SF名文句・迷文句第243集

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「ウヌヌヌ……てめえぇぇぇ、俺の『鈴木オート』を、ブッ壊しやがったなあぁぁぁ!」

 出典: 西岸良平原作・山崎貴&古沢良太脚本山崎貴監督「ALWAYS 続・三丁目の夕日」

紹介 :ゴジリスト中小路 様
HP :

コメント:
 『大怪獣との接近遭遇』第16回。今回は、良い意味で西岸良平の原作漫画を捩じ曲げてくれた映画より。
 前作の感動的ラストシーンで堂々と完成した東京タワーが、早くも続編で破壊された。東京湾から上陸した巨大生物が都心に向って進み、『茶川商店』や『鈴木オート』の在る夕日町三丁目商店街を襲う。そしてついに、巨大生物の吐く青白い怪光が、東京タワーを真っ二つに折って倒す。幸い『鈴木オート』一家は集団就職の従業員ロクちゃん(演・堀北真希)を含めて全員無事だったが、店は巨大生物の尾の一振りで木っ端微塵に…。
 上記の台詞は、店の主人(演・堤真一)が瓦礫の山に埋もれた『鈴木オート』の看板を見て吐いた、怒りの一言。髪の毛を逆立てて巨大生物を怒鳴り飛ばすと、巨大生物もクルッと振り返って「グワオ〜ン!」と吠えるのだが、その巨大生物が実は……(まだ見たことない人もいるでしょうから、ネタバレ防止の為この先は秘密)
 怪獣というものを見て驚いたり恐怖したり、または悲惨な破壊の爪痕を見て泣いたりなどというパターンはよくあるが、怪獣そのものに向けて直接に怒りをぶつけるというのは、ちょっと珍しい。こういうコント的なリアクション、私は好きです。

駄弁者:
 この作品が出てくるとは想像してませんでした(笑)。
>怪獣そのものに向けて直接に怒りをぶつけるというのは、ちょっと珍しい
 怪獣というのは天災で、それ自体はどうしようもないもの…という観念があるのかも知れませんね。



俺は全ての世界から拒絶された。
どの世界も俺の世界ではない。
言い換えればどの世界も俺の世界にできる。

 出典: 石ノ森章太郎原作・金田治監督・米村正二脚本「劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー」

紹介 :Y 様
HP :

コメント:
 これまで仲間達と共に様々な世界を旅してきた仮面ライダーディケイドこと門矢士は自らの故郷である世界に辿り着き、妹の小夜や使用人(?)の月影ノブヒコと再会して大ショッカーの大首領としての記憶を取り戻します。
 他の仮面ライダー達を集めたライダーバトルに勝利し、大ショッカーによる各世界への侵攻を始めようとした士ですがシャドームーンに変身した月影と大神官ビシュムとなった小夜によるクーデターに遭い大ショッカーを追われます。
 旅をしていたときの仲間だった夏美からも拒絶され、今作品における仮面ライダークウガとして士や夏美と共に旅をしてきた小野寺ユウスケが小夜の手によって究極の闇であるライジングアルティメットクウガにされてしまい、帰る場所を失って一時は生きる気力さえも失っていた士でしたが、大ショッカーを倒し仲間達と再び世界を巡る旅に出るために立ち上がるのでした。

駄弁者:
 現時点でゼロなら可能性は無限大…と、定番ながらいい開き直り方ですね。
>オールライダー対大ショッカー
 この時点でオールライダーだと何人ぐらいになるんでしょう。主役級だけでもかなりの数になるのでは…。

追記:ご投稿のYさんによると、仮面ライダーディケイドが「25号」、劇場版のオールライダー登場シーンではこの時点で敵に操られていたクウガとディエンドの召喚による途中参加のJを除外して、ディエンドを加えた24人(途中参加を加えると27人)となっている…とのことです。補足説明、ありがとうございました。



「彼らは人々に訴えました。ライダーが世界を破壊する悪で、自分達が世界を救う正義だと」
「やがて人々は続々と大ショッカーに入団し、入団しない者は追われる身となった、というわけさ」

 出典: 石ノ森章太郎原作・長石多可男監督・米村正二脚本「仮面ライダーディケイド 第28話『アマゾン、トモダチ』」

紹介 :Y 様
HP :

コメント:
 仮面ライダーディケイドこと門矢士とその仲間達がたどり着いたアマゾンの世界、そこは人々が大ショッカーと結託した十面鬼率いるゲドンに支配され、大ショッカーへの反乱分子という疑いをもたれた者は直ちに連行される世界でした。
 そうとは知らずに士の仲間である仮面ライダークウガこと小野寺ユウスケが口を滑らせた事で士達は大ショッカーだけではなくこの世界の住人達にも追われ、仮面ライダーアマゾンと共に逃走します。
 そして彼らはこの世界をゲドンと大ショッカーが支配した経緯を知るのでした。
 純粋に大ショッカーを正義と信じて大ショッカースクールで学ぶマサヒコ君(!)を初めとする子供達の姿には昭和ライダーの悪の組織とは違った現代的な恐ろしさを感じました。

駄弁者:
 子どもを洗脳して手先にするというのは昭和ライダーの頃からあったと思いますが、社会丸ごと、しかもそれが成功した世界を平行世界として描くというのは、確かに現代的かも。



赤が彼から退き 緑のひかりが襲い 青藍がうねる蛇のようにおそろしいスピードで起伏している

 出典: アルフレッド・ベスター「虎よ、虎よ!」(中田耕治訳)

紹介 :水谷秋夫 様
HP :
http://oikose.at.webry.info/

コメント:
 主人公フォイルが窮地に陥った時の表現です。この字は組んだ活字から飛び出して紙面をのたうっていました。こんな表現方法があるのかと、読んだ当時、とても吃驚したものです。

駄弁者:
 これについては文字だけではインパクトが伝わらないかと思い、できるだけ再現してみました(やっぱり現物ほどの迫力はでてませんが)。
 はじめて手にとってパラパラめくっていたとき、この部分を含む後半を見て「なんじゃこれは」と気持ちのけぞってしまったもんです。



あなたが泣いたり、あなたが怒ったり、あなたが憤ったり、
あなたが憎んだり、あなたが叫んだり、あなたが苦しんだり、
あなたが悲しんだり、あなたが絶望したり、あなたが決意したりすることは―

あなたが正しいことの証明にはならない。
―Everybody Has the Right to Make Mistakes―

 出典: 時雨沢恵一「キノの旅―the Beautiful World―XII」

紹介 :タカ 様
HP :

コメント:
 何作かキノの旅から投稿されていたので、私も投稿してみます。
 この作品は単行本の冒頭に作品を象徴するような言葉が入っていますが、これはその中でも私が最も印象深かったものです。
 結局自分が何を思おうと他人にとっては他人事にすぎないといったところでしょうか。ちょっと違うかも。

駄弁者:
 自分の感情としては全く正当に思えることで、しかも他人からの同情を得られるようなことであったとしても、それだけでは客観的に見て正当だとは限らない、ということじゃないでしょうか。
 たとえば自分が身内を殺されたとして、それがどんなに悲しく憤ろしいことだったとしても、相手を殺してもよいとはいかないわけで。…ちょっと違うかも。



「きっと、ぼくたちいま、ベーコンみたいな味がするぜ」ぼくは、傍を見かえっていった。
「塩と脂でニチャニチャでね」

 出典: 小松左京「継ぐのは誰か?」

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 暑いのはモノリスが木星を太陽化したせいだ。2010年だし。
 そんな事はさておき
 今年の夏は暑かったです。Tシャツに汗塩が浮き上がっていたり、水を2リットル以上飲んでもトイレに行かなかったり、近所で救急車を呼んだはいいが、空荷で帰っていったり(ナンマンダブ・・・)と、なかなかタフな夏でした。
 ベーコンというより「干物を水で戻す」作業を延々と繰り返した感のある夏ですが、一番怖いのが、「掲載時もこの調子」である事です、、、。

駄弁者:
 さすがに最近は寒くなってきましたが…(急だったので風邪引きました)。
 ここまで遅れてしまってなお「掲載時もこの調子」だったら、木星どころか火星か金星あたりのモノリスを疑わないといけなかったところです。



「今の人間ぽかったですかぁ?」

 出典: NHKエンタープライズ/ヒーウォンエンタープライズ制作「エレメントハンター」

紹介 :屋良一 様
HP :

コメント:
 2009年にNHK教育で放映され、2010年現在NHKBShiで放映中の日韓合作アニメ「エレメントハンター」は「NHKアニメ」にハズレなし。の私の持論に違わぬ良作でした。
 このセリフはヒロイン(異論は認める)であるアンドロイド、ユノの口癖です。
 人をホロリとさせる言動をとった後にすかさずこう言うものですから、最初の内は「進んで不気味の谷に住みたがっているキャラなのか?」とも思いましたが、だんだん好きになって、最後には涙なくして見れませんでした。録画を何回も視てしまいましたよ。
 BShiでの放送はこれからクライマックスです。ぜひ御視聴を。

駄弁者:
 下のが笑いをとった死に際だったので、こちらもそうかと思ってしまいました。最期かと思いきやこのセリフで再登場するとか。
 最後は本当にいいシーンだったようで、茶化したらファンに怒られてしまいますね。



人を愛することが罪だとでも…“Utopia!”

 出典: 東映・テレビ朝日・ADK制作「仮面ライダーW」

紹介 :屋良一 様
HP :

コメント:
 仮面ライダーWで園崎ファミリー率いるミュージアムが壊滅した後、その遺産を我が物として全人類を財団Xの家畜に堕しめようとした加頭 順の最後の言葉です。
 Wの死力をつくした攻撃の前に瀕死となり、最後の力を振り絞ってユートピアのガイアメモリーを使用しユートピア・ドーパントに変身しようとしたのですが、Wの「お前の罪を数えろ!」と言う決め台詞に律儀に答えたばかりに「死に際に笑いをとる」ことになってしまいました。 合掌。

駄弁者:
 最初ダジャレに気づかず、どこで笑いをとったのかマジメに考えてしまいました。
 いいシーンみたいななのに、可哀想に。



「西郷将軍。あれ、あのように日本軍の兵士が射ち倒されてゆきます。将軍の御国の兵士ではありませんか。将軍はあれをごらんになって、如何思召(いかがおぼしめ)しますかな」
ロシヤ軍陣地内の塹壕に身をひそませ、眼下の戦場をうかがう各国の観戦武官たちだった。
岩のように身動きもせず、戦場を見つめる西郷にたずねたのは、イギリス陸軍歩兵少佐ウインストン・チャーチルだった。あごの張った顔に、意地悪そうな目が光っていた。
「胸が痛むことでごわす。東洋には“一将功成って万骨枯る”という言葉がありもうす。将たる者、帝王たる者、その言葉を深く肝に銘じ、事にのぞまなければなりまっせん」
「将軍は、人形のように射ち倒されてゆく日本軍兵士を見て、日本軍指揮官の能力の問題であるとお思いになりませんか?」
「ロシヤ軍も、なかなか勇敢でごわす」
西郷は、この小生意気な英国士官の質問をさりげなくかわした。この英国士官は、母国を棄てた亡命将軍に、あえてもっとも辛辣な精神的攻撃をかけようとしているのだった。

 出典: 光瀬龍「所は何処、水師営」

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 チャーチル氏は若い頃から皮肉屋でしたとさ、というおはなし。
 第一次大戦でのガリポリの一件を見る限り、チャーチル氏の指揮官としての能力も、いかがなものかと思いますけどね。
BGM:「Thank You Mr. Churchill」ピーター・フランプトン

駄弁者:
 「坂の上の雲」シーズンの掲載になってしまいました(遅くなりまして…)。出典については前のご投稿もご参考にどうぞ。
 皮肉なユーモアで知られるイギリス人の中で、さらに皮肉屋、毒舌家と言われるのは相当なもの。けど、70過ぎの西郷翁には、30になるかならぬかの小僧では歯が立たなかったに違いない。…と想像するのは、確かに楽しいです。
>ガリポリの一件
 まあ、あれは直接前線で指揮をとっていたわけではないし、相手にはケマルさんもいましたし…。計画がずさんだったことは指摘されてるみたいですが。



助手「あ。虹を見た…」
一平「へ〜え、虹ねぇ」
助手「うん。金色の、虹だった…へへへ……」

 出典: 山田正弘脚本・飯島敏宏監督「ウルトラQ 第18話『虹の卵』」

紹介 :ゴジリスト中小路 様
HP :

コメント:
 『大怪獣との接近遭遇』第15回。以前、第7回の投稿で「目撃した時に酔っ払っていたので信じて貰えなかった」というパターンを紹介したが、今回は「ごく間近で目撃した為に、気の毒な状態になってしまった」という例。
 原子力研究所へ届ける濃縮ウランのカプセルを積んだトラックが、ウラン怪獣パゴスに襲われた。トラックは大破し、ウランカプセルも不明となったが、運転手と助手は一命をとりとめ、病院のベッドで自分たちが見たものを、そして体験したことを、正直に語る。取材に来た由利子と淳は比較的軽傷だった運転手の証言を熱心に聞くが、一平だけは、かなり重傷の助手の話し相手をさせられた。上記の台詞は、その時の助手と一平の間で交わされた会話の一部である。
 助手は普段からバカっぽい顔をしていたが、まともな人間だった。が、常識を超えた恐怖体験と、崖下へ転落した時に頭部を強打したショックで、お気の毒様な人になってしまった。なので、この時点では誰も彼の証言を信じないのだが、実は彼の見た「金色の虹」というのが、後々、ウラン怪獣パゴスの実在を示唆する重要なヒントとなるのだった。
 おかしな人が言うおかしな話ってのも、たまには真剣に聞いてあげましょう。

駄弁者:
 おかしな状況の時は、おかしな人が言うおかしな話も虚心に聞かないといけないのでしょうが。
 まあ普通は頭を打ったせいで幻覚を見たと思われるのが関の山で、たいていはその通りのことが多いでしょうし…。常にレアケースを想定した対処というのは、難しい。



「あの女がこの俺をたぶらかしにきたら、俺の心は間違いなく陥落するだろう。ウェスタディア軍の機密ひとつを差し出すたびに一夜をともに過ごしてやると約束されたら、俺は迷わず機密をもらす」
「せめて迷ってください……」

 出典: 小河正岳「ウェスタディアの双星 6」

紹介 :山家 様
HP :

コメント:
 女好きにもほどがあるだろう、と突っ込んでしまいました。ウェスタディア王国艦隊総司令官バドエルは戦場における用兵の名手なのですが、女と酒が大好きで、上司の軍務卿や部下の参謀長アルファーニにとっては時々頭痛の種を引き起こします。今回も、同盟国ラミアム共和国艦隊司令官ラミンを見染め、早速、アルファーニにラミンの個人情報を収集するように命じるのですが、その理由をアルファーニに明かす際のやりとりです。それにしても、アルファーニも、せめて迷ってください、と返しているあたり、バドエルの女と酒が大好きというのには、さじを投げているのだろうな、とつくづく気の毒に思えました。

駄弁者:
 女好きは女好きでも、女を落として言うことを聞かせられる類のとは、ちょっと違うのですね…。



戦いは常に数手先を見るのだ。いや、戦いに限ったことではない。生きていく上でも、未来を見すえて今を決断することが重要だ。このことを忘れると、わたしのような消えぬ苦しみを味わうはめになる

 出典: 小河正岳「ウェスタディアの双星 6」

紹介 :山家 様
HP :

コメント:
 艦隊戦闘中、ウェスタディア王国艦隊の機動からその意図を見破り、現状では優位にもかかわらず、このままでは自国艦隊が全滅すると判断し、降伏を決断したシャムラバート藩王国艦隊司令長官のジャラールの部下への説得の言葉です。ジャラールは藩王国のクーデターに領民10億の命を人質に取られ、心ならずもクーデターに参加したという苦しみを背負っています。それもあって、部下に対し、未来をみすえて行動するように説得して、降伏を納得させるのですが。軍人は即断即決を迫られるものですが、優位な現状に幻惑されずに、降伏の決断はなかなかできないなと思います。

駄弁者:
 1対1の勝負である囲碁や将棋なら、先を見通す能力があればそこですぐさま投了できるのでしょうが、戦争だとそうもいかないでしょう。未来が見えていても、簡単に止められるものではありません。優位な現状に幻惑されなかったとしても、この提督のような決断は、実際にはほとんど不可能なのでは…(だからこそそれを可能にした人物が素晴らしいのですが)。



──《交渉というのは、価値観の異なる他者との対話だ。だから、ときにはまったく解決がつかない場合もある。どこまでいっても平行線にしか見えないことも……》
──《けれども、それに対して知恵を絞り、言葉を絞り、体力を振り絞って、両者が進むべき道を模索しなさい。その行為は、人間が最も知的である瞬間なんだよ。たとえその場で、どれほど乱暴な、どれほど感情的な言葉が飛び交ったとしても、最後まで決してあきらめるな。間接的な効かせ方とはいえ、言葉は、暴力を止められることもある。それを忘れてはいけない》

 出典: 上田早夕里「華竜の宮」

紹介 :司書の駄弁者
HP :ここ

コメント:
 海底の隆起で多くの陸地が水没した後、人類は残された科学技術をもって暮らす陸上民と、巨大な「魚舟」を自らの住処であり朋として暮らす海上民に別れながらも生き残ってきた。外交官の青澄は、陸上民と海上民との間の関係を、国家対立や政治的陰謀にもまれながらも取り持とうとするが……。さらに大きな地球的規模の災害が、彼らを待ち受けていた。
 投稿の文句は青澄が尊敬する先達から受け継いだ、外交官たる信条。意固地なまでにこれを貫こうとするタフな誠実さが、この登場人物の魅力でした。
 読んでいる途中、予測される災害のとてつもない大きさに比べ、青澄らが直面する政治的問題は深刻とはいえつり合わないという気がしていました。しかし読み終わってみると、つり合わなくても、結局災害を乗り越えられなかったとしても、それが無意味だということにはならないと思えます。



「このまま一緒に研究できれば、いつかは君も、クリスティーナのように進化させてあげられたのに……」
「人類に進化なんてものはない。ただ、適応があるだけよ。環境への過剰な適応がね」

 出典: 上田早夕里「火星ダーク・バラード」

紹介 :汗(はん) 様
HP :

コメント:
 パヴォニス山頂に軌道エレベータがそそり立ち、マリネリス峡谷を天蓋で覆って建設された都市に人々が住む火星。
 凶悪犯護送中の治安管理局員・水島は、奇妙な現象に見舞われ意識を失う。気がついたとき犯人は逃亡し、相棒は射殺されていた。
 相棒殺害の疑いをもたれた水島はその捜査からはずされ、日常の雑多な事件捜査にまわされるが、彼に「第三世代プログレッシヴ」と称する少女が声をかけてくる。
 引用の台詞は、プロローグから。娘への人体実験を知った妻が、研究仲間の夫と別れ、娘を連れて地球へ行こうとするが、連れ戻される。
 そんな元夫のマッドな一言と、それに対する元妻の異論を、迷文句&名文句として選びました。(あ、これは水島とは関係ないエピソードです、念のため)
 たしかに、陸上ほ乳類がクジラやコウモリになったのは、進化というより適応ですね。人類は科学技術で守られてるかぎり、肉体的な変貌はこの先ないでしょう(退化はあるかも)。では、精神的に? これも、「元夫」がのちに語る理想像からして、理想に終わりそう(あるいは淘汰されてしまいそう)。「幼年期の終わり」を迎えたいのでなければ、アホなことはせんほうが身のためです。
 なお、先ごろ話題となった「魚舟・獣舟」を読んでも、この作者は「幼年期の終わり」指向というより「過剰な適応」指向のようです。
(お断り:引用した2人の台詞の間には、地文が一行入りますが、省略いたしました)

駄弁者:
 少し順番飛ばしになりますが、ちょうど同じ著者の『華竜の宮』も読み終えたて、そっちの名文句も載せたいので。
 適応するべき環境の方を変えてしまう人類は、もう他の生物のような進化はしないだろうとは、私も考えたことがあるのですが…。あるいは、その能力自体が、過剰な適応の結果と言えるのかも知れません。
 「魚舟・獣舟」にしても「華竜の宮」にしても、そこに現れる生物の有り様は、多かれ少なかれ人為的な意図が含まれるのですが、それも一つの「進化」の形…なんでしょうか。



非常時には非常時の対処があるでしょ!

 出典: 今敏監督「パプリカ」

紹介 :汗(はん) 様
HP :

コメント:
 今敏監督の訃報に接して。
 社団法人精神医療総合研究所でサイコセラピー(PT)装置を開発するチームの副主任・千葉敦子は、今だ公式に認められていない「PT装置による精神治療」を行なう女「パプリカ」という影の顔を持っていた。
 主任・時田浩作が最終段階まで製作していた最新のPT装置「DCミニ」が盗まれる。アクセス制御機能をつけていないDCミニが悪用された結果、現実と夢が混濁した異様な世界が現出する。
 引用したのは、物語の終盤で、非常事態をむかえた主人公たちの前にあらわれたパプリカの台詞。
 これだけのことが起こったあとでは、あってもおかしくないパプリカの登場なのだが、驚いた。それをこの台詞で片付けていいものかととまどう観客を後に残し、物語は怒濤のクライマックスへ。
 映画では、夢と現実に加え仮想現実まで混濁しているようで(バーテンダーたちって、ネット上の存在ですよね?)、頭の中がごちゃごちゃになるトリップ感が楽しい。平沢進による音楽も、トリップ感を増進してくれる。
 インパクトはもちろん、汎用性あると思いません?(なんの言い訳にでもなる、という意味で)

駄弁者:
 追悼なのに掲載せずにいてすみませんでした。
 汎用性はあると思いますが、それこそ何の悪夢か、というような事態の時しか使っちゃいけないと思います。…あまり汎用的であっちゃいけないのか。
>平沢進による音楽も、トリップ感を増進してくれる
 オフィシャルサイトで流れる部分だけでも、充分感触が味わえますなあ…。



「ええいしまった、こんなことならウォーターポロを教えておくんだった」
「今は1860年だ。ウォーターポロは、まだ、ない」

 出典: 筒井康隆「万延元年のラグビー」  『将軍が目覚めた時』に収録 『筒井康隆全集13』にも収録

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 「桜田門外の変」上映記念で投稿します。正直かなりの変化球とは思いますが、ご容赦を
 時は万延元年。季節外れの雪の中を通る井伊直弼の駕籠を襲った水戸脱藩の一行。
 彼らは重傷を負いながらも井伊の首を取り、逃亡を企てますが、首を持った男も重傷を負い、楽になるために腹を切ろうとするもその力すらない始末。たまたま通りかかった武士に介錯を頼んだのですが、その侍の主人が井伊直弼に恨みを持っていたからさあ大変。首の返還を希望する井伊家に対しても、のらりくらりと言を左右にしてなかなか返還に応じません。  業を煮やした井伊家は子飼いの忍者に奪還を指示。メリケン人より教わったラグビーを利用して奪還には成功したものの、助っ人ガイジンチームを味方に引き入れた敵忍者チームが迫る!
 この後は敵味方入り乱れての乱戦となり、堀の中での乱闘になったときの忍者の頭領たちのやりとりから。いやもう、このナンセンスぶりがたまりません。映画を観ていたときにも、井伊の首を持った侍が腹を切った時にも「ああ、この後、ニンジャたちがラグビーを…」と思ってしまい。自らの不謹慎さを呪ったものです。

駄弁者:
 桜田門外の変でラグビーときたらボールはあれしかない、と思っていたら本当にそのまんまで、もう笑うしかないです(でも、最後はトライで終わると思ったのは外れました)。導入で登場する面々がなまじ史実に忠実なので、後のハチャメチャが余計笑えます。



ニイツおまえ……。普段いったい何を考えているんだ。

 出典: 河崎実原作・あさりよしとお作画「地球防衛少女イコちゃん」

紹介 :土左衛門 様
HP :

コメント:
 「日本以外全部沈没」「ギララの逆襲」などの河崎実監督のビデオ作品のコミカライズ(もっとも河崎監督は設定・プロットの提示だけで、各話のストーリーはあさり先生が作られていたそうです)から。
 毎回お決まりの「こんなこともあろうかと」のセリフとともに超兵器を持ってくる防衛軍LTDTのニイツ隊員。あきれた同僚の一言です。
 確かに、どうやったらこんな事態が予測できるのか不思議な方もいらっしゃいますよねえ……、某戦艦の技師長さんとか。

駄弁者:
 「何を〜」というのも気になりますが、一体他にいくつぐらい「こんなこと」を想定しているのかもちょっと気になります。
 たまたまそのうちの一つが実現して新兵器が登場するだけで、日の目を見ないモノが山ほどあるんじゃなかろうか。某戦艦なんか、いつの間にか艦長代理も知らない謎兵器が満載されていたりして。



ヘンリヒ「百合子お前たちの世界――宇宙開発予算を何に使ってるんだ」
百合子「し、知らないわよ なんでおこるのよ」

 出典: 竹本泉「ねこめ〜わく 5 『ねこめ〜わく…しんえん〜やまといえば〜』」

紹介 :土左衛門 様
HP :

コメント:
 オスカの不用意な発言から今度は合言葉が流行ってしまったねこの世界。  「侵略宇宙人がいるかもしれないから」というその理由を聞いて、ヘンリヒの世界に宇宙人がいたことを知る百合子だが、今度は彼女の世界の地球人が月までしか行ってないことを知ったヘンリヒに何故か問い詰められる百合子であった。
 ……洒落になってない。「はやぶさ2」の実現を心から祈ります。

駄弁者:
 「はやぶさ2」実現よりはるか手前で、「あかつき」が失敗してしまった…残念。
>宇宙開発予算を何に使ってるんだ
 軍事費で浪費してしまったからこんなことに…という批判が定番だと思うんですが、侵略宇宙人がいるかもということは、軍備も必要だしなあ。



「あれが犯人なら、俺たちの仕事じゃなか……」

 出典: 伊藤和典脚本・金子修介監督「ガメラ・大怪獣空中決戦」

紹介 :ゴジリスト中小路 様
HP :

コメント:
 『大怪獣との接近遭遇』第14回目は、平成ガメラ映画より。
 五島列島・姫神島(架空の島です)へ生物調査に出た平田教授が、島で消息を絶った。研究助手の長峰真弓(演・中山忍)は長崎県警の警部補大迫力(「オオサコ・リキ」と読む。演・蛍雪次郎)と共に教授を捜索すべく、島に上陸。すると、民家や商店が全て破壊されており、島民や教授の姿も見当たらない。一体、何者にさらわれたのか…? ふと見ると、巨大な鳥の糞に似た物体から、平田教授の愛用していた万年筆と老眼鏡がドロリと流れ落ちる…! やがて長峰と大迫の頭上を、ギャオスの黒い翼が風を巻いて通過した。その時、大迫警部補が震えながら吐いた一言が、上記の台詞である。
 住宅地に迷い込んだサルやハクビシンなどを警察官が捕獲する光景をテレビのニュース番組で見たりするが、これだけ大きくて、しかも人肉を好んで食べる生物となると、その捕獲はもはや警察の仕事ではない。そんな訳で、ストーリーの主導権はたちまち科学者・官僚・自衛隊へと移ってしまうのだった。

駄弁者:
>たちまち科学者・官僚・自衛隊へ
 怪獣の出現がもっと日常茶飯事になったら、どこかの小説/ドラマのように気象庁の管轄になるとか。あるいは、怪獣が病原菌をもっていたら保健所とか厚労省の担当になるかも。



例えおまえらがどんなに強大な悪でも風都を泣かせる奴は許さねえ。
体一つになっても食らいついて倒す、その心そのものが仮面ライダーなんだ。

 出典: 石ノ森章太郎原作・三条陸脚本・石田秀範監督「仮面ライダーW第48話『残されたU/永遠の相棒』」

紹介 :Y 様
HP :

コメント:
 風都の町を守るためにこれまで「二人で一人の仮面ライダー」である仮面ライダーWに変身して戦ってきた左翔太郎とフィリップ(園咲来人)。
 しかし、財団Xの使者としてユートピア・ドーパントに変身する加頭順との最終決戦を目前にして、フィリップがもう一度Wに変身すると消滅してしまう状態にある事が彼自身の口から語られます。
 そのために翔太郎はWに変身する事をためらってしまい、ユートピア・ドーパントによってフィリップの姉である若菜が連れ去られ、地球の記憶(アカシック・レコード)と接触できる彼女の能力を利用してガイアメモリ(本作における怪人であるドーパントや仮面ライダーに変身するためのアイテム)との適合率の低い人間を全世界から消し去る選民思想的な計画ガイアインパクトが実行に移されようとします。
 しかし、翔太郎は単身でユートピア・ドーパントのアジトに乗り込み生身の体と持てるだけのアイテムで若菜を救出してガイアインパクトを阻止、ユートピア・ドーパントを倒して風都の平和を守るためにフィリップと共に最後の変身をするのでした。

駄弁者:
 前集にも「仮面ライダーとは」のご投稿はありましたが、人数が増えるとライダー(元の意味はとうに失われているな(笑))のあり方論もいろいろです。「悪に食らいついて倒す」という点では、「助け合い」よりは昔のライダーに近いような気もしますが。



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