SF名文句・迷文句第201集

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二十一世紀はひどいところだよ、本当に!
ぼくは低速タイムマシンでそこに到達した。生きてくることで。
こんな世界で何が日常を構成する?どんなものも、もう日常ではない。何もかもが、もうこの多重的なひどさに触れられてしまっているからだ。
今いるここは、どんなSFで読んだよりもひどいところだ。

 出典: ローカス誌編集部/ウィリアム・ギブスン「自覚的なとっぴさ」  SFマガジン2009年1月号掲載インタビュウ

紹介 :屋良一 様
HP :

コメント:
 ギブスンの見解ではこの現実と同レベルで酷いのはジョン・ブラナーの作品だけだそうです。
 半分同意ですが、彼は光瀬龍作品とかは読んでないのかな?こっちの方がはるかに酷いと思います。
 冷戦期が一種幸せな時代(痛ければモルヒネを打てば良い、脳が楽になる。という意味で。)だという観点からすれば「1984年」の世界だって住みやすいかもしれませんね。北朝鮮もこの世の楽園だそうですし。
 確かにいまいる此処はウェルズの時間旅行者もそそくさと通り過ぎ、間違っても夏の扉の向こう側ではありません。
 でも、掃除もせず部屋に籠ってて病気になったら「自業自得」なんじゃないでしょうか。特に、同居人といがみ合ってばかりいては。

駄弁者:
 ギブスンの作品世界だって、あまり快適な世界とは言えなさそうな気がするんですが。
>冷戦期や「1984年」…
 住みやすい、というよりは考えずに生きやすい、という方が当たっているかも。



「それがどうしたというのです?それが、あなたがたに、なんの関係があるというのです? これは、こっちの問題なんだ。われわれの解決する問題なんだ。たとえ解決ができなくて地獄へ堕ちたところで、それこそこっちの勝手なんだ!」

 出典: アイザック・アシモフ「鋼鉄都市」(福島正実訳)  『世界SF全集14』に収録

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 アシモフの傑作SFミステリから投稿します。地球からの移民「宇宙人」たちと地球人との戦争が「宇宙人」側の一方的な勝利に終わってから一世紀。宇宙人たちは地球にドームを作り、地球人たちとほとんど交流をせずに暮らし、地球人たちは、そんな宇宙人たちに不満を積もらせ、爆発寸前になっている。
 そんな中、親地球派の宇宙人が殺害された。ニューヨーク・シティ警察のイライジャ・ベイリは上司の命令により、宇宙人のロボット、R・ダニールとともに捜査に乗り出すのだが…。
 投稿したセリフは、親地球派の宇宙人、ファストルフ博士が言った宇宙人が地球にきた真の理由とそれに対する理由から。このあと、ベイリは自分の考えを翻し、続編の「夜明けのロボット」では積極的に地球人が宇宙に出ていくように運動し、「ロボットと帝国」では、「ベイリ・ワールド」なんて植民地まで作っています。「ロボットと帝国」では同じような台詞を宇宙人が言っているのが皮肉というかなんというか…

駄弁者:
 『鋼鉄都市』、懐かしい。これと続編『はだかの太陽』が、ファウンデーション3部作と並んで、私のアシモフ作品に対するイメージの基調となっています。
 このときのベイリのセリフは、都市ごと引きこもっているこの作品の地球人を代弁したものだったと思います。彼がこの考えを完全に翻すのは、この作品の中ではなく、続編の『はだかの太陽』だったのではないでしょうか。都市ごとどころか、各個人が引きこもったまま生活する「ロボットの星」ソラリアの事件を目の当たりにしたことが、おそらく最後の一押しになったのでしょう。



冷たい言い方かもしれんが、鉄人はなんとも思わんよ。そう思うのは正太郎君、君自身だ。君の心が傷つけられたから、そう思うんだ。違うかね。

 出典: 横山光輝原作「太陽の使者鉄人28号 第33話『破壊された鉄人!』」

紹介 :かんきち 様
HP :

コメント:
 敷島博士の記憶から直接盗んだ情報を元にして、鉄人のコントローラーをもう一つ作った紅トカゲ団は、奪った鉄人を使って世界各地を襲撃します。事態を重く見た国連は鉄人の破壊を決定。その途端に紅トカゲ団は鉄人を帰して寄越します。鉄人が戻っても一度決まった決定は覆らず、鉄人は全身に爆薬を仕掛けられて破壊されてしまいます。そして、邪魔な鉄人が消えるのを待っていた紅トカゲ団はトカゲ型ロボットを街で暴れさせます。
 「鉄人を動かして悪いことをしたのは人間じゃないか!」と泣き崩れる正太郎に、鉄人を出動させろと言う敷島博士と大塚警部。実は破壊されたのは事態を予期していた博士に作られた偽物だったのです。正太郎まで騙す理由がよくわかりませんが。しかし、正太郎は、破壊しようとしておいて、都合のいいときだけ鉄人に頼ろうとする人間は勝手だ。鉄人が可愛そうだと言って鉄人の出動を拒否します。そのときに敷島博士が言ったのが投稿の台詞です。結局、正太郎は鉄人を出動させてトカゲロボを倒し、紅トカゲ団を壊滅させます。戦いの後、大塚警部は国連で演説し、心のない鉄人を扱うのは人間だ。だからこそ注意しなければならないのだと訴えます。これで納得したかと聞く敷島博士に正太郎は硬い表情のまま答えます。
 「ええ、鉄人もきっと喜んでくれると思います。…感情があれば」  そして、この次の回から感情を持ったロボット・ブラックオックスが登場するのです。

駄弁者:
 80年代に2回目のリメイクがされたときの「鉄人28号」より。リメイクとはいえ「良いも悪いもリモコンしだい」のコンセプトは生きてます。
 それにしても、子ども相手になんとも突き放したお言葉…一人前扱いしているとも言えますが。正しいだけに反感が内にこもってしまいそうです。



「どうだね、モンターグ、プラトンの≪共和国≫を読んでみたいとは思わんかね?」
「もちろん、思いますとも!」
「わしがそのプラトンの≪共和国≫だ。マーカス・オーレリアスを読んでみたければ、シモンズ君が、その≪マーカス≫だ」

 出典: レイ・ブラッドベリ「華氏四五一度」(宇野利泰訳)  『世界SF全集13』に収録

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 華氏四五一度からも投稿します。投稿したセリフは、本を焼くという自らの仕事に疑問を持ち、禁止された本を隠し持っていたことがバレたため、すべてを失ったモンターグが出会った「本を記憶する人々」とのやり取りから。
 読書という行為が本を通して行われる作者との対話だとすれば、この情景はまさしく理想の読書と言えるのかもしれません。もっともこんな状況には陥りたくありませんが。

駄弁者:
 読んでいたときもちょっと思ったのですが、この人たちは本をどの程度まで深く理解して記憶しているのでしょうか。元の著者に迫るほどに記憶した本を内面化しているなら、おっしゃるとおり「理想の読書」になるんでしょうが、ひょっとしたら覚える方に必死で、必ずしも理解は追いついてなかったり…?



帰リキタレ。

 出典: レイ・ブラッドベリ「火星年代記 『二〇〇五年十一月 地球を見守る人たち』」(小笠原豊樹訳) 『世界SF全集13』に収録

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 もうひとつ、「火星年代記」から投稿します。
 火星人が滅び、地球人が入植した火星。火星人が付けた地名は地球由来のそれに代わり、人々は続々と火星へと押しかける。それでも彼らは地球を忘れてはいなかった。有る夜、戦争が始まりそうな地球を人々が見上げると──。
 投稿したセリフは、戦争が勃発した地球から火星への発信で、このあと、人々は鞄店へと押しかけます。やはり、故郷は忘れられない、ということなのか…。

駄弁者:
 この言葉を受けて、本当にみんな鞄を買いに走るとは…。人間の望郷の念とはそこまで強いものなのか、ちょっと疑問です。あるいは地球とは別の星で抱く思いは、同じ地上にいるときとはまったく違ったものになるということなんでしょうか。



「生徒会選挙で校舎のガラスを割ったわ!?」
「光画部員が割って回ったわけじゃありません! 部長の体質の問題です!」

 出典: ゆうきまさみ「究極超人あ〜る」

紹介 :海並童寿 様
HP :

コメント:
 どんな体質や、と言いますと。
 光画部々長ことアンドロイドR-28号、R・田中一郎君は生徒会長選挙に出馬したのですが、放送室で演説をしようとしたところ、マイクとハウリング。そのすさまじい音で校舎中のガラスが割れてしまったのです。
 それを後、1票差で選挙に勝った新・生徒会長から咎められ、副部長が反論している図なのですが。
……体質ですし、割れてしまったこと自体は仕方ないですよね。うん。
# ドジキャラですので、事前に気づけというのは言わない約束ですおとっつあん。

駄弁者:
 アンドロイドの性能のことを「体質」という言葉で表現してしまえる副部長は、なんとなくスゴいんじゃないかと、思えてしまいました。



「未来を見たがる人がどこにいますか。未来を見た人はどこにいますか。人は過去を見ることはできるけれども──柱がこわれているんですって?海は涸れていて、運河は干上がって、女たちは死に、花はしぼんでいるのですか?」火星人は口をつぐんだが、すぐ前方を見つめた。「しかし、あそこにある。私には見える。それだけで、わたしには十分じゃないですか。あなたが何とおっしゃろうと、みんながわたしを待っている」

 出典: レイ・ブラッドベリ「火星年代記 『二〇〇二年八月 夜の邂逅』」(小笠原豊樹訳) 『世界SF全集13』に収録

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 ブラッドベリの代表短編から投稿します。1999年から2026年にわたる地球と火星の関わりを時系列に沿って語る物語で、オハイオにロケットが着陸しかりそめの夏をもたらし、探検をへて、火星の入植、そして地球への帰還までが詩情豊かに語られています。
 投稿した台詞は、火星へと入植した男とすでに滅んだはずの火星人が出会い、お互いの認識の違いを語り合ったのち、火星人が自分が過去の存在だと地球人に言われたことに対する反論から。
 「歴史とは過去との対話である」という言葉がありますが、それをそのまま物語にしたような描写はこの物語をそのまま象徴しているように思います。

駄弁者:
 『火星年代記』は人類の火星入植から帰郷、再来までを語る連作短編ですが、通して読まなくても各短編ごとでも充分味わいがあります。
 この対話、過去にいる火星人とのものだったんでしょうか。私には、お互いがお互いの過去だと思っているようで、実は何らかの平行世界にいる火星人と地球人の対話だったようにも思えました。



Data Analysing Robot Youth Lifeform(少年型データ解析用ロボット)

 出典: サイモン・ウィンサー監督「ダリル(D.A.R.Y.L.)」

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 品行方正、成績抜群、コンピュータゲームはノーミス、野球じゃホームラン。でも過去の記憶は無し。果たしてその正体は?
 という事で、その少年(ダリル)を育てた博士が明かした正体がこれ。名前がそのまま正体を表していました。
 なぜ少年?どんな利点が?などと突っ込んではいけないのでしょうか。ていうか今なら「腐女子」の方々に需要がありそうな、、、。
 でもあれだな、今見てもSRー71はかっこいいなぁ。

駄弁者:
 少年型はおいとくとしても、データ解析ロボットにホームランを打つ身体能力が要るのか、というツッコミもダメ?
 ロボットの通称がものものしい正式名称の略だというのには、何か伝統があるんでしょうか。ASIMOも「Advanced Step in Innovative MObility(新しい時代へ進化した革新的モビリティ)」だし。そう言えば古いSFには「Humantype Analog Robot Life Input Equivalents(人間類似型ロボット生命入力対応装置)」ことHARLIEというのもあったな…。



最も信頼できるのは
税金の記録と決まってる

 出典: アラン・ムーア原作・ジェームズ・マクティーグ監督「Vフォー・ヴェンデッタ(V for Vendetta)」

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 全体主義国家だろうが自由経済主義国家だろうが、国家の収入は「税金」です。
 ここの記録さえ押さえておけば、国が何をしていたか丸分かりです。テロリスト(V)の過去を洗う刑事が辿り着いたのが税金(というか出納)の記録でした。
 そういった意味では「最強」です国税局。かの「アル・カポネ」を懲役に持ち込めたのも国税局の活躍あったればこそです。
 そういえば国内でも、違法な活動でも利益があれば課税する、という話を聞いた事があります。麻薬の売上とか。そういった意味でがんばれ国税局。でもウチにはお手柔らかにね。

駄弁者:
 税金を取り立てる記録は信頼できても、税金を支出する記録が信頼できるかはまた別物…。などと他人事みたいに言える立場じゃないんですが(いや、実際きっちりしてますよ、下っ端がゴマカすなんてことができない程度には)。



「姫はなぜ…地球を壊したいんですか?」
「んー… 愛しているから この惑星が欲しいねん でも惑星と人間の寿命ってちゃうやろ? あたしが死んだ後 あたしが居ないままの地球があり続けたら それはあたしの所有物とは言えない だから自らの拳で砕く それで永遠にあたしだけのものにするんねん」

 出典: 水上悟志「惑星のさみだれ」

紹介 :屋良一 様
HP :

コメント:
 朝比奈さみだれが騎士団の主・精霊アニマと出会い契約を結んだのは死の床についている時だった。不治の難病に苦しんでいたさみだれは、魔法使いと闘い地球を守る使命と引き換えに地球と無理心中する力を得た。
 その事情を知る唯一の騎士・夕日は魔王の騎士として魔法使いと泥人形を打倒し、さらには同志たる獣の騎士も始末して、さみだれに本懐を遂げさせることを誓うのだった。
 さぁーて、どう戦うのかな?(ザンボット3次回予告風に)

駄弁者:
 残していく家族が可愛そうと言って一家心中をはかる親って、こういう所有欲みたいなのが背後にあるんじゃないかと思ったりしましたが。
 それを地球に対して抱けるというのは、良くも悪くも英雄の素質なんだろうなあ…。



トカゲの従者・ノイ=クレザント卿「「おれはすごい」「おれは特別だ」と勘違いするな キサマは只のガキだ!! 運命に呑まれ 世界に翻弄され 人に依存し 果てに望むは破滅!! 思い通りにならないことに ヒスを起こしておもちゃを壊す そんな子供だキサマは 」「…どうした 何も言い返さなんのか」
トカゲの騎士・雨宮夕日「いや 返す言葉もないからな」
ノイ「ゆ…」
夕日「そんなことは百も承知でやっているんだ 今さら説教なんか効くか」

 出典: 水上悟志「惑星のさみだれ」

紹介 :屋良一 様
HP :

コメント:
 この作品の主人公・雨宮夕日の作品に臨むスタンスです。姫の望みを己が望みとし、その障害とみるや、一般人でも同志のはずの騎士でも、排除することを一瞬も躊躇わない。
そして顧みない。
 これは連載当初のセリフですが、この主人公とは思えない開き直りっぷり。
 たまりませんねえ。
 さすがに最近は変わってきましたが。

駄弁者:
 「承知してやっていたら何かマシになるとでも思っているのか」とでも言ってやりたくなりますが、そう言っても同じ答えで返されるだけでしょうね。こういうの、あまり好きになれません。



それは私に対する侮辱です。

 出典: ジーン・ロッデンベリー制作「宇宙大作戦」

紹介 :人外魔境地底獣国 様
HP :

コメント:
 最初にこれが使われたのが何話だったか記憶がはっきりしませんが、感情的になっていると指摘されたときのスポックの定番の台詞。
 新作映画の予告編を見ていたらこの台詞が出ていて、「そういえばこれはまだ投稿されてなかったな」と思い送らせていただきました。

駄弁者:
 地球人でも、自分が冷静なつもりなのに感情的だと言われたら面白くないでしょうが、ヴァルカン人に対してこう言った場合、彼らの哲学やアイデンティティの否定に繋がりかねません。出自のせいか、純血のヴァルカン人よりもヴァルカン人らしくあろうとしている節のあるスポックなら、なおのこと。
 けど、すいません。私はこれをスポックの決まり文句としては意識していませんでした(少なくとも「魅惑的だ」「それは非論理的です」(斎藤伯好訳)ほどには)。
 元祖(TOS)の時代に戻った新作映画については、期待と不安を入り交ぜつつ、本邦公開を待っています。



<迫真の筆力と映像によるファンタジーであり、従来のあらゆる作品を凌駕する傑作>
1984年1月8日付ロサンゼルス・タイムズ紙のタイム・ライフ版第二次世界大戦史書評

 出典: ジェリー・ユルスマン「エリアンダー・Mの犯罪」(小尾芙佐訳)

紹介 :山家 様
HP :

コメント:
 私の中では未だに外国人作家のタイムトラベルSFの最高傑作で、再販を熱望しているのですが、絶版状態なのが残念です。この作品の章の冒頭ごとに、この歴史改変世界の小さな記事(?)が載っており、歴史マニア好きなら、にやりとする名記事がそろっています(例えば、ビキニ環礁に関する記事とか、ケネディ大統領に関する記事とか。)。SF名文句・迷文句集の中でも、かつて一つ紹介されていますが、私の一番好きなのはこれです。
 本当に第二次世界大戦が無かったら、あれがファンタジーだったら。もっとひどい世界になっている、と言われるかもしれませんが、私としては、その方がいい世界になっていると思うのです。

駄弁者:
 こっちの世界でこういう評をされる歴史改変ものをぜひ読んでみたいものです。私はまだ「エリアンダー・Mの犯罪」は未読なのですが、ひょっとしたらこの作品こそが…。
>本当に第二次世界大戦が無かったら…
 たぶんあの時あの形で戦争が起こらなかったとしても、指導者が誰だったかに関わらず、問題や矛盾は厳として存在したわけですから、どこかで火を噴くのは免れなかったんじゃないかとも思います。その結果は、私たちの世界よりある部分でいい所もあり、別の部分ではひどくもなっている…というところじゃないでしょうか。



だぁからおまえはアホなのだぁ!

 出典: 富野由悠季原作・今川泰宏監督「機動武闘伝Gガンダム」

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 Gガンの迷台詞といえばこれを忘れてはいけませんね。
 前半のクライマックス、ギアナ高地でデビルガンダムの破壊に成功し、余勢を駆って東方不敗+マスターガンダムを圧倒するドモン・カッシュ+シャイニングガンダム。しかし連戦の無理がたたって後一歩の所で、シャイニングガンダムは機能を停止してしまう。焦るドモンの前にカプセルに入った新型機ゴッドガンダムが届けられる。乗り換えを焦って生身をさらしたドモンに向けて、東方不敗はこの言葉と共に襲いかかるのだった。
 布きれ一枚でモビルスーツを破壊する人の前に、生身で飛び出しちゃいけませんよ。
 作中で幾たびも策士ぶりを発揮する東方不敗と、その弟子である割には単細胞ぶりを隠さないドモン。自分の弟子ながらどうしようもないアホさ加減にあきれていたのかも知れません。
 自分で投稿した中では最も汎用性の高い迷台詞ですな。誰に対しても(もちろん自分に向かっても)使える言葉です。
 それではみなさんご一緒に!

駄弁者:
 これを自分に向かって使うなら、自嘲するときではなく、気合いを入れるときですね。
 他人に対して面と向かって使うには…東西南北中央不敗を名乗れるほど自分に自信がないとなあ。



……寂しいから。
一人で死ぬのが寂しかったから。誰でもいいから、眠るまで声をかけられる相手が欲しかった。

 出典: 西澤晋監督「機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STAR GAZER」

紹介 :陸ドム 様
HP :

コメント:
 無人機であるスターゲイザーのAIを狙って送り込まれたナチュラルの非合法活動専門の特殊部隊のエースを巻き添えにして、地球と金星の間にブッ飛んだ(太陽風を使って加速するシステムを搭載しているスターゲイザーに、実験用のレーザーを最大出力でぶっ放した)主人公。
 残ったエネルギーで太陽風を受けて、代謝を抑える薬品を使っても生還率は運が良ければという程度。敵パイロットから、何故自分を連れて帰ろうとするのか聞かれての返事です。
 それがたとえ殺し合いをしていた相手だろうと、暗い宇宙を一人で彷徨うよりかはマシってことなんでしょうか

駄弁者:
 一人でも二人でも生還率にたいした差がないのなら、生きるにしろ死ぬにしろ連れがいた方がいい、ということじゃないでしょうか。
 こっちも動機はややネガティブ、しかし行動はポジティブ。



上を見ておこうかなって。
ホラ、横を見ると、誰かに嫉妬して、自分も欲しくなるだろ?
下を見ると、今の自分で助けてあげられる人がいて、彼らに必要とされてりゃ気持ちはいいけど、もし、自分より弱い者がいなかったらって思う。
その時、自分は何をやるんだろうって。
だから、上を向いている自分を、確保しておこうと思ってね。

 出典: 西澤晋監督「機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STAR GAZER」

紹介 :陸ドム 様
HP :

コメント:
 遺伝子操作された生まれついて能力が高い人類コーディネイターと普通の人類ナチュラルが戦争をやってる世界で、深宇宙探査機構DSSDで働いているコーディネイターが同僚のナチュラルに、なんでDSSDに来たのかと訊ねたとき帰ってきた台詞です。
 この言葉が転じて上=星を見る者、スターゲイザーという主役メカ及びタイトルになっています。
 いくつになっても向上心を忘れてはいけませんよね……ええ。

駄弁者:
 優生学的エリートに混じる一般人としては前向きなセリフ…と言いたいことろですが、横や下を見ない理由がちょっと後ろ向きなように思います。
 ネガティブな動機でもポジティブな行動ができるならOK?



 石射は似合わぬ溜息をついた。こんな仕事こそ吉田茂がこなすべきではないかと思ったのだった。貴族主義者で帝国主義者のインテリ、英国人にもまして英国的な態度。けして腹をあかさず、必要とあらばいかなる術策を弄することもいとわない。
 たしかにそのとおりだった。しかし吉田がけしてこの仕事を引き受けないだろうことも石射にはわかっていた。支配する側に生まれた人間はけして手を汚したがらないものなのだ。

 出典: 佐藤大輔「レッドサンブラッククロス パナマ侵攻1」

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 そういえば、野田昌宏宇宙軍大元帥のいとこでおられる現首相の御祖父は、吉田茂元首相でしたね。なるほど、それで……。
 北米大陸の半ばをドイツ第三帝国が支配下に収めたことによって、合衆国の軛を脱した中南米諸国。独自の外交戦略を開始した国々を味方につけるべく、日本政府は中米各国の首脳がパナマで開く「汎米会議」に、オブザーバーとして外務省戦時調査室長・石射猪太郎を送り込む。
 史実においては吉林・上海各総領事、東亜局長として対中外交の前面に立ち戦争終結の方途を模索、次いでオランダ公使、ブラジル大使を歴任し、最後はビルマ大使として敗戦を迎えた石射(ちなみに外務省の本流たる東京帝大出身ではなく、東亜同文書院と満鉄を経て、独学で外交官試験に合格)が私は好きなので、2000年6月発行の『同 パナマ侵攻2』以降の新刊が出ていないのが残念でなりません。
[参考]
石射猪太郎『外交官の一生』中公文庫 伊藤隆・劉傑編『石射猪太郎日記』中央公論社
BGM:「THE ENVOY」ウォーレン・ジヴォン

駄弁者:
 いろいろと途中で止まってますね、佐藤大輔作品。そういえばここ数年、小説の新刊は出ていないんじゃ…。
>なるほど、それで……
 お孫さんの方は、庶民離れしていても「英国的」とはまた違いますけどね。それに、いまどき吉田茂のようにキツい英国風ユーモアをやったら、今以上に袋だたきにあいそうです。ひそみに倣って葉巻でもくわえてもらうぐらいならともかく。あまり似合わなさそうですが。



「何が言いてえのかってえと、要するに俺はその瞬間に、十ヶ月ぶんの夢を見たっていうふうに考えれば、特に物理法則には反してねえってこと。寝てる間には十ヶ月ぶんにも感じられた時間の流れが、起きてみればほんの一瞬の間に見た夢だったっていうようなことも、話としちゃよくあるだろ?」

 出典: 乾くるみ「リピート」

紹介 :汗(はん) 様
HP :

コメント:
 大学4年生の毛利に突然かかってきた、風間と名乗る男からの電話は、1時間後の地震を予知した。風間は毛利たち9人の男女を、10ヶ月過去への時間旅行に誘う。
 引用の言葉は、「リピーター」に選ばれた一人、天童が、実際に起こったタイムトラベルを、自分に納得いくように説明してみたもの。
 彼らは肉体ではなく意識を過去の自分に転移する要領で過去に戻っている。時間旅行は物理法則に反するかもしれないが、なんらかの原因で彼らの脳に、10ヶ月ぶんの未来の記憶のようなものが書き込まれた、という見方ができないわけではない。つまり時間旅行は起こっていない、と。
 時間ものが好きな私ですが、SFの中で一番実現性の低いのが時間旅行じゃないかと思うくらい、眉唾で読んでもいます。ワームホールなどで科学的に可能だと説明されるのも面白いですが、引用のような心理学的解釈も、あれこれ想像が広がってそそられます。

駄弁者:
 いやー、その書き込まれた「未来の記憶」がどっから来たのかを考えると、自分の体が時間旅行をしていないだけで、何かが時間を遡ってきていることになるし物理法則にも反しているんじゃないかなあ…。



他の天体の生物について議論するのは、SFを創作しているのと同じことだというんだな?

 出典: フレッド・ホイル「10月1日では遅すぎる」(伊藤典夫訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 ホイル教授のSF創作講座の始まり…ではなく。
 1960年代のある日、地球上にあらゆる時代が同居するという異常事態が発生する。この事態は驚異的な大口径のビームの走査によるものと判明する(太陽の半径の10倍)。
 ビームの発信源とその設置者について議論していくうちに、この考えに行き着くのでした。これはいわゆる楽屋落ち?いやいや、SFは思考実験の一つであるという宣言なのです。

駄弁者:
 だから素晴らしいことなのだと言いたいのか、それとも科学とは似て非なる議論なのだといいたのか、とややネガティブに感じてしまうのは、SFファンのしょうのないひがみですね。



「SFってなァ、結局のところ絵だねェ」

 出典: 野田昌宏「お墓に青い花を」  『レモン月夜の宇宙船』に収録

紹介 :司書の駄弁者
HP :

コメント:
 野田昌宏を語るうえで欠かせない名文句、追悼出版で初出のエッセイが収録されたので満を持して掲載です。
 あれこれ解説は必要なく、人それぞれ自分の好きなSFの記憶に残るシーンを思い浮かべればそれで充分でしょう。私だったら、クラーク「幼年期の終わり」終盤の子どもたちを見送るシーンとか、あるいはオールズバーグの絵本「ハリス・バーディックの謎」あたりか…。
 このセリフが野田さん自身のセリフとして登場したのではないことは、ちょっと意外でした。



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