SF名文句・迷文句第104集

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「キャプテン・フューチャー、あなたは一生、こんな危険な仕事に命をかけるつもりなの?」

 出典: エドモンド・ハミルトン「 恐怖の宇宙帝王 (キャプテンフューチャー全集1)」(野田昌宏訳)

紹介 :宇宙鶏 様
HP :

コメント:
 惑星警察機構の女性諜報員、ジョオン・ランドールの言葉より。
 この作品、独特な言い回しも多くて素敵です。

駄弁者:
 昔読んでいたハヤカワ文庫版イラストの、アメコミ調でちょっとクドイ顔のジョオンでイメージ固定されてしまっているもので、今出ている鶴田謙二版の彼女はやけに若い、というか幼いように見えてしまいます。そりゃイラストだけ見てどっちかが好みかと聞かれたら、鶴田版のほうに一票入れますが。



「…敵は海賊だ。手段を選ばず、殺してやる。」

 出典: 神林長平「敵は海賊・不敵な休暇」

紹介 :サイコ・コム 様
HP :

コメント:
 はい、おさわがせいたします、毎度おなじみ海賊課ラテルチームでございます。
 海賊の情報などありましたらなるべく穏便にトイレットペーパー一つと交換させていただきます。
 何?これ。おなじみラウル・ラテル・サトルのセリフ。いや、私としては敵はすべからく手段を選ばず殲滅するものだと思うので…。ありったけの好意と賛同を込めて投稿させていただきました。  でも私が恐ろしいのは手段を選んで敵を殺せる存在です。

駄弁者:
>私としては敵はすべからく…
 そういう方針の場合は、「敵」の定義に注意が必要かと。海賊のように全否定の対象にできる「敵」というのは、そうそうないだろうと思うので…。



オラ、ワクワクしてきたぞ。

 出典: 鳥山明「DRAGON BALL」

紹介 :屋良一 様
HP :

コメント:
 ご存知、日本漫画史上もっとも剣呑なヒーロー「孫悟空」のキメゼリフであります。彼はどんな強大無比な敵に対してもこの一言のもとに戦いを挑みます。いかなる凶悪無残に存在にも正義感から戦うと言うことはありません。また、彼が怒りに任せて戦ったことはあれだけ長い連載で3・4回程度です。(主に友人が理不尽に殺された時)つまり、彼はほとんどお遊びかスポーツ感覚で宇宙をまたに(というか超えて)大活躍したわけです。いかなるアンチ・ヒーローもマッド・サイエンティストも適わないんじゃないでしょうか?強さだけじゃなくて、性格という点で。

駄弁者:
 これはちょっと大らかすぎるかも知れませんが…。
 そういえば悟空って宇宙人だったし…というわけで掲載するのではなくて、「趣味で世界を守る」の系列として面白いと思ったもので。悟空にいたっては世界を守ることそのものは趣味ですらなく、趣味を追求したついでにたまたま世界も救われてしまっているというだけなんですね…。



しかも、なんと、これは(と声をひそめてしまうのですが)実名プロレス小説でありながら、わたくしのホームグラウンドでもあります、あの”えすえふ小説”にもなっているという、前代未聞の物語なのでございます。

 出典: 夢枕獏「仰天・平成元年の空手チョップ」

紹介 :猛魂 様
HP :

コメント:
 ご無沙汰しております。本来なら前回のネタに繋がる文句を投稿するところだったのですが、元ネタの本が見つからず申し訳ありません。
 今回はSFの定義について考えさせらた一言を。タイトルで察せられると思いますが、内容は死んだはずのプロレスの神様・力道山が平成の世に蘇り、当時最強のレスラーと謳われた前田日明に勝負を挑むという完全なプロレスアクション小説。 で、夢枕先生がSFと言い切った部分は「腹膜炎で瀕死の力道山を試験中の人工冬眠装置に入れ、その後現代の発達した医療で腹膜炎を治療して蘇らせる」という部分。
 SFと呼ばれる条件については昔から色々と熱い議論が起こっては消えておりますが(J.P.ホーガンの作品を「ハードえせF」とか揶揄していた評論家もいたような)、この「小難しい理屈をひねりまわさずとも、科学を扱った架空の話ならSFとして楽しめばいいじゃないか」という主張にも一理あるような無いような…。

駄弁者:
 蘇ってこられたら、馬場(平成元年ならまだ存命)や猪木はさぞあわてふためくでしょうが。
>小難しい理屈をひねりまわさずとも…
 論じるのじゃなくて楽しむのなら、それぐらいの大らかさがちょうどいいんじゃないでしょうか?
 議論が熱くなるのは何かをSFと呼んだときより、それをSFじゃないと言ったときじゃないかと思います。



コリエルは大いにご機嫌ななめである。彼は岩陰で砲兵隊の女兵士四人と二時間一緒に過ごしたのだ。彼に言わせれば、何者にせよ宇宙服のデザイン担当者がこのような情況を予測しなかった事は許し難いのだ。

 出典: ジェームズ・P・ホーガン「星を継ぐもの」(池央耿訳)

紹介 :可児歳蔵 様
HP :

コメント:
 月面を強行軍中の一コマ。通信が途絶したから軍司令部まで行こうと言うかなり辛い情況なのですが、コリエルは元々色々と賭けをする人だけあってこう言う方面に気が向くようです。
 いや、こう言う情況だからこそ、ですか。

駄弁者:
 それはつまり、なんでこの宇宙服には股間にエアロックが装備されていないのだ、と?
 ご投稿の文句は、月で見つかった5万年前の死体から回収した記録を、主人公のハントらが読み返しているシーンより。
 このコリエルたちが何者で、どういった経緯で月面を踏破していたのかは、読んでのお楽しみと言うことで。



私の許可なく現実を改変する事は許さぬ!!

 出典: 木城ゆきと「銃夢Last Order」

紹介 :屋良一 様
HP :

コメント:
 現実と虚構、恐怖と歓喜を弄び、自分を生み出した人類そのものに復讐すべく人々を操り焼き尽くす「人造聖人」「メスメル流幻術師」「星船教団教祖」フーフォン。それに立ち向かうは「世界の秩序の体現者」「トリムルティ」ムバディ!この名文句はフーフォンに近づきつつ発したムバディの所信表明です。
 真意は判らないが、とにかく凄い自信だ!

駄弁者:
 立ち向かっているお二人とも、あまりお近づきになりたくないような二つ名ですな。
 「私の許可なく現実を」って、それを不許可にできるのは神さまだけなんじゃ…。



装填した拳銃を白痴にもたせるなんて、気ちがいだけのやることだ。

 出典: フレドリック・ブラウン「武器」(中村保男訳)  「スポンサーから一言」に収録

紹介 :出羽 様
HP :

コメント:
 究極兵器の開発に携わるグレアム博士には、知能障害の息子がいた。
 ある日、ひとりの男が博士の家を訪れ、ひとつの問いかけをする。”人類は究極兵器をもっていい段階にあるのでしょうか?”博士は”その研究に携わることで科学が向上する。自分の関心はそこにしかない”と答える。博士を思いとどまらせることに失敗した男は、博士が場を外した隙に博士の息子にある土産を残す。
 男を見送った後、博士は自分の息子が手にしているものを見、驚愕する。上の文句は、その時の博士の心の声です。
 さすがというか、ブラウンはブラックな比喩を容赦なく用います。しかし、理性とは科学で生まれた危険なものを御することなのか、そもそも生み出さないようにすることなのか、果たしてどちらなんでしょうか。

駄弁者:
 この喩えを使うなら博士の考えは、拳銃の扱い方を学ぶうちに知能も向上していくだろう、というところになるでしょうか。試してみる価値はあったと思いますが…。
 この作品が書かれてからすでに半世紀以上たってますが効果のほどは? とりあえず拳銃を持ち続けたまま暴発させずにはきましたが。



極論すればSFとはワンダーでありワンダーとはおもしろいデタラメだ
その「1」のデタラメをデタラメでなくワンダーと感じさせるための「99」のSF考証が確かに必要だッ
だがその逆では決してない

 出典: 徳光康之「濃爆おたく先生」

紹介 :かんきち 様
HP :

コメント:
 居酒屋で「叫ぶジオンの会」の仲間たちに愛の妄想話“ドムを創った男たち”を語るおたく先生・暴尾亜空(あばおあくう)。
 その前に現れた着流しの男。彼こそはSF者・千巣負湾打(せんすおぶわんだ)。ロボットアニメなどSFではないと主張し、その設定の矛盾を鋭く指摘する彼に対し、その矛盾を改めて作り直したとして「そこにワンダーはあるのかい」と反論する暴尾。
で、上記の台詞になる訳です。 暴尾のその情熱に背中のサイモン教授の刺青が涙(冷や汗)を流し、SF者は去っていったのでした。

駄弁者:
 ご投稿のセリフにはほとんど同感ですが、逆は…ダメでしょうか?
 たとえば、99の科学考証を物語として面白くするために1のデタラメを入れてみせたSFというのもいいと思います。
 一方、1の科学考証をエクスキューズに99のデタラメを並べたてたものをSFとすることは…あるいは受けいれ難いものかも知れないです。
 面白ければSFであろうとなかろうと、それはそれでOKというものですが。



「おまえは……おれじゃないか……」まぬけづらがそうつぶやいた。
「お目が高い」

 出典: ハリイ・ハリスン「テクニカラー・タイムマシン」(浅倉久志訳)

紹介 :猫狗(みょうく) 様
HP :
http://www16.ocn.ne.jp/~kaisyuu7/

コメント:
 ふるめのSFから投稿させて頂きます。
 タイムマシンを使って、古代に行ってハリウッド映画を撮っちゃおう、と言う業界人バーニィのセリフから。
 この話を読んでから、ハリウッドのコスチューム・プレイ物の映画を見るたびにニヤニヤしてしまう自分が抑えられませんでした(近作では「トロイ」とか)。
 でも一番のお気に入りは、この「テクニカラー・タイムマシン」と言う作品タイトル。
 “古い皮袋に新しい酒を入れた”スピリットの名タイトルだと思います。

駄弁者:
 タイムマシンを使った大作映画、大航海時代以前のヴァイキングによるアメリカ到達を描く「ヴァイキング・コロンブス」の撮影は、数々のトラブルの末、とうとう暗礁に乗り上げてしまう。万策尽きて債権者の前に出頭しようとする監督バーニイの前に現れたのは、まだ撮られていないはずの映画フィルムと起死回生のヒントを手にした……バーニイ自身!?
 ご投稿のセリフは、正確にはそのときの描写ではなく、問題解決後、バーニイが今度は過去の自分にフィルムとヒントを届けにいったときのもの。軽妙な語り口にさらっとタイムパラドックスを入れてみせた佳品です。



私が甘かった。軍人なんかに憧れて…。
戦場には何もない。戦争では何も生まれない。
私の代わりに生き抜いて、スネーク。
そして…、人を好きになって。

 出典: コナミ製作・小島秀夫監督「メタルギアソリッド」

紹介 :霞美 様
HP :
http://www.din.or.jp/~s-art/

コメント:
 最近「戦争が好きだ」という言葉に奇を衒う作品が増えているような気がします。
 そう思った時ふと、思い出したゲームの中のセリフです。

駄弁者:
 ご投稿のセリフの方が根本で支持されているからこそ、「戦争が好きだ」の露悪趣味に魅力が感じられるんじゃないでしょうか。
 それに「戦争が好きだ」は、実はたいてい「戦争の話が(読むのも語るのも)好きだ」なのじゃないかとも思ったり。



「銃を向けずに話をしよう、イザーク」
…(中略)…
「ただナチュラルを…。黙って軍の命令に従ってナチュラルを全滅させるために戦う気も、もうないってだけだ」

 出典: サンライズ制作「機動戦士ガンダムSEED」

紹介 :紫雲 様
HP :

コメント:
 ガンダムSEEDよりディアッカ・エルスマンの台詞。
 ザフト軍を裏切ったディアッカが元同僚のイザークに語りかけるときのもの。
 たぶん物語中一番人間的に成長してます、ディアッカ。ナチュラルを見下すだけのものとしか見てなかったのですが、捕虜生活の中でナチュラルのことや戦争のことを考えるようになったのですね。そのきっかけが自分を殺しかけた少女だったりしますが。

駄弁者:
 遺伝子操作されたディアッカら「コーディネイター」とそうでない「ナチュラル」の対立が舞台となっている…というあたりは、だいぶ前のご投稿でも少し触れられてましたが。
 話や登場人物をほとんど知らずご投稿の文句とコメントだけで想像したところでは、ごついキャラのイメージだったのですが…オフィシャルサイトを見たら、結構優男でした。



グゥレイトォ!!

 出典: サンライズ制作「機動戦士ガンダムSEED」

紹介 :紫雲 様
HP :

コメント:
 ガンダムSEEDより。この台詞は登場人物の一人であるディアッカ・エルスマンのキメ台詞(?)
 私はこの作品好きではないんですが、(理由はネットでの評価を見ていただければ大体わかるかと)ディアッカだけはものすごく気に入ってます。
 彼はザフト軍のエリートで、「狡猾で残忍」、なキャラ……のはずでした。
 しかし、後方支援機で接近戦を挑む、地球の重力に囚われて大気圏落下、ついでに出番が少ないなどこれまでのガンダムパイロットとは思えないくらいのヘタレ具合を見せてくれます。
 その後捕虜になり、暴言を吐いて殺されかけたりしながら紆余曲折を経て主人公側につくのですが最終決戦では特に見せ場も無く機体は大破(それでも生き残りましたが)
 彼が軍を裏切るきっかけとなった少女とも特に進展無しと徹底的に報われなかったディアッカ(一応物語中で見せ場はありましたが)。そんな彼を人は「うかつで残念」な男と呼ぶ(愛がこもってますよ)
 でも暗くなりがちな主人公陣営の中で彼の明るさは場を和ませてました。私はムードメーカー好きなんですかね。
 ちなみに続編でもディアッカは登場しています。ですがやっぱり出番・台詞少ない、エースパイロットから一般兵へと格下げ、元同僚の準主人公にはなかなか気づいてもらえないと変わっていませんでした。それでもこのキメ台詞を叫んでくれたときはうれしかったですねぇ。あとは最終回まで生き延びれるかですね。

駄弁者:
 Googleで彼の名を検索して一番に出てきたファンサイトが「救済委員会」。愛はこもってますが、キャラとして幸福なのかどうなのか…。



正しいというだけでは選べない選択だってある!

 出典: 長谷川裕一「マップス 龍のとりこ編 ACT.32 銀河に何が起こったか」

紹介 :だだ 様
HP :

コメント:
 はじめて投稿させて頂きます。
 出典の「マップス」は…説明不要ですよね?
 伝承族の全銀河への宣戦布告、迫りくる宇宙の危機に勇者 十鬼島ゲンが選んだ選択は『地球への帰還』ではなく『リプミラを救う』だった。

駄弁者:
 できれば説明欲しいです…私は読んでませんので。
 とはいえ、ご投稿の文句は詳しいストーリーを知らなくても共感できるものだと思います。
 悲しいかな、現実には「そうしたいというだけでは選べない選択だってある」の方が多いんですけどね…。



Gya-tei Gya-tei
Hara Gya-tei
Harasoh Gya-tei
Boji Sowaka
静寂を破ったのは、勇壮なマーチ調にアレンジされた般若心経だ。

 出典: 古橋秀之「ブラックロッド」

紹介 :龍樹 様
HP :

コメント:
 ご存知、古橋秀之のデビュー作「ブラックロッド」より。
 冒頭で、積層都市<ケイオス・シティ>を襲った怪物を倒すために投入された機甲祈伏隊(ガンボーズ)の登場シーン。和風サイバーパンクというコンセプトを明確に伝えています。とても熱く、おかしみもあります。私はこれにやられて購入を決心しました。

駄弁者:
こっちは歌詞は想像つくけど曲のイメージがわかない…。
Ku soku ze siki Siki soku ze ku!
勇壮…かなあ?



「時の葬列に」

 出典: AUTO-MOD「時の葬列」  オムニバス・アルバム「時の葬列」に収録

紹介 :コルホーズの玉ネギ畑 様
HP :

コメント:
前略 エロスと神話を武器に、反権力・反国家を掲げてきたAUTO-MOD。
 当バンドを中心にして13夜まで催されたシリーズ・ギグ、『時の葬列・終末の予感』がその発端。
 その活動は、VOCALのGENET(ジュネ)が、停滞するロック・シーンに未来はないという結論に達し、バンド解散を表明してから。つまり終幕を設定してからそこに至るまでの展開を考えるという、まるで映画みたいな方法論から生み出された戦略であり。
 この曲名から、左右1列ずつ、地平線の彼方までいろいろな時計を彫り込んだ墓石が、容易に想像可能かと。アインシュタインやニュートンなど、時間に言及した科学者も一緒にして。
                                     早々

駄弁者:
 歌詞はどんなのか想像つきませんが、題名はSF小説にあっても違和感なさそうです。単行本の表紙はコメントのイメージで。



「外側に立て…でないと物事の姿を見誤るぞ。」
「何の外側に?」
「全てのだ。この世の…あらゆる物さ。そうすれば正しく見ることができるはずだ。私はもう駄目だよ。多くを見すぎたせいで内側に入ってしまった。正しく見ることができなくなったんだ。」

 出典: カート・ビュシーク/アレックス・ロス「マーヴルズ」(秋友克也訳)

紹介 :松山 様
HP :

コメント:
 前回投稿した「マーヴルズ」の主人公フィル・シェルダンが物語のラストでカメラマンを引退する際に新人のカメラマンに言った言葉です。
 この「マーヴルズ」の面白い所は主人公が物語の最後まで「一般人」の域を出なかった所にあると思います。彼は1939年に人造人間ヒューマン・トーチの公開実験を取材して以来魅せられた様に数十年に渡って彼ら「マーヴルズ」の活躍を撮り続けましたが、だからと言って彼が「マーヴルズ」について誰よりも知っていると言うわけではありません。一体彼らの正体は誰なのか、なぜ人助けをしているのか、何一つ知らないし、他の人達と同じようにミュータントは残酷な怪物だと思ってXーMENに石を投げつけたり(この誤解は後に解けますが)スパイダーマンの写真を彼を悪人と決め付けるジョナ・ジェイムソンに売りに来たピーター・パーカー(スパイダーマン)に怒りを露にする等、「マーヴルズ」達を信頼しているだけで他の人達と同じただの「一般人」に過ぎません。
 物語の終盤、「マーヴルズ」を非難する人々に考えを改めさせようと奮闘していた彼は結局自分も他の人々と同じで「マーヴルズ」達の事を何一つ知らず彼らに主観的な幻想を抱いていた事に気づき引退を決意します。
 この言葉は私達が普段新聞やテレビのニュース等で世の中の情勢・事件を見る時常に心がけておかなければならない事ですね。私達は外側に立って正しく物事を見れているでしょうか?
 前回の「マーヴルズ」のコメントで書き忘れていたのですが、私達がアメリカや中国等の大国の動向に激しい怒りや嫌悪感を感じるのはこの編集長のように自分達ではどうすることもできない存在によって世の中が動いている事に対する無力感のためではないでしょうか?

駄弁者:
 自分は外側に立ってカンペキに客観的な見方ができている、と信じるているときが実は一番危ないんじゃないかと思います。多少なりとも自分が関わっている問題で、完全に客観的な立場などないでしょうし。
 内側で物事を見て、しかも自分が100%正しいわけではないと悟っている主人公の見方は、本人は「駄目だ」と言っていても、やはり得がたいものなのでは。



I KNOW IF I JUST HAD ANOTHER HIT....
「ヤクをもう一発打ちさえすれば…」

 出典: フィリップ・K・ディック「暗闇のスキャナー」(山形浩生訳)

紹介 :かおりん 様
HP :

コメント:
ヤク中の麻薬捜査官ボブ・アークターが思わず言った一言。 ディックの麻薬に関する造詣の深さ、スキャナーに纏われた「器官なき身体」という レトリック。ディックの傑作とされる本小説は、この一言で最高傑作といえるものにしている身もふたもないセリフ。

駄弁者:
 蔓延する出所不明の麻薬・物質Dを追って、麻薬捜査官ボブ・アークターは中毒者グループに潜入する。しかし上司から監視を命ぜられた人物の名は自分自身のものだった…。
 ディックでドラッグ関係というと、私がまず連想するのが「ヴァリス」で、これは学生時代手を出していまいち(というかかなり)分からなくて、序盤で挫折してしまった記憶があります。  ディック作品は最近頻繁に映画化されますが、この「暗闇のスキャナー」にも映画化の予定があるそうで。また題だけで中身が全然違うのでしょうか。



「奥義、飛行正拳突き〜!」

 出典: 吉岡平「鉄甲巨兵 SOME-LINE」

紹介 :北斗 様
HP :

コメント:
 こちらの台詞は、LINERメカの2号機、ライナーコンドルに搭乗した米原尚晃のもの。
 このライナーコンドル、変形合体時にはSOME-LINEの胸&腕となるメカなのですが、こともあろうに米原はこの変形機能を単独で使ってしまいます。空中で腕に変形したライナーコンドルは推力を維持したまま、敵めがけ鉄拳をクリーンヒット。見事破壊したのでありました。
 このシリーズ、基本的に巨大ロボットもののパロディですので、その世代の人なら楽しめるかと。足パーツを敵に向かって蹴り飛ばすってネタもあったっけ。

駄弁者:
 そこまで自由度が高いと、そもそも何で合体する必要があるのかということになってしまいそうな。まあ、重量が増えるぐらいだから、出力も合体したときには合体前の合計以上に出るのかも…。



「全部のメカの重量を合計しても、300トンちょいにしかならないぞ。なんで1100トンもの重さになるんだ。計算が合わないぜ」
「そこがまぁ、SOME-LINEの最強たるゆえんだ。どうして合体すると質量が増えるか、実は俺にもよくわからない。細かいことをいちいち気にするな」

 出典: 吉岡平「鉄甲巨兵 SOME-LINE」

紹介 :北斗 様
HP :

コメント:
 タイラーで一躍人気となった吉岡平が好き放題書かせてもらった(本人談)本作より。
 宇宙の地上げ屋ツイミ不動産の魔の手から地球を守るべく開発された五機の航空機型メカ、その名はLINERメカ。五機が変形・合体してSOME-LINEとなった時、その重量は何故か元の五機の総重量を遥かに越えているのでありました。
 この会話はLINERメカ一号機ことライナーファルコンのパイロットとなった利根木鷹彦がSOME-LINEの説明を聞いている最中に放ったツッコミと、それに対する秋葉原石丸博士(開発者の弟子)の回答。巨大ロボットだの巨大怪獣だのの『強さ』を表現しようとする時、そこに科学考証は必要ない、ただ、『それらしい』数字を提示して置けばいいのだ、と云うのが作者の結論らしいです。

駄弁者:
 じゃあ「宇宙一の無責任男」シリーズの、全幅(あくまで全長に非ず)8000mの超弩級戦艦や、超光速で接近する移動性ブラックホール「颱宙」なんかは、好き放題書いてなかったのか…。



あんな恐ろしい話は、聞いたことがない……。

 出典: 小松左京「牛の首」  「石」に収録

紹介 :可児歳蔵 様
HP :

コメント:
 久方ぶりに小松左京からの投稿です。
 牛の首、という恐怖掌編の話を聞いた主人公が、しかし一向に分からないその掌編のストーリーを“発見”するまでのお話。
 そして結局、主人公も上述のセリフを発する事になってしまうのです。

駄弁者:
 わずか数ページながら、恐怖というものをうまく表した短編。なんだか分からないものが一番恐ろしいという…。



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