「8時間以内で火星を一周してしまうあの内側の月は、我々の上空約5900Kmという、とても近い軌道を回っています。この距離は地球と月の間の約1/65しかないんです」
「…近いのね」
「はい」
近づきすぎたちっぽけな月は、火星の影響を受けすぎて、やがて粉々に砕けてしまうに違いない。
「なぜ泣くんです?」
「近すぎよ」
出典:
天野こずえ「ARIA Navigation45 『お月見』」
紹介 :歌鳥 様
HP :http://members.jcom.home.ne.jp/songbird-x/
コメント:
もうひとつ「ARIA」より。灯里の友人・藍華ちゃんと、ノームのアルくんの会話です。女性に人気のある作品だそうですが、そのわりに恋愛の要素はほとんどありませんで。ほとんど唯一の例外が、この藍華ちゃんとアルくんの関係です。
ノームというのはアクアの地下に住み、重力をコントロールする重要な仕事に就いている人々。一般的に背が低いらしく、アルくんも一見子供のようです。そのアルくんが時折見せる優しさ、ノームの持つ神秘性に、藍華はどんどん惹かれてゆき、そんな自分に戸惑いを覚えます。
お月見の夜、枯井戸に落ちて二人きりになってしまった藍華ちゃんとアルくん。間をつなぐために月と火星の間の重力について解説するアルくんですが、藍華ちゃんは涙ぐんでしまいます。”火星の影響を受け続ける月”を”アルくんに影響されている自分”に重ね合わせ、不安を感じてしまったのです。ちなみに、この二人の会話はそんなんばっかしです。
この直後、いい雰囲気になりかけた二人を強烈な”お約束”が襲い、藍華ちゃんはマジ泣きしてしまいますが……。アルくんの最後の台詞もかなりの名文句なのですが、かなりのネタバレになるので割愛します。
駄弁者:
実際にもフォボスは重力の影響で、数千万年のうちに火星に激突するか、粉々になって火星の輪になるそうですが…重力を1Gにした影響で、さらにその時期が早まってしまったのでは。