SF名文句・迷文句第45集

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「おねぇちゃあぁぁぁぁん! おとこの人からでんわだよおぉぉぉぉっ!! く、れ、ば、や、しっていう人だよおぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 出典: 馬頭ちーめい原作・鍋本ちぇいある著「BREAK-AGE EX ロアゾオ・ブルー」第2巻

紹介 :mugen 様
HP :
http://suzuka.cool.ne.jp/sgtrpg/

コメント:
 VPといわれるロボットを使って戦う、バーチャル・ネット・ゲーム「デンジャー・プラネット」を通じた青春ラブロマンス漫画(一部誇張表現あり)の外伝小説のお笑い部分から。
 自分に対戦を挑んできた可愛らしい少女ゲーマー(外国人)の自宅へ対戦の相談のため(だけではなく見事に恋心もいだいてしまっているが)に電話をかけたデンジャー・プラネットV世界チャンピオンの暮林明(17歳男)が、電話に出た少女の弟に取次ぎを頼んだ後に聞かされた電話の向こうでの台詞。このあと、くだんの少女の「オトーサンもオカーサンもアッチいってホシイのでしたよ!」という可愛い台詞も聞こえたりします(笑)

駄弁者:
 ラブロマンスというか、ラブコメないし恋愛シミュレーションのノリだと思うのですが。
 今晩の少女の夕食は、赤飯できまりですな、これは。



「ご自分の剣をどうぞ――神の御前で、黒白(こくびゃく)をつけましょう」

 出典: デイヴィッド・ウェーバー「航宙軍提督ハリントン」(矢口悟訳)

紹介 :mugen 様
HP :
http://suzuka.cool.ne.jp/sgtrpg/

コメント:
 帆船冒険小説をSFに仕立て上げたかのようなミリタリー・スペースオペラの傑作、「紅の勇者オナー・ハリントン」シリーズの第5巻より。
 狂信的な信仰により、異教徒の新参者、オナー・ハリントンに対し憎しみをいだいた保守派の領主が起こしたテロを糾弾し、決闘を行うことになった主人公が決闘前に言い放った言葉です。

駄弁者:
 テロをおこす狂信的な異教徒、ですか…。物語だけのことならいいですが、反映させているものがモロに出過ぎていて、何かイヤですね。
 ハリントンは正々堂々とやっているのでしょうが、中には相手より圧倒的に強い剣を背景にして「ご自分の剣をどうぞ」という手合いも…。



「人間がこれだけの力 俺達のような桁違いの力をふるう存在を受け入れると思うか あるわけがないな そんなことが 血まなこになり集団で括り殺しに来るだろう」
…(中略)…
「もしも そうなったら 僕は急いで逃げよう そしてまたほとぼりがさめたら 静かに寄りそうよ」

 出典: 内藤泰弘「TRYGUN MAXIMUM 第7巻」

紹介 :mugen 様
HP :
http://suzuka.cool.ne.jp/sgtrpg/

コメント:
……またしても長めの台詞(^^;
 科学技術により人間に作り出されながらその力に恐怖した人間たちにより排斥される運命にある存在達の台詞。
 DEEP SPACE PLANET FUTURE GUN ACTION!!とありますのでりっぱなSFですね。

紹介 :ななしのごんべ 様
HP :

コメント:
 この台詞の前に主人公・ヴァッシュ・ザ・スタンピートに向かって彼の兄ナイブズが、人間は自分達より遥に強大な存在を受け入れるわけが無いと言い、「血まなこになり集団で縊り殺しに来るだろう」っと叫ぶのに対してヴァッシュが返した言葉です。百年以上どこまでも過酷な砂漠の惑星で「不殺生」を貫き、困った人を決して見捨てなかった彼の生き様がここに集約されています。優しさとは強さなのだということを端的に表している台詞です。

駄弁者:
 自分たちが桁違いの力を持つことそのものは、簡単に受け入れるんですけどね。
 それだって、別の存在が力を持つことと同じぐらい、怖いことのはずなんですが。



「たぶん俺は人よりちょっとだけ本が好きなんだよ」

 出典: とりみき/田北鑑生「ラスト・ブックマン THE LAST BOOKMAN」

紹介 :mugen 様
HP :
http://suzuka.cool.ne.jp/sgtrpg/

コメント:
 前作DAI-HONYAの世界観を引き継ぎながらも、ハードボイルド・サイバーパンク・ギャグSFから、ウェスタン・ギャグSFへと変貌を遂げたラスト・ブックマンから、書店管理員、紙魚図青春(しみずせいしゅん)氏が強力な敵から書店を守るために戦う時に、なんのために戦っているのかと問われて応えた台詞。
 DAI−HONYAの続編も刊行されたことですし、「石神伝説」の続きも出て欲しいものですね。

駄弁者:
 ついででいいですから図書館も守ってください、と言いたくなります。
 こういう世界では、とうの昔に廃止されているか、言論統制の府と化しているような気もしますが…。
 そうそう、「SF大将」の文庫版が出たみたいだから買っとかないと。



その時…一つの星が…銀河の中で…瞬いて、消えた。

 出典: 田中芳樹原作「銀河英雄伝説」(アニメ版)第82話予告編

紹介 :ヘボ 様
HP :

コメント:
 その日、私はレンタルビデオ店で借りた銀英伝のビデオを見ていました。
 画面に映るはいつも通りの次回予告のテロップ。しかし、いつも流れるBGMが流れません。流れるのはただ次回の映像の一部と、いつもより少しだけ沈鬱なナレーションのみ。
 もちろん原作は読んでおりますので、話はわかってはいるのですが、それでも、この予告編を見てモニターの前で、しばし呆然としていたことを覚えています。
 銀河英雄伝説第82話『魔術師、還らず』。

駄弁者:
 よーく分かります、その感じ。私はOAVは小説5巻めぐらいまでしか見てないんですが、きっと同じようになったと思います。
 この予告編のフレーズを考えた人は、「銀英伝」のモチーフが中国の演義ものだということを踏まえていたのでは…というのは、まあ深読みでしょうが。



「どうして思い出せないんだろう……?
 あれは大切な言葉だったのに……
 とてもとても大切な言葉だったのに」

 出典: 青山パセリ「エリア」  「パワーボムTHEATER」第5巻に収録

紹介 :ヘボ 様
HP :

コメント:
 この時代、老いた肉体を若返らせる技術はすでに完成し、人類は事実上の不死を手に入れていた。しかしそれには巨額の費用が必要であり、人々は費用を稼ぐために働くだけの人生を送るようになる。
 エリアは、今回が初めての人生。彼女は森で一人の男と出会う。男は言う。ただ働き続けるだけの人生に嫌気がさしたのだと。男はいろんなものを発掘していた。絵、本、おもちゃのピアノ。しかし昔の人間がそれ らをどうやって使っていたのかは彼にもわからない。
 夕焼けを見たエリアは、感情の昂ぶりを覚える。男は言う。その気持ちは、失われた言葉で「美しい」と言うのだと。やがて、男は危険思想犯として処分され、エリアは記憶を操作される。そして時は過ぎ、年老いたエリアは、再生手術室に向かう途中、窓から夕焼けを見る……
自分の部屋の中をみると買っただけで読んでない本がゴロゴロと…SF小説だけでも10冊…会社にいる時間のほうが家にいる時間よりも長かったり、ネタのストックはあるのに投稿できずにいたりする日々を送っていると、本に書かれた「夢」や「希望」とかいう言葉の意味がわからないのは決して未来の人間の話ではないなと思う。

駄弁者:
 ことさら記憶を操作されたりしなくても、仕事やら何やらに追われているうちに、見失ってしまうものはいくらでもあるでしょう。
 …とりあえず、SF作品中の大切な言葉は、憶えているうちに投稿して下さいな。



トカ「…お、思い出が領空侵犯してきよる…」
アシュレー「そりゃ、めくるめく走馬灯だッ!やばいぞッ!」

 出典: SCEI製作「WILD ARMS 2nd IGNITION」

紹介 :おおた 様
HP :

コメント:
連続投稿失礼します。  こちらもWILDARMS2から、こっちは迷の方ですね。
 主人公アシュレー達の前に現れた、トカゲ人間コンビ…トカとゲー。科学者だというトカは、歩いていけない所にあるレバーを引くため、科学的方法をいくつも思いついたと言いながら、とった行動は…助手のゲーに投げ飛ばしてもらうというもの。
 着地失敗でフラフラのトカは、この台詞を…。
上手い言い回しですね…完璧なギャグキャラですが…。

駄弁者:
 類人猿型の異星人でゴリとラーがいるなら、爬虫類型でこのネーミングは、むしろ当然か…。絶対製作者たちの念頭にあったに違いない。



トニー「俺たちは友達だからな手くらい差し伸べてやるよ でもな、ティム…立ち上がるのは自分自身の足だぞ」

 出典: SCEI製作「WILD ARMS 2nd IGNITION」

紹介 :おおた 様
HP :

コメント:
 今回はPSの人気RPGの第二弾からです。他に、アニメ、コミックとありますが、基本的に全部独立した話です。
 2の世界観としては、舞台はファルガイアという惑星で、全体的な雰囲気は西部劇。過去に発達した文明があり、その発掘品を使った武器、兵器、道具もたくさん出てくる上に魔法も存在するという世界で、王道的な物語が展開していきます。一言でいうと、西部劇風SFファンタジーRPGというゲーム。
 この台詞ですが、色々あって主人公達の仲間になった少年ティムが、敵テロリストに本拠地を襲撃され、怯えて震えているとき、密航していた友人トニーが出てきて激励したときのものです。結局、自分の事は自分が何とかするしかないんです。友人は手助けをしてくれるだけです。
 というか全部押し付けるような奴は友人とは呼べませんね。

駄弁者:
 手じゃなくて足差し出して転ばせて、受け止めるのはそいつの手、という人もいることを思うと、非常に男前な名セリフ。
 しかし、ゲームそのものの方は、どうもよくある設定だな〜と思わざるを得ないんですが。西部劇風というのが少し変わってますけど。「ファンタジイ汚染論」ではないですが、もうちょいF味抜き(ついでにモビルスーツ類も抜き)のRPGがあってもいいのに。



2,3日後にものすごく赤い夕焼けがあります。
それが、終わりの合図です。
…(中略)…
「…あの…バカ…
 …一日…早(は)ぇーべや…」 

 出典: 高橋しん「最終兵器彼女(7)」

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 そんなこんなで、最終兵器彼女は発動してしまいました。
 密かにイクちゃんを応援していた私には、かなりのショックです。
 (いえ、だからといって「あのエンディング、本命カップル推進派の人は満足だろうけどねー」などと、すねている訳ではありませんよ?)
BGM:「WAR BABIES」横道坊主 

駄弁者:
 ああ、最終回までいってたんですね(そういえば、アニメ化もされてたような)。
 このめい文句集ではじめてこの作品を知ったとき(17集参照)「これは読んだら絶対泣く!」と思い、自己内封印して今に至ってます。



トロとテロは同義語となった

 出典: 矢作俊彦原作・藤原カムイ作画「気分はもう戦争2.1」

紹介 :モンジロウ 様
HP :

コメント:
 はじめまして。SF繋がりで辿り着いて来ました。
 「俺も!」と思いつつ、さして名(迷)文句を覚えてないんですよね。読んだ時は感動しているんですが、矢張りチェックしとかないと忘れてしまいます。
 これは最近読んだマンガの単行本で、「気分はもう戦争」(矢作俊彦×大友克洋)の続編です。月刊少年エースに昨年2001年初頭から連載されている模様。前作は80年代に出た名作ですが、私はそんなに面白いとは思いませんでした。「そんなに騒ぐほどのもんか?」と疑問でした。だから初め書店で単行本を見掛けたときは期待していなかったんですが、作画が「雷火」の藤原カムイに変わっていたのでつい買ったんです。そうしたら中々打っ飛んだ内容で面白くて!
 話は前作の続きで同じ登場人物がいますが、これから読み始めても大丈夫だと思います。2001年にアメリカを初めとして世界同時核爆弾テロが起こり(連載時はまだ例のテロは起こっていなかったようです)、アメリカは「悪」に宣戦布告。そして200X年アメリカは同盟国に民主化を求めた。日本にはマグロの生存権を認めさせ、それ以来トロは食べることが不可能に。というあらましで、この迷文句が登場しました。以降、壮大で荒唐無稽なヨタ話が展開していきます。
 ところで作品名につく「2.1」はそのままです。パート2の1巻という意味で、今風にしてるんでしょうね。こういったところも大袈裟で面白いです。どうやってこの話を完結させるんでしょうか?

駄弁者:
 はじめまして。初の投稿を歓迎いたします。
 同時多発テロを見越した見事な洞察…というよりは、アメリカの行動が分かりやすすぎるんでしょう、きっと。
>マグロの生存権を…
 魚を切り刻んで生のまま食らい、あまつさえ知性あるクジラを食卓にのせる日本人は、いたいけな犬を食肉にするという韓国・中国と並んで、悪「食」の枢軸と申せましょう。



天海勇「ただちょっと、授かり方が他の子と違っただけさ」

 出典: 勇者王ガオガイガー第44話「終焉序曲」

紹介 :出羽 様
HP :

コメント:
 大雪原での偶然の出会いによって巨大メカライオン・ギャレオンからひとりの嬰児を託された天海夫妻は、その子を護と名付け、以来我が子として育てます。8年後、護が小学3年生になったその年に地球外知性体による侵略が始まると、護の中で彼らに対するための秘めた超能力が目覚め、戦いの中で護はやがて自分が地球人ではなく、両親の本当の子供でないことを知ることになります。
そしてある日、護はついに両親に問いかけました。
「僕は、お父さんとお母さんの本当の子供じゃないんだよね・・」
”実の子”だ、といえば嘘になります。かといって、ただ”実の子じゃない”と言ったのでは、突き放した印象すら与えかねません。この難しい場面で、「あなたは本当の息子よ」と涙ぐんだ母・愛の言葉を受けた父・勇が我が子に真実を伝えた言葉が、冒頭で紹介した台詞でした。
 お腹も出てるし容姿もなんだか冴えない天海パパですが、彼がさりげなく発した一言の中に、真実を何色にも変えうる言葉の不思議さを感じました。
何かと”熱血”した作品で”熱い”場面が印象に残るガオガイガーですが、私的にはこの台詞が同作品での名台詞ベスト1です。

駄弁者:
 ガオガイガーは第1集でいただいたご投稿をかなりけなした覚えがあります。…あのころ私も若かった。意見は変わってませんが、言い方にはちょっと反省。結局作品の方も見ていないし…。
>授かり方が…
 クローンの子どもも同じように受け入れられる日が、来るんでしょうかね。



「シー・ユー・レイター、アリゲイター!」
「インナ・ホワイル……クロコダイル」

 出典: ダン・シモンズ「ハイペリオン」,「ハイペリオンの没落」(酒井昭伸訳)

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 ハイペリオンの遺跡「時間の墓標」でついに再会(といえばいいのかな?)したソル・ワイントウラブとその娘レイチェル、そこでソルはレイチェルの口からなぜ彼女が時間遡行症にかかったのかを聞かされます。その後、ソルとレイチェルは親娘が子供の頃から出かけるときの台詞を互いに口にして時間の彼方へ分かれます。二人の別れが非常に印象的で「ハイペリオンの没落」中で一番好きなシーンです。

紹介 :エム 様
HP :

コメント:
お初です。いちおう司書です(兼務ですけど)。
さて、台詞は「ハイペリオン」の「学者の物語」より、親が子に教えたお気に入りのフレーズです。
これが未出ってのはちょっと意外でした。わりと人気あると思ってたんですけどね。
ネタバレの恐れもありますんで多くは語りませんが、日に日に記憶と肉体が若返っていく娘と、順当に年老いていく父とを繋ぐ大事な大事な絆なのです。泣けます。これぞ泣けるSFです。
これ、個人的にも使いたくてたまらないんですが、通じる相手がいません(涙)

駄弁者:
 特集、ラスト。
 かつては親愛とユーモアをこめて交わされていた親子の決まり文句が、重みをもってこだまする名シーンでした。
 「学者の物語」はそれ単体でも泣かせるいい話だったんですが、それが他を含めた物語全体の中でも重要な意味をもってくる…。「ハイペリオン」「没落」の一番凄いところはこういう構成の見事さだと思います。この点では続編の「エンディミオン」2部作も及ばないでしょう。
 さて、ここまで名文句を見て、では自分も本編を読んでみよう、と思われた方は…? 大作なのでとっつきにくいかもしれませんが、一気読みできてしまう面白さです。

 追記:エムさんへ。
 正確にはおっしゃるとおり「ハイペリオン」からは初出だったのですが、こちらと同じとしてもいいですよね?



「そらおそろしくなるよ――」マイナ・グラッドストーンはつぶやき、シン大将の死体を見おろした。「夢の“お告げ”に導かれて、わたしはとほうもない行為をしでかそうとしている」
「ときとして――」といって、モルプルゴ大将は彼女の手をとった。「機械とわれわれを隔てるのは、夢だけなのかもしれんぞ」

 出典: ダン・シモンズ「ハイペリオンの没落」(酒井昭伸訳)

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 サイブリッドのセヴァーンの夢により<コア>の陰謀を知り、それに攻撃を加えようとするCEOのマイナ・グラッドストーンは旧友のシン大将に命令にするが、大将はそれを拒否し、フレシェット銃を向け、モルプルゴ大将に殺される――。上記のセリフはモルプルゴ大将に改めて、〈コア〉に対する。陣頭指揮を依頼したのちのセリフで、彼女自身が思わずもらした本音なのかもしれません。

紹介 :汗(はん) 様
HP :http://homepage1.nifty.com/beHungry/

コメント:
 先日の投稿に続いて、『ハイペリオンの没落』から。クライマックスに近いのであまり多くは語りませんが、セヴァーンの見る夢に「気づいているかね」云々と一言かましていたCEOグラッドストーンが、今度はセヴァーンに夢でかまされてしまいました。それを嘆いてみぜたグラッドストーンをフォローするのが、連邦宇宙軍モルプルゴ大将の台詞。自分たちと敵との相違に勝機を見いだしつつ、シェイクスピアが戯曲『テンペスト』で使った「我々は夢と同じもので織りなされている」とかいう言葉にも通じる哲学的かつロマンティックな響きを含む名文句です。

駄弁者:
 人類から独立して存在し、惑星ハイペリオンを中心とした緊急事態を裏で操るAI群<テクノコア>。本体がどこにあるのかさえ分からなかった<コア>の所在を突き止めたとき、連邦政府のトップ・マイナ・グラッドストーンは、思い切った──破滅的とさえ言える──決断を下す。
 「ハイペリオン」最初の章で少しだけ登場したグラッドストーンが、「没落」であれほど重要な役割を担うとは全く予想してませんでした。「とほうもない行為」の後を描いたシーンは、「没落」中の名場面ですね。
>冬寂堂さん
 コメントを一部割愛しました(ネタバレかもと思ったので)。あしからずご容赦。



マイナ・グラッドストーンなどくそくらえ、戦争もくそくらえ、〈ウェブ〉もくそくらえ。
そして、くそくらえだ。夜ごとの夢も。

 出典: ダン・シモンズ「ハイペリオンの没落」(酒井昭伸訳)

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 「ハイペリオン」の続編、「ハイペリオンの没落」からいくつか投稿させていただきます。
 キーツ・ペルソナのひとつである、ジョゼフ・セヴァーン、彼は、ブローン・レイミアの体内に埋め込まれたシュレーン・リングをとおして夢の形で彼らの状況を知ることができる。その力をCEOのマイナ・グラッドストーンに知られ、ハイペリオンにいる巡礼たちの動向を知るために使うことになる――。上記のセリフは、自分を取り巻く状況に対して嫌悪感を抱くM・セヴァーンが睡眠薬を使って深い眠りに着く前に思った最後のセリフで、彼の身動きの取れない状況がよくあらわされている言葉です。

駄弁者:
 続編というか、「ハイペリオン」「〜の没落」で一作品ですね。ハードカバーで合計1100ページを超えてますが。
 「ハイペリオン」モチーフの一つは18・9世紀イギリスの詩人ジョン・キーツの詩「ハイペリオンの没落」「エンディミオン」なんですが、このキーツも作品に登場し(当人そのものではないんですが)、重要な役割を果たすことになります。
 「ハイペリオンの没落」を読んだあと、気になって元祖キーツの元祖「ハイペリオンの没落」を見てみたんですが。
 …うーむ、なんかよくわからん。



「わたしがこれからも見ることのないたくさんの世界を、あなたは訪ねてきた」
シリはひと息にそういった。その声は変わっていなかった――基本的には。「愛しいマーリン、あなたはわたしの想像もつかないものをふくめて、たくさん知っているのでしょう。それでもね。あなたはなにも知らないの」

 出典: ダン・シモンズ「ハイペリオン」(酒井昭伸訳)

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 ハイペリオンへの巡礼者の語る物語の最後の語り部、元ハイペリオン総督、領事の物語──。
 量子船に乗り込むマーリンとマウイ・コヴェナントの赤道多島海に住むシリの物語を軸に進み、領事を始めとする、巡礼者たちがハイペリオンへと導かれた理由がここで説明されます。量子船に乗り、ウラシマ効果のため、マーリンとシリの年齢は次第に離れ、ついには先立たれたマーリンがシリの霊廟で、ある事実を知る──。投稿した台詞はシリがまだ生きていたときに、マーリンに対していった言葉ですが、シリはいったいどんな気持ちでこの言葉をいったかを思うと、すごく切ない気持ちになります。

駄弁者:
 特集後半いきます。
 「領事の物語」は、ハイペリオン巡礼たちの物語の中では、一番地味な印象をもつのですが、物語全体の重要度は、他に劣らなかったと思います。続編「エンディミオン」で大活躍するホーキング絨毯も、この話から登場してますしね。
 なによりも、これと「司祭の物語」と「探偵の物語」の書き分けを一人でこなすシモンズの力に脱帽です。



トカ「それが、コンピュータの反乱で肝心要のご主人様を認識しないトカ。いよいよハードSFの本領発揮だトカ」
アシュレー「何だよ、『ハードSF』って。さっきから言ってるけど…」
トカ「ハード、ソフト…。……ふつうくらい?」

 出典: SCEI製作「WILD ARMS 2nd IGNITION」

紹介 :ゆんゆん 様
HP :

コメント:
 違うと思います。
 ちなみにアシュレーが主人公で、トカがリザード星からやってきた科学者なのですが、この二人がそろうと毎回このような漫才が繰り広げられます。この時のアシュレーは普段に比べて実にイキイキとしています。

駄弁者:
 インターミッション、というわけでもないですが。
 私はその昔、「ハードSF」のことを機械ばっかりでてくるから「ハードウェアSF」の略だと思ってました。…ところで「ソフトSF」ってどんなだ。
 なお、今回ゆんゆんさんからいただいていた2つのご投稿のうち、ひとつは出典が特定されていないので保留です(有名なんですが)。



「おとうさん……」レイチェルがいった「これからきくのは、二歳のときから百万回もくりかえしてきた質問だけれど……。おとうさん、神を信じる?」
…(中略)…
「ぼくはね、待っているんだよ。信じられる日がくるのをね」

 出典: ダン・シモンズ「ハイペリオン」(酒井昭伸訳)

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 かつて時間の墓標の研究に訪れたレイチェルは、遺跡の研究中にシュライクと出会い、時間をさかのぼる病気「時間遡行症」にかかってしまう。レイチェルの父、ソル・ワイントウラブは彼女を救うため、夢で出会った謎の声に従い、ハイペリオンを目指す──。投稿した台詞は、病にかかるまえに娘のレイチェルとソル・ワイントウラブの会話ですが、彼は果たして神を信じられる日くるのでしょうか。

駄弁者:
 娘をただ喪うよりも残酷な経過で喪いつつある、ハイペリオン巡礼・ソル。旅に出たころの彼には到底神など信じられなかったと思いますが、物語の結末まで来てみると…。やはり何らかの超越的な存在を信じるようになっていたかもしれません。
 …思い返してみると、「神」についての言及が多い作品だったような。



おお、わが神よ、
御身を怒らせたもうたことを心より詫び、
わが罪の数々を悔やまん。
味わいし天国の喪失感と
地獄の苦痛もさることながら、
なによりも御身を、
わが神よ、
わが良き神よ、
愛のすべてを捧ぐべき御身を怒らせたこと、
それ自体を恥じん。
御身の優しさをもて、われここに断行す、
懺悔し、悔悛し、
わが人生に祝福を授かるために
アーメン。

 出典: ダン・シモンズ「ハイペリオン」(酒井昭伸訳)

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 文化人類学の研究拠点を開設するために、訪れた、ホイト神父の友人、ポール・デュレ神父。
 彼はふとしたはずみで、ハイペリオンの原住民、ビクラ族と接触し、悪夢のような体験を自らの身を持って体験します。投稿した台詞はデュレ神父が重大な行為を行う前にした祈りの文句ですが、デュレ神父がこの後行った行為のすさまじさには敬服するしかありません。

駄弁者:
 ルナール・ホイトが語るデュレ神父最期のシーン。ホイトとデュレが炎精林で再会した図を想像して、体に震えが走ったものです。この物語で一番最初に衝撃を受けた部分でした。



「ときとして、善意に基づく熱意と背教のあいだには、紙ひとえのちがいしかないものです」

 出典: ダン・シモンズ「ハイペリオン」(酒井昭伸訳)

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 それぞれがハイペリオンに向かう理由を語る巡礼者たち──。最初に自らがハイペリオンに向かう理由を語る、ルナール・ホイト神父は、この文句を前置きして物語を語り始める。巡礼者の語る物語の筆頭を飾る物語は4部作「エンディミオンの覚醒」にいたる長い物語の核の一つとなるものですが、のちの物語でホイト神父がああなってしまったときにも紙ひとえの違いしかなかったのでしょう。

駄弁者:
 つづいてやはりハイペリオン巡礼の神父、ルナール・ホイトのセリフ。ハイペリオンに住む未開民族・ビクラ族の集落に迷いこんだ彼の先達ポール・デュレの恐ろしい物語の前段です。
 あれを背教と紙ひとえというのでは、デュレ神父があまりにも報われない。
 実はルナール・ホイト自身が、デュレ神父と文字通り表裏一体なんですけどね…。



「うっひゃひゃひゃ、こいつはいい!まるでろくでもない人類が、いままで人間の論理に基づいて行動したことがあるみたいじゃないか」

 出典: ダン・シモンズ「ハイペリオン」(酒井昭伸訳)

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 ダン・シモンズの「ハイペリオン」から投稿させていただきます。
 時を超越する殺戮者、「シュライク」を封じ込めた時間の墓標と呼ばれる謎の遺跡に集まる7人の巡礼者。彼らはそれぞれのもつ願いをかなえるために集まり、時間の墓標をめざします。上記の台詞は、最初の頃は一番嫌いなキャラクターでしたが「ハイペリオンの没落」を読み終わる頃には一番好きなキャラクターになっていたマーティン・サイリーナスの台詞ですが、この人にこんなこと言われたくない・・・。

駄弁者:
 今回の冬寂堂さんのご投稿は90年代SFの代表格「ハイペリオン」特集。第一弾は第一作「ハイペリオン」より、惑星ハイペリオンを訪れる6人の巡礼のひとり、酔いどれ詩人サイリーナスのセリフより。論理に基づいて行動しないろくでなしの代表みたいな人です。
 キャラ的にはこの人がが一番立ってましたね。ハードボイルドな女流探偵ブローン・レイミアとのコンビネーションも最高でした(当人たちには不本意でしょうが)。



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