SF名文句・迷文句第96集

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男と女がいっしょに寝ると、新しい人間が女の体から出てくる。火星では、新しい人間が女の体から出てくることはめったにない、それは、男と女がべつべつの場所で寝るからだ。

 出典: カート・ヴォネガット・ジュニア「タイタンの妖女」(浅倉久志訳)

紹介 :くうねるよむとぶ 様
HP :

コメント:
 物語の展開がまったく予想できなくて、読み終わってからそうか!と納得してしまう作品で多分こういったのを名作というのだろう。まずは軽いのりの文句から

駄弁者:
 爆笑問題の太田さんの紹介でこの本も有名になりましたね、突発的に。
 彼の事務所「タイタン」の名もこれが元ネタだそうで。



本物の男の子になろうとするなんて、ピノッキオはなんとも頓馬だったわね。木偶の頭でいたほうがずっとましだったのよ

 出典: オースン・スコット・カード「死者の代弁者」(塚本淳二訳)

紹介 :J.J 様
HP :

コメント:
 超空間ネットワークで誕生した情報生命体ジェインの人間の不条理な行動に対するコメント。
 仮に偶然でも意図的でも、人間が自分以外の知性体を創造したとして。その知性体が人間の醜い点や悪い意味の矛盾を見せられた時にはこんな台詞を言うのではないでしょうか?
 ありきたりな言葉ですが。やはり人間はただ生きてそこにいるから素晴らしいのではなく。自らの行動によって人間である事を証明するからこそ素晴らしいのではないかと考えさせられてしまった。(そうであってもジェインの様なタイプにはこき下ろされるかも)

駄弁者:
 ジェインの場合、毒舌は愛情表現みたいなものですが、タチの悪いことに辛辣さと愛情の深さがが正比例してたりします。そのキツさといったら「哀れみの泉は底なし」とさえ言われたエンダーが思わずキレてしまったほど。
 ましな頭をもった木偶より、とんまな男の子の方が、ジェインはきっと好きなのでしょう。好きなぶん、オモチャにして喜ぶんだろうとは思いますが…。



将門め!将門め!ま・さ・か・ど・め!

 出典: 荒俣宏「帝都物語10 復活編」

紹介 :可児歳蔵 様
HP :

コメント:
 風水や陰陽道の元祖と奉られる帝都物語、その主人公であり永遠のアンチヒーローである加藤保憲中尉から。
 恐らくこういった形でここまで危険なキャラクタはそうそう居ないと思われますが、彼の生涯の宿敵である平将門に対してはその危なさをいかんなく発揮していて、それがこの作品の一つの魅力でもあると考えています。勿論人の道に悖るのはどうかと思いますが。
 そういえば、最終的に日本の首都はどこになったんでしょうか。

駄弁者:
 現在の陰陽道ブームは夢枕獏の「陰陽師」からなんじゃないかとも思いますが。
 これは原作を読んでなくて、映画第2作の「帝都大戦」だけ見た記憶があるんですが、加藤役の嶋田久作がやたら印象に残ってます。
>日本の首都は
 …東京から東濃へ(笑)。地元でさえとうの昔に忘れ去られてますが。



夜が明ける。
新しい未来が開かれようとしている。
そして、新しい過去が開かれようとしていた。

 出典: 広瀬正「マイナス・ゼロ」

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 名セリフは「インパクト」と「汎用性」。
 今回は「インパクト」です。
 マンガ、アニメと続きましたので、今回は小説から。
 「タイムマシン」物を初めて読んだのはこの小説でした。
 そして、「彼」は「時に憑かれた作家」でした。  なので、私にとって「タイムマシン」といえばウエルズでもハインラインでも筒井康隆でも眉村卓でもなく、広瀬正なのです。
 「そうか、タイムマシンがあれば過去も新しくなるんだ」という事に最初に気づかせてくれた作品でした。正に「SF的インパクト(センスオブワンダー)」です。(今から20数年前、、、)
 ホントは「タイムマシン搭乗者」にしたかったのですが、これは「セリフ」ではないのでこちらにしました。

駄弁者:
 物語の掉尾を飾る3行より。
 私が読んだのはわりと最近で、物語や登場人物には感動したけど、SFのアイディアはだいたい予想できたな…などと不遜な感想を持っていたのですが、ラストの展開は軽くその上を越してました。



いや、ほとんどの歌で、かれらは彼女の歌でまた燃えあがった自分たちの希望をうたいあげた。といっても、自分たちが希望を必要としているということを、かれらはそれまで知らなかったのだが。自分たちが絶望していたということさえ、かれらは知らなかったのだが。

 出典: オースン・スコット・カード「ソングマスター」(冬川亘訳)

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 レッド・ツェッペリンの「天国への階段」(“Stairway To Heaven”)という曲は、すべてが黄金に変わりうるという確信を持って、天国へのきざはしを追い求める少女の物語であり、すべての価値、および論理が相対的であるとき、音楽こそが絶対的な価値となるのではないかとうたう歌ですが、この『ソングマスター』という作品に、私は同様のテーマを感じます。
 それはおそらく、「物語」の力を信じるカードの姿勢にも、つながるものであるのでしょう。
BGM:「天国への階段」レッド・ツェッペリン

駄弁者:
 最初、どの部分からとってきたのか分からなかったでざっと見直しました…ラスト近く、老アンセットに「歌」を教えられた若き歌い手フィムマが、ソングハウスにそれを披露したところですね。ご投稿の文句は、フィムマの歌を聴いたソングハウスの人びとを描写した一節。  このときフィムマが聴いたのは、アンセットの波瀾の人生全てを内包した歌だったのでしょうから、歌=彼の人生の物語と言えるのではないかと思います。それを間接的に聴いただけさえ、このような衝撃を与えるのだから、フィムマが直接耳にした「歌」はどんな力があったのか、想像を絶するものがあります。



「変身して……イナゴになると?」
「バッタだ!!」

 出典: 石ノ森章太郎「仮面ライダーBLACK」(萬画版)

紹介 :どーじゅ 様
HP :

コメント:
 特撮ドラマとしてTV放映されたそれとはまるっきりストーリーが異なる原作(?)より。
 秘密結社ゴルゴムに改造され、記憶の大半を失った主人公・南光太郎は記憶を取り戻すため、アメリカ版「水スペ」めいた番組のクルーとなって世界の怪奇現象(当然背後でゴルゴムが糸を引いている)を追う……という流れなのですが、これは雪男を追って中国奥地へ取材に赴いた際、当地の古老から掛けられた言葉にものすごい勢いで怒鳴り返す光太郎、の図。
 イナゴでもバッタでも違いはないような気がしますが(しかも変身が完了すると真っ黒になるんだし……)、彼にとっては重大な問題だったようです。

駄弁者:
 光太郎さんには光太郎さんのこだわりがあるんでしょうが、中国だったらバッタよりイナゴの方が偉そうな気がするなあ。イナゴというと「飛蝗」、虫の皇だし。



「つまらない、くだらないジンクスに引っ張られましたよ、まったく…(中略)…何を恨んでいいのかさえ、よくわからない──世界を憎めたら、きっと楽なんでしょうが──」
「もっと楽な道もある」
「え?」
「自分を心の底から憎んでしまえば、もう何も憎まなくてすむ」

 出典: 上遠野浩平「ブギーポップ・スタッカート ジンクス・ショップへようこそ」

紹介 :どーじゅ 様
HP :

コメント:
 初めまして。
 ブギーポップシリーズ「スタッカート」序章から、MPLS(大雑把に言えば「超能力者」と言っていいんでしょうか)である登場人物の一人と、「『世界の敵』の敵」死神ブギーポップとの対話です。
 自分を心の底から憎む……「自分がキライ」なんてのは自己愛の裏返しでしかない、という説もあるわけで、これは人間にそうそう到達できる境地ではないのでしょう。
 もっとも、その時は「世界の敵」として、ブギーポップと殺し合うことになってしまうそうですが。
# それにしても最近MPLS登場しすぎな感があります、このシリーズ。

駄弁者:
 去年刊行されたシリーズ最新刊より。
 心の底から自分を憎んだら、最終的には自分で自分を殺すところまでいってしまうだろうから、結果として世界にはそういう人間は生きていないのでは…?
 あるいは対象を殺す以上の憎悪というのも、あるかも知れませんが。



目の前に山があったらのぼるでしょ〜う?
それとおなじで目の前に鍵のついた車があったら、
それって乗らな〜い?

 出典: 株式会社元気製作「ファントムクラッシュ」

紹介 :泊瀬瑞綺 様
HP :

コメント:
 X-boxゲーム「ファントムクラッシュ」より、何故かPS2で続編決定記念に。
 天候調整装置の実験失敗で砂漠化が進行してしまった未来の日本。
 放置区域(トラッシュエリア)と化した東京で戦闘・作業・乗用オートモービル「スクービー(SV)」を駆り、「ランブリング」と呼ばれるゲームで賞金を稼ぐSV乗り…通称「ワイアヘッズ」達。
 そんな世界を新人ワイアヘッズとして勝ち上がっていくのがこのゲーム「ファントムクラッシュ」です。
 投稿の台詞はワイアヘッズに人気のCDショップ「ソニックアンプ」の看板娘(年齢不詳)、ランチ姉さんのお言葉。
 買い物に来た親友ペッパーの車で外出し、その後を徒歩で追いかけてきた彼女の苦情に対する大層説得力を持った返答であり、さらに「不用心だぞ☆」の有り難い忠告も付いてきます。
………持つべき物は親友。
 ちなみにこのゲーム、大人気電網あいどる「モナリザ」がいたり、ランブリングの試合についている名称が有名SFのパロディ(例「ウは撃ちまくりのウ」「東京湾ハイド&シーク」「新宿ファーレンハイト451」)、とかあちこちにやたらと各種SFネタが転がってます。
 見てニヤリとするか「パクりだ!」と腹を立てるかはプレイヤー次第かと。

駄弁者:
 キーを挿さなくても持ってるだけでロックが外れる電子ロックがあることを考えると、砂漠化後とはいえ未来の日本では、そこにある山に登るほどには、同じ状況に出くわす機会は少ないと思えますが…。
>見てニヤリとするか「パクりだ!」と腹を立てるか
 名前をつけた側としては、どちらにしろ元ネタを分かってくれるだけで嬉しいのかも。



優秀な僕もこれで終わりか。
ディープスペースの探検にも出かけられず、バラの香りもかげなかった!
それに、セックスだって…。

 出典: 「スタートレック・ボイジャー『プロメテウスの灯を求めて』」

紹介 :朝の銀狐 様
HP :

コメント:
 絶体絶命のピンチに諦めかけた若きホログラムの言葉。
 願望のレベルというか、格調が下がっていく所が個人的に気に入ってるポイントです。このセリフ元の登場人物自体もボイジャーのゲストキャラの中で特にお気に入りです。

駄弁者:
 宇宙の果てに飛ばされた自分たちの消息を伝えるため<ヴォイジャー>は最新鋭艦<プロメテウス>に接触、ホログラム・ドクターを送り込むことに成功する。だがそこでははクルー全員が殺され、敵対する異星人ロミュランに乗っ取られていた。ドクターは<プロメテウス>に装備された新型ホログラム・ドクターとともに艦を奪還しようとする…。
 というところでしょうか(直接見ていないエピソードなので…)。セリフは、新型ホログラム・ドクターのものですね。
>探検・バラ・セックス
 願望のレベルが下がるほど、本音の優先度の方は上がってるとしか思えないのですが…。



「弱者とは何かを勘違いしていたんだな。それは意志がないということではないんだ。愚かということでも、被差別民だということでもない。それは……ああ!」
…(中略)…
「なんてことだ……シマック閣下のおっしゃった通りだ! 民意のみに殉じ、臣民の奴隷たること、それを誇れということか! 我が身ではなく!」

 出典: 小川一水「復活の地II」

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 政界の中心で愛をさけんだけもの、主人公セイオ・ランカベリーの台詞。
 レンカ帝国の首都・トレンカを襲った大災害ののち、帝国摂政に就任したスミル王女の推挙により「勅任官」(いわば「側用人」のような制度でしょうか?)として「地震内閣」の復興院総裁に任じられたセイオ。しかし、彼の性急なまでの手法は、閣内に軋轢を生むのみならず、市民の反感をも買ってしまう。抵抗勢力の包囲網がせばまりゆく中、ある災害に巻き込まれ、民衆の力によって救われたセイオは、恩師が遺した言葉(めい文句第89集参照)の意味を知る。
 …つまりは、周囲を見渡す余裕ができた、ということでしょうか?(このぶんなら、汨羅に身を投げた屈原のようにはならないでしょう)
 …しかし、彼の置かれた政治的立場の厳しさには、かわりがありません。願わくば、彼の広げた大風呂敷(帝都再生計画)が、途中で挫折することのないように。
BGM:「ギルド」バンプ・オブ・チキン

駄弁者:
 私が読み終わるまで、とご投稿をいただいてから2ヶ月近く保留させてもらっていたものです。お待たせいたしました。
 セイオが自分の辣腕と真摯さゆえに、民衆の視点や感覚を見失ってしまうという2巻の筋は、納得させられるものがありました。
 民意に殉じる自分に誇りを持つことと、民意に殉じることそのものに誇りを持つこととは似て非なるものだし、前者より後者はずっと難しいことなのだろうと想像します。
 蛇足ながら、セイオの設定は、関東大震災の時の帝国復興院総裁だった後藤新平の履歴がちょっと入っているのかな、と。

 好古真之さんのご投稿は、これがなんと通算100点めの掲載になります。長い間、色んな作品から投稿していただいて、感謝に堪えません。(あと、統計をとって教えて下さったMr.Spockさんも、ありがとうございます)これからも引き続きよろしくお願いいたします。



考えるんだクラフト!!千載一遇のチャンスなんだ!!
王子(ヤツ)を封印したまま、筒井君たちだけを現実に戻す方法を……

 出典: 冨樫義博「レベルE No.013『Escape from!!』」

紹介 :Mr.Spock 様
HP :

コメント:
 夏の甲子園地区大会決勝に向かう如月高校野球部員を載せたバスが突然行方不明になった。顔見知りの部員・筒井をおちょくるためにバスへ潜り込んだ、ドグラ星のパタリロことバカ・キ・エル王子とともに…そして王子の護衛隊長クラフト達は筒井達を救出すべく動き出す…悪魔のような王子だけが取り残されるのを願いつつ。
 上記のセリフは救出に奔走している際のクラフト隊長の心の呟きです。やっぱり王子とクラフトと護衛隊の関係ってどう見てもパタリロとバンコランとタマネギ部隊ですね(笑)。では長寿と繁栄を。

駄弁者:
 こういう天才の「斜め下」にいる人間が、ふとしたきっかけで「敵は本能寺にあり!」という感じに自爆するんですよね。



「君のためにはサブルーチンを書いてあげた…特別なプログラムだ・・・僕の内部ストックのかなりの部分を使って開発したんだから。」

 出典: 「スタートレックTNG『恋のセオリー』」

紹介 :Mr.Spock 様
HP :

コメント:
 アンドロイドのデータ少佐は女性士官のジェナから愛の告白を受け、デートをすることになる。上記のセリフはその初デートでの彼の口説き文句です。これだけ君を特別に思っているんだよという意味のようですがこれはダメでしょう…(笑)。
 それに感動しているジェナもなんだかな〜(^_^;)。歴代エンタープライズにはマニアな方が多いようですね…(笑)。
 では長寿と繁栄を。

駄弁者:
 いやあ、このサブルーチンが自分にインストールできるものなら欲しいと思っている男子や、彼氏の脳天にぶちこんでやりたいと思っている女子は、けっこういるんじゃないですかね…。



「新しくあなたを創って良かった…ちゃんと復讐を果たしてくれたのね。」
「でも…怖いよ その人じゃないってわかったら僕がつかまるんでしょ?」
「大丈夫よ そのときはもう一人新しく創ればいいのよ」

 出典: 櫻見弘樹「3人目のO」

紹介 :mayu 様
HP :

コメント:
 偶然このHPを見つけて読んでいくうちに書き込みたくなって初投稿です。よろしくお願いします
 この話、普通の探偵物かと思っていたら、ぜんぜん違って
クローンの研究をしていた夫を同僚に殺され、それを知った妻が亡き夫のクローンを育てて本人(オリジナル?)の復讐をさせる。
これは犯行直後のクローン(14歳)が育ててくれた妻に報告した際の会話です。
 こんなこと言われたら言われたクローンが可哀想だな

駄弁者:
 クローンをまた作れば「大丈夫」と言える…つまりクローンがオリジナルの完全な代替と考えられるなら、そもそもこの妻は現にいる夫のクローンを夫の代替とすればいいのであって、復讐の理由が無くなってしまうと思うのですが…?
 どっちにしろクローンにとっては救われない話ですねえ…。



「なんでまた。努力しないで生きるのが泉さんのモットーじゃないんですか。宇宙で放浪の生活なんて、めちゃくちゃ大変ですよ」
「この3年ずっと考えてきたんだけど、努力にも2種類あることがわかった。して楽しい努力と楽しくない努力だよ。住民団体や商工会議所の親父どもとやりあうのはもうたくさんだけど、空中コミューンみたいなのを維持する努力ならしてみてもいい」

 出典: 野尻抱介「ふわふわの泉」

紹介 :ぽちぽち 様
HP :

コメント:
 長い引用ですみません。
 努力の2文字が大嫌いなヒロイン(?)泉さんのせりふだからこそ説得力があるような気がします。世の中には確かに「して楽しい努力と楽しくない努力」があるんですよね。(しかも、往々にして、勉強というヤツは前者に属する。ちなみに私は「努力するという才能」がない)
 この本を読み始めてすぐに「立法晶窒化炭素」検索かけて、よくわからん(というよりさっぱりわからん)論文なんぞまで引っ張り出して喜んでたのは私ですが。そーゆー「努力」は楽しいんだけどなぁ。

駄弁者:
 出典はファミ通文庫で出ているハードSF。女子高生・浅倉泉はは化学部の実験で、ダイヤモンドよりも硬く空気より軽い新物質「ふわふわ」を偶然作りだした。その大量生産に成功した泉は「ふわふわ社」社長として次々と新アイディアを実現させていく。
 泉の「努力嫌い」は、口で言うほどエピソードに表れてなくて(むしろ幸か不幸か結構がんばってるようにみえて)、キャラ立てとしてはいまいち中途半端だったような。
 あくまで登場人物は進行役、アイディアが見せ所の作品だったと思います。「ふわふわ」が色んなところで活用されるアイディアはとても面白かったです…論文を引っ張り出すほど勉強熱心ではありませんでしたが。



もういちど、新婚旅行もいいだろうよ。ふたりは車を走らせて、あの山道をまたのぼっていくだろうかね。

 出典: レイモンド・F・ジョーンズ「合成怪物(旧題・合成脳のはんらん)」(半田倹一訳)

紹介 :営々 様
HP :

コメント:
 「合成神経細胞群塊、略してゴセシケ」で一部に有名なこの作品が、「冒険ファンタジー名作選 第2期『合成怪物の逆しゅう』」として復刊の運びとなったそうです。いやめでたい。
 生化学者のジョンは、妻のマーサとの新婚旅行中に自動車事故で死亡してから、異様な場所で目覚めます。この世界のアメリカは、今で言う量子コンピュータ並の性能を持つ「人工頭脳」を実用化していました。その作動の鍵は「人間の脳を組み込むこと」
 多くの国民が、死後は自分の脳を使ってかまいませんという契約を国と交わしているのですが、政府は死後も脳に自我が残っていることを隠していたのです!
 いまや人工頭脳センターに脳だけ磔にされて身動きもとれない、サイモン・ライト教授もまっつぁおの状況に陥ったジョンは、自分の研究室に置きっぱなしの脳波操縦ロボットを使って、意のままに動く人工生命体ゴセシケを作り上げ、政府の過ちをただそうととするのですが…
 臓器移植や情報公開など、現代の様々な問題を先取りした社会派作品ですが、出てくる人間像は意外に単純。善悪がきっちり分かれています。その中で唯一様々な顔を見せてくれるのが、人工頭脳学者のジャーゼン博士。
 善人づらをしつつ政府に逆らう人物を暗殺・脅迫したりする悪役ですが、実は自分も政府に脅されて仕方なく従っているだけ。悩んだり憔悴したり諦観したり、意外に抜け目のないところを見せたりと、いろいろやってくれます。紆余曲折の末、ジョンとマーサを特殊な脳手術で救うことに同意するのですが、その時の描写が「まだだれもやったことのない実験をするよろこびを、心のなかでかみしめながら、まっていました」
 やっぱりこの人のなかにもマッド・サイエンティストの精神は宿っていたようですね。
 そのすぐ後に出てくるのが上記の台詞。案外これが彼の本心なのかも知れません。善悪両面を持つ彼は、小説中で一番共感できる人物だと思いました。助演男優賞はこの人に決定です。

駄弁者:
 これが収録されていた「SF世界の名作」はわりと読んだ記憶のある作品が多いのですが(「光る雪の恐怖」とか)、これは読んでませんでした。
 コメントでいただいているあらすじからすると、小学生ぐらいが読むには少々刺激の強そうな話ですが…。



あの日夕陽を背に受けて 首が西向きゃ痛そうだ

 出典: とり・みき作詞・山本正之作曲・山本まさゆき&ゆうきまさみと仲間たち歌「正調・究極音頭」

紹介 :北斗 様
HP :

コメント:
 究極超人あ〜るイメージアルバムvol.2に収録。
 最初何気なく聞き飛ばしてしまったこのフレーズ、直後に「ん…?」と違和感を感じ、改めて歌詞を見返して爆笑してしまいました。あ〜るの特性を端的に表現した見事な文句だと思います。

駄弁者:
 作詞者、作曲者が題材にマッチしすぎている…!
>首が西向きゃ痛そうだ
 いや、痛そうな気がするだけで、ほんとは痛くないんじゃないですか?



どう描いたらいいのでしょう、計り知れぬ苦心と用心を重ねて創りだそうとしてきた、このあさましい生き物を?四肢は均整が取れ、容貌も美しく選んであった。美しく!―これが美しいと!黄色い皮膚は下の筋肉や動脈の作用をほとんど隠さず、髪は黒く艶やかに伸び、歯の白さは真珠のよう。だがそんな贅沢は、一層おぞましく際立たせるばかりでした。はめ込まれた薄茶の眼窩とほとんど同じ色に見える潤んだ目、やつれたような顔の色、一文字の黒い唇を。

 出典: メアリ・シェリー「フランケンシュタイン」(森下弓子訳)

紹介 :J.J 様
HP :

コメント:
 久しぶりの投稿です。今回は古典中の古典であるメアリ・シェリーのフランケンシュタインから。BR> SF初の侵略用宇宙人ロボットが出たからにはこちらが出ない訳には行かないでしょう。
 投稿のシーンはヴィクター・フランケンシュタインが遂に自らの手で作り上げた人造人間に生命を与え、人造人間が動き出すシーンから。この瞬間から、作られた生命とそれを作り出した人間との様々な物語が始まっていく訳です。何時か本当に人の手で生命が創り出された時。その行為に対する罪業や倫理は別として、その生命と分かり合える日がくる事を願ってやみません。
(余談ですがこうして見ると最初の姿はあの頭にネジの付いた大男という姿ではなく。自然の摂理に背いたと言う寓意を込めたのか?蘇った死体というイメージだったんですね。)

駄弁者:
 オールディスのSF史「十億年の宴」などではSFの起源として挙げられている作品。…とするとSFはスタート地点から、科学の啓蒙、ましてや礼賛などではなく、科学の批判として始まったことになります。
>あの頭にネジの付いた大男という姿
 SFの起源はおいとくとして、このイメージの起源はどこからなんでしょう?まさか藤子不二雄の「怪物くん」ではないでしょうが。



本気で星まで行きたいって思った時にはね
もう思いは空を飛んでるのよ
できるかどうかはともかく
その「思い」に追いつきたいでしょ

 出典: わかつきめぐみ「ご近所の博物誌」

紹介 :北斗 様
HP :

コメント:
 はじめまして。ちょっと漂流中に流れ着きました。
 最近はあまり小説を読むこともなくなりましたが、ここに紹介されている文句の中には「おっ」と思わせるものも多く、楽しく読ませていただきました。
 読むだけ読んだら投稿したくなるのが人の性。『So What?』の投稿が幾つかあったわかつき先生の作品から、マイペース博物学者二羽さんの言葉です。メカも宇宙人も出てこないけど、これは立派なSFだと思ふ。
 自分が初めて出会ったわかつき作品がこれでした。もう少し早くこの言葉に出会えていたら、「思い」にもう少し近づけていたのかも。

駄弁者:
 人の思いは光速だって超えることができますから。



賢「ほら、ここのロケットを腕にすると……この2号機のロケットが邪魔になっちゃって」
豪「じゃあ……失くしちゃえばいいじゃん」
…(中略)…
賢「そっ、それありなんですか!?」
豪「マンガマンガ。マンガはもっと自由な発想で描かなきゃ面白くなんないよ」

 出典: 石川賢「ゲッターと私」(ゲッターロボ號巻末エッセイ)

紹介 :飯田天周 様
HP :

コメント:
 そろそろ名(迷)文句集も第100集に近いということで、ここらで一つ賢ちゃん(と永井豪)の金言を載せてもらおうかと思って投稿しました。ダイナミックの名に恥じない、おおらかな考え方ですが、マンガに関しては永井豪の言うとおりだと私も思います。(これじゃ、永井豪の金言だなぁと思ったことは内緒です。)

駄弁者:
 このやりとりが、あのおおらかすぎる変形シーンの誕生秘話だったわけですか…。
 そういう変形を再現したガレージキットがある(ゲッター1以外はさすがに苦しそうとはいえ)ということに、さらに驚いてしまったのですが。



われわれは、けっして考えることをやめはしない。
でなければ、われわれのような種族がこの宇宙に生まれてきたことに
いったいどんな目的と意味があるというのか

 出典: 金子隆一「テラフォーミング」

紹介 :NAL 様
HP :

コメント:
 テラフォーミングについて扱ったノンフィクションの著者による結びの言葉。
 この本の最後の方はダイソン球はおろか太陽お払い箱などというハミルトンもびっくりなアイデアまで紹介されていて。
 SFですよ、十分SFです。

駄弁者:
 作者が伏せられていたら、クラークかカール・セーガンの小説の一節かと思ったかも。



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