SF名文句・迷文句第143集

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「永遠の生命って、もっと退屈かと思ってたんだがな」
「先生と一緒だとぜーんぜん退屈しませんね」
「そりゃこっちのせりふだ!」

 出典: 聖悠紀「超人ロック 猫の散歩引き受けます」

紹介 :Mr.Spock 様
HP :

コメント:
 今回は「それを言っちゃ〜おしめ〜よ」特集です。私立探偵のハントはある事件をきっかけに不老不死の身となる。そしてなぜか助手として転がり込んだ不死身のエスパーロックとともに人目を避けて星から星へと渡り歩きながら、波乱万丈の探偵稼業を続けていくのだった。
 たしかに自分よりはるかに長生きしてる奴には言われたくないワナ〜(笑)。しかもハントの正体がばれかけて他の星へトンズラしてる最中だし…この探偵シリーズは外伝的な扱いのようですが、初めて自分と同じ立場(不死)の人間ができてロックも楽しそうですね(笑)。  では長寿と繁栄を。

駄弁者:
 「超人ロック」というとかなりシリアスな話を思い浮かべるのですが(あんまり読んだことはないけど)、この話は意外と軽そう。



「まあきれい!これがサンダー星人の脳なのね。」

 出典: 東洋エージェンシー・ひろみプロ制作「サンダーマスク 第19話『サンダーマスク発狂』」

紹介 :Mr.Spock 様
HP :

コメント:
 トンデモ本リターンズにも出た迷作「サンダーマスク」より。サンダーマスクに作戦をことごとく邪魔された宇宙怪人デカンダーは変身前のサンダーマスクを捕らえ、シンナー中毒者の脳を集めて作ったシンナーマンと脳を取り替えることに成功する!さて上のセリフのどこが名文句かというと看護婦に化けた怪人デカンダー(当然、男?)のせりふだからです。いくら女性に化けてるとはいえ仲間しかいない状況でこの話し方はおかしいやろ〜(笑)。
 ちなみに仲間内では、変身中に氷漬けにされた仮面ライダー1号。捕まって体に爆弾を埋められたミラーマン、自分の分身を盗まれたレインボーマンと合わせて4大まぬけヒーローとよんでました(笑)。  では長寿と繁栄を。

駄弁者:
 ハマったのか、ナース服に。ほっといたらそのうちコスプレ趣味の怪人が登場したのかもしれない。
>4大まぬけヒーロー
 …でもスポック氏も脳みそ盗まれてましたよね?…それも文明が退化した美女軍団に(「スポックの頭脳」 『宇宙大作戦・パイリスの魔術師』に収録)。



私は今までロケットを造り続けてきた…。
まわりにいる仲間もそうだ。
だがだれ一人ロケット造りなんかしたくなかった。
ここにいる者全員の夢はただ1つ。
ロケットに乗りたかったのだ。
君達がうらやましい。

 出典: 加藤元浩「ロケットマン 第9巻」

紹介 :COBALY 様
HP :

コメント:
 個人でロケット技術者を集め、衛星軌道まで往復できるロケットを組み立てます。これは、世界的な組織の妨害を受ける中で有人飛行をしようとする直前に、技術者のリーダーから乗組員の二人にかけられた言葉です。
 ロケットに関わる技術者の心の叫びですね。
 MOONLIGHT MILEや松本零士の「エルベの蛍火」にも似たようなセリフがあったような気がします。

駄弁者:
 ロケットを造る技術者だけではなくて、そのための資金を集めた企業家や、宇宙への夢を紡いだSF作家にも同じような感情があるんじゃないかと思います。



「暴力は無能力者の最後の避難所である」

 出典: アイザック・アシモフ「ファウンデーション」(岡部宏之訳)

紹介 :sophnuts 様
HP :

コメント:
 これを座右の銘として今までやってきました。
 世の中の大抵のことは、それ抜きのほうが確実なんですよね。
 物理的だけではなく、非物理的でも。

駄弁者:
 初代ファウンデーション市長、サルヴァー・ハーディンの座右銘。
 「銀河百科大事典」を編纂する科学者たちの居住地として設立されたファウンデーションは、隣国アナクレオン王国からの侵略の危機に瀕していた。だが勝利を確信するアナクレオン摂政・ウィーニスを前に、ハーディン市長は泰然と反撃を口にする。軍事力を持たないファウンデーションの切り札とは──。
 久しぶりに「ファウンデーション」のご投稿部分(私が持っているのは創元推理文庫の「銀河帝国の興亡」ですが)を読み返してみました。実際に暴力を目の前にして、ハーディン市長のようにこの座右銘を貫くのは、なかなか勇気と知略がいることだろうと思います。
 でもハーディン市長や、ホーバー・マロウが使う「知略」は、一歩間違えれば「暴力」よりたちの悪い「奸計」呼ばわりされそう…。



時間で!時間を言葉で作り出すことができるなんて!信じられませんでした、思っても見なかったんです、今日までは。でも、僕にはできる。できるんです!ほんとうに、それが書けるんです…

 出典: 川又千秋「幻詩狩り」

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 もう一つ、川又千秋の作品から投稿します。シュルレアリスト アンドレ・ブルトンの元に東洋系の青年、フー・メイから連絡が入る。彼は以前幻想的な詩をブルトンに渡したまま姿を消していたのだが、あることを相談するために連絡をとったのでした。彼は時間を文字に写し取るための鍵を見つけ、それを使って詩を書いたというのです。 彼の書いた詩は過去から現在、そして未来へと舞台を変えながら、様々な人たちを破局に導きます。
 投稿した台詞は、フー・メイがブルトンに新しい詩を書く鍵を見つけたことを告白する言葉から、その後彼は一気にこの詩「時の黄金」を書き上げ命を落とします。
 本当はその詩を投稿したかったんですが、読んだ人たちが時の狭間に落ちてしまうといけないので、投稿するのはその前の台詞にしておきます(笑)。

駄弁者:
 言語SFで中央公論社刊というところで神林長平「言壺」を連想しますが…あ、こちらも日本SF大賞受賞作なんですね。
>本当はその詩を投稿したかったんですが
 いや読んだ人以前に、投稿しようとした人が狭間に落っこってしまうんじゃ。



「分かったぞ、今こそ鏡の意味を!鏡の内に映しとられた自分の意味が、今こそ!」

 出典: 川又千秋「反在士の鏡」  『反在士の指輪』に収録

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 川又千秋の代表作から投稿します。火星の街、カラザに現れた少年「ライオン」。彼は自らが不完全ながら反在士──鏡を境界として虚実の世界を行き来できる存在−−であることを窮地を救ってくれた傭兵、ポーンに告げ故郷の星を破壊した、宇宙を支配する二大勢力「ホワイト・キング」と「レッド・クィーン」に対して復讐を誓うのでした。
 投稿した台詞は墜落中の戦闘機の中で、反在士としての能力に目覚めたライオンの台詞で、彼はこの力を使い戦闘機から脱出します。虚と実が入り乱れ、徐々に現実世界が崩壊していく描写が非常にユニークです。圧巻なのはワープにあたる「アリス・ドライブ」の設定で、妄想の力で超光速航行を実現するというのがすごい!是非とも読んで欲しい一冊です。

駄弁者:
 突拍子のない恒星間航法の最右翼と言えば、デイヴィッド・ブリンの知性化シリーズに出てくる「現実否定航法」だと思ってたんですが、こっちもなかなか(ちょっと似ている?)。



 政府も軍部も国民も、「一億玉砕」と言って、本当に日本国民がみんな死んでもいいと思っていたのか。日本という国がなくなってもいいと思っていたのか。だったら、一度やってみたらどうだ――そこから、日本がなくなるという設定ができないかと考え始めた。日本という国がなくなった時に、日本人はどう生き延びていくのか。

 出典: 小松左京「SF魂」

紹介 :コルホーズの玉ネギ畑 様
HP :
http://blogs.yahoo.co.jp/birst_head

コメント:
前略 私が以前「SFはロック」と決め付けたのは、未来からの問題提起(SF)と、現状肯定の姿勢に対するアンチ(ロック)が、同じことと見つけたからですが。動機として語っているこの『日本沈没』はもちろん、少なからずの長編にそのテーマがあることに脅威を抱いたもので。何故ってこうした考え方がパンクそのものだから。
 だとしたらパンタ率いる頭脳警察が、パンクロック以前の日本のパンクバンドと思っていたけど。小松左京こそが日本のパンクの開祖という見方さえ、不可能でなし。それにしても迂闊だったのは、ロックの洗礼を受けた感受性の高いころ、日本のSFとしてはアニメにしか注意を向けなくて、小説としては星新一を数冊しか手に取らなかったことであり。
                          草々

駄弁者:
 御大の単独著作はもうないかと思っていましたが。エッセイではありますが、出ましたねえ。
 日本がなくなった後の日本人を描くのがメインだったはずが、日本をなくす方に手間取ってしまい、「第一部・完」で終わってしまうところでした。
 今年ついに出版された「第2部」(執筆:谷甲州)では、日本人の生き延びる道について二人の政治家が、対照的なそれぞれの道を示しています。ロックとしてどうなのかは分かりませんが、この二人の対決はなかなかスリリングでした。



タイタン「エレキイカ、いいからライダーを押さえとけ!」
エレキイカ「何だとー!? 俺も一緒に撃つ気か!!」
タイタン「お前は最初からその役目だ!」

 出典: 石森プロ・東映制作「仮面ライダーストロンガー 第13話『一ツ目タイタン! 最後の逆襲!』」

紹介 :鋼将門 様
HP :

コメント:
 ライダーストロンガーの13話から。ブラックサタンの大幹部タイタン(演:浜田晃)はストロンガーと奇械人エレキイカ(声優:八代駿)が組み合ったところを二人まとめてバズーカ部隊に砲撃させる。そのときに繰り広げられたやりとり。 部下を殺す幹部級のアンチヒーローは別段珍しくありませんが、初めから捨て石扱いで消されたとは、ここまで不憫な最後を遂げた怪人もいたりするのですね。
 第136集に似た様なシチュエーションがありますが、ドクトルGの意向は目的のために犠牲は必要悪、といった印象ですが、タイタンの意向は物の数でないといった印象です。やはり再生怪人よりエレキイカのほうが一枚上手やも…。

駄弁者:
 こういう行動のツケは後々響いてくるようで。このエピソードでいったん死んだあと「百目タイタン」として蘇ったが再び返り討ち。ライダーを道連れにしようと火山の火口際で「最後の握手」を求めるが、あっさり振り払われて失敗…。この期に及んで潔い死にザマを騙っても信用されませんって。



「悲しみと 憎しみと 切なさに満ち満ちている あなた自身の心よ」

 出典: 貞本義行漫画・GAINAX原作「新世紀エヴァンゲリオン 10巻 STAGE.64 涙」

紹介 :万太郎 様
HP :

コメント:
 自分のことをスペアがいくらでもある、心のない人形のように思っていた綾波レイが、侵食してきた使徒に深層心理を探られて、本当は自分が人間らしい心を持っているということを気づかされたシーンの台詞です。この後、レイは自分で理由もわからず涙を流すのですが、わたしにはこの涙が自分を人間と認めることができた事への嬉し涙のように思えます。彼女は自分の事を人間と思えず、そんな普通の人間にはあり得ないような悩みが大きなコンプレックスとなって彼女を絶えず怯えさせていたようですが、そのコンプレックスから開放された事への安堵の涙とも言えるかも知れません。(身体の構造の事はともかく、少なくとも彼女の精神は普通の人間の少女と変わらないものだと思います)
 この台詞の直前に「ひとりでいるのがイヤなんでしょ 私たちはたくさんいるのに」とあるのですが、これは「私が死んでも代わりはいるもの」と対称になっている台詞です。「私が死んでも代わりはいるもの」はレイの“私は人間ではない”と自らの人間性を否定する台詞で、あの涙は“私は人間だ(人形じゃない)”と人間性を肯定し、精神的に人形から人間へと転換したことを象徴しているのだと感じます。LCLで満たされているはずなのに、何で涙が……とか言っている場合じゃないわけです。――感情の高ぶりによって溢れる涙を人間性のシンボルとて扱うのは、演出としてよくあることなのかも知れません。『ターミネーター2』のクライマックスの台詞とか、漫画の『寄生獣』でも主人公の新一が涙を流せなくなった自分に人間性を失う恐怖を感じる場面があったのを思い出します。
 この台詞と同じシーンはアニメ版にもあるのですが、そこでの台詞は短く「悲しみに満ち満ちている あなた自身の心よ」で、その内容は大きく追加されています。正直、アニメのあのシーンでは悲しいから泣いているように見えてしまい、でも何が悲しいのかよくわからないので涙の意味がよくわかりませんでした。漫画版ではレイが無自覚に抱いていた、醜くも人間らしい嫉妬の感情を掘り下げているので、人間性と同時に自分が犠牲になってでも守ろうとしたシンジへの愛情が浮き彫りになって見えます。
 もう一人のヒロイン、アスカと主人公のシンジも大きなコンプレックスを持っていて、アニメ版では一応そのコンプレックスから開放されているようですが、レイの場合と同様にどうもよくわからないので、貞本先生に激しく期待しているのですが……。

駄弁者:
 アニメ放映から10年以上もたった今となると、マンガの方でこの作品を知ったという方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。そういう人は放映時にアニメから入った人とは、少し話の解釈が違ってくるのかも。



「しかし、こんなふうには沈まん!!!」

 出典: 鶴田謙二ほか「日本ふるさと沈没」

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 うーん、競争率が激しそうな名文句です。ていうか個人的には没にされた安永航一郎氏の「竹島沈没まんが」を読んでみたい。してみると、「沈没すれば日本国」という事でしょうから、この際北方や東京都の南の方の岩礁や対馬の先の方やガス田付近も沈んだか確認したほうがよさそうですね(笑)。
 原作(というより元ネタ)者の左京氏本人が公認だそうですが、これ位いろいろ描かれると「公認」というより「笑っていた」という方がよさそうな、、、。

駄弁者:
 「日本沈没」に引っかけて、漫画家がそれぞれ自分の出身地の沈没話を描くという企画アンソロジー。ただし、ご投稿は本文中ではなく帯より。
>こんなふうには沈まん!!!
 北海道なんか、沈没どころか裏返って転覆してましたね(笑)。
 地元の自虐ネタが多かったですが、その中でも私が一番笑ったのは、いしいひさいち氏の「岡山沈没」でした。



「私は自分の娘の命と引き換えに、悪魔に魂を売りました。でもその悪魔に興味を示さなかったのは、あなた達医者や研究者の方です」

 出典: 石黒達昌「希望ホヤ」 『冬至草』に収録

紹介 :かんきち 様
HP :

コメント:
 小児癌にかかった愛娘を救うため、弁護士のダン・オルソンは独学で癌の抑制効果があるかもしれない「希望ホヤ」の研究を始めます。
 娘のために奮闘する父親を描いた感動話かと思いきや、皮肉な結末を迎える作品です。

駄弁者:
 下のご投稿をいただいたときに、続けて自分で入れようと思っていたものをご投稿いただいたので、順番飛ばしで掲載。これもやっぱり科学者小説と言えるんじゃないかと思います。
 この作者の話はもっと読んでみたいのですが、ハルキ文庫で出ていた短編集はどれも入手難ですね。  



「北海道最寒の地、泊内(とまりない)村周辺に第二次世界大戦直後まで生息していた植物。ウランを含んだ土壌に生息したため放射能を帯びた。…(中略)…放射能を帯びながら生息していた植物として現在までに報告があるのは水爆実験場となったハイアイアイ群島に生息するオニハナアルキのみである。…(後略)…」

 出典: 石黒達昌「冬至草」  同題短篇集に収録

紹介 :好古真之 様
HP :

コメント:
 シュテンプケ『鼻行類』(思索社->平凡社ライブラリー)をご存じの方なら、ここでニヤリとできる仕組み。
 ……って「植物」?
BGM:「白い狂気」Cocco

駄弁者:
 ウランを含んだ土壌に生育し、人の血を養分とする美しくも奇怪な植物「冬至草」。それに魅せられた異端の研究者が歩んだ道を淡々とたどった物語です。科学小説というより科学者小説、でしょうか。全体に影のある話ですが、ご投稿はその中にあるちょっとしたお遊びより。
 それにしても、この方の描く北海道にはいろいろと変わった生物がいるんですね。不死のネズミとか…。Jコレクションで短編集が出るときいたとき、この作品が入るんじゃないかと期待したのですが、外れました。
>……って「植物」?
 いちおう、哺乳類ということになっていたと思うんですが。



「なくなっちゃうの、野球?」

 出典: 筒井康隆原作・細田守監督「時をかける少女」

紹介 :御宗銀砂 様
HP :
http://sfr.air-nifty.com/

コメント:
(以下、少しだけネタバレを含みます。)

 紺野真琴が出会った未来人との会話から。
 当たり前と思っていたことが、そうではないのかもしれない。
 未来を知るのは、意外と覚悟がいるのかもしれません。

駄弁者:
 そりゃあ、相当な覚悟がいるでしょう。「未来を知りたい」と言う人は、たいてい自分がそうあれかしと思っている未来しか知りたくないんじゃないかと思います。



「真琴くらいの年頃にはよくあることよ」
「ないないないない」

 出典: 筒井康隆原作・細田守監督「時をかける少女」

紹介 :御宗銀砂 様
HP :
http://sfr.air-nifty.com/

コメント:
 ある夏の日。高校生の紺野真琴は不思議な体験をします。
 話を聞いた叔母の芳山和子は、それを「タイムリープ」だと断言するのですが…。
 名文句はその時の二人のやり取りから。この後も爆笑モンなんですが、続きは映画館で。

紹介 :神凪御子 様
HP :

コメント:
 理科実験室で転んだことをきっかけにして、時間を飛び越える能力“タイムリープ”を身につけてしまったごく普通の高校生、紺野真琴。
 その能力を美術館で働いている叔母さん、芳山和子(!)に相談したところ、この返答。
 いや、いくら自分は経験ありとはいえ、年頃の女の子は時間を飛び越えたりしませんよ。

駄弁者:
 経験者のおっしゃることですから…。
 けど年頃云々より、あなた方の血筋がラベンダーの匂いに敏感なんじゃ。



「自閉される」

 出典: 藤原祐「ルナティック・ムーン」

紹介 :首くくり 様
HP :

コメント:
 地球規模の異生物混合により荒廃し、変異したケモノの徘徊する世界。変異を逃れた純血種が治める機械都市エデン、その下に広がるスラムに住む名前の無い少年はケモノを憎み殺戮する少女との出会いにより、自らが「稀存種」と呼ばれる特殊能力を持つ存在である事を知る。
 その力で少女と共に戦う事を決意した少年は、エデン上層部の計画により、過酷な運命へと導かれて行くのだった。
 セリフは、喜怒哀楽、恋愛、死別、絶望、意欲、諦観、憎悪、自殺衝動について質問された一定以上の感情が自動的に長期記憶に変換されてしまう第三稀存種エンデが、淡々と答え続けたもの。

駄弁者:
 感情を記憶に変換するとは、どういうことなんでしょう。私たちが思い出せるのは、そのとき感じたことそのものではなく「そのとき、怒った」「そのとき、笑った」という記憶ですよね。その記憶にもとづいて、今現在の自分がもう一度同種の感情を抱くことはあるでしょうが、それは元の感情とは別物です。
 そうではなくて、過去の感情を随時正確に再体験できるとすればどうなるか…面白そうな、恐いような。
 ところで、「喜怒哀楽、恋愛、死別、絶望、意欲、諦観、憎悪、自殺衝動について」の質問に、なぜご投稿の文句のような回答が帰ってくるのか、言葉のつながり方がわかりません。補足をお願いしたいところです。
<追記>
 首くくりさんから補足説明をいただきました。「自閉」とは一連の精神制御作用のことで(「ソングマスター」の「節制」みたいなもの?)、感情を記憶に変換するとは「感情が昂ぶると、それに関する記憶は瞬時に思い出へ変わるんだ。まるで遠い昔の出来事のような」(作品中より引用)、つまり変換された時点で、曖昧な過去の記憶になってしまう、ということなのだそうです。…ということは、普通の人間が時間をかけないとできない感情の整理が、一瞬でできてしまう?



猫より美しい女はいない。

 出典: 久米康之「猫の交差点」 『新「宇宙塵」SF傑作選T 破局のおすすめ』に収録

紹介 :んどらもえ 様
HP :

コメント:
 猫――それは究極のワガママ娘(褒め言葉です)。愛くるしい顔、自由奔放な行動、そしてあの鳴き声。あなん。ふなな〜。ほにゃらかほにゃらか。フニャ〜ゴニャ〜ゴ。ミャーオゴロゴロウニャニャ〜ゴ。そのすべてが「美しさ」であります。まんまる頭で短足の青い色した猫型ロボットも、思わず見とれちゃうほど美しいですね〜(^^;)
 本作の作者は、第123集にある『猫の尻尾も借りてきて』の久米康之さん。完全主義者の久米さんは、どうやらこの2作しか書き上げていないようで、ちょっとどころじゃないほど残念です。
 この作品にはタイムトラベル、美少女、猫(と猫型ロボット)の三拍子が揃っていて、ほのかな愛が楽しめます。ただしラストは、同じような作品とは一線を画するもので、なかなかに読ませてくれます。
 冒頭の一文がこれなのですが、バリバリの猫派の僕は痺れちゃいました。ふなな〜。

駄弁者:
 コメントを読んでいて、夢枕獏「猫弾きのオルオラネ」を思い出しました。鳴き声のオノマトペが魅力。私は犬派ですが、SFの名作には猫の話が多い…なんて前は言ってたんですが、実は犬も負けてなかったり
>まんまる頭で短足の青い色した猫型ロボット
 その美しさは猫としての美しさなのか…?



生きている限り、生きている限り、必ず、これから出来ることがあります。必ず、出来ることがある。

 出典: 北浦嗣巳監督・太田愛脚本「ウルトラマンティガ 第32話『ゼルダポイントの攻防』」

紹介 :かんきち 様
HP :

コメント:
 地震によって羅臼岳から出現した怪鳥シーラ。その目指す先にあるゼルダポイントには、日本の十分の一を壊滅させるだけの威力を秘めたゼルダガスが隠されていました。
 ゼルダガスは20年前に根津博士によって新たなエネルギー源として開発されましたが、扱いが難しく危険すぎるために封印されていたのです。根津博士はゼルダガスの爆発事故によって一人娘の麻美を失っていたのです。博士は呪われた科学者として学会を追放され、不治の病に冒されながらも研究を続けていました。自分の娘の命を奪ったゼルダガスの研究を、この期に及んでも続けている博士に、シンジョウ隊員は「あんたそれでも親か!」と掴みかかります。しかし、博士の真の目的がゼルダガスを消滅させることだと知ったシンジョウは謝罪します。そのときに博士が言ったのが上記の台詞です。
 怪鳥シーラの正体は麻美とともに爆発に巻き込まれたペットのインコのシーラが怪獣化した姿でした。GUTSとティガの猛攻に耐え抜き、執念でゼルダポイントに辿り着くシーラ。その目的は、ゼルダガスを爆発させることではなかったのです。
 シーラが怪獣化した原因がよくわからないとか、なぜ20年も経ってから現れたのかとか、博士は危険なガスをなぜ自宅に持ち帰っていたのかとか、いろいろ突っ込みどころはありますが、血反吐を吐きながら懸命にゼルダポイントを目指すシーラの姿には心打たれるものがありました。

駄弁者:
 基本は動物報恩譚のようですので、あまり突っ込むのも意味がないようですが。
 根津博士役をやったのは寺田農。いい役者使ってるなあ…悪人顔だけど。



つまり………………………
何もせんほうがいい………
という考え方です…………

 出典: 小松左京原作 さいとうプロ絵「日本沈没(下)」

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 リメイク版上映記念。ということで投稿させてもらいます。
 投稿した台詞は、D2の基本要綱をまとめた学者の福原が渡老人に特殊意見として告げたものなんですが、その後、ラストシーン近くで田所博士も同じようなことを渡老人に言っています。
 こういう潔さ、というか、あきらめのよさって確かに日本人にはありますよね。
 今は、さすがにこうは考えないかな?

駄弁者:
 リメイク版映画でも首相(石坂浩二)が同じような案があったことを口にしていて、「言うべきではないが、いちばんしっくりきた」というようなことを言っていました。
>今は、さすがにこうは考えないかな?
 いや、意外と若い層に同調者がいるんじゃないかとも思えます。



「われらは道具として生まれ、そして造り主を滅ぼした。そのことをどう受け止めるかは父の教えることではない。だが、事実を忘れるな」

 出典: 森岡浩之「原罪」  『星界の断章1』に収録

紹介 :万太郎 様
HP :

コメント:
 前回投稿した台詞と関係の深い台詞です。アーヴの始祖はある目的のために人工的に造られたのですが、彼らはその目的を放棄した上に造物主を自らの手に掛けました。アーヴはこのことを原罪として子孫に語り継いでいます。台詞はアブリアルの王のドゥビュースが娘のラフィールに、その原罪についてのいきさつを語った後に閉めとして言ったものです。
 アーヴにとっては星界軍の修技館への入学が成人するのと同じ意味を持ち、その際に親から子へと原罪について教えられ、更にアブリアルの場合は成人の儀式として<名も無き初代の船王>を参拝します。ドゥビュースが前回投稿した台詞を言った時に感じた皮肉な気分と合わせると、ひょっとするとアブリアルはアーヴを束ねる皇族でありながら、今でも「本当にこれでいいのだろうか?」と自分たちの存在に疑問を持っている節があるのかもしれません。

駄弁者:
 自分たちが「罪」を負っていることを前提に作られた物語を聞かされるより、事実を聞かされてその受け止め方を委ねられる方が、より重荷に感じられるような気がします。



「このガースディオン様が、世界の床を這う虫けらの奴隷になるのだと?」
ルーンは不気味な唸りをたてて、幅の広い回転翼を回した。
「生きている限り、そんなことはありえない!」
「そのとおり」レティーフは同意した。
「どういう意味だ?」ルーンはしわがれ声で聞く。「そのたわごとは何だ……?」
「ヴォイオン族に使われてるルーンたちは、みんな死んでいるのさ」
レティーフはそっけなくいった。
「ヴォイオン族はかれらを殺し、その死骸をのりまわしているんだ」

 出典: キース・ローマー「突撃!かぶと虫部隊」(岡部宏之訳)

紹介 :春休船 様
HP :

コメント:
 ふと気付くとかなりの間、ご無沙汰してましたので。忘却の海に沈む前に投稿、と。(^−^;A
 で、例によって変化球な出典をば。古典B級SF(?!)の雄、キース・ローマー先生作品です。(笑)
 金属製甲殻を持つ多種多様な昆虫型生物が住むクォップ星。地球人の外交官・レティーフは、急激に台頭したヴォイオン族の脅威に立ち向かう為にクォップ星人に変装し、他のクォップ星人達を団結させてゆくのだ!
 …とまぁ、コミカル・アクションSFな本書ですが。1965年作にして、今日に通じるSF要素がありまして。それがクォップ星人の設定。金属製キチン質の甲殻を持ち、飛翔用の回転翼と着地用の車輪を備えた雑多な種族・・・なんですが。これがモロに『クルマ』でして。(笑)『つぐもと れい』さんの挿絵が又、秀逸なんですよ。(^^)
 名文句は、レティーフが天空の覇者・ルーン族(=形状は軍用輸送ヘリ)のガースディオンを説得する場面で不干渉主義のルーン族に対し、ヴァイオン族が彼らを『再生死体(ゾンビー)』にしてると論破した処です。
 今でこそ、SFアニメやら何やらで『機械生命体』なんかの概念程度は当たり前に受け入れられますが、実に40年近くも昔に既にあったネタと思うと、面白い様な、感動する様な、何とも言えない感じですねぇ〜。

駄弁者:
 キース・ローマーといえば、このあいだ「銀河のさすらいびと」が復刊されていましたね。でも、ご紹介のこっちの方が楽しそう。
 車輪を備えた生物というのは、他の作品にもあった覚えがありますが、回転翼をもったヘリ型生物というのは、なかなかないんじゃないでしょうか。



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