SF名文句・迷文句第181集

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「SF百科図鑑」(サンリオ刊)によると、この小説は、ウォード・ムーアの「われらに祝典を」(Ward Moore:Bring The Jubilee)、フィリップ・K・ディックの「高い城の男」(早川書房)(Fred Hoyle:The Man in The High Castle)とともに、「もう一つの歴史」テーマの三大傑作ということである。読者の愛読を乞う。

 出典: 水嶋正路「ハリイ・ハリスン「大西洋横断トンネル、万歳!」訳者あとがき」

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 これは、「大西洋横断トンネル、万歳!」(ハリイ・ハリスン)の訳者あとがきです。
 じっくり読んでください。そして一緒に頭を抱えましょう。
 この行ネタバレ (フレッド ホイル:The Man in The High Castle)
 サンリオは翻訳の質が低い、とはしばしば語られる言葉ですが、これはもはやそれ以前、でなければ突き抜けてしまったと言うべきか。校正した人は何やってたんでしょう。翻訳家、編集者は一体?

駄弁者:
 ひょっとしたら似たような題名の著作があるのかと思ったのですが、そうでもないようで。ミスに至った経緯が知りたいです。
>ウォード・ムーア「われらに祝典を」
 この作品は未訳らしいんですが、どんなのなんでしょう。ウォード・ムーアと言えば、このあいだ「ロト」からの名文句が出てましたが。



マーチン・アラーハ・ゴントラン。この男は何者だったのか?

 出典: ハリイ・ハリスン「大西洋横断トンネル、万歳!」(水嶋正路訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 アメリカ独立戦争が敗北に終わり、植民地のままのアメリカ。世界的な不況から脱するための公共事業として(!)宗主国のイギリスとの間に海底トンネルを開設する計画を立案し、特殊会社が設立されます。技術的な困難、会社の内紛、主人公の恩師との対立、資金不足、(お約束の)フランスの妨害等を乗り越え(恩師の一人娘との許されぬ恋も織り込みつつ)、建設は実行され…とまるっきりメロドラマな小説です。
 さて、作者はアメリカが独立しなかっただけでは作品世界が成り立たないと考えたようで、大英帝国が覇権を握り続ける世界を作り上げるためのキーポイントを探ってゆきますと1212年7月16日にたどり着いたのでした。
 正史ではこの日、ナバス・ド・トロサの戦いでカトリック連合軍がイスラム軍に勝利し、いわゆるレコンキスタが加速するのですが、作中の歴史ではゴントラン(架空の人物)から、イスラム側へカトリックの作戦が漏れたためカトリックは大敗し、イベリア半島におけるイスラム勢力の覇権が確立されます。カトリックのスペインという強力な対抗勢力のいなくなった世界で、プロテスタントのイギリスは遠慮なくその勢力を拡大していくのでした。
 こういういきさつが語られるのが降霊会というのは、作者のおふざけなんでしょうが、SF読んで世界史の勉強になるとは思いませんでした(ナバス・ド・トロサの戦いが世界史のキーポイントと言うのは事実のようです)。ついでに、この作品ではジョンバール分岐点を「アルファ交点」と呼んでいます。長々と失礼しました。

駄弁者:
 主人公のご先祖様の設定にもニヤリとさせられます。
 ナバス・ド・トロサの戦いは、私もよく知りませんでした(イスラム史専攻だったのに…)。高校世界史ではトゥール・ポワティエ間の戦いは出てくるのに、こっちは全然出てきませんね。
 しかし、スペインがなかったとするとアメリカ発見の栄誉は誰に…?と思ったら、カボットがいたんですね。



わかるかね?PKは自分の妄想を実現させるんだ。したがって、ある意味でそれは妄想じゃなくなる……

 出典: フィリップ・K・ディック「不適応者」(浅倉久志訳)  『フィリップ・K・ディック・リポート』に収録

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 っておまいは吾妻ひでおの「ぶらっとバニー」か!というツッコミはさておいて(再販されるらしいですが)。
 家庭菜園で高速艇を育てるのも楽しそうですが、是非この能力を秋葉原に投入してみたいものです。いや、国会に投入するのも悪くないかも…。

駄弁者:
 いや、べつにPK能力なくても、ある意味妄想を実現させてる人なら、秋葉原にはたくさんいるんじゃ…。
しかし、国会に投入はやめときましょう。PKで他の議員を操られると困ります。



「ケチだから、ケチ猫!」
「ああ〜…それを言っちゃあ、お終いだよ…!」
「ああ、お終いさ! 頭でも冷やして来い!」
「ああ判りましたよ。冷やして来ますよ! 冷やして来ればいいんでしょ!」

 出典: 藤子・F・不二雄「ドラえもん のび太と鉄人兵団」

紹介 :ラウ 様
HP :

コメント:
 あらゆる事象には、必ず発端となるべき出来事があります。
どんな些細な事であれ、否、些細であるからこそ、後に与える影響は計り知れないのです。
と言う訳で、劇場版「鉄人兵団」の冒頭の一幕。
 ケチ呼ばわりされた事に腹を立て、どこでもドアの向こうに消えたドラえもんを追って、のび太が迷い出たのは何と南極。見渡す限りの氷原、白銀の荒野を彷徨う内に、ふと見掛けた奇妙な物体を拾った事から、激しくも儚い星間戦争へと彼らは巻き込まれて行くのでした。
 自室から南極、そして宇宙戦争と、この辺りの発想の飛躍こそが、四畳半のSFの名手たる藤子・F・不二雄の真髄であると言えるでしょう。
 それにしても、さしものリルルも鉄人兵団も、まさかこんなしょーもない口喧嘩が元で、当初の地球侵攻作戦が大きく出遅れる事になるとは夢にも思わなかっただろうなぁ…

駄弁者:
 あ、猫だという認識はあったんですね…(タヌキじゃなくてなにより)。
>四畳半のSFの名手たる…
 天井裏でスターウォーズをやってしまう御仁ですから。でも「四畳半」で「SF」だと、つい松本零司の方を連想してしまいます。



彼は門から出た。門の鉄格子のとびらはしまり、いかに押しても、もはやあかなかった。

 出典: 星新一「門のある家」  『ごたごた気流』に収録

紹介 :垂直応力 様
HP :

コメント:
 ひとりのくたびれた青年が、ふと足を踏み入れた邸宅で体験する出来事とは。一〇〇一話からひとつを選ぶとすれば、私はこれです。(こちらでは16位)
 「ボッコちゃん」のときも書きましたが、私にとって星新一の魅力はユーモアよりもこの残酷とも言える冷めた視線です。主人公の青年はこの最後の一文でもって家から拒絶されます。そこに同情や感傷の入る余地は一切ありません。
 正直、星新一作品からの投稿は難しいです。ショート・ショートですから印象的な台詞はオチに直結していますし、文章自体も「透明な」と形容されるように、あっさりとしてますし。今回は作品最後の一文ですが、結末の意外性で読ませる作品ではありませんので、ご容赦を。

駄弁者:
 SFというか「世にも奇妙な物語」あたりでドラマ化されそうな話だな、と感じました。筒井康隆がニューウェーブと評したとのことですが。
 今回初めて読んだはずなんですが、どこか見覚えがあるような気がするのは、覚えていないだけで実は既読なのか、それともこの作品を元ネタにした別の話を目にしたのか(後者のほうがありそうです)。
>一〇〇一話からひとつを選ぶとすれば…
 読んでいない作品は山ほどありますが、私は「おーい でてこーい」か「生活維持省」かなあ。



ジハード、ダイハード!!

 出典: 海堂尊「夢見る黄金地球儀」

紹介 :ぽちぽち 様
HP :

コメント:
 「チーム・バチスタの栄光」で有名な作者の(たぶん)SF。だって、近未来だし(社保庁は既に解体された後)、マッドサイエンティストも出てくるし。
 天才の父親と自分との格差に学問の道からドロップアウトし、父親の町工場で世をすねて営業部長なんぞをやっている、フィギュア制作マニアの主人公の元に、かつての悪友が「一億円ほしくないか?」と現れます。社長(父親)命令で「しんかい1万」を作るための17億円を算段しなくてはならない羽目になっていた主人公、その誘いに乗ってしまいます。ここから始まるどたばたジェットコースターストーリーが、今作。
 この台詞は、主人公たちがかつて世直しのために(?)ささやかな悪事を行っていたときの合い言葉で、悪友ガラスのジョーが主人公平介君を誘うときの台詞です。(それだけじゃなく、終わりの方でも、もっと違う使い方をしていて、私はそれが気に入ったのですが、そこを書くとネタバレになるので……)
 常に新しい装置を開発し続け、新しい理論を組み立て続けている、パワフルな町工場のおっちゃん、好きだぁ(^o^)

駄弁者:
 狙うのが「ふるさと創世基金」の1億円で作られた金の地球儀というのは、あんまり未来とかSFとかという気がしませんが。
 情報を探してネットを巡っていたら、出版元の東京創元社のサイトにあるWeb版あとがきに当たったんですが…。黄金地球儀の実在にまつわる裏話がなかなか面白かったです(計算にSFファングループが関わっているそうで)。



本の虫(ホンノムシ)は実在したのである

 出典: スティーブン・ヤング「本の虫」(薄井ゆうじ訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 あなたが、その本を手にしたのはなぜですか?そのコーナーに居るのはなぜですか?普段と違う分野の方を手にしたことはありませんか?
 それは全て「本の虫」の呼びかけに反応してしまうからなのです。本の虫は、あらゆる本棚に巣くい、そこから人間に寄生して、常識では考えられない行動をとらせます。
 この本は、本の虫の発見から、その分類、飼育方法、寄生宿主の対処法などを論じたリポートです。
 もちろん、おふざけの本ですが、寄生された自覚のある人は少なくないのでは?個人的に一番大きな虫の声が聞こえたのは「天使の緊縛」(藤野一友/中川彩子)ですね。普段は画集コーナーなんか行かない人間なんですよ。

駄弁者:
 SFというには微妙…?
 本の虫は実在するとして、著者のスティーブン・ヤングは実在するのでしょうか(笑)。
 「本の虫」の宿主は、私らからすればお得意さんですが…「アンダーライン症候群」だけは勘弁してほしいです。ホントに。



よおく聞けっ 愚かな人類共め!
我々も人類だ!
しかもとてつもなく愚かな人類だっ!!
我々は70年後の未来から来た地球である!
我々は今 滅亡しようとしているが
それもこれもみんなこの時代の人間 ーつまり 君たちがなんとかしなかった結果なのだ!
今現在我々の地球では 最終戦争の真っ最中なのだが
こいつが終わる時は我々人類が滅ぶ時だろう だったら…
原因を作った君たちも一緒に滅ぼう!!
ということで我々は全力で君たちの地球も攻撃する!
君たちが滅べば自動的に我々も消えるが
それはそれでいい
もう何がどうなろうともいいのだ!!

 出典: 島本和彦「根性戦隊ガッツマン」  『島本和彦傑作選「炎の筆魂」』に収録

紹介 :つく念太郎 様
HP :

コメント:
 よく地球を侵略する人たちが、地球人を愚かだとか野蛮だとか言うことがありますが、そう言う人たちの方が愚かで野蛮じゃないかと思うことがよくあるもので、こんなことを言う彼らがなんだか潔いというか、気持ちよく思えてしまいました。
 そんな敵に挑む根性戦隊ガッツマンの話なのですが、根性が形となってスーツを形づくるとか、武器は根性のみとか、「もうだめだ」と言うと自爆するとか、「そして未来の地球は ガッツマンによってイヤと言うほど根性を見せつけられ もう平和になるしかなかった」とか、熱い話でした。

駄弁者:
 最近の時間ものだと、未来人が過去を変えても、その過去が別の時間線に移行するだけで当の未来人には影響なかったりしますが…。そうなると、よけい腹いせに過去の人間を滅ぼしたくなるだろうなあ。



「最近めっきり吸ってないな……結婚してからはライターに換えたし……そう言えばよく聞かれたっけ、『なんでライターに換えないの?』って」「昔、映画の中で好きな俳優がやってたのをマネしてたんだ。かわいいだろ?もう使わないけどな……」
「タバコ、やめたの?」

 出典: かずはじめ「MIND ASSASSIN #7『幸福者(しあわせもの)』」

紹介 :神凪御子 様
HP :

コメント:
 日独ハーフの開業医、奥森かずい。彼が営む医院の表札には不思議な一文があります。
「精神と記憶に関する相談受け付けます」と。
かずいはかつてナチスが作り上げた、精神と記憶を破壊する暗殺者の末裔なのです。そして今日も医院には、心の傷を抱えた人たちがやってきます。
「今だからこそ読みたいSF」があるならば、私はこの作品を推します。
 かずいが開業したての頃、ある女性が精神の相談にやって来ました。聞けば夫が事業の失敗から酒びたりになり、日常的に暴力を振るうようになったこと、そんな夫でも自分は彼を愛していることを語ります。
 そして、夫に自分がどれだけ愛されていたかを教えるために、自分の精神と記憶を壊して欲しいと頼みます。もちろんかずいは最初は断りますが、やむなく彼女の精神を壊すことに。
 何も知らない夫は激昂して医院に乗り込みますが、かずいの口から妻の告白を聞かされ、呆然とします。暗殺用の力であるため、壊れた精神を元に戻す方法はありません。
「奥さんに関わるどんな小さなことがらや、物を見せれば何か反応するかもしれない」と言うかずいの助言で、夫は思い出の写真や結婚指輪を見せ、当時の思い出を語って聞かせるのですが、妻は何の変化もおきません。同時に夫は酒に溺れていた自分を責めるように仕事に打ち込み、真面目な性格へと立ち直ってゆきます。
 そして投稿の名文句。
 植物状態の妻の隣で、仕事帰りの同僚から手渡されたスナックのマッチ箱を眺めて夫が語り、マッチの箱を振る、何の変哲もない軽い音。
 後ろからの声に振り向けばそこには、目を覚ました妻の姿がありました。
 彼女の目を覚まさせたのは、結婚や思い出の場所でもなく、夫の何気ない仕草だったのでした。

駄弁者:
 この作品、少年ジャンプに掲載されていたのを何度か読んだことがありまして(たしか「るろうに剣心」の最初の方と同時期)、他の掲載作品とはずいぶん違った雰囲気が印象に残っています。知的障害の少年なんかがレギュラーで出ていたり。



厨川さくら「…また…来年……咲く…から…」
巳真兎季子(キィ)「サクラチャン、サクラチャン、ネタラダメダヨ。サクラチャン。」

 出典: 佐藤博暉原作・ポニーキャニオン作成「KEY THE METAL IDOL」

紹介 :屋良一 様
HP :

コメント:
 キィの三万人の友達の一人として。
 1994年〜1997年にかけてポニーキャニオンから発売されたOVA「KEY THE METAL IDOL」は前回のビデオの売り上げで次回のビデオを製作し、注文生産で売る(通販申し込み葉書がビデオパッケージに入っている)と言う端境期ならではの作品でした。同時期の作品に「おいら宇宙の探鉱夫」があります。
 三万人の友達を得ればお前は人間になれる。と言う祖父の言葉を信じて東京に来たキィは、友達を得る手段としてアイドルを目指しますが、祖父の過去が絡む怪しげな連中に狙われます。
 そして幼馴染のさくらちゃんがキィの身代わりの様に攫われ、取り戻したものの、キィの目の前で眠るように死んでしまいます。 さくらちゃんの最後の言葉。
 …この死について「日本アニメ史上、最も無残で無意味な死」と評した人もいるのですが、それでも私はキィと再会出来る事を願って残した言葉なのだと思いたいです。

駄弁者:
 この作品、あまり知らなかったんですが、視聴者を「三万人の友達」としてとりこんだ演出など、なかなかうまい手法だなあ、と思います。現在でも熱いファンがかなりいらっしゃるようで。



宇宙人の気持ちは さっぱりわからん!!

 出典: 藤子・F・不二雄「いけにえ」  『藤子・F・不二雄SF短篇集1「創生日記」』に収録

紹介 :つく念太郎 様
HP :

コメント:
 東京上空にあらわれた巨大UFOは、あらゆる呼びかけにも応じないまま2年以上も動かず、しかし各国政府にむけて密かに自らの科学力と軍事力の優位性を誇示していた。その上で地球退去とひきかえにある要求をつきつけてくる。なんでそんな要求をするのか、宇宙人の考えなど推測しても無駄だとばかり、忠実にその準備をする政府高官だったが、直前になって、次のように修正すると言われた要求内容をみてついに叫ぶ。
 はじめて投稿させていただきます。
 藤子氏のSF短編にはいくつかある、シリアスな展開で最後にカクンとおとすというような作品です。セリフはシンプルですが、奥深いものがあるような気がします。
 余談ですが、ウルトラマンシリーズの宇宙人でも、地球侵略などより、パンダグッズを盗むとか、無闇に人を殺しまくるとか、わけのわからない行動をする宇宙人の方が、宇宙人らしいのかも、と思うこの頃です。

駄弁者:
 掲載がだいぶ遅れてしまいましたが、初のご投稿を歓迎します。
>パンダグッズを盗むとか、無闇に人を殺しまくるとか…
 何百、何千光年も離れたところからわざわざ来た宇宙人のやることが、畑に変な図形描いたり、牛のおっぱい切り取ったりか!?とは、定番のツッコミですが。そういうのもかえって宇宙人らしい?



「善良なる市民の最大の義務は殺人を防ぐことだ」

 出典: アーサー・コナン・ドイル「毒ガス帯」(永井淳訳)  『世界SF全集3』に収録

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 もう一つ、ドイルの作品から投稿します。
 ある日、マローンはチャレンジャー教授と共にネーモルという発明家の元を訪れます。
 彼は物質を分解、再構成する機械を発明したというのです。投稿した台詞は教授自らが実験台となり、その装置が本物だと知った後で興したある行動のあとの一言から、確かにわかりますが、本当に正しいことか?これ…

駄弁者:
 いや、これ絶対教授の私怨が入っていると思いますけど…。
 分解して再構成するときに、動物とかなにかが混じってしまったら、別の作品になってしまいますが…。チャレンジャー教授の場合、ハエならいざ知らず、ゴリラとかライオンあたりなら混じっても誰も気付かないかも。



「きょうは世界の終わりになるかもしれんぞ、オースチン」
「はい。それは何時ごろになりましょうか?」

 出典: アーサー・コナン・ドイル「毒ガス帯」(永井淳訳)  『世界SF全集3』に収録

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 シャーロック・ホームズの産みの親、ドイルのSF「ロスト・ワールド」の続編から投稿します。
 「ロスト・ワールド」の冒険から数年後、新聞記者のマローンの元にチャレンジャー教授から酸素を持参し、自宅に来るようにとの手紙をもらいます。いぶかしみながらも教授宅に向かうと途中で以前の旅の仲間たちと出会い、教授が彼らにも同様の指示を出していたことを知ります。そして教授宅で知らされた事実は驚くべきものでした。地球がエーテルの毒ベルトに突入し、地球は終末を迎えようとしているというのです。
 この作品が書かれる2年前、1910年にハレー彗星が地球に接近しており、その彗星の尾にシアンが含まれていることが知られており、それが地球に降りてくるという噂が流れ、大騒ぎになったそうで(日本でも「空気のなくなる日」という作品が書かれています)それがヒントになっていると思われます。(それまで何度も来ているのに、今更そんな害があるのか、とは言ってはいけない)
 投稿した台詞はそれらの事実を仲間たちに告げた後のチャレンジャー教授と執事のオースチンとのやりとりから。あの主人にしてこの召使あり、といったところですか、それにしてもどこか抜けた会話だなぁ。

駄弁者:
 世界が終わる時間に合わせて、主人の晩餐の準備でもしようというのでしょうか。…執事の鏡?
>エーテルの毒ベルト
 床に伏せるか頭に紙袋をかぶる人も多かったんじゃないでしょうか。
 ハレー彗星で空気が無くなることはなかったし、エーテルの毒ベルトに突入することもなかったようですが、作品が書かれた2、3年後には、ヨーロッパは自分たちが作った毒ガスの脅威にさらされることに…。



人類はこれまで幾度となくウルトラマンに救われてきた。
それは、俺たち防衛チームが限界まで戦い抜いた時だけ、ウルトラマンが現われるんじゃないのか。
俺たちがいるから、ウルトラマンは今まで、俺たちを見捨てなかった。
そう思わないか、リュウ

 出典: 円谷プロ制作「ウルトラマンメビウス 第8話『戦慄の捕食者』」

紹介 :砂漠の狐 様
HP :

コメント:
 シリーズ中でも度々話題に上る防衛チームの必要性というテーマを真っ向から捉えている本作。
 防衛チームが倒した怪獣は確かにごく少数ですが、ウルトラヒーローが倒せなかった強敵ばかりなのでうまくバランスがとれているのではないでしょうか。

駄弁者:
 前にご投稿があったときにもちょっと書きましたが、こういう存在意義の見出し方って、あまり励みにならないような気がします。



こうなっては仕方あるまい、改造手術じゃ!

 出典: 土方茂「CYBORGじいちゃんG」

紹介 :砂漠の狐 様
HP :

コメント:
 世界でトップの農業を営む為自らを農作業用サイボーグへと改造した、農夫にして天才科学者の壊造時次郎。
 彼はその姿を村の人たちに見せびらかすべく出撃していきましたが、その途中でバスに轢かれそうになったタバコ屋のお婆さんを助けます。
 しかし、マッハ2のスピードで体当たりをかました為お婆さんは逆に瀕死の重症を負ってしまいます。Gちゃんにより二度とバスに轢かれそうにならないよう改造手術を受けたお婆さんはマッハ5の速度で動ける「風速ババア」として甦りました。
 その後、元気(?)になった彼女はその速度を生かしてタバコの宅配を始めたそうですが「空想科学読本」の柳田理科雄先生によるとマッハ5のスピードとは100メートルを0秒059、42.195キロのフルマラソンを24秒で走る速さであり、尚且つそこから発生する衝撃波で周りの全てを破壊してしまうとの事です。
 改造手術を受けた彼女は幸せになれたのでしょうか……

駄弁者:
 マッハ5で動ける改造をやっていいとしても、マッハ5でしか動けない改造は、やっちゃだめでしょう。
 むかし、自動車でトンネルを時速60キロで走っていると、おばあさんの幽霊が併走しているのに遭う、という「60キロばあさん」の怪談がありましたが…。マッハ5だと地上で併走できるものがない(笑)。



人間はすべてをまずかたちとして認識する。かたちとはなんだろう――輪郭だ。輪郭とは何だろう――境界だ。境界とは――事物が接し、せめぎ会う界面。そこには必ずちからが介在する。いままで見すごしていた平凡な部屋の、あらゆる輪郭、明暗、色彩にちからが宿っているのだと錦は思った。世界ってこういうふうになっていたんだと思った。世界はあふれんばかりの力に満ちている。そのせめぎ合い(やその痕跡)の境界を、たまたまヒトはかたちとして認識しているだけなのだ。ちからは、いつもすぐそこにある。手の届く場所にみなぎっている。

 出典: 飛浩隆「象られた力」  同名短編集に収録

紹介 :垂直応力 様
HP :

コメント:
 惑星<百合洋(ゆりうみ)>が謎の消失を遂げ手から1年、エンブレム(文様)をはじめ百合洋文化が大量に流入した近傍の惑星<シジック>に住むイコノグラファー、クドウ圓(ヒトミ)は百合洋消失の鍵を握ると見られる、”エンブレム・ブック”の「見えない図形」解読の依頼を受ける。
 寡作でなければ「今が旬」と紹介したい飛浩隆、2004年度のSF大賞受賞作より。(初出はSFマガジン88年9・10月号)
 世界をどう認識するか、なんていう問題をフィクションのかたちで考察することはSFにしかできないと思うんですが、「人間が描けていない」とかいわれて世間・文学の側からは低く見られるか無視されてしまいます。問うているのはもっと大きな「人類」や「世界」のことなのに。

駄弁者:
 そして、認識したらどうなるかの結果が激烈なのもまた、このジャンルならではというところでしょうか。この作品、うまく映像化できたら衝撃的かつ美しいものになるんじゃないかと思います。
>寡作でなければ「今が旬」
 今年こそは「空の園丁」出るでしょうか。「SFが読みたい!」の刊行予定では来年になりそうな雰囲気ですが…。



私が異能者であったなら!

 出典: 高橋良輔監督「装甲騎兵ボトムズ 最終回『流星』」

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 「電脳コイル」最終回記念。
 「最終回」は、広げた大風呂敷をきれいにたたんで、すべての謎を全部説き明かして、なおかつあるかもしれない続編への布石を打たなくてはなりません。
 数ある「最終回」の中で私が一番と思っているのがこの「ボトムズ」です。
 全能の支配者から後継者に指定され、その力を授かる瞬間、キリコは彼を拒否し、彼を破壊します。それを見ていたロッチナの魂の叫びがこれ「私が異能者であったなら!」。このセリフでボトムズは私の中で不動の位置を占めるようになったのです。
 ボトムズは、一見考え抜かれた壮大なドラマに見えて実は行き当たりばったりな物語でした(制作スタッフがそう言ってます)。でもそれでいいんです。予定通りに人生送っている人なんてそういません。実にリアルなアニメです(って意味が違うか)。

駄弁者:
 掲載の時機が遅れまくって申し訳ありません。いっそ再放送終了まで待とうかと思ったのですが、それだと掲載を忘れてしまいそうで…。
>実にリアルなアニメです
 確かに現実世界は行き当たりばったりが常。このアニメの「リアル」って、そういうことだったのか!(違)



みなさんの肉体は、睡眠中に、バウルによって取りのぞかれました。みなさんの神経系の必要な部分だけがとりだされ、スーパーコアの中性エリアに保管されています。余分な肉や骨は焼却されました。わたしはいま、みなさん一人ひとりの脳髄と直接のラインによって結ばれ、必要な場合にはいつでも、それを活性化することができます。現在、わたしはなにもしていません。きょう、目をさましたときから、みなさんの意識的経験は、完全にわたしの支配下にあるシミュレーションだったのです。

 出典: クリス・ボイス「キャッチワールド」(冬川亘訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
壊滅的な被害を受けながらも、謎の結晶生命体<クリスタロイド>を撃退した地球。田村艦長率いる<憂国>を含む多国籍宇宙艦隊が、クリスタロイドの母星アルタイルを目指して出撃する! この作品の人類はFTL航法を実用化しながら、統一政府も植民星も持たないという非常に珍しい社会を構成しています。 それはさておき、クリスタロイドの母星に対して、最終兵器を使用すると、乗組員も犠牲にしなければならない。それを避けるために憂国の機械知性(人工知能)が上記の処置を行ったのでした(最終兵器というのはDr.デヴァイス(エンダーのゲーム)もびっくりの、宇宙船のラムスクープを転用した電子レンジ攻撃です。)。 これは「意識のダウンロード」でしょうか? この作品はワイドスクリーン・バロックにして、ハードSF、サイバーパンクの先駆者でもあります。奇想だけでなく、いかれた日本趣味、ゆがんだ登場人物、やるせない結末など多面的に楽しめる作品です。

駄弁者:
 文庫カバーには「傑作ニュー・スペースオペラ」とありましたが、そこに書かれているあらすじからは、ちょっと想像できない話だったと思います…。
>奇想だけでなく…
 いかれた日本趣味、という点ではソムトウ・スチャリトクル「スターシップと俳句」と双璧でしょう(それともベイリー「禅銃」も入れて三大〜?)。



これでもやはり、さっきの話は夢かしら?それにしても、あの夢はどこから生まれてきたのだろう?人生そのものが、高価な夢にはちがいないのだが……

 出典: H・G・ウェルズ「タイム・マシン」(宇野利泰訳)

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 時間旅行者が遠未来から19世紀のイギリスに帰還し、自らの体験を語った後での一言。
 「現世は夢、夜の夢こそまこと」というかイギリス版「胡蝶の夢」(或いはイギリスらしく「真夏の世の夢」?)といったところでしょうか、確かにあのとおりの経験をしていたら自分でもなかなか信じられないでしょうね。
 この後、時間旅行者は再びはるかな未来に旅立つのですが、その後のことはバクスターの「タイム・シップ」を読んでいただく、ということで(笑)

駄弁者:
 このセリフのすぐ後で、「いや、ちがう」と強く否定してますね。しかし、ウィーナが時間旅行者のポケットに入れた未来の花がなかったら、あるいは一時の夢と考え再度の旅には出なかったかもしれません。ディストピアのはしりとも言える作品かもしれませんが、ラストは結構ロマンチックだったと思います。
 スティーヴン・バクスター「タイム・シップ」も、古典中の古典とも言えるこの作品の続編として恥じないものでした。話の壮大さでは前作をしのいでいます。



のろのろ這っているかたつむりさえ、矢のような速力で走っている。まばたくような明暗の交代が、目まぐるしいばかりだった。瞬間的に消え去る闇のうちにも、新月が満月に変わってゆくすがたが見うけられ、星の運行があざやかにみてとれた。だが、それも束の間、速力がなおも高まると、夜ひる明暗の転移が灰一色に変り、大空は、夜が明けはなれるときにしばしば見られる、するどいほどに光り輝く深碧色に澄んでいった。

 出典: H・G・ウェルズ「タイム・マシン」(宇野利泰訳)

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 もう一つ、ウェルズの作品から投稿します。
 投稿した台詞は、時間旅行者がタイム・マシンを起動させたときの周囲の景色の説明から。投稿の中にも、続編の「タイム・シップ」での情景が投稿されていましたが、夜と昼との交代スピードが速くなるところを「灰一色」と表現するところなどなかなかだと思います。

駄弁者:
 映画のほうでも名シーンに挙げられる部分ですね。
 そう言えばこのタイムマシン、時間移動をするときに姿が消えるタイプみたいですが(マシンのほうからは外が見えるのに)、そうじゃなかったら前にご投稿があった「むかし、爆弾がおちてきて」みたいに、停止したマシンと時間旅行者がずっと見え続けるということになるんでしょうか。



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