SF名文句・迷文句第209集

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ロボットにとって、ヒトはゴールでもなければ、通過地点でもない。ロボットにはロボットの進む道があり、ゴールがあるはずだ。

 出典: 山本弘「アイの物語」解説(「山本弘のSF秘密基地」内)

紹介 :Y 様
HP :

コメント:
 あ……ありのままに今起こったことを話します。
 『何気なくこのサイトの文章を読んでいたと思ったらいつのまにかセブンアンドワイで3月25日に発売された文庫版を注文していた』
 な……何を言っているのかわからないと(以下略)
 最近文庫化された山本弘さんの小説「アイの物語」についての作者本人による解説ページにおいて、山本さんは「鉄腕アトム」でのスカンク草井の「アトムは完全ではないぜ。なぜなら悪い心を持たねえからな」「完全な芸術品といえるロボットなら、人間とおなじ心を持つはずだ」というセリフに対して以下のように反論しています。
 「この言葉は、「完全なもの」=「人間と同じもの」という誤解に基づいている。実際、多くの人がそう考えている。ヒトは万物の霊長、進化の頂点にある。進化を続けるロボットにとって、ヒトは到達すべきゴールであると。 そんなことはない。」
 それでもSFにしろ実際の研究にしろどんなロボットを作りたいか(描きたいか)考えるのは結局ヒトであるのも事実ではありますが。

駄弁者:
 少なくともスタート時点では人に似せて作られているんだから、ある程度まで人間と同じと考えてしまうのは仕方のないことではあるんですが…。
>「アイの物語」
 私、この作品の値打ちの半分以上は最後の2話にあると思ってます。



“ホームレス人工知能 僕空。”(←本のタイトルです)
「昔から好き勝手やってたのね…」

 出典: サンライズ制作「宇宙をかける少女 第8話『暗闇へのいざない』」

紹介 :いね 様
HP :

コメント:
 主人公がピンク色だったり、色々なデザインがテカテカしていたりしたので敬遠していた作品ですが、誰かが褒めていたので視聴してみると、かなり気合の入ったSFアクションコメディでした。
 特にコロニーを管理する人工知能の性格が実におもしろく、彼らは、人類に反旗を翻した初代コロニー管理用AIのネルヴァルを除けば、極めて、幼稚な精神をしています。
 初代のネルヴァルが、その全能性より人間の補助を必要とせず、一方的に人類を管理しようとしたのに対し、後代の人工知能たちは、そうならぬよう意図的に人間のサポートを必要とさせるためにデザインされているような気がしてなりません。
 上記の文章は、主人公格のAI『レオパルド』が、自作した本のタイトルと、それに対する人間の反応です。
 他にも、幼稚な精神を守るため閉回路になっていて自分ではインターネットに繋げないなど、面白い設定もあります。ネット環境を取り上げられて、やることが無くなり一人しりとりを始めるAIを初めて見ました。

駄弁者:
 AIが人類に対して愛想を尽かさないようにするためには、人類が愛想を尽かしそうなAIを作るしかなかった…!?
>“ホームレス人工知能 僕空。”
 ほっといたら「世界の中心でAIを叫ぶ」とか「コロニーの品格」とか作ってそうです。



われわれの場合は速い文明でした

 出典: 池澤夏樹「やがてヒトに与えられた時が満ちて……」

紹介 :陸ドム 様
HP :

コメント:
 主人公に禁じられた過去を学ばせ、伝染病であると偽ってもう一つの人工衛星LBに一人だけ移して、結局コンピュータは何がしたかったのかと言うと、コンタクトを取ってきた宇宙人へのメッセンジャーにしたてあげることでした。
 宇宙を移動する文字通り天文学的な時間の孤独に耐える精神、人類と言う種と、その歴史、思想、文化、感情などを、感情的にはならず、かといって第三者的なわけでもない、正しく伝えるために。
 改造されて宇宙を進む主人公が、自分達の文明をどう説明しようかと自問自答しているシーンからです。
 文明に成功も失敗も無い。興り、変化し、消滅する。人類の場合は進化と言う力に魅せられ、加速の誘惑に勝てずに終末を早めてしまったと。

駄弁者:
 宇宙人へのメッセンジャーというか、パイオニア10号に載せた金属板の高機能バージョンという扱いなんですね、この主人公。なんか哀れだ…。



「なんだか、ゾウを呑んだウワバミみたいだね」

 出典: 池澤夏樹「やがてヒトに与えられた時が満ちて……」

紹介 :陸ドム 様
HP :

コメント:
 主人公がコンピュータに出された問題、宇宙人から送られた物理や化学などの情報に、毎回必ず存在する、所々挿入されている解読不能の信号はどういう意味か?という問いに、図を見た主人公の恋人が言った感想です。
 彼女はこの後、これは『やあ!』、私はあなたに友人として声を掛けますよ。お元気ですか? 私は元気です。これからも仲良くしましょうね。そういう意味を全部一語に収めて、気持ちを込めた『やあ!』であると推測します。
 主人公は考えてもわからなかったので彼女の言ったとおり『やあ!』だと答えますが、不正解でした。
 あってるかどうか確かめようが無いので『わからない』が正解なんだとさ。

駄弁者:
名文句なのは、むしろコメントにある『ゾウを呑んだウワバミ』への解釈のほうでしょうね。
>『わからない』が正解
 むかしマークシートのテストで「正しいものを選べ」という問題の選択肢に「この中にはない」というのがあって、それが正解…という意地の悪いのがあったのを思い出しました。



グーみたいな奴がいて
チョキみたいな奴もいて
パーみたいな奴もいる
誰が一番強いか
答えを知ってる奴いるか?

 出典: 小山宙哉「宇宙兄弟 5巻」

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 子供の頃、親指を出した「グー」(カッコいい)や、3本指の「チョキ」(3倍切れる)や、手の甲を上にした「パー」(手のひらよりちょっと堅い)やらで、同じ「グー、チョキ、パー」より強い、と屁理屈をこねた事はありませんか?僕はあります。
 そんな事はさておき
 2週間の閉鎖空間を共に過ごす宇宙飛行士選抜3次審査の最終課題は、「全員の同意の元、5人の中から2人、宇宙飛行士としてふさわしい者を選ぶ」というものでした。
 毎日の課題の成績や投票など、選考方法を決めかねていた主人公は、「ジャンケン」を仲間に提案するのでした。
 実に主人公らしい選択ですが、これは3次審査に残る位優秀な仲間だからこそ使える方法であって、屁理屈をこねるような人がいてはダメですね。

駄弁者:
 私のところでは親指と人差し指を出して、残り3本の指を浅く曲げた状態の手が「グー、チョキ、パー」の3つの要素を合わせ持っているから万能手で一番強い…という屁理屈がありました。
 そういうグーチョキパー兼備のスーパーマンなどそうはいないから、ご投稿のセリフが生きてくるわけです。



「(前略)…午前0時の時報と共に、子供たちのオモチャが一斉に凶器になるんだ。私のばら撒いたオモチャがな。催眠状態に於かれた子供たちは、私の思い通りに操ることが出来る。子供たちの持つ最新鋭の武器は地球上のいかなる武器よりも強力だ。まして、地球の大人たちは子供には武器を向けはしないだろう。だから、子供たちは何の苦労も無く、ごく平和的に東京を、日本を、全世界を、たちまち占領してしまうという計画だ…どうです? お解りかな、0指令の内容が」

 出典: 上原正三脚本「ウルトラセブン 第9話『アンドロイド0指令』」

紹介 :ゴジリスト中小路 様
HP :

コメント:
 玩具店の爺さんに化けていたチブル星人が、モロボシ・ダン隊員とソガ隊員の前で自信満々に語った侵略計画である。が、果たしてそのとおりになるだろうか…。
今から30年前、私が中学生になって歴史というものを学び始めた頃、沖縄出身の教師が「両親から聞いた話」としてこんなことを生徒たちに語った。
「沖縄の戦いでは、君たちと同じぐらいの年の少年少女が背中や胸に地雷をくくりつけ、アメリカの戦車に次から次と体当たりしていきました。そんな少年少女を、アメリカの戦車兵は片っ端から機銃で皆殺しにしたそうです。そうしないと自分たちが地雷で吹っ飛ばされてしまうからです。それが戦争です。大人も子供もないんです。情容赦もないんです。戦争は大人を鬼にします。その鬼になった大人のせいで、子供たちの未来まで奪われます。君たちは鬼にならないで下さい。子供たちに平和な未来を約束する、優しい大人になって下さい」
私は大きなショックと深い感銘を受けた。だから私は思う。チブル星人の計画が実行されたら、やはりウルトラ警備隊は躊躇無く全力で抵抗するに違いないと。それはまさしく、沖縄決戦の再来だ。子供たちを兵隊にするチブル星人も鬼なら、それを迎え撃つ地球の大人たちも鬼だということになる。恐ろしい展開が予測されるではないか。如何にも沖縄出身の上原正三らしい脚本だ。

駄弁者:
>やはりウルトラ警備隊は躊躇無く全力で抵抗するに違いない
 下の「一度”戦”が始まっちまったら 正気を失った連中があふれることになるんだよ」を地でいくような様相ですね。
 より恐ろしいのは、異星人であるチブル星人は、良心の呵責なくそれが行えるだろうというところでしょうか。



(トモヒロハ)(ワタシノ)(ムスコデス)(オンナトシテ)(ワタシハ)(アナタヨリ)(トモヒロヲ)(アイシテイマス)(ダカラ)(トモヒロガ)(タイケンスル)(ハジメテノ)(オンナノ)(ヤクワリヲ)(ワタシト)(カワッテクダサイ)

 出典: 筒井康隆「エディプスの恋人」

紹介 :ていおんか 様
HP :

コメント:
 「家族八景」「七瀬ふたたび」に続く「七瀬三部作」の最終章。
 まさに「エディプスの恋人」というタイトルにふさわしい言葉ですね。
 いやしかし、実は私はこの本を初めに読んだので割と素直に読めたのですが、初めから読んできた人はこれ、大丈夫なんですかね^^;
 結構人を選ぶような気がします。
 それにしても、いくらなんでもこのお母さん過保護すぎじゃないかと。

駄弁者:
 キリスト教の神様は「天なる父」でしたが、もし母親だったら。それも過保護な母親だったら。あるいはこんな感じになったかも知れません。



三億年の時間域のなかをどうやって母船を探したらいいというのか? もちろん歩いてである。それ以外にどんな方法があるはずもなかった。

 出典: 山田正紀「ゐのした時空大サーカス」

紹介 :ていおんか 様
HP :

コメント:
 事故で遭難し、三億年もの時間の中を彷徨うことになった調査隊のお話。
 彼らは空間と同じように時間を行き来できるのです。
 というよりも元々時間というのは開かれているもので、我々人類が時間に縛られているのは「空間志向症候群」というような病気に罹っているかららしいですが……
 この隊は彷徨っているうちにサーカス団を組むことになりますが、その不人気っぷりがまた涙を誘います(笑)
 これまで生身の人間が歩いた時間域はせいぜい300年以内。装置を使っても数千年の時間域しか移行したことがないそうな。三億年という時間域がいかに広大かが分かります。

駄弁者:
 生身の人間があるいた時間域=300年を仮に300kmとすると……いや、地球1周でも4万キロ、月までいっても38万キロですよ?3億キロって、そりゃ探査機「はやぶさ」が旅した距離じゃないですか。時間そのものを行き来するんだから、それに要する時間を気にするのも妙なものかも知れませんが…。



人々は未来が過去の延長だと考えている。そうではない。未来はなにか新しいものだ。
なにかまったく、手に負えないほど新しいもの。

 出典: デイヴィッド・ウィングローヴ「氷と炎(チョンクオ風雲録2)」(野村芳夫訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 安定した社会を維持するために、地球にとどまり続ける事を選択した漢民族から、観測用宇宙船を打ち上げるという妥協を引き出した、ヨーロッパ人を中心とした宇宙を目指す拡散主義者。そのリーダー、ハワード・ディヴォア元少佐は彼らがもたらすであろう未来に思いを馳せる。
 話の筋とは特に関係はないのですが、ひたすらに格好いいセリフです。

駄弁者:
 なんか言葉だけだと希望に満ちたものなんですが。
 言っているのがシリーズ通して最凶の反逆者だと、「手に負えないほど」の部分にイヤな含みを感じてしまいます。



子供らが傷つき倒れ 女達が血と涙を流している 愛する者…守るべき者が傷つけられた時
人は正気を失う 一度”戦”が始まっちまったら 正気を失った連中があふれることになるんだよ

 出典: 所十三「竜の国のユタ第二部 D-ZOIC 」

紹介 :屋良一 様
HP :

コメント:
 リーク公率いるヒトモドキの群れに包囲された王都ファブニール。
 冥王軍本隊と戦うべく正規軍が出払っているこの都市では老人病人女子供全てを動員しての防衛戦となった。
 その中で作戦を立て市民を鼓舞する傭兵フックは、たとえ生き延びてもこの戦争がもたらす心の荒廃は癒されないだろうと思い悩む。
 打ち切りとのことで、詳しく描かれないかもしれませんが、彼は過去にも同様の経験をしたのでしょう。

駄弁者:
 前にいただいたご投稿からすると、負けたら文字通り食われるんですよね?
 そういう場合に陥る狂気は、私たちがやるような戦争での狂気とは、また少し違うような気がします。マシなのかより酷いのかはともかく。



断固たる意志の表象である鉄拳を発射し、これをロケットパンチと呼称した、かのロボットアニメは直喩的表現において、まさに正鵠を射ていたと言っても過言ではない

 出典: 押井守脚本・神山健治監督「ミニパト 第1話『吼えろリボルバーカノン!』」

紹介 :人外魔境地底獣国 様
HP :

コメント:
 パトレイバーシリーズの主役メカであるAV98イングラムのメインウエポンであるリボルバーカノンについて、特車二課第二小隊の後藤隊長が解説する(蘊蓄をたれる)短編映画より。
 武器=身体の延長、発射される弾丸=他者へ撃ち込まれる意志という話の流れから、上記のセリフにつながります。で、次の場面では川井憲次作曲のパチモンくさい楽曲をバックにテッコンV似のロボットがパンチを発射してます…

駄弁者:
 導入は「表象」「直喩的表現」となんだか哲学ふう(ついでに絵柄はペープサートふう)ですが、本題はレイバーが持つ銃や弾丸がどうあるべきかの技術的なウンチクで面白かったです。



ご存じ国家権力の使者、暗黒寺警部!

 出典: 今川泰宏監督・脚本「真マジンガー 衝撃!Z編 第1話『大団円』」

紹介 :人外魔境地底獣国 様
HP :

コメント:
 4月からスタートした今川監督の最新作から。この手の言葉は悪い意味で多用されているものですが、ヒーロー気取りで名乗りを上げるときに使ってしまう暗黒寺警部の感覚にはあきれるのを通り越して感心してしまいます。

駄弁者:
 まじめにコツコツやってても税金泥棒とか言われるんだから、いっそこれぐらい開き直ってたほうが本人の精神衛生的にはいいんじゃないでしょうか。



踏んづけても踏んづけても
ついえぬ悪は頑固でしつこい油汚れによく似てる
今週の汚れは今週のうちにちょちょいのパッパッでほらキレイ ねっ!

 出典: manzo「溝ノ口太陽族(天体戦士サンレッドOP)」

紹介 :バグ 様
HP :

コメント:
 3月に放映終了した神奈川県川崎市で繰り広げられる善と悪のグダグダな戦いを描いたヒーローギャグマンガのOPから、悪をこき下ろす言葉は色々と見聞きしましたがゴミどころか汚れ扱いまで貶めたのが結構衝撃的だったので投稿します。
 ただ手元に歌詞の資料がなくヒアリングして書いた為、間違えていた場合ご容赦ください

駄弁者:
 マンガのほうはネットで最初の3話読めますね。正座で説教くらうフロシャイム川崎支部の皆さんがなんか可愛いです。
 強大であるべき悪の秘密結社が弱小だと、正義の味方がチンピラに見えてしまうんだなあ…。



「ええすくれめんとおおおおおお」

 出典: 筒井康隆「おれの血は他人の血」

紹介 :水谷秋夫 様
HP :
http://oikose.at.webry.info/

コメント:
 本屋で「どんな本だろう」と最初だけ立ち読みする気でめくっていたら、止まらなくなって一気に最後まで本屋で読みつづけてしまいました。本屋にしたら大迷惑。
 読んでから何十年か経ちました。輸血されたマフィアの親分の血が蘇って主人公は、この台詞を言いながら嵐のような暴力をふるう、という場面だけを今は覚えています。
 ふと思い出して名文句集に投稿しようとし、どんな話だったかと調べてみたら絶版でした。
 なんだと。
 今度はせっかく買おうとしたのに。
 とっとと、復刊しろ。
「え〜〜すくれめんとぉ〜〜〜〜」

駄弁者:
 蛇足ながら「エスクレメント」とはイタリア語で「糞」という意味で罵倒の言葉。
 叫びだす前に、「筒井康隆全集 第15巻」に載っているのを見つけました。まあ絶版には違いないですが。
 主人公は叫んで暴れ出す直前に意識を失うので、他の登場人物からの伝聞以外ではなかなかこのセリフが登場しないのですが、最後には、血のせいだけではなく自分自身の叫びとして出てきます。…悲劇の結果として。



我々はこれから、十五の因数分解を行う

 出典: 円城塔「Yedo」  『Self-Reference ENGINE』に収録

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 人間に変わって世界の主役に躍り出た巨大知性体群は、ある日アルファケンタウリ星人を名乗る謎の知性体にセキュリティを突破される。対応するために笑いの研究を命じられた落ちこぼれ知性体「八丁堀」は因数分解を演劇で表現することによって、この指令を実行することを思いつく。
 理系の深堀骨(193集)こと円城塔の短編より。八丁堀てなぁどういうセンスだい、笑いを計算するたぁそれこそお笑いよ、そもそも計算機が何かを思いつくなんざぁ有るわけねぇだろうが、べらぼうめ。とか言ったつこっみはさておき、「42ってなんの答え?(銀河ヒッチハイクガイド)」に対する日本側の回答が、ついにここに提出されたのです(考えすぎ)。
 あと、深堀の方が全体的にお話としてはまとまりが良かった様に思います(同じ意味不明にしても方向性が違うような)。

駄弁者:
 次にでた「Boy's Surface」にくらべれば、まだこちらの方が意味不明度は低いと思うのですが…。
>我々はこれから、十五の因数分解を行う
 1ページ目ですでに行っていたたぁ、お釈迦さまでも気がつくめぇ(けど超知性体は気づいてた)。
>「42ってなんの答え?(銀河ヒッチハイクガイド)」
 さあ、単語数が2、3、7になっているセリフをさがしてみましょうか。



最小限の性欲、最小限の出生率、最小限の自己表現欲、LAの内部で完結した精神。
かつての欲望の時代には理想と思われたもの。
…(中略)…
住民全員にそのような穏やかな精神が宿っている都市に活気があるはずがない。
猥雑な熱気があるはずがない。

 出典: 池澤夏樹「やがてヒトに与えられた時が満ちて……」

紹介 :陸ドム 様
HP :

コメント:
 主人公はとあるきっかけでこの人工衛星LAを管理するコンピュータに、過去の記録を学ぶ事を許可されます。
 そこで以前の文明を学んで、今がどうなのかを考えた台詞です。
 義務はなく、やりたい事だけやり、複雑な事はコンピュータ任せ。
 疑問もなく、不満もなく、ただあるがままをあるがままに受け入れる人生。
 理想とされた未来は、生きながらにあの世にいるのと同じに思えます

駄弁者:
 人類全体(とはいえ元々は選ばれた一握り)が悟りをひらいてしまったら、あとは入寂を待つばかり。
 「欲望の時代」においてはあり得ないからこそ、それが理想と感じられたのかも知れないですね。



「ネットワークに対する反抗というのは意味がないんです。考えられないんです。あなたは空気に反抗して呼吸をやめますか?」

 出典: 池澤夏樹「やがてヒトに与えられた時が満ちて……」

紹介 :陸ドム 様
HP :

コメント:
 人類が地球から姿を消した未来、30万人の生き残りが人工衛星で暮らしていました。
 ここでは過去の事を調べる事が禁止され、人々も大して好奇心がなく、昔に何があったのかなどたいして気にも留めていません。
 主人公はある日、町の噂になっていた幽霊、ラグランジェ氏と出会い、自分が死んでから250年、人工衛星に移住して200年の間に人類に何があったのか訊ねてきます。
 その中で機械の支配に抗う気は無いのかと訊いた氏に答えた主人公の台詞です。
 この答えに氏は、自分達の時代には空気の支配はけしからんと言って死ぬ奴がいたのだと返しますが。
 昨日と同じ今日、今日と同じ明日が保障されている閉じた世界。この作品で書かれている人類の行き着く先はまるで動物園のようだと思いました。

駄弁者:
 この作品、物語とともにメッセージ性のある写真が挿入されていて、なかなか考えさせられます。
 ご投稿の文句に「ネットワーク」とあるところから、「社会」のように反抗するための具体的な対象がないことを想像したのですが、実際読んでみるとここで言っているのは「CPUネットワーク」、つまりはマザーコンピュータみたいなものだから、反抗するための対象ははっきりしているわけですね。
 ラグランジュ博士の時代なら「空気の支配」はものの例えですが、人工衛星での「ネットワーク」への反抗は、文字通り住んでいる人間全体の死活問題になってしまいます。意図して反抗しない人間を作り出すこともあり得るだろうなと思いました。



「でねでね、スーパーヒーローになるためには、世界を救うとか、もしくは世界を敵に回してもひとりの女の子を守るぜ、とか思ってたんですよ。でも、いざなってみたら……めっちゃ怖いじゃねえかよって」
「……君の幻想は壊れてばかりだな」
「どうしてですかね、夢がどんどん叶ってるのに、全然うれしくもなんともないんですよ」 「それは君の意思が無いからだろう。この数ヶ月、君の行動を見てよくわかった。君はひたすらにシチュエーションに憧れるばかりで、結局君が何かするわけではないのだ」

 出典: 小太刀右京「ダブルクロス・リプレイ・ストライク 天からの一撃」

紹介 :るーしー 様
HP :

コメント:
 リプレイはOKですか? るーしーです。
 現代超能力アクションTRPG「ダブルクロス」からの投稿です。
 国見以蔵はUGNに協力する高校生のオーヴァード。
 一日中部屋でごろごろしながら、「あー、どっかから女の子でも降ってこねぇかなー」「女に惚れるだけで金くれる国とかねーかなー」とか言ってる夢見がちの16歳。
 ところがある日、以蔵の頭に謎の隕石がストライク!! それからなぜか人間・非人間を問わず次から次へと美少女が集まってくる!? ついでにトラブルも山盛りでやってきた!!(あらすじより)
 SF好きの皆さんなら、今まで作品の登場人物に憧れた事も1度ならずあると思いますが、そこでこの名文句。
 敵が待ち受ける宇宙ステーションへの出発を目前にして、以蔵が仲間の女傭兵・シャルに不安を打ち明ける場面です。
 実のところどんなに望んでいた状況でも、それが一方的に流されていった結果っていうのはあんまり嬉しくないものなのでしょうか?(自分は幸か不幸かそのような状況になった事はありませんが)

駄弁者:
 「君はひたすらにシチュエーションに憧れるばかりで、結局君が何かするわけではないのだ」に身に覚えがありすぎてドキリ。いや、そんなSFの主人公に憧れるような大それた望みじゃなくて、もっと日常的で下世話な望みが多かったですが…。



ほら、ごらんなさい、永遠の生命だ!もし、われわれが死ではなく……誕生を考えるならば……生命は短くない。われわれが生命を生み出す原因でありうる限りは……

 出典: カレル・チャペック「マクロプロス事件」(田才益夫訳)  『カレル・チャペック戯曲全集』に収録

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 1922年、100年に及ぼうとするロウコフの領地を巡るグレゴル家とプルス家の裁判に、世界最高と呼ばれる女性オペラ歌手、エミリア・マルティが介入してくる。彼女の荷物には1709年のエリザ・ミュラーの死亡証明、1836年のエリアン・マック・グレゴルの死亡証明、1840年代のエカテリナ・ミシュキンの身分証、1870年代にエウヘニア・モンテスに贈られた記念品が入っていた。エウヘニアの知人によると、エミリアはエウヘニアとうり二つ。彼女は一体何者であるのか?
 不老不死の実験台となり、ただ一人で300年を超える年月を生き抜いてきたエミリアは、結局ロウコフに保管されていた、マクロプロスの秘術を手放して死ぬことを選びます。個人としての延命を追い求めていた人々が、集団の延命でよしとするこの意見に落ち着くのは、何とも唐突。エミリアの孤独がしつこいほど語られるからかもしれませんが。個人的には迷セリフですね。
 実際に上演をみていたら、こんな落ち着いた感想も言ってられないでしょうけど。

駄弁者:
 自分の属する血筋や社会が存続すれば、個人の不老不死は望まない…というのは、わりと一般的に謳われる価値観ですが、個人の不老が実現していても同じふうに思えるものなんでしょうか。
 個人でかなえられないから次善として血筋や社会に望みをつないでいるだけなのでは。



憲法は平和憲法と呼ばれたとき、宗教になった。…(中略)…私たちには憲法9条の理想があるわ…戦争が生み出した狂った理想。私たちは9条の理想を裏切ったその時に、自分たち自身の上に核を落とす。目の前に死をぶら下げて、私たちはやっと一つになれる。

 出典: 高橋洋監督・脚本「狂気の海」

紹介 :人外魔境地底獣国 様
HP :

コメント:
 核を搭載した弾道ミサイルを極秘裏に建造していた日本と、そのミサイル基地を人工衛星からのレーザーで狙うアメリカ、富士山の地下深くより地上侵攻を目論む地底王国の三つ巴の戦い、というスケールの大きな話を、恐ろしく少ない予算で強引に映像化した怪作より。
 上記のセリフは首相夫人が核開発を決意した理由について語る場面より。バックに9条の条文が現れ(「サイボーグ009 太平洋戦争の亡霊」へのオマージュ)、この無茶なセリフに妙な説得力を与えています。

駄弁者:
 だいぶ前の作品なのかと思っていたら、つい最近の映画なんですね。公式HPにでていたポスターの「今度こそ本当に日本は沈没する」に、吹き出してしまいました。前は沈まなかったもんな〜。
>憲法は平和憲法と呼ばれたとき、宗教になった。
 宗教とまでは言わないにしろ、理屈ではない愛着というのは一定の層に抜きがたくあると思います。



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