SF名文句・迷文句第183集

名文句トップに戻る

第182集を見る 感想を書く(文句toめい文句) 第184集を見る


お前の神は命を与え 奪い去るが
俺の神は 無力だ

 出典: ブレット・レナード監督「バーチュオシティ」

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 「50テラバイトの自己進化型神経ネット」である所の「シド6.7」君はコンピュータの中からナノテクアンドロイドに収まりその本能(凶悪犯罪者187人のデータ)に従ってやりたい放題の行状です。
 「神」について考えたり、複数の人格を基に行動したり、一体どんなプログラムなんだろうかと思ってしまいました。これじゃ「HAL9000」より高度ですよシド君。
 「マトリクス前夜」改め「ターミネーター2前夜」な映画です。

駄弁者:
 シド6.7君の場合、無力だと言っている神=創造主とは、人間のこと…?
 プログラムの高度さもさることながら、乗り移ってやりたい放題できるアンドロイドが用意できているというのがまた、驚異的だなあ。乗り移ったはいいけどASIMOとかだったら、神より先に自分の無力さをかみしめざるを得なかったのでは。



私たちはみんな、フィクションから生まれた。
紹介 :サトチ 様 → 第175集


「何故君には名前が無いのだらうか」

 出典: 奥泉光「『吾輩は猫である』殺人事件」

紹介 :垂直応力 様
HP :

コメント:
 この小説をSFだと紹介するだけでネタバレになるのかなぁ。
 『吾輩は猫である』の最後で死んだはずが、なぜか上海にいる「我輩」。苦沙弥先生が殺害されたことを知り、当地の猫たちと謎解きに挑む(全篇漱石文体)。というわけで前半は謎解き合戦が続くミステリだったのが次第に冒険物になり、最後には驚天動地の真実が明らかになります。こんな小説が「新潮社創立100年純文学書下ろし特別作品第一弾」で出てますけど、純文学読みもミステリファンもこれ読んだら怒りだすんとちゃうやろか。
 日本一有名な小説の書き出しに喧嘩を売っているような投稿の文句は、英吉利人探偵の飼い猫ホームズ君が謎解きの過程で発した疑問。「いくら主人がものぐさでも夫人や子供もいるし、一年も飼われていて名前がつかないのはおかしい」と「吾輩」が語った『吾輩は猫である』の内容に疑問を呈し、ついには「君は苦沙弥氏の家に本当に住んだことがあるのだらうか」などと言い出します。どうです、SFでしょ。

駄弁者:
 奥泉光は「鳥類学者のファンタジア」が日本SF大賞候補になったり(私、これしか読んでません)、地底旅行のリメイクをやったりと、よくこちら側に顔を出しますね。この作品もメインは夏目漱石の文体模写らしいですが、ご自身で「実はこれはSF」と言ってますし…。



ジョニー・ライデンって知ってるかい?

 出典: 長谷川裕一「機動戦士ガンダムMSV戦記 ジョニー・ライデン」

紹介 :陸ドム 様
HP :

コメント:
 ここでもお馴染みの長谷川作品から。この作品のテーマであり、作者の姿勢とも言える台詞を。
 以下作者の後書きからですが、かなり省略してあるので全文はコミックスを買ってください(笑)
(前略)
MSVとは「ガンダムのアニメには登場しなかったけど戦場のどこかにはいた、いたかもしれない機体とパイロット」を想像する遊びであり、いわば「書かれていない行間を楽しむ」文化だと思っていた
(中略)
彼に人気があるのは人物像がはっきりしない事によっていくらでも自分を投影できるからではないのか?つまり、はっきりさせてはいかんのではなかろうか?
(中略)
かくてぼくのジョニーは戦場から逃げ出した。100万の「行間」を再び手に入れるために。
(中略)
「ジョニー・ライデンって知ってるかい?」、この問いかけを再びする事。触媒でありフロンティアでありつづけたMSVに対する、それが僕の敬意の表し方なのだから。

駄弁者:
 「赤い彗星」ならぬ「真紅の稲妻」なんて、ちょっとしたファンでないと知らないのでは。
 昔、プラモデルのCMで「ジョニー・ライデン少佐率いるモビルスーツ部隊は、フルアーアーマーオペレーションのガンダム部隊と接触した!」云々というのがあったので、名前だけは覚えている人もいるかも知れませんが。



これが“ヤクーサ・ボンズ”であります。

 出典: バリントン・J・ベイリー「カエアンの聖衣」(冬川亘訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 衣服が人間に与える精神的影響を考察する・・・しかし、ベイリー先生にかかると、そんな真面目なテーマも馬鹿SFに早変わり。
 着用者に異様なまでの魅力を与える惑星カエアン産の衣服の数々。遭難したカエアンの輸送船の捜索に出向いた宇宙船は、敵対する2つの種族の抗争に遭遇する。
 1つはロシア人を祖とする宇宙服人種。もう一つが日本人を祖とするサイボーグ人種。
 サイボーグは移住先が人間には適さなかったため、惑星ではなく自分たちを改造したのだが、日本的な考え方までは変えてはいなかった。
 ヤクーサ・ボンズ、つまりやくざ坊主が集団を率いる社会を説明しているのですが、この歪んだ日本趣味はどこまで本気なのやら。僧兵についての言及があったり、自殺攻撃が伝統と言ってみたり、素直に笑い飛ばしていいんでしょうかね。

駄弁者:
 出た、星間日露戦争。これが話のメインではなく一エピソードというのがぜいたくすぎます(笑)。
 ボウズと言いつつ、頭に砲塔を装備しているのは、ひょっとしてチョンマゲのパロディなんじゃあ…。



我々は探検(エクスプロアー)されるだけじゃなくて、うかうかしていると、搾取(エクスプロイト)されさえするかもしれん。

 出典: ウイリアム・テン「ベテルギュースの橋」(中村保男訳)  『ウィリアム・テン短編集1』に収録

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 アメリカには、田舎者が詐欺にあってブルックリンの橋を買う、という与太話があるそうで。
 ベテルギュース第九惑星からアメリカに異星人がやってくる。恒星間飛行を難なくやってのける彼らと、地球から飛び立つこともできない人類との格差を気にするアメリカ政府関係者の懸念に満ちた一言。ウェルズの宇宙戦争にもこんな台詞があったような(機関銃をもって未開人に対するのがどういうことか判るだろう、という意味だったような)気がしますが。
 ブルックリン橋の逸話通り、人類もまた詐欺にあうのでした。マンハッタン島を24ドルで売り払った、という伝説をなぞった様な展開でした。最も、人類はやがて詐欺師たるベテルギュース人の度肝を抜かす事に成功するのが、現実と違うところです。

駄弁者:
 ウィリアム・テンは何年か前に創元で短編集の復刊があったので、そのとき買ったのですが…半分、読んでませんでした。
 ご投稿のセリフの危惧どおり、素朴で未開な地球人が、宇宙人に手玉に取られる…とは、よくありそうなネタですが、このラストではさらにひとひねりしてあるのが面白い。



この主張の裏付けとして、ヒトのDNAの95パーセントがチンパンジーと共通しであることを科学者は挙げている。ところが私たちのDNAの99.9パーセントは海賊と共通しているのだ。

 出典: ボビー・ヘンダーソン「反★進化論講座 空飛ぶスパゲッティ・モンスターの福音書」(片岡夏美訳)

紹介 :WC-Co 様
HP :

コメント:
 人類は空飛ぶスパゲッティ・モンスターによって造られた! まるでMMRのごとき衝撃の事実を突きつける本書は、全編こんなノリで『進化論』を『否定』し『インテリジェントデザイン説』を『擁護』しています。
 著者の主張する所に拠れば、本書は宗教書らしいのですが、パスタファリアンではない私には、本書を宗教書として認める度量がありません。これはある種のSFです

駄弁者:
 ちなみに人類がスパモンから創造されたという他に、海賊は「選ばれし民」であり、天国にはビール火山とストリッパー工場がある…という教義もあるそうです。
 SFととるにしろ宗教パスティーシュととるにしろ、笑い話だけですませられる日本は、この点ではいい国です(いや、そろそろ笑い話だけでもないか?日本の新聞でもID説が肯定的に紹介されたことがあるし…)。
 この「宗教」でアーメンの代わりにラーメンと唱えるというのは、日本版のパロディかと思ったのですが、原典でもそうなんですね。



公務員だぞ、地方公務員。
お前達が乗車しているのはグレートマジンガーか?ダンガイオーか?
自閉症児や不良少年が主人公のロボットアニメじゃないんだよ。
わかっとるのか?本当に…

 出典: ヘッドギア原作・ゆうきまさみ原案「機動警察パトレイバー」

紹介 :あひるパパ 様
HP :

コメント:
 なんとも身もふたもない台詞…。ここまで言い切られると二の句もつけません。
 たしかに、この作品中のロボット=レイバーとそれを含めた世界は可能な限りリアルに設定されましたが、それゆえ産業ロボットの延長として開発された単なる重機の一種に過ぎないという、ロボットアニメとしてはどうかなと言うパラドックスも内包されたわけです。もちろんそれを逆手に取ることを目指して描かれたお話ではありますが。
 もうひとつ思うのが、ここまでえらい言い方をされるようなロボットアニメの中にしか「正義の味方」って存在しえないんだなあということ。この台詞をはく後藤隊長自身も、自分達警察官が正義の味方であって欲しいというぐらいは思っているでしょうが、実際に正義を実行したものなら単なる迷惑ものどころか犯罪にしかならないと言うのが冷静な現実。
 とはいえ、警察官に限らず公務員に正義感てものが果たしてあるのかどうか疑わしく思えてくる昨今ではまだ、こういう信じる正義のある公務員がいてくれてもいいような気さえしますが。

駄弁者:
 地方公務員は地方公務員でも、「正義の地方公務員」だそうですが。
>公務員に正義感てものが果たしてあるのかどうか
 ええ、まあ、それを言うなら公務員に限らず世間一般、正義感で満ちあふれているというわけでもないように思います。正義感がそれほどなくても、自分の職業に関するプライドがあれば、そうそう不正は起こせないはずなのですけどね…。



「一口さいずだな、こりゃ」
「それは隊長だけです! 少しは味わって食べて頂けませんかね!」
「味わった味わった。苺らしき味がした」

 出典: 有川浩「図書館革命」

紹介 :ぽちぽち 様
HP :

コメント:
 さっきのが少々重たかったので。
 会議中、郁が(全く自覚なしに)起死回生の名案をポロッと口から出したとたん、全員から注目を集めた上に堂上からは「もう一回言ってみろ!」と詰め寄られてビビッてしまいます。いつも会議ではぼろくそなので、叱責覚悟で繰り返したら逆にほめられ、何であんな怖い問い詰められかたを……と逆上してついグーパンチ! 好きな人をグーで殴っちゃったことで落ち込み、隣室で泣いてしまった彼女のご機嫌取りにと堂上は隊長命令で全員分(!)のケーキを買ってこさせられます。で、そのケーキに対する隊長のコメントがこれ。
 ま、ちゃんとした洋菓子店の(高い)ケーキに対する、昭和(もしかしたらヒトケタ? 戦中生まれ?)世代男性の反応なんて、こんなもんですが。うちのダンナ(一応昭和30年代生まれ)だって似たようなもんですから。ふっ、スーパーの100円ケーキで十分だぜ(遠い目)

駄弁者:
 堂上班長、シリーズ最終巻でもいい感じにイジられてますねえ…(まあ、バカップルらしいし、そのぐらいはいいか)。
>高いケーキに対する反応
 40年代後半の男性でも…あまり大差はないかもしれない…。



「それはね、笠原 …(中略)… 悪意じゃなくて、そいつらの正義に辟易してるのよ」

 出典: 有川浩「図書館革命」

紹介 :ぽちぽち 様
HP :

コメント:
 著作がテロの「教科書」とされたのではないかという疑いからメディア良化委員会のターゲットとなってしまった作家当麻氏を保護した図書隊。今回はそれを奇貨としてどう戦っていくかが語られる、シリーズ完結編。
 この台詞は、その当麻氏に30年以上も前、「片手落ちは差別用語だ」という投書が来たことがあるという話が出たときの会話です。熱血ヒロイン笠原郁の「指摘するほうに悪意感じちゃうのってあたしだけかなあ」という言葉に対する、柴崎の答え。
 読んで、すとんと胸に落ちました。こういうことを言ってくる人達というのは、決して悪意で行動してはいないんです。むしろ、善意で、正しいことをしていると思って、ここで抗議するのが障害者のために社会のためにプラスになると信じて、その「正義パワー」でがんばってるんです。前の巻でも「床屋」事件とか、毬江ちゃんの事件とか、ありましたが、「正義パワー」に対して、それを自分の利益のためにゆがめる人もいれば、そのパワーに頭を下げるのが当たりまえになっている現状もある。なんか変だな、と思いつつ、どうにもできなかったりするのは、上のような人達が「善意」と「正義」で行動していてなんの疑いもなく「正論」を振りかざしてくるからなんだ、と今更ながら思った次第です。

駄弁者:
 あー、なんかすっごく分かります、その感覚。
 正しいことを主張する人の中には「自分の考える正しさだけがあれば、それですべて十分」と思っている人がいるんじゃないかと思います。
 自分だけが正しいわけじゃないと分かっていても、敢えて自分の主張を通さなければならないこともあるでしょうが、そういう陰影があるようには見えない「正論家」も結構多い…。



upgrades.

 出典: ウォシャウスキー兄弟監督「マトリックス・リローテッド」

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 「去年の僕とはちょっと違うんですよ」なんて聞くと思わず思い出すこのセリフ。日本語でいう所の「バージョンアップ」ってトコロですかね(それ日本語じゃありません)。
 そう、日々精進です。昨日より今日、今日より明日、アップグレードせねばなりません!ってなんか年頭の目標みたいですね。

駄弁者:
 日々明らかになる自分のバグとかセキュリティホールにパッチをあてるのがやっとで、なかなかアップグレードできません。



「冗談じゃない。気の合う優しい女なんて居ないものだな。なあポール。俺はお前が男友達でなくて女友達だったらいいと思うよ」
「ナニ女友達」ポールが口を丸くあけてパチパチ目を瞬いた。「ペン公、本当にそう思うかい」

 出典: 海野十三「十八時の音楽浴」

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 独裁者が、洗脳音楽を使って治めるミルキ国。そんな国でも不平分子はいるもので、男二人、ペンとポールは、不自由な日常について隠れて愚痴をこぼす。ペンが結婚生活についても愚痴をこぼす。そしてペンが目にしたのは、変わり果てたポールの姿であった。
 ポールはペンのために、なんと自分自身に性転換手術を施していたのです。ブラックジャックも腰抜かしますよ。更に愚痴をこぼすときに口にしていたのが蜂蜜(嗜好品は厳しく制限されています)とくる。これってボーイズラブの領域、ですか?なんだか挿し絵に花が咲きそうなシーン。
 ここは青空文庫でも、三一書房版の全集でも同様の流れになっていますので、なんかの間違いでは無いようです。
 日本SFの先駆者は、こっち方面でも先駆者だったのです。

駄弁者:
 いや、性転換しているんだからちょっと違うのでは…しかも速攻でフラれてますし。
 それにしても、BL(あるいは性転換)に加えて、ご投稿のセリフより後にはロボ子萌えまであるという、複数の意味で先駆的な作品…。
 「音楽浴」の結果引き起こされる事態には、思想善導への危惧と警鐘も含まれているように感じたのですが、どうでしょうか。 1937年でもまだこういう作品が出せたんですね。



自分のちっぽけな人生が、横やうしろではなく、前にあるんだということを忘れてしまっているのじゃないか?去年が戻ってくるのでも待っているのかね?

 出典: フィリップ・K・ディック「去年を待ちながら」(寺地五一/高木直二訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 国連事務総長ジーノ・モリナーリの元、星間戦争を戦う地球。専属の医師エリックは、仲違いした妻から時間溶解剤JJ180を投与され、未来をさまよう。苦闘の末、元の世界に戻ったエリックは今の妻と別れて、新しい相手と生きていくようにと、上の言葉でジーノにせかされるのでした。
 実に素晴らしい台詞。演説になれている職業柄、訴える物があります。ただ、ジーノが紹介した相手というのがなんと19歳。エリックも法律違反だと言うがそんなこと目をつぶってやると言われるとあっさり陥落。それでいいのか、二人とも!
 それはさておき、人生は前にあり、去年は戻ってこない。当然のことではありますが、去年、戻ってきて欲しい物です。
 この本と「ザップガン」の巻末にはディックの自作解説がついています(グレッグ・リックマン「In His Own Words」の引用)。ペヨトルあたりから出そうな感じだったんですが、こちらも戻ってきて欲しいものです。

駄弁者:
 前にいただいたご投稿のコメントで「未来は前から来るのではなく、見えない後ろから来るのだ。」というのもありましたが。
 未来や人生というのは、見ようとしても見えない方向からやってくるのか、それとも自分がよそ見をしているだけのか。どっちにしても、私は気付かずぶつかって慌てることの方が多いように思います。



エヌ氏は〜(後略)

 出典: 星新一「エヌ氏の遊園地」など

紹介 :陸ドム 様
HP :

コメント:
 はじめまして。2、3日前から読みはじめて時間泥棒に時間を盗まれています。
 この名文句は言わずもがな、星新一のショートショートにおける登場人物「エヌ氏」が話の最初に出てくるときのものです。
当時はじめて星新一、というかショートショートを読んだ自分には、登場人物の名前がこれだけ、しかも数ページで起承転結をつける、徹底的に贅肉をそぎ落としたゼロ戦のごときショートショートの面白さの虜になりました。
 たった数ページの文章量であれだけの物を作る星新一は今でも私の中でナンバーワン作家です。
 インパクト、汎用性共に大な名文句です。

駄弁者:
 そのまま題名にもなっていますしね。
 普通の姓名が登場するよりこちらの方が、話の面白さが際立つようにさえ感じられます。



資源は消費するためにある。そしてわれわれの世代によってではないとしても、いつかはやがて消費される。だが忘れられた未来にわれわれの財産権を否定する権利があるだろうか。断じてない。われわれの物はわれわれがいただこうではないか。腹いっぱい食べようではないか。──最高経営責任者ナワダイク・モーガン「欲望の倫理」

 出典: シド・マイヤー製作「アルファ・ケンタウリ」

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 PC用惑星開拓ゲーム「シド・マイヤーズ アルファ・ケンタウリ」より。
 前置き1)このゲームでは、それぞれの主義によって党派をつくり、勢力を争います(キリスト教原理主義者、マッドサイエンティスト等)。
 2)ゲーム中では異星で生き抜くため、いろいろな科学技術を開発し、成功するとそれに関わる著作や、台詞が紹介されます(孫子、聖書に始まり作中人物の台詞に至るまで)。
 この著作を著したモーガン氏は物質的な発展を重視するモーガン産業という党派の代表ですが、これでは「未来の世代のために」をスローガンとするエコロジストや精神的発達を重視するキリスト教原理主義者達に正面切ってけんかを売っているようなものです。
 ただ考えてみると、この世界では冷凍睡眠とはいえ恒星間飛行を実用化しているので、資源の極限までの収奪をしてから、移住することも可能であり、この台詞もあながち間違いとも言えないのかも。
 このお方は他にも「もちろん、永遠に生きたいと思っているが、妥協しても構わん」など、リミッターをぶっちぎった発言でプレイヤーに刺激を与えてくれます。

駄弁者:
 前にいただいたご投稿は「資源が無くなりつつあるから、外へ出ていこう」だったのに、こちらでは…。ある意味積極的な姿勢というべきでしょうか(笑)
 これをモットーに宇宙進出したら、スタートレックのフェレンギ人みたいになりそうだなあ。



 書物とはふしぎです。一冊の書物はいずこより来るのか? その書物を紐解いている、読者の眼前(まえ)にです。読者は一人であり、書物は一冊。なぜ、その一冊を選んでいるのでしょう。ある種の経過(なりゆき)で? ある種の運命で? なぜ、その一冊と――おなじ時間を共有して――読むのでしょう? 読まれている瞬間、おなじ時間を生きているのは、その一冊と、その一人だけなのです。
 一冊の書物にとって、読者とはつねに唯一の人物を指すのです。
 だから、どのような経緯で?
 強制?
 偶然?
 だから、運命?
 わたしは惟(おも)うのですが、書物はそれと出遇(であ)うべき人物のところに顕われるのではないでしょうか。  書物じしんの意志で。

 出典: 古川日出男「アラビアの夜の種族」

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 ヒジュラ暦(イスラムの暦)1213年(西暦1798年)。ナポレオンによるエジプト遠征の報に騒然となるカイロ。西欧の近代軍隊の実力を知らず、旧態依然たる騎馬軍団で対抗しようとする知事(大臣のような地位)たちの中、23人中ひとりだけ、フランス革命軍の実力を知り、避けられぬ戦いの行く末を憂う男がいた。
 そして、彼の執事、天才軍師たる美青年奴隷が考えだした秘策――それは、読む者すべての気を狂わせる伝説の書物「災厄の書」を見つけ出し、征服者ナポレオンに献上すること。
 執事は、エジプト一の語り部と書家を集め、一晩ずつ語られる物語を製本する作業――じつは未だ存在しない「災厄の書」を作り出す作業――に没頭する……。
 中島敦の「狐憑」と「文字禍」を合わせたような設定に、作中作として「ウィザードリィ」のエッセンスを注入した、第23回日本SF大賞と第55回日本推理作家協会賞を同時受賞した逸品より。
BGM:「有心論」ラッドウィンプス

駄弁者:
 現在のように書物が大量に印刷され、ベストセラーが喧伝される時代では、なかなかそういう感じ方はしにくいですが。
 しかしそう考えると地味な私の職業も、なかなかロマンのあるもののように思えます。「災厄の書」はないですが…(「文字禍」ラストのような目に遭う可能性はなくもない)。



「おまえは、ひとりの人間が何百万もの意思に反対できるとというような自惚れを持っているのか?」

 出典: フィリップ・ワイリー「闘士」(矢野徹訳)  『世界SF全集5』に収録

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 コロラドに住むアベドネゴ・ドナーはある決定因子を発明する。それは生物の体力を何倍にも高める能力を持つもので彼はそれを妊娠中の自分の妻に注射し、自分の子供を超人として生まれるように操作した。
 やがて産まれた子供はヒューゴーと名づけられ、父親の期待したとおりの能力を発揮した。しかし、彼の持つ並外れた力は、常にほかの人間たちとの間に溝を作り、彼を阻害します。
 投稿した台詞は、彼が排除しようとしたある人物から言われた台詞で、この作品の裏のテーマといえるものなのではないかとも言えるものです。確かにどんなに強い力を持っていても、優れた力を持っていても、現実にはたった一人では何も変えられない、というか一人の力で変えられるほど弱い社会ではないですからね。しかしこの作品が書かれた1927年、(出版は’30年)に超人の持つ苦悩、というテーマが書かれていたのはちょっとすごい。

駄弁者:
 著者のワイリーは、この全集で背表紙に名前が出ている中で一番なじみのない名前じゃないでしょうか(私が知らなかっただけ?)。
 「スーパーマン」の下敷きなった作品だということも、初めて知りました。



わが軍はドイツ全土とオーストリアの一部を手に入れ、一方、ドイツ軍はフランスのほとんど全部を手に入れていた!

 出典: ヒューゴー・ガーンズバック「ミュンヒハウゼン男爵の科学的冒険」(小隅黎訳)  『世界SF全集4』に収録

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 アメリカSFの父、ガーンズバックの作品から投稿します。ある日、わたしが高声電話機をいじっていると、どこからか流れてくる電波を受信しました。受信した電波を聞くとなんとその発信元は月からであり、発信者の名はミュンヒハウゼン<ほら吹き>男爵だというのです。 彼は政治的な理由から死を偽装したのですが、その時に注射された防腐剤の影響で不死となり、100年もの長きに渡って眠っていたというのです。
 その後彼はドイツを去り、様々な人々を混乱に導きながら世間を渡り歩き、最後には月へと逃げたというのです。投稿した台詞は、第一次世界大戦のとき、フランスで軍を指揮したときに立案した作戦、ベルリンまでトンネルを掘って一気にドイツを占領しようとしたときのものなんですが、敵もさるものひっかくもの、ドイツ軍も同じようにトンネルを掘りパリを占領してしまいます。まぁ、自分たちが考えていることはたいてい向こうも考えているものですからね。しかし、この話、どこまでしんじていいのやら。何せ、話し手が「I・M・アライヤー氏」、(続けて読むと、アイム・ライヤー、詐欺師)だもんなぁ(笑)。

駄弁者:
 なんでそんな奇想天外なことが起こったのに歴史に残っていないのか、というところまで人を食った理由付けがされているのに笑いました(決してよくできた理由ではなかったですが…)



…いつまでも死んだ娘にしがみついているからよ
まだいくらでもやり直せるくせに…

 出典: たかしげ宙原作・DOUBLE−S作画「死がふたりを分かつまで 6巻」

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 予知能力者の中学生・遥と盲目の剣士・護が(以下略)
そんな事はさておき
 自分の進む道がこの方向でいいの?と思う時はありませんか?私はあります。
 選んだ理由が「復讐」で、いくら進んでもそれが達成できないとしたら、その道は正しいんでしょうか?冥府魔道を行くのもまた悲しいものです。
 もっとも私の場合、「みんな地獄行き」を信条としていますので、「ま、いっか」と思っちゃうんですケド。

駄弁者:
 TEAM NORTH-MOAI(R)さん、この作品好きですね…。
>「ま、いっか」
 それは私の口ぐせでもあります。やり直すときでもやり直さない時にでも使える、非常に便利な言葉。



「どうした」
「もう少し強いのを」
「赤のカプセルを4錠飲め 楽になる」

 出典: フランシス・フォード・コッポラ制作総指揮/ジョージ・ルーカス監督「THX 1138」

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 やっぱり薬(ヤク)は段々効かなくなるんだな。
 そんな事はさておき。
 「認めたくないものだな、自分自身の、若さ故(以下略)」と思っているかは判りませんが、「SW」をリメイクしまくった御大の事だからもうちょっとなんとかしたいと思っているんじゃ?と思わず勘ぐってしまいたくなりました。  テイストは正に「芸大の卒論制作」風。ていうかこんな長さで作れたという事に驚きです。

駄弁者:
 出典はジョージ・ルーカスのデビュー作品。コンピュータとクスリで管理された世界が舞台のディストピアものだそうです。
 Wikipediaなどによると、ルーカスが大学在学中に作ったものをコッポラが見出して制作したとのことなので、「もうちょっとなんとかした」結果がこれということなんじゃないでしょうか。



なんつーかよ、漫画とかよ、小説とかよ、映画とかよ、テレビとかよ、
そういうもんがおもしれーうちは……
おもしれーと感じられるうちは死なねー方がいいんじゃねえか?
だってオメー、この先もっとおもしれーもんが見られるかもしんねーんだから

 出典: 空知英秋「銀魂 三年Z組銀八先生」

紹介 :砂漠の狐 様
HP :

コメント:
 人間誰しも一度は死にたいと思う事があります。
 でも死ぬことが出来ないのはこの理由が全てなのではないでしょうか。

駄弁者:
 私の場合、読みたいと思うような本が既刊・未刊を問わずなくなったら、自分の死期が近いということかなー、と思っています(幸い、当分死期を悟ることはなさそうです)。



名文句トップに戻る

第182集を見る 感想を書く(文句toめい文句) 第184集を見る