SF名文句・迷文句第156集

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未来人が全部科学に強いなんて思ったら大マチガイだ!

 出典: 長谷川裕一「クロノアイズ」

紹介 :司書の駄弁者
HP :ここ

コメント:
 長谷川裕一作品からもうひとつ。失われた過去の食材を口にするためだけに時空犯罪に手を染める未来人、「史上初めてアノマロカリスを食べた女」ジャギイさんの言葉より。
 宇宙食を食べてみたいがためにアポロ11号に乱入した彼女、暑いからと宇宙船の空調を切ろうとします。凍え死ぬってことも分からないのかと慌てて止める主人公に、笑って答えたのが上のセリフ。言われてみればその通りながら、意外と盲点か。
 そりゃねえ、19世紀の人間だって、21世紀になっても子孫が「水は何でも知っている」とか「スピリチュアル人生相談」とか言っているとは思ってなかったかも知れませんけどねえ…。



“銀河を守る”なんてごたいそうな目的で集まりやがったくせに……こんな程度のことでもう音を上げるってのか?
“銀河”ってのは星か? 惑星か? 直径10万光年の空間か? そんなものはやられたって自分でいてえなんて思わねえ! 
やられていてえと思う奴が乗っかってるから銀河なんだろうがっ!
てめえら一人一人が銀河だろうが!

 出典: 長谷川裕一「マップス」

紹介 :司書の駄弁者
HP :ここ

コメント:
 んどらもえさんに貸していただいた長谷川裕一作品を読み終わったので、記念に。
 銀河の全生物を犠牲にしようとする「伝承族」との最終決戦。全銀河が集結した大軍団は、しかし敵の圧倒的な力を見せつけられパニックに陥る。全軍崩壊の危機を救ったのは、自他共に認める金の亡者、ガッハ・カラカラの一喝だった。「銀河」のただ一人でも残っているうちは、まだ勝負はついていないと…。
 というわけで、「マップス」中一番気に入っている武器商人ガッハ・カラカラの見せ場より。出だしは三流悪役ながら、差別されている珪素生命の同胞を解放するため、あくどい仕事に手を染めているという設定がついてからは、なかなかおいしい役どころを務めていたと思います。



ご存知の方も多いだろう
ミノフスキー粒子はレーダー波拡散を目的として当時もちいられた
忍者はこれを使用する際、トリカブト、マツの実等を混ぜ粉末状にすることを好んだ
兵法帳に記される”ミノフスキー隠れの術”がこれである
「レーダーがきかん!」
「たよるな!」
「まずいぞ兄者!ここは風下じゃぁーっ」

 出典: こやま基夫「Gの影忍 虚空の章」

紹介 :出羽 様
HP :

コメント:
 戦あるところ忍あり。
 太平の世が地獄と化した宇宙世紀0079。後に一年戦争と呼ばれる戦乱の影にも、超人的な技量を備えた忍たちがいた。
 黒いガンダムを駆るリョウガもまた、そんな忍の一人であった。
 ジオン最後の宇宙要塞のからくりをあますところなく示した見取図を連邦軍本陣に届けるべく、漆黒の宇宙を駆ける彼の行く手を、三機の忍者ザクが待ち伏せる。とある無人コロニー近くで彼らを迎え撃ったリョウガは、数の不利を補わんとこの術を用いる。
 ”つまるところ、有視界戦闘に逆戻り”したモビルスーツの戦闘様式ですが、ならばその目を欺く技術が発達するのは自明の理でしょうか。宇宙で風下とか細かい話は、忍者のやることなんで大目に見てやってください。
 このマンガは、司馬遼太郎が白土三平のノリで書いた歴史小説のような趣で、設定は破天荒ながらけっこう筋の通った物語になっているところに作者の優れたバランス感覚が読み取れる逸品でした。初出がバンダイ発行の単行本というあたり、隔世の感があります。

駄弁者:
 作品を紹介しているサイトをいくつか見ましたが、畳返しならぬ「隔壁返し」とか、大気圏いづな落としとか、愉快すぎます(笑)。
>兵法帳に記される”ミノフスキー隠れの術”がこれである
 ミノフスキー粒子の使い方としては、反重力とかバリアーとかに使われるより直観的に納得しやすいような…。



「助けてくれ、怖いんだ。連中がプログラムを実行したら、僕は消去されて電子砂漠に流される。そこは古い映画の墓場だよ、きっと」

 出典: ABC(米)制作「マックス・ヘッドルーム(TVシリーズ)第6話『ハッカー集団ブランクス』」

紹介 :歌鳥 様
HP :
http://members.jcom.home.ne.jp/songbird-x/

コメント:
 さきほどの投稿の続きです。結局”トロイの木馬”作戦は失敗、エディスンは次なる”トロイの羊”作戦のために奔走します。一方、マックスは生みの親であるブライスのもとで恐怖に震えていました。世界中のシステム停止、それはマックスの死をも意味するのです。
 投稿はブライスに泣きついたマックスの台詞。いわゆる辺獄、リンボ界のマックス流の表現です。
 映画や番組の場合、人々に忘れ去られたときが”死”なのでしょうね。ソフトウェアとして残っても、やがては劣化してしまいますし。書物のほうが寿命は長そうです。とはいえ今の紙、パピルスほどには丈夫じゃないからなぁ…。
 やがては「マックス・ヘッドルーム」という番組自体、電子砂漠へ送られてしまうのでしょうか。その日が一日でも遅いことを祈りつつ…「ネットワーク23はまだまだ続くよ!」

駄弁者:
 完全に消去されるんじゃなくて、何らかのバックアップはあるんじゃないかと想像するんですが、ストレージに保存されるというのは、AIにとっては何もない砂漠に閉じこめられるようなものなんでしょうね。



マックス:「つまり僕に馬の真似しろってこと!? ”馬”鹿にするな!」
エディスン:「お前だけが頼りだ。敵に入口を開けさせてくれ、お前のその魅力で」
マックス:「敵の正体は? それに『木馬』は結局どうなった!?」
ブライス:「神話化されたよ」
マックス:「シリーズ化はされなかった?」

 出典: ABC(米)制作「マックス・ヘッドルーム(TVシリーズ)第6話『ハッカー集団ブランクス』」

紹介 :歌鳥 様
HP :
http://members.jcom.home.ne.jp/songbird-x/

コメント:
 駄弁者様さえご存知ないと評判のマックス・ヘッドルーム。ひそかにショックを隠しきれない歌鳥です。実はマイナーな存在だったのか…。DVDが出ないわけだ。
 自分の存在をあらゆるデータベースから消去し”空白”の存在となった人々、それがハッカー集団”ブランクス”です。逮捕された仲間を解放すべく、ブランクスはサイバーテロ行為に走ります。世界中のコンピューターを停止する、という脅迫。それはテレビ放送の中断、すなわち世界の終わり(と人々は感じている)を意味します。
 エディスン達はハッキングの痕跡を辿り、ブランクス本拠の(ネット上での)入口を発見します。が、回線が閉ざされていて侵入できません。そこでエディスンが提案したのが”トロイの木馬”作戦。魅力的で拒めないものを侵入口にちらつかせ、相手に回線を開けさせようというのです。…すごい理屈ですがそういうドラマですので…。
 投稿は、その魅力的なモノ=マックスを説得する場面の会話です。言われてみると確かに「トロイの木馬はその後どうなったか」なんて話は聞いたことがありません。
 ちなみに「マックスヘッドルーム」は12話で終了、その後シリーズ化とはならなかったようです。おまけにビデオシリーズはなぜか6話までしか発売されませんで…手持ちのソフトはこれが最後。が、それでも「ネットワーク23はまだまだ続くよ!」

駄弁者:
 「トロイの木馬」は、今ではネットワークの世界で(悪い意味で)おなじみになってしまいましたね。
>駄弁者様さえご存知ないと評判の
 私は映像作品にはかなり疎いので、私が知らないからと言ってマイナーとは限りませんが…。



戦う理由なんて誰にも判らなくなっていた。
ただ、世界が悲しかった。
だから俺は……

 出典: ナムコ製作「ACE COMBAT ZERO THE BELKAN WAR」

紹介 :AKS 様
HP :

コメント:
 実在する現用戦闘機が架空の世界で戦う、ナムコの3Dフライトシューティング「ACE COMBAT」シリーズから。個人的には近年希に見る名作で、出てくる台詞も名台詞揃いですが、その中から悩みに悩んだ上で名台詞を一つ。
 経済破綻を背景に極右政権の台頭を招いたベルカ公国。そのベルカに侵攻された隣国、ウスティオ共和国は隣接するサピン王国、オーシア連邦と共に連合軍を編成し祖国解放を求めて抗戦する。その戦いに傭兵(この世界の傭兵は一種の義勇兵みたいなものです。)として参加した「鬼神」サイファー(プレイヤー)とその相棒、「片翼の妖精」ラリー・フォルク。彼らの活躍によってウスティオは開放されるが、連合軍はベルカ領内へ逆侵攻。徹底抗戦を続けるベルカとの戦いは泥沼の地獄へと突き進む……
 挙げた台詞は、連合国の無差別爆撃とベルカ軍の焦土作戦によって壊滅していくベルカ領内の工業都市ホフヌング(ベルカにはドイツ語を基にした名前が多いですが、ホフヌングはドイツ語で「希望」を意味します)の上空で、爆撃隊を、無差別爆撃とは知らずに護衛していたラリーが呟いた言葉です。そして、ベルカ領内でのベルカ自身による核攻撃、と言う更なる惨劇の中、彼は戦う理由を見つけます。「国境を無くす」。そのために、世界を滅ぼすと言う絶望と狂気に満ちた理由を……

駄弁者:
>「国境を無くす」。そのために、世界を滅ぼす
 それってネズミを退治するために、地球破壊爆弾をつかうようなものなんじゃ…(すいません、下のご投稿から連想してしまったもので…)。



「あれをかしてよ ほら! あれ!
 見えなくなる目ぐすり!」

 出典: 藤子・F・不二雄「ドラえもん『見えなくなる目ぐすり』」

紹介 :TOM 様
HP :

コメント:
 ジャイアンから本を取り返すため(またかい!)、透明人間になりたいのび太。
 ドラえもんに相談しますが、「なんだよ、年末が近づくと忙しいんだよ」と、にべもない。
 のび太が投稿のセリフを叫ぶと、はいよってな感じで目薬を渡します。のび太の方も「これこれ、もう用はないよ」って、なにこの、ドラミちゃんとの温度差w
 ええ、まぁ、ネタバレっちゃネタバレなんですが、作中でもかなり早い段階で作者自身がバラしてますし、大方も察しがついてると思いますので、言っちゃいます。
 これ、透明人間になる目薬じゃなくて、他の人を見ることが出来なくなる目薬だったんですね(爆)
 風景だけはしっかり見えているのに、そこにいる人間だけ、身に着けているものも含めて見ることができなくなってしまうという、「どんな需要があって発明したんだよ!?」的なトンデモ道具だったのです!
 いやぁ、日本語って、ホントーに難しいですね!(笑)

駄弁者:
 人が大勢いるところで集中して本を読みたいときなんかは有効…でもないか、音は聞こえるんだし。
 しかし、のび太が頼んだ「見えなくなる目薬」、自分が透明になるのに、自分の眼に薬を入れるというのは、改めて考えてみるとちょっと変な趣向ですよね。



「すきとおった生物なんて、めずらしくもないわよ
 クラゲはどうなの? プランクトンは?
 よう虫やよう魚のすきとおったの見たことない?」
「人間はクラゲじゃないもん」
「細ぼうが集まって生命を作ってる点では同じよ。
 人間にも、すきとおった部分がちゃんとあるんだから」
「まさか!?」
「目玉の水晶体とガラス体」

 出典: 藤子・F・不二雄「ドラえもん『とう明人間目ぐすり』」

紹介 :TOM 様
HP :

コメント:
 第153集に「神様は透明な生物なんか作らないと思うけどな。」というコメントがあったのを見て、このセリフを思い出しました。
 のび太くんは、ジャイアンに奪われた本を取り返すため、透明人間になる薬が欲しいとドラミちゃんに頼みますが、「ひきょうだと思うわ、おことわり!」と言われてしまいます。
 そこで、「本当は透明になる薬なんてないんでしょ、生物が透き通るなんて、考えられないよ」と挑発する作戦に出ます。それに対してドラミちゃんが言ったのが、投稿のセリフです。
 初めて見たときは小学生でしたが、結構、目からウロコ感がありましたね。
 結局ドラミちゃんが取り出したのが『透明人間目ぐすり』
「簡単に言えば、体内の細胞を水晶体にしちゃうわけ」
と解説してましたが、それじゃ目が見えなくなっちゃうよな、とは、言わない約束(笑)
 ところで、実はてんとう虫コミックスの11巻以前に収録されているドラミちゃんのお話は、ドラえもんとは別の、独自の連載枠で掲載されてたらしいですね。
 本来ドラミちゃんがいるのは、のび太の親戚の、のび太郎の家なんですね。元々のび太とのび太郎は双子みたいにそっくりという設定だったので、コミックス収録の際は脇の登場人物を描き換えて、のび太の話として収録したそうです。
 なので、のび太やジャイアンが住んでる家が、ドラミちゃん話では妙に良い家になってたりするわけです。
 で、本来はジャイアンではなくカバ田、しずちゃんではなくみよちゃんという脇キャラだったんですが、コミックス版では全面描き替えされてます。ただし、スネ夫ポジションのズル木くんだけは描き替えられず、そのまんま。
 おそらくズル木くんの背が高すぎたため、顔だけ描き換える作業ができなかったためと見られています(笑)

駄弁者:
 「透明になったら目が見えないんじゃ」「断食してからでないとグロいことになるよね」というのは透明人間に対する定番の、しかしもっともなツッコミだと思います。
>ドラミちゃんのお話は、ドラえもんとは別
 そう言えば、この話だったか別のだったか忘れましたが、のび太がしずちゃんに向かって「みよちゃんも?」と話しかけているのがあったのを覚えています。今でも覚えているんだから、よっぽど違和感を感じたのかなあ。



この物語の真髄は、耳慣れない造語を連発することで表現できるものではない。

 出典: アイザック・アシモフ&ロバート・シルヴァーバーグ「夜来たる[長編版]」(小野田和子訳)

紹介 :首くくり 様
HP :

コメント:
 序文「読者の皆さんへ」より。
 フィクション作品の評価等で、造語については議論される事が多いですが巨匠が言う一言だと、重みが全く違いますね。

駄弁者:
 ご投稿の文句は、作品の舞台になっているカルガッシュが異星世界であるにも関わらず、距離・時間の単位や用語などが地球のものであることについて、断りを入れた部分より。この世界は地球とよく似た世界(だから地球の用語を用いることができる)なのだが、ただ一つ大きくことなる点があり、それについての反応こそが重要部分なのだということです。
 注釈なしに造語を連発するサイバーパンクSFに対する皮肉も入っていたのかな…とも思うのですが。



XBOXとかそーいうの期待してるずうずうしい奴はナシ。
けん玉とかそーいう大人の事情をわかってる奴。

 出典: 空知英秋「銀魂」

紹介 :砂漠の狐 様
HP :

コメント:
 けん玉ブームが来ると予見してけん玉しか持って来なかったサンタが子供達にけん玉のプレゼントを渡そうとしますが、子供達の要望するものは「けん玉と優しかった母さん」「けん玉と明日へはばたくための翼」そして「けん玉、みんなで一緒にやったっけ。 ……もう戻らない、あの夏」といった物理的に不可能なモノばかりだったので一軒も子供の夢を叶える事はありませんでした。
 最近の子供は要求するプレゼントの質も上ってきているのでサンタさんも苦労しているのでしょうね。

駄弁者:
「子供の夢を叶える事はありませんでした」というか、子供らしい願い事が一つもないような。
 けん玉はともかく、PS3をたくさん用意してWiiを用意していなかったサンタはいそうな気がする…。



「今、やっとわかった……なぜ濫用テストが必要だったのか。あれは、道具的存在である俺が使い手を審判し続けるためのテストだったんだ。」

 出典: 冲方丁「マルドゥック・ヴェロシティ」

紹介 :あるい 様
HP :

コメント:
 こんばんわあるいです。また「マルドゥック・ヴェロシティ」からです。今度はPART3最終巻から、ユニバーサル・アイテム(彼は兵器というよりこっちの方がしっくりくる)ウフコックがボイルドに濫用されて意識を取り戻したときに言った言葉です。この後彼は相棒であったボイルドを拒絶し、ボイルドは「孤独」になります。(厳密に言えばそうでもないんですが……)
 この巻では、仲間たちがガンガンと死んでいき法案自体も危うくなって行きます。この巻は読んでいて切なくなってきました。

駄弁者:
 あまりに便利で強力すぎるウフコックの能力にかけられた、一種のセーフティみたいなものとも言えるでしょうか。使う側、使われる側双方にとって残酷な安全装置ではありますが…。



「ここで、台所ロマン劇場を中断して、臨時ニュースをお送りします」

 出典: マーヴェル・サンボウプロダクション「戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー 第51話『ターゲットはコンボイ』」

紹介 :取手呉兵衛 様
HP :
http://blog.livedoor.jp/tottekurehee/

コメント:
 銀河の彼方からやってきた、正義のロボット軍団サイバトロン!…のはずなのですが、基地のテレビで昼メロなんか観ていたんですねぇ…。しかもこのシーン、中断したことにみんなでブーイングまでしていたんです…。
 今年の夏に公開される劇場映画でもこんなまぬけなシーンが観られればいいな。(そうかなぁ)

駄弁者:
 まあ、宇宙から来たロボットには珍しかった、というとこらへんで。
>夏に公開される劇場映画
 そもそも「サイバトロン対メガトロン」という構図になるんでしょうか?



いまじゃ僕の村では──
“最低野郎(ボトムズ)”は最高の誉め言葉になってるんだ

 出典: 原作・岡島正晃 作画・曽野由大「「装甲騎兵ボトムズ ATStories 第1集」

紹介 :取手呉兵衛 様
HP :
http://blog.livedoor.jp/tottekurehee/

コメント:
 アニメ「装甲騎兵ボトムズ」の主役ロボット・アーマードトルーパー(AT)は、アニメ史上最高のリアリティを持つロボットという評価が為されておりますが、逆に言えば最も地味なロボットです。4メートルに満たない身長で、装甲も破片避け程度の低コスト兵器。主人公が乗ってもすぐ壊れ、乗り捨てられ、残骸となってうち捨てられた姿がさらされる…。付いたあだ名が「最低野郎」。そんな不幸なロボットが神様になった、というのが出典のお話。
 とある星。戦略上無価値だったため、村のはずれに擱坐したAT・マーシィドッグ以外には戦争の匂いなど皆無だった田舎の漁村に、大事件が起きます。
 人を、漁場を食い荒らす巨大な怪魚・アンボレスが現れたのです。このままでは村人は漁に出られず、座して餓死を待つだけ…。主人公の少年は、ATを寄せ集めの部品でどうにか修繕し、怪魚に戦いを挑みます。しかし、ATをも凌ぐ巨体を誇るアンボレスの前には、ポンコツATと素人パイロットでは歯が立たず、マーシィドッグはボロボロになり、少年も外に放り出されて正に絶体絶命。
 そのとき、奇跡が起きました。最早力尽きたATの内部で、高エネルギー動力源・PR液に電装品の漏電が引火。一個の爆弾と化したATは怪魚と共に木っ端微塵に吹き飛んだのです。
 かくて少年と村は救われ、村人たちは救世主たるマーシィドッグを称え、村はずれに鋼鉄の巨人を象った像を祀ったのです…。
単体で銀河や惑星を救うことなど絶対に出来ない無骨なロボットだからこそ、銀河の片隅に息づく人々のささやかな幸福を守った…というのが良いなぁ、と思うのです。
(逆に、巨大なスーパーロボットではこういうお話は作りづらいでしょうね)

駄弁者:
>巨大なスーパーロボットではこういうお話は作りづらい
 スーパーロボットとタメはれるような怪魚では、小さな村なんかあっさり全滅してしまいますし。
 そう言えば「ボトムズ」、この夏に新作アニメが出るんですね。



ウルトラマーン! 死んじゃダメ! 立つのよ! 起き上がって!
ウルトラマーン! あなたが死んでしまったら地球はどうなるの!!

 出典: 円谷プロ制作「ウルトラマン 最終話『さらばウルトラマン』」

紹介 :砂漠の狐 様
HP :

コメント:
 最終話であっても他の話と大差なくのんびりと鑑賞していた「さらばウルトラマン」
 正体不明の円盤群が飛来し、それに乗っていたケムール人そっくりのゼッン星人が「ゼットン……」とつぶやいて死んだ後、宇宙船の上部からピンク色の風船が出てきてそれが割れたと思ったら曲がった角を持ち、黒い色で中肉中背の体格をした怪獣が現れました。 「最終回の怪獣にしちゃダセェなぁ〜」と思い、ソイツがスペシウム光線と同威力の兵器マルス133を受けても平気な所を見ても大して驚きはしませんでした。
 そしてウルトラマンの登場。 相手の動きを封じるウルトラマンのキャッチ・リングをいとも簡単に振りほどき、テレポーテーションを駆使し、八つ裂き後輪をゼットン・バリアでガードするさまを見ても「ふ〜ん、腐っても最終回って訳か」とタカを括っていました。 そしてスペシウム光線。 「これで終わりだ」といつもの予定調和を見るはずでした…… しかし、ゼットンはスペシウム光線を吸収するように受け止め、逆に光線をカラータイマーに向けて放ったではありませんか。
 あの瞬間「………………は?」を6、7回は繰り返したと思います。
 直射日光を背に受け、微動だにしないウルトラマン。 そしていつの間にか彼は地面へと仰向けに倒れていました。 それを見て、私の中で時間が止まりました。
 ウルトラマンが敗れる。 過去にどんな苦戦があっても最後には必ず勝利を収めてきたウルトラマンが敗れる。 私の中でウルトラマンが敗れる事など絶対にある筈の無い出来事でした。 それこそ朝日が西から昇る事よりもありえない事だったのです。 アキコ隊員等が必死に叫んでいましたが、何を言っているのかも分からない状態でした。 その後、岩本博士の作った新兵器「無重力弾」によりあっさりゼットンは爆発。
 そして当時はまだ宇宙警備隊の隊員だったゾフィーによって命を貰ったウルトラマンはハヤタと分離してM78星雲に帰っていきました。
 今どきの言い方をすればプチトラウマって所ですかね。 生涯忘れられないショッキングな出来事でした。 そしてその雪辱は「帰ってきたウルトラマン最終話」や「甦れ!ウルトラマン」まで待つ事に……

駄弁者:
 私の場合、印象に残っているエピソードながら、それほどショックを感じた覚えがないのは…多分見る前からこの最終回でウルトラマン死んでしまうということを知ってしまっていたんじゃないかと思います。
>「帰ってきたウルトラマン最終話」
 こっちでゼットンがあまり強そうに見えなかったほうがショック、という方もいるんじゃないでしょうか。



過去なんてもうあらへん!
未来なんてまだあらへん!
あるのんは今だけどす!

 出典: 村上もとか「JIN -仁-」

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 名セリフは「インパクト」と「汎用性」。
 そう、我々にあるのは「今だけ」なのです!「あとからやります」なんて言葉、信用したらダメです。 ………えー、人には予定というものもありますが、、、。
 医家版「幕末未来人」な「JIN -仁-」の、坂本龍馬の妻「お龍さん」のセリフです。
 西暦2000年から幕末に飛ばされた脳外科医、南方仁。ペニシリン作ったり、予防医学の考えを世に広めようとしたり。「過去を変える」ことに躊躇しません。
 しかもこの南方さん、現代にあまり未練がないようで、「現代に帰る努力」をしません。まぁ、私が飛ばされてもしませんが。
 もっとも医者はリアリストが多いと聞きますので、無駄な努力をしない、というか出来る事をやる、というスタンスのようです。「腕に覚え有り」の人は強いですね。
 つまり、男子たるもの何時飛ばされてもいいように技術その他を身に付けよ、という事なんでしょうか?

駄弁者:
 今回のはいつにもまして「インパクト」と「汎用性」に富んでますね…。えー、人には「予定は未定」という言い訳もありますが。
>何時飛ばされてもいいように技術その他を身に付けよ
 私のもっている技術は幕末どころか、前後30年も保ちそうにないです。…飛ばされたら何とかして帰らないと。



「あたしはだれ?」ある日、オーリャド・ファニーフィンガーズは母親にたずねた。「それと、ついでだけど、あたしは何者?」

 出典: R・A・ラファティ「ファニーフィンガーズ」(浅倉久志訳)  SFマガジン'02年8月号に収録

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 自分が何者なのかを知っている人など、そうはいないのでしょうが……本作のヒロインは、それを知ってしまいます。
 (「自身を知れ、だって? もしわたしが自分を知ったとしたら、逃げ出すだろうよ」と言ったのは、ゲーテでしたか?)  SFマガジンのラファティ追悼特集より、あらゆるものを鉄から作り出してしまう少女、オーリャド・ファニーフィンガーズの物語を。どことなく、映画『シザーハンズ』(主人公の名前は「エドワード・シザーハンズ」)を思わせる、少し哀切な現代の寓話、とでも評すべきでしょうか。
BGM:「君の手のひらに」ブランキー・ジェット・シティー

駄弁者:
 ホラ話…だけど、ラストはちょっと切ないですね。オーリャドもですが、夫や娘が何者か分からないながら、何かを悟ってしまっている彼女の母親も。
>もしわたしが自分を知ったとしたら
 知ったとしたら…というより、知ってしまう前に逃げ出すかもなあ。



心とは何でしょう 人のあり得べき姿とは?
道具は人なしには生かされない 人は道具なしには生きていけない
私達は意味を求め歩む──
貴方もまたそうであるように

 出典: 丸川トモヒロ「成恵の世界」

紹介 :神野恵 様
HP :

コメント:
 続けて失礼します。前のとちょっと絡めまして投稿させていただきます。
 物語が進行するにつれ、作品の空気が変わってくのはよくある話です。ほのぼのラブコメをして始まったはずなのに近年まれに見るスケールの大きなSF漫画、成恵の世界から。
 メカ、恒星間旅行、宇宙戦争、ウラシマ効果、人の身を超えない超能力、果ては宇宙地図による時代(時間じゃないのがミソ)のズレとかなりのロマンがウイットを効かせて盛り込まれてるのがうれしい作品。
 テーマもしっかりしていて読み応えもなかなか、多少「どっかで見たことある感」は否めませんが。
 台詞は2人の宇宙戦闘艦による会話。転送、衝角の連続技(これもロマン)で乗り込むストレルカ、機能を落として子供達を密閉するバチスカーフ。ほの暗い機関部でともに打開を待つ二人の機族の問答。
 ちょっと前のところに「天に星 地に花 人に愛」と問うて、「鉄に夢」解く一説があるんですが、繋げてみるとなかなかに味わい深い。
 科学が進みすぎ、人の手に余るようになった世界で、離れたところから口を出すだけの人間はいろんなものを見失ってて、本来彼女達は夢の続きを見せるために、それでも人が人でいるために存在してるのに、人に心を忘れてほしくないだけなのに、その人はそれを理解していない。この手のパラドックスはありがちですが、それだけにうまく使われると響きます。

駄弁者:
 この作品では人格と人型の姿をもった星船や戦闘機たちが「機族」として人間(一応宇宙人だけど)と共存していますが、そういうあり方に反対する勢力もあって、主人公たちはその争いに巻き込まれてしまいます(…などと書くとシリアスなんですが、基本的にはお気楽なラブコメ)。
 「道具は人なしには生かされない 人は道具なしには生きていけない」とは、まったく名文句だと思います。けど機族のような存在が、いつか人の道具であることに意味を見出さなくなるんじゃないか…という不安は、容易にぬぐえないんじゃないでしょうか。



「月面ツアーは高過ぎるわよね」

 出典: 上海アリス幻樂団「大空魔術〜 Magical Astronomy」

紹介 :神野恵 様
HP :

コメント:
 またも一般流通で無い媒体で失礼します。
 最近はスケールの大きなSFがめっきり減ってしまいました。軌道エレベーターやリップ・ヴァン・ウィンクル効果を生きてる間に見たかったのですが無理っぽいです。
 まぁ、逆に身近なところはだいぶ進みましたね。ワンセグとかインプラントとか生体認証とか。等身大なSFが流行るわけです。実体のある、実現するかもしれない夢ですからね。
 人にはやっぱり身の丈ってものがあるみたいです。スケールの大きさはエネルギーの大きさ。体が耐えられないエネルギーはそうそう扱えませんよね。人の姿を保つ以上は見れない夢があるのかもしれません。
 ギブミー機族!
 台詞は少女が2人、カフェで宇宙を語るところから。号外ニュースの「日本でも民間旅行会社による月面ツアー」について。ポイントは月面、見るだけじゃないですよ。
 まぁ、もっともこれ以上ツアーのことには触れられません、理由はわかりますよね。
 黒い方の少女、蓮子曰く、物理学は終焉を迎えている、観測のコストがかかりすぎるから、ここからは観測できない哲学の世界。とのこと。
 宇宙ステーションも正直望み薄なこのご時勢、月ツアーは一億ドル。
 SFが実体の無いロマンに成り下がることの無いよう祈ります。
 ……でも正直地表でのブラックホール実験はどうかと思いますが。

駄弁者:
 弾幕系シューティングゲーム「東方Project」で有名な同人サークルの音楽作品より。ブックレットに収録されているショートストーリーが出典のようです。
 ショートストーリーでちょっと言及されているような「忘れられた世界」が隠されているんなら、少々高いツアーでも価値はあるんでしょうが…。
 でも1億ドルはいくらなんでもムリ。



私…あなたが好きよ ロック

 出典: 聖悠紀「超人ロック 魔女の世紀」

紹介 :きょん 様
HP :

コメント:
 コーネリア・プリムからロックヘ。
 銀河支配という野望を抱くレディ・カーンは、エスパーとして潜在能力を持つ子供を集め、自分の作った学校に入学させた。そこではレディ・カーンへの忠誠心を植え付けながら、エスパーとして目覚めさせていく。目覚めた者にエスパーの現状を教え込む。エスパーは普通人より優れた存在なのに現在はバケモノ、異常人として差別されている。銀河連邦を解体し、超能力者たちが治める至福の千年王国(ミレニアム)ができれば、人々は全てのエスパーに敬意を払い、新しい優れた人類として受け入れるようになる…。その言葉を信じたエスパーたちの一人がコーネリアだった。彼女は人として女性としての幸せを諦め、千年王国のために人生を捧げていた。だがロックのお陰でレディ・カーンが自分一人の王国を作り上げようとしていることを知り、これを殺害。千年王国の悪夢を終わらせた。だがコーネリアにはリーダーとして、戦いの指揮をとっていた責任を取らなくてはならなかった。彼女に下された判決は人格矯正。忌まわしい過去の記憶を消し、別の人間になって新たな人生を生きる。しかし忌まわしい過去の中にはロックとの出会いも含まれているのだった。
 忘れてしまうその前に、コーネリアからロックへ送る最初で最後の愛の告白です。

駄弁者:
 これはずっと前に出ていた名文句の前段にあたるみたいですね。
 このご投稿を見て、もう一度先の名文句を見直すと、せつなさが増します。



「俺は戻りたい …(中略)… こんな状態に置かれて発見したよ。俺はなんだかんだ言いながら今までの暮らしがけっこう好きだったんだな。アホの谷口や国木田も、古泉や長門や朝比奈さんのことも。消えちまった朝倉をそこに含めてもいい」

 出典: 谷川流「涼宮ハルヒの憂鬱」

紹介 :Y 様
HP :

コメント:
 というわけで前回の投稿から続きます。(以下、本編ラストについてのネタバレなのでご注意を:駄弁者)
 SOS団のメンバー達の正体が明らかにされていく中、ハルヒ自身に備わった能力も明らかにされていきます。じつは彼女は本人にも無意識のうちに自分が望んだことを実現していく力があり、さらには感情の起伏によって現実とは切り離された特殊な空間を創り出すことができるというのです。この空間には特殊な能力を持った超能力者の力がなければ入ることができず、内部では青い巨人が淡々と建造物を破壊していくとのこと。
 もちろんそれだけでは完全に閉鎖された空間なので全くの無害なのですが放っておくと現実世界と入れ替わってしまう危険があり、そうなる前に前述の巨人を破壊して閉鎖空間を消滅させることが古泉達超能力者の使命だそうです。
 古泉の案内によってキョンがその様子を目の当たりにした数日後、普通に眠っていたはずの彼はなぜかハルヒと共に学校を中心とした閉鎖空間に閉じこめられてしまいます。
 しかも今回は超能力者達でさえも内部への接触がかなり難しく(そのくせに某SF映画のヒロインみたいな方法で接触してきた者もいましたが)、どうにか駆けつけてきた古泉曰くハルヒがそれまでの世界を完全に拒絶し始め、それが具現化しだしたのだとか。
 古泉はそのことを伝えたあと消滅してしまうのですが、案の定それまでの閉鎖空間と同じように青い巨人が現れて校舎を破壊し始めます。
 何も知らないハルヒは長い間待ち望んだ「不思議な現象」に目を輝かせますが、このまま彼女が以前の現実に戻るのを望まなければ現実世界は消滅してしまう。そこでキョンがハルヒに言ったのが以上の台詞です。

 結局人間は他人の青い鳥には気づいても自分の青い鳥にはなかなか気づかないんですね。

駄弁者:
 「涼宮ハルヒの憂鬱」は、これ1冊で完結していてもよかったように思っていたんですが。
 こないだ遅ればせながら読んだ第4作め「〜の消失」は、ご投稿の名文句についての、より魅力的な選択肢を用意した問い直しになっていて、なかなか面白かったです。



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