SF名文句・迷文句第152集

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てめェェ今のうちだけだぞ強気でいられるのは!!
三十過ぎたら急にくるんだよ!!
いつの間にか毛根の女神が実家に帰ってたんだよ!!

 出典: 空知英秋「銀魂」

紹介 :砂漠の狐 様
HP :

コメント:
ハゲは嫌だよなぁ〜 怖いよなぁ〜……

駄弁者:
 なんか「頭部戦線」ネタがこの頃ちらほら。女神様に愛想尽かされた後は、女なんかいらねえぜと頭を丸めてしまうのがいいのか、頑張って毛根を刺激して再婚に期待するのか。
 ところで、あっさりしすぎているコメントですが、ご投稿の文句が出てくる文脈はどんなものなんでしょう。…まああんまり深く考えるものでもないような気もしますが。



ぼくのお母さんはお母さんですがお父さんでもあります。
というかホントはお父さんなんだけどお母さんなんです。
お母さんの周りにはオカマさんが一杯いて、みんな自分を蝶と言い張りますが、どっちかと言うと蛾です。
でも、みんないい人ばっかりで、心はどんな人たちよりもキレイだとぼくは思います。
お母さん、みんな、いつまでも素敵な蛾でいて下さい。
そんなみんながぼくは大好きです。

 出典: 空知英秋「銀魂」

紹介 :砂漠の狐 様
HP :

コメント:
 オカマバー「かまっ娘倶楽部」を経営している父を授業参観の折に紹介した息子の作文です。
 数多の宇宙人が登場し、現代と江戸の技術が融合しているようなこの作品の世界観は間違いなくSFだと思うのだが、この世界の世知辛さは現代に生きる人たちにも共通する位のレベルです。

駄弁者:
>心はどんな人たちよりもキレイだとぼくは思います
 この文脈で使われてはイマイチ慰めになりません。世知辛いというより、悪意の無さが手厳しいというか。
 まあ、昆虫の蛾でも例外的に蝶よりキレイなのがいるそうですが…。



「わたしの殺人にはひとつとして意味などなかったことをご存じ?」
「アルセイティアWの支配者の暗殺は?」
「一秒後にはあたらしい支配者が生まれて、なにかが変わったとでも? いいえ、暗殺という職業の利点は決してどんな意味も持たないことにあります。だから暗殺の需要も減ることはないのですよ。わたしの知っているあらゆる殺し屋のうちで、あなただけが、自分の行動でなにかを変えたいと願っている」

 出典: マイク・レズニック「サンティアゴ」(内田昌之訳)

紹介 :歌鳥 様
HP :
http://members.jcom.home.ne.jp/songbird-x/

コメント:
 いーかげんにせい、とツッコミが入るまえに、ここらで自制したいと思います(そのうち我慢できずに再開するかもしれませんが…なにしろカッコイイ文章の宝庫ですので)。
 投稿は、主人公カインがサンティアゴの情報を追い、美貌の暗殺者アルタイルのアルタイルと会見する場面より。アルタイルのアルタイルの奇妙な論理は、ですがやたらと説得力があります。
 それと同時に、カインがこの世界では独特な存在であることも語られています。”銀河を住みよくするため”に賞金稼ぎとなった、夢破れたもと革命家・カイン。自分の行動で何かを変えたい、という思想に共感しまくった結果、僕は自分でも”ソングバード”を名乗るようになってしまったのでした。若かったなぁ…。  ページ毎に名文句がある、と断言してもいいほどの、魅力的な文章と登場人物の宝庫です。そりゃハリウッドも目をつけるだろう、と思ったものですが…映画化の話はどうなったんでしょうね。続報がさっぱりなこと、喜ぶべきか悲しむべきか…。

駄弁者:
 暗殺を職業とするなら、そこに報酬以外の意味をもたせてはならない…と、一種の職業倫理みたいなものかとも思えました。
>映画化の話はどうなったんでしょうね
 映画化の話は私も聞いたことがありますが…どうなんでしょうね。話は文句なしに面白いのですが、SF的な映像をだすシーンがあまりなさそうな気がします(シュッスラーぐらいでしょうか)。



「なにで切ったの?」
「とがったものさ」

 出典: マイク・レズニック「サンティアゴ」(内田昌之訳)

紹介 :歌鳥 様
HP :
http://members.jcom.home.ne.jp/songbird-x/

コメント:
 しつこくサンティアゴからの投稿です。いーかげんにしろ、という声が聞こえてきそうですが…。
 この人の台詞は外せません。銀河系最高の賞金稼ぎ、エンジェル。彼がマンマウンテン・ベイツを倒した直後、ヴァーチュー・マッケンジーの問いかけに対して答えた台詞です。
 まさに文字通りの怪物ベイツ。おそるべき怪力で人一人を素手で殺した後、エンジェルにあっさりと倒されてしまいます(ここの描写もシビレルほどカッコ良いのですが…泣く泣く見送りました)。エンジェルの手際の良さが際立つ名場面です。

駄弁者:
 純粋に殺しのテクニックだけで比べれば、エンジェルはカインやサンティアゴよりずっと上手なんですよね…。
 マンマウンテン・ベイツは、なんというか非常にお約束に忠実な役回りが愛らしいというか哀れというか。



畜生め! 何だって俺ァ、他人の訳した<シャンブロウ>の解説なんか書かなきゃならねェンだ! これじゃ蛇の生ま殺しじゃないか! 畜生! くやしい! くやしい!

 出典: 野田昌宏「わが<シャンブロウ>への挽歌」  C・L・ムーア『大宇宙の魔女』に収録(解説)

紹介 :kenji 様
HP :

コメント:
 「大宇宙の魔女」(C・L・ムーア著)への感動的な解説文より、もっとも感動的と思う一節です。
 三十年以上前、初めてこの解説を読んだときは正直「解説文でここまで言っちゃっていいの?」とも思ったのですが、野田氏の翻訳者としての情熱を知るにつれ、納得できるものになりました。
 例えば、密かに思っていた「SF名文句」を先んじて投稿された時とか。
 なお野田昌宏訳「シャンブロウ」はアンソロジー「火星ノンストップ」(2005年刊)に収録されました。(上記の一節も解説に引用されています)

駄弁者:
 恨み節なのにどこか痛快さを感じさせるのは、ストレートな言い様のせいでしょうか。ちなみに、大元帥をくやしがらせたのは、仁賀克雄氏。
>例えば、密かに思っていた〜
 投稿していただければコメントのみ追加掲載しますが…いや、それはそれで悔しさが募るか。



「……来ちゃった」

 出典: 津守時生「三千世界の鴉を殺し」

紹介 :ぽちぽち 様
HP :

コメント:
 すみません。せっかく61集でたすく様が自粛なさったというのに、やはり抑えがたいものがあり、投稿してしまいます。
 主人公の赴任した左遷先、惑星バーミリオンのカーマイン基地には「パープル・ヘヴン」という男性にとってははなはだ迷惑この上ないゴシップ誌が存在しました。一番分かりやすくたとえるなら、コミケあたりに行けばごろごろしている、ボーイズラブ系同人誌のノリでしょうか。アスランとキラとか、天道と剣とか、トンデモな組み合わせのカップルがいっぱい…… あやしいイラスト、とか、過激な小説とかもいっぱい…… で、このパーヘヴ誌の採り上げるキャラクターは全て基地内の実在の人物だから始末が悪い。とにかく顔がいいこと、絵になること、という条件さえ満たせば(満たしてなくても作者のシュミに合えば)実際の本人の性格や嗜好にも実際の人間関係にもおかまいなし。その点も数あるそのテの同人誌とおなじ?
 ちなみに、この迷文句は、そのパーヘヴ誌掲載のとある小説から。不倫の相手である副指令官(!)を追い、職場放棄して雨の中を家まで行ってしまった基地司令官(!)。ドアを開けてくれた副指令にずぶぬれではにかみながら告げたセリフがこれ。このシーンを読んだ主人公は、不覚にも笑いすぎて椅子ごとひっくり返ったりします。(彼は大笑いするためにパーヘヴを愛読していたりする)
 ちなみに、この作者である津守さんは、シリアスシーンとこういうシーンとの落差がものすごい(シリアスなはずの作品の中に「雑巾を引き裂くような男の悲鳴」なんて表現がでてくるんですよ〜!)ので、そこを楽しめるかどうかがたぶん評価の分かれ目じゃないかと思います。現役女子高生よりも、もと女子高生だったまだ女子高生ノリで楽しめる読者向け?

駄弁者:
 すいません。ご投稿の文句を見て、昔「おれたちひょうきん族」でさんまと紳助がやってたネタが頭を離れません(「来んなゆーたやろ!」「さんちゃん、寒い…!」)。



「未来を当てるだけなら 占いと同じではないか!!」

 出典: 森脇真末味「ナビゲーターから一言」  『天使の顔写真』に収録

紹介 :NAL 様
HP :

コメント:
 謎の男が渡していってくれた、先に起こるさまざまな危機を映し出す”タイム・ナビ”だったが、危機を回避できたのは0.03%にすぎなかった。
 占いは十中八九外れるものなので、違うと思うな。

駄弁者:
 役に立たなさは、確かに占いと同じかも知れませんが。
 いや、どうせ危機を回避できないなら、都合の良い部分だけ信じてしばしいい気分になれるだけ、占いの方が役に立つか…。



「そんな危ないことを?」

 出典: 藤子・F・不二雄「ドラえもん 『まあまあ棒』」

紹介 :砂漠の狐 様
HP :

コメント:
 人がどんなに怒っていても口に押さえて「まあまあ」と言えば静まるというひみつ道具「まあまあ棒」をジャイアンに対して実演しようとするのび太に対してしずかちゃんが言ったセリフですが、なんかジャイアンが人間に危害を及ぼす存在として扱われているような気がして不憫にすら感じてしまいます。
 そして実演が成功すると「すごい、猛獣使いみたい!」と賞賛していたのでやはりその通りでした。
 「ドラえもん」の登場人物って良く見てみると意外に毒を吐くキャラが多いんですよね。 面白いから別にいいんだけど。

駄弁者:
 小学生のいじめられっ子にとって、いじめっ子なんて猛獣みたいなもんです。遠出するときに限っては意外と存在が心強いというあたりなんかも。
>意外に毒を吐くキャラが多い
 今年(2007年)の初めに、中日新聞で「ドラえもんのいない世界で」という連載をやっていたんですが、「ドラえもん」の人間関係を「いじめるジャイアン、いじめられるのび太、はやし立てるスネ夫、傍観者のしずちゃん」という具合にを実社会に見立てて論じている回がありました。
 良識派のようで実はただ見てるだけ…というしずちゃんのスタンスをとる人、けっこう増えているかも知れません。



覚悟しろよ、打ち上げ花火だ

 出典: サム・ライミ監督「キャプテン・スーパーマーケット」

紹介 :砂漠の狐 様
HP :

コメント:
 スーパーマーケットの店員が中世のヨーロッパにタイムスリップし、ゾンビの軍団と戦うかなり奇天烈というか支離滅裂なホラーコメディーです。
 主人公がゾンビのボスにトドメを刺す瞬間のセリフですが、その最期がおぼろげながらも非常に可笑しかったのだけは憶えているんですよね。
 機会があったらもう一度観てみたい作品です。

駄弁者:
 これが「死霊のはらわた」の第3作だというのが、ちょっと信じられません。



太古には木々をこすりあわせ炎を起こし、あるときは鯨から生命を奪い、またあるときは石油を戦い争った。
そして原子力、いつの時代も危険と隣りあわせだった。
だが、これからは違う!
何の恐れもない夜を、我々は手に入れたのだ!
今度こそ美しい夜を、それは幻ではない!

 出典: 横山光輝原作・今川泰宏監督「ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日 EPISODE:2 バシュタールの惨劇」

紹介 :可児歳蔵 様
HP :

コメント:
 狂科学者として作品世界で有名なフランケン・フォン・フォーグラー博士、シズマドライブ稼動実験時の言葉。
 何の恐れもない夜を未だ手に入れられない人類ですが、昨今の現状を見ていると、逆に手に入れない方がよいかもしれません。

駄弁者:
 夜が恐ろしくなくなれば、また別のものを恐怖するんじゃないでしょうか。
 最悪、暗いときは手を取り合っていた隣の人間が恐怖の対象になってしまうのでは。



<斜行存在>と呼ばれている――時の中に、斜めに存在しているからだ。

 出典: バリントン・J・ベイリー「時間衝突」(大森望訳)

紹介 :んどらもえ 様
HP :

コメント:
 ……ってどーゆーこっちゃい!(笑)
 と、思わず時間の中心で叫んでしまわずにはいられないステキな名文句が登場するベイリー先生の『時間衝突』。タイトルは何の比喩でもなく、文字通りの意味しかありません。地球には過去から未来へと進む<現在波>(この<現在波>が通過する<絶対現在>と呼ばれる瞬間にだけ意識や生命が存在します)があるのだが、なんともうひとつ、未来から過去へと進む<現在波>があったのだ! 2つの<現在波>は、200年後に正面衝突するコースを進んでいた! 要するに、「時間の流れは地球にゃ2個だけあってぶつかっちゃう」。うわあっ!!
 この大ネタだけでもお腹いっぱいなのですが、更にいろんなアイデアが出てくるのだからたまりません。その中でも僕が最高にゾクゾクしたのが<斜行存在>の存在です。なんなんでしょうね、「時の中に、斜めに存在」するって(笑)。1度体験したいような気もします。
 ベイリーの偉大なところはまさにここです。「SF」以外の何ものでもないストーリーや名文句、シビレルではありませんか。ベイリーこそ最高の大バカ野郎です。この男、無限大!

駄弁者:
 おもちゃ箱をひっくり返したような、とはベイリーの作品を評するときにちょくちょく使われる表現ですが、この作品でも当てはまりますね。
 「時間衝突」の理屈や『禅銃』に登場する「後退理論」など、「なんだかよく分からないけど、すごい!…ような気がする!」という感覚を味わえると思います。



「不死はひどく過大評価されている」シュッスラーは口をはさんだ。美しい旋律に苦味がまじる。
「わたしの知り合いの多くはその意見に反対するだろうな」とスワグマン。
「あなたの知り合いの多くは死刑執行人の一歩先を歩いているんだろう」とシュッスラー。
「彼の知り合いの多くは、もう死刑執行人に会ってるんだよ」とカイン。

 出典: マイク・レズニック「サンティアゴ」(内田昌之訳)

紹介 :歌鳥 様
HP :
http://members.jcom.home.ne.jp/songbird-x/

コメント:
 と、いうわけで、しつこくサンティアゴより。悲劇の人造人間シュッスラー、愛すべき悪党ジョリー・スワグマン、心優しき賞金稼ぎセバスチャン・カインの会話です。三者三様の”死”に対する見解もさることながら、冒頭のシュッスラーの言葉は、事実上不死である彼ならではの悲しみに満ち溢れています。
 自分以外のありとあらゆる生命を慈しむシュッスラー。カインと気が合うのもうなずけます。二人の別れの場面と↑、どちらにしようか迷いましたが、別れの言葉は美しすぎるので…。

駄弁者:
 かつて、遭難して瀕死のところを異星人に救われたシュッスラー。彼は生身の肉体の代わりに宇宙船の船体を与えられ、事実上不死となった。だがそれは、誰かと触れあうことはおろか痛みの感覚さえなく、自らの意志で死ぬことも許されないという代償をもってのことだった。セバスチャン・カインのサンティアゴ捜索に協力する報酬として、シュッスラーは自分に死を与えてくれるよう頼むのだった。
 ご投稿のくだりは、ブラック・オルフェウスの詩にうたわれることによる「不死」を賛美するスワグマンと、それに対するシュッスラーの反論ですが、もう一人の、カインの「死」に対する見解は表れているんでしょうか? スワグマンの知り合いが会った「死刑執行人」とはスワグマン自身のことだろうと、遠回しな皮肉を言っているだけに思えるんですが。
>二人の別れの場面と…
 覚えてなかったんでそこだけ読み返してみまたんですが、なかなか泣かせるシーンでした。



子供たちよ、ここに実地教育の素材があります──すなわち善は悪より生じることもあるということです。ひとたびわたしがこの罪人の頭皮をはがして届け出れば、彼は生前におこなったよりもはるかにたくさん神に尽くすことになるのです。…(中略)…この罪深く哀れな男の真っ黒な魂に、短く静かな祈りを捧げ、サタンのもとでの幸運を願いましょう。

 出典: マイク・レズニック「サンティアゴ」(内田昌之訳)

紹介 :歌鳥 様
HP :
http://members.jcom.home.ne.jp/songbird-x/

コメント:
 こちらにお邪魔するようになって一週間が過ぎましたが、読んでも読んでも終わりません…。これだけの文量を管理される駄弁者様には頭が下がります。といいつつ、またも投稿してしまいますが。
 「サンティアゴ」から、伝道師にして賞金稼ぎのファーザー・ウィリアムの台詞です(駄弁者様がお気に入りとのことですので、媚を売ってみました)。説教壇にて説教の最中、聴衆の中にいた賞金首をいきなり撃ち殺し、死体をそのままにして説教を続ける。銃の腕前と説教の腕前、両方を見てとれる魅惑的な場面です。
 伝道師なのに人殺し、しかも巨漢で大食漢、というすさまじい個性を持つファーザー・ウィリアム。辺境の歴史を語る詩人ブラック・オルフェウスの一番のお気に入りでもあります…が、僕は彼がシュッスラーについて語った言葉がひっかかりまして…好きな人物ではありますが、一番ではなかったりします。

駄弁者:
 ファーザー・ウィリアム、確かに気に入りなんですが、改めてこの名文句のシーンを読み返してみると結構ムチャクチャなこと言ってますね、この人。救えぬ魂は、治癒できないから切り捨てろって…。



ひとりきりで永遠を生きたいとは、だれも思わない。

 出典: グレッグ・イーガン「ふたりの距離」(山岸真訳)  『ひとりっ子』に収録

紹介 :んどらもえ 様
HP :

コメント:
 「文系も理系もたまには本格SF」というわけで、SF以外の何ものでもないグレッグ・イーガンの最新短編集からの投稿です。
 この世界では、人々は幼いころから<宝石>と呼ばれるニューロ・コンピュータを脳内に埋め込んでいます。<宝石>は十数年間も脳の反応をモニターし、やがてそれを完全に模倣できるようになります。多くの人は18歳になると<スイッチ>――脳の活動を停止し、<宝石>に引き継がせる――を行い、不死(永遠)を手に入れます。主人公はその永遠の中、ある疑問を抱いています――「他人を理解するとはどういうことか? 理解することはできるのか?」
 ……という「ふたりの距離」は、いきなりこの名文句から始まります。
 “ひとり”きりの永遠というのは、退屈でしょうし、寂しいものなのでしょう。永遠ではないのですが、『ドラえもん』第15巻「どくさいスイッチ」にて、世界中の人間を消してしまったのび太が「ジャイアンでもいいからでてきてくれえ!」ともらすシーンを連想しました。そう、「周りがうるさいってことは、楽しい」んです。……が、この「ふたりの距離」で辿り着いた結論には呆然としてしまいました。よもやこの名文句があそこまでの衝撃を生み出すとは! イーガンには脱帽するしかありません。
 なお、この作品の原題はCloser(より親密な)です。本作に「ふたりの距離」という邦題をつけた山岸真さんは、本当に素晴らしい訳者さんだと思います。これ以上ない的確な邦題、巧みな訳文。最高クラスの作品には、最高クラスの訳者がふさわしいです。

駄弁者:
 普通なら、「脳の代わりに「宝石」を埋めこむ」という設定自体で人間性を問うところを、そこを出発点にしてさらに先のところで問うていることも、この作者のすごいところなんじゃないかと思います。
 互いを理解し合って「ふたりの距離」をゼロにしてしまうという目的──それが達成されてしまったら、それはすでに「ふたり」ではなくなっている。見事な逆説でした。



「なんのとくにもならず、人にほめられもしないのになぜ行くんだい?」
「わからない。でも行かずにはいられないんだ。わけはあとで考えるよ」

 出典: 藤子・F・不二雄「パーマン『パーマンはつらいよ』」

紹介 :河童 様
HP :

コメント:
 はじめまして。ようやくすべて目を通すことができたので、一つ投稿させていただこうと思いました。ドラえもんが多いので、同じ作者の別の作品から。
 パーマン1号のミツ夫は、正体を隠しているためにまわりから評価されないことに苛立ち、パーマンをやめたいと何度も考え、バードマンと口論の末、パーマンをやめることにします。
 その夜遅く、突然起こった水害に、パーマンの仲間たちがミツ夫を誘いに来るのですが、ミツ夫は仲間の呼びかけにこたえず、彼らを追い出します。
 自分はもう関係ないのだと眠ろうとしながらも、現場で起きていることを考えると眠ることもできず、葛藤の末にミツ夫はパーマンセットを身につけて飛び出すのですが、そのときのパーマンとバードマンの会話です。
 ミツ夫の主人公であり、パーマンに選ばれた(自ら望んだのではないにせよ)所以だと思います。

駄弁者:
 「パーマン」は、「ドラえもん」や「怪物くん」に比べるといまいちなじみが薄いので、このエピソードも知らなかったんですが。
 「なぜ行くんだい?」とわざと聞いてみせているのだろうバードマン(原作では「スーパーマン」じゃありませんでした?)が、ちょっと格好いいです。



「我々の要求はただ一つ!」
WWW団は叫んだ。
「宇宙マクドナルドの朝マックを夜でも食べられるようにする事だ!」

 出典: 阿智太郎「住めば都のコスモス荘」

紹介 :匿名希望 様
HP :

コメント:
 それ以前に違う星まで自由に行き来できるような連中に朝や夜って関係あるんすか?

駄弁者:
 前に1回掲載しているんで、出典についてはそちらを参照のこと。
 いや、家を出てひとり暮らしする前、朝マックを食べてみたかったりしたので(まあ、実際に食べてみるまでは)、要求の趣旨にはちょっと共感を覚えましたが…。
 なお、匿名希望さんからは「住めば都のコスモス荘」「いつもどこでも忍2ニンジャ」より5つご投稿をいただきましたが、比較的面白く感じたこれのみ掲載させていただきました。…ちょっとコメント簡潔すぎませんかね?



氷を主な原料にして作った明るい金属。
名づけて「ひょうきんぞく」っていうんですぅ

 出典: タツノコプロ制作「逆転イッパツマン」

紹介 :砂漠の狐 様
HP :

コメント:
 この洒落のセンスは素晴らしい…… 大ウケしました。
 ただ作品そのものはシリアス路線を走っていた為にギャグの源である3悪の存在感が他のシリーズに比べて少し弱く感じたかな?
 それでも社会人になってからは笑えなくなった「人間やめて何になる?」のコーナー等、冴えてるギャグは多かったのですが。

駄弁者:
 氷が主な原料なら、それは「金属」とは呼べないんじゃないかと思いますが、ここは言葉遊びのセンスに素直に笑うところでしょう。
>社会人になってからは笑えなくなった
 エンディングの「課長部長えらい 社長会長えらい/えらきゃ白でも黒になる」の歌詞には、子供心に、オトナって大変なんだなあ、と。
 追記:kenjiさんよりエンディング(山本正之「シビビーン・ラプソディー」)の歌詞は「えらきゃクロでもシロになる」が正しいとのご指摘を受けました。感謝します。



人の未来は、白紙という事さ

 出典: ロバート・ゼメキス監督「バック・トゥ・ザ・フューチャー 3」

紹介 :砂漠の狐 様
HP :

コメント:
 この3部作には結構楽しませてもらった憶えがあります。
 実写だからかどうかは分かりませんが、同じタイムマシンでもドラえもんに登場するモノよりリアリティは感じましたね。

駄弁者:
 タイムトラベルの理由付けについて、とくに気を遣っているという感じはしませんでしたので、リアリティを感じたとすれば実写に依るところが大きいのではないかと思います。
 どっちがカッコいいかと言われたら、机の中のタイムマシンよりデロリアンでしょうが、どっちに乗ってみたいかと言われると…ちょっと迷いますね。



わたしはあなたをきずつけません
 いつもあなたをたすけましょう
おなかがすいたときには
 どうぞわたしの食べものを
くらくて怖いときには
 わたしがあなたの友だち
わたしはあなたを愛しています
 とわの愛をあなたへ

 出典: オースン・スコット・カード「ソングマスター」(冬川亘訳)

紹介 :司書の駄弁者
HP :ここ

コメント:
 前集で別の作品の「ソングバード」が登場したので、こっちも忘れちゃいけませんよ、と。私的には、「ソングバード」といえばまずこの作品の主人公・アンセットですし。
 幼いアンセットがソングハウスに入ったとき、世話役だったリルクが歌った「愛の歌」より。アンセットは数奇な運命を経て年老いても、この最初に歌いかけられた歌を忘れることはありませんでした。
 ストレートすぎていささか気恥ずかしくなる歌詞ですが、心細さを感じている子ども、いじめられている人には、このぐらいはっきりとしたメッセージが必要なこともあるのかも知れません。



あんた、『無敵くん』か?

 出典: 山本弘「神は沈黙せず」

紹介 :んどらもえ 様
HP :

コメント:
 前にも同じ作品から投稿しましたが(第119集)、文庫本が出版されたので再読と同時に再投稿を。前回は「名」でしたが、今回は「迷」の方です。
 2011年、突如あらわれた自動書き込みプログラム『無敵くん』。ユーザーが登録したこと(たとえば「相対性理論は間違っている」という主張とその論法のパターン)に従い、相手が反論するかぎり無限に再反論を繰り返す、名前どおり無敵の“論者”です。
 で、ややこしいのはネットの世界には「相手の意見に耳を貸さない人」や「他人が不快になるような発言を平気でする人」が多いという事実。これにより、ほんの少しのやりとりでは人間か『無敵くん』か判断がつきません。というわけで、上のような頑固者に対する罵り言葉が広まるわけです。
 「自分の信じたいことしか信じない」「相手の気持ちを分かろうとしない」――では、プログラムに従うだけの心のないロボットと大差ありません。心のあるものなら、「自分は間違っているんじゃないか?」とか「相手に失礼じゃなかろうか?」と考えることができるはずですから……。
 『無敵くん』のような人が減ることを祈るばかりです。

駄弁者:
 チューリングテストに合格!?…人間の側がレベル下げてどうする(笑)。
 しかし注意しなければならないのは、聞くべき反論までご投稿の文句で封じてしまい、自分自身が『無敵くん』化してしまうことじゃないでしょうか。
 ところで、この『無敵くん』プログラムどうしがネットで対決したとしたらどうなるんでしょう?さぞ不毛なやりとりが延々と続くことになるんだろうなあ…。



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