃げているうちに見知らぬ世界に迷い込んだ織田信長は、同じく迷い込んできた島津豊久、那須与一と共に、中央政府の種族虐殺政策にさらされているエルフの村を救うべく立ち上がりました。
 で、その第一歩として、自分の命の恩人でもあるエルフ達の村の畑を焼き払いました。
 これでエルフ達は自分の言いなりになって中央政府相手に戦うしかなくなる。という訳です。
 さすが半端ねえ。

駄弁者:
 「HELLSING」の次回作はまた、ぶっとんだ設定のようで…。前作の少佐は「手段」のために「目的」を選ぶ御仁でしたが、この信長サンも「手段」と「目的」の優先度がちょっと微妙…。



おまえはこの先誰よりも優れたその能力をなるべく隠し通さねばならん
他人と親しい関係を持つ事も極力避ける必要がある
その人を使ってお前を手に入れようとする人間が現れるからだ
愛する人がおまえの翼を鉛に変える
最悪の結果は共倒れだ
あの研究所にいたら何も知らずに安楽にすごせたかもしれない
しかしそれでも
自分の意思で自由に生きる事の方が何よりも優るのだよ

 出典: 弓月光「瞬きのソーニャ」

紹介 :屋良一 様
HP :

コメント:
 ビジネスジャンプに半年ぶりに掲載された「瞬きのソーニャ第2話/友達」より、旧ソ連で超人間製造研究の成果として産み落とされた十にも満たぬ少女に対し、ベルリンの壁崩壊にソ連体制の終わりを確信して、歴史の恥部として始末される運命から彼女を救い出すべく研究所を破壊し逃げ出した警備責任者ザイツェフが教えた人生の指針です。
 自分無き後も彼女が生き延びていけるよう考え抜いた末の教えだったのでしょう。
 第2話の冒頭、1998年の香港にザイツェフの墓があり享年1995年と刻まれていますから、
 逃避行を始めた1989年から6年近く彼女を守り抜き、力尽きたものと思われます。
 その経緯は第3話以降描かれると思われますが、予定では来年2月ですので、コミックス等にまとまるまで何年かかりますことやら。

駄弁者:
 作者の名前、久しぶりに見た気がします。エロチックなコメディ主体の印象があるので、この手のシリアスな話はちょっと意外に感じます。



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