SF名文句・迷文句第250集

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第249集を見る 感想を書く(文句toめい文句) 第251集を見る


お、おい、大丈夫か!?
何かピコピコ言ってるぞ!?

 出典: 円谷プロ制作「ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国」

紹介 :ザタンゴールド 様
HP :

コメント:
 ウルトラマンたちがいる宇宙とは別の宇宙に向かったウルトラマンゼロ。彼は惑星アヌーでランとナオの兄弟、惑星エスメラルダの王女エメラナ・ルルド・エスメラルダ、意思を持つ宇宙戦ジャンバードと出会う。ランと一体化したゼロは、最後の希望である「バラージの盾」を仲間と共に探す旅に出た。
 バラージの盾の情報を持っている「炎の海賊」と接触を試みるゼロたちだが、敵だと誤認されてしまう。『自分が認めた奴の話しか聞かない』という海賊の用心棒グレンファイヤーに対し、ゼロは自分を認めさせるために戦いを挑む。
 二人の勝負に決着がつきかけたとき、ベリアル軍が出現。互いを認め合ったゼロとグレンファイヤーは協力してベリアル軍と戦うが、ゼロのカラータイマーが点滅してしまう。台詞はこのときのグレンファイヤーの反応。

駄弁者:
 そういえばウルトラマンゼロはセブンの息子ということでしたが、お父さんにはカラータイマーは付いてなかったのに、子どもにはあるんですね。
 まあ、生まれつき付いているものとは限らないから、親子というのは関係ないか…。



「物理学について語るだけなのに、余計なことが多すぎる」

 出典: 富永浩史「超空自衛隊 『第三次世界大戦勃発』」

紹介 :山家 様
HP :

コメント:
 太平洋戦争は終結したものの中国大陸を舞台に日満国民党連合軍とソ連中共連合軍との戦争はこの作品では続いているのですが、エネルギー保存則が崩壊し恐竜から原子炉までタイムスリップしてきた現状に対処するために、スイスで「地球の危機」をテーマに科学者たちの国際会議が1945年に開かれます。さすがに「地球の危機」がテーマだけあって、仁科博士の呼びかけに米ソ独伊仏等の科学者がスイスに集結します。この会議に参加したファインマン博士の科白です。
 いかにもファインマン博士が言いそうな名科白だと思いました。このままではエネルギー保存則が崩壊した地球が破滅するのが目前に迫っているのに、科学者のバックの国々の思惑が絡み、会議は思うように進みません。更にこのような状況にも関わらず、この後、ソ連と自由フランスはお互いに自国のために手を組んで、日独印満に対し宣戦を布告、第三次世界大戦に突入するわけで。現在の環境問題等から考えてみても、余りにもシュール過ぎて、笑いが引きつり、笑えませんでした。

駄弁者:
 きっと誰かに「ご冗談でしょう、ファインマンさん」と突っ込んでほしかったに違いない。
 けど、物理学者としてみれば、地球が破滅するよりもエネルギー保存則が崩壊する方が、よっぽど冗談で済まない大問題じゃないでしょうが。



「そうだ! こんな時はノイズキャンドル!
「これで火炙りにするんですの?」
「あ、ノイズキャンセルだった」

 出典: 伊藤睦美脚本「マリー&ガリーVer2.0 第6話『マリカとノリカのイビキバスターズ!』」

紹介 :るーしー 様
HP :

コメント:
 以前にも投稿した科学コメディアニメの第2部からの名文句です。
 気持ちのいい朝にマリカ・ノリカが朝食を摂っていると、それを台無しにするガリレオの大音量のいびきが聞こえてきました。
 2人はいびきを止めようとガリレオの部屋に向かい、クッションでガリレオを埋めてみましたがそれでもいびきが聞こえます。
 今回の名文句は、ロウソクを手にしたマリカがノイズキャンセルを思いつく際のやり取りです。
 この後ヘルツの助力を得たノイズキャンセルでも対抗しきれず結局叩き起こす事になるのですが、それなら最初から火炙りにして起こした方が早かったような……。

駄弁者:
 火をつけると騒音が発生するロウソクというのも、あったら面白そうではありますが。



おまえならやり遂げるかもしれん。
あとは頼んだぞ、レイヴン!

 出典: フロムソフトウェア製作「ARMORED CORE LAST RAVEN」

紹介 :アーサー・エリス 様
HP :

コメント:
 今回は、今やゲーム界で不動の地位を獲得したあのアクションシューティング、アーマード・コアシリーズの10作目「LR」からこの一言。
 この作品では「特攻兵器」と呼ばれる旧世代の遺産の暴走で世界は壊滅しており、世界の主導権を握ろうとする、かつての大企業の連合軍「アライアンス」と、「レイヴン」と呼ばれる、地上最強の機動兵器アーマード・コアを駆る傭兵を主体とした新たな秩序の創出を目指す「バーテックス」という二つの組織が争っており、プレイヤーは地上に残った数少ないレイヴンのひとりとして、どちらに加担するのかを見極めつつ戦っていきます。
 しかしバーテックスの主宰を務めるレイヴン「ジャック・O」には別の思惑があり、彼はこの大きな戦いを通じて残り少なくなったレイヴンを選別し、「最も強いレイヴン」を見出そうとしていました。
彼の真の目的は、世界を滅ぼした特攻兵器の生産拠点であり、司令塔でもある「インターネサイン」の破壊。インターネサインには「パルヴァライザー」と呼ばれる守護者が存在し、それを倒すためにより強いレイヴンが必要だったのです。
 その戦いの中、主人公はジャックからの依頼を受けインターネサインの破壊に向かいますが、そこに待っていたのはこの台詞の発言者である「エヴァンジェ」という別のレイヴンでした。
 彼は「強さ」に固執し、自身を戦闘適性者「ドミナント(まぁ、ニュータイプとか異能生存体みたいなものです)」であることを証明すべく、主人公を倒してインターネサインの破壊者に成り代わろうとします。
「なにをしに現れた?ここはただのレイヴンが来るべき場所ではない!ドミナントである私が…私が為すべきことなのだ」
 しかしエヴァンジェは主人公に倒され、この時初めて自分がドミナントでないと認めます。そこに来襲するパルヴァライザー。
 エヴァンジェは満身創痍の愛機を駆り、主人公がせめて中枢に到達するまでの時間を稼ごうとパルヴァライザーの前に立ちふさがり、紹介したセリフを吐いてプレイヤーをドアの向こうに送り出します…。
 このゲームはマルチエンディングなのですが、他のルートでさんざんヤラレ役や空気であったこのキャラの漢らしい一面にグッと来ました。
 こう言ったロボット物では定番とも言えるシチュエーションですが、熱い展開はやっぱりいいですね。

駄弁者:
 コンシューマ機版しかないうえに操作が私の手には負えなさそうなので、自分でプレイしたことはないですが、よく名前を聞くタイトルですね。10作も出てたんですか(wikipediaで見たら13作も出てる…)。
 ただ、フロムソフトウェアと聞くと、このめい文句集にきたタイトルではどうしても大統領が大活躍するアレを思い出してしまいます(あらためて見直すとACシリーズからもご投稿はあるんですけどね)。



(R・ゲイバー『宗教の薬理学的基礎』ミスカトニック大学出版局、二〇六九年)

 出典: アーサー・C・クラーク「楽園の泉」(山高昭訳)

紹介 :唯野 様
HP :

コメント:
 ちょ、クラーク先生何書いてんですかw
 最初読んだ時は気づかなくて、久しぶりに読み返して笑ってしまいました。
 私の中で、クラークはオカルトの類とはまったく縁のない作家だったので、なんだか村上龍の著書に民明書房がが出てくるみたいな不意打ちを食らってしまいました。

駄弁者:
 クラーク先生、『幼年期の終り』を書いていたころは結構オカルトにも傾倒していて、ユリ・ゲラーなんかも肯定的にとらえていたことがあったみたいです。『楽園の泉』はそれよりだいぶ後の作品なんで、もうオカルトからは距離をおいていたでしょうが、ネタとして使うぐらいならアリだったんでしょう。



危険な相手から身を守るためにミサイルを作りましょう。

 出典: 藤子・F・不二雄「ドラえもん 『手作りミサイル大作戦』」

紹介 :鋼将門 様
HP :

コメント:
 今回でいくつ目でしょう、ドラえもんの「戦争シリーズ」文句(苦笑)。
 いつものごとくジャイアンに狙われ泣きつくのび太に、急用で未来に行くドラえもんが渡したのは一冊の本「ホームミサイル製造法 〜趣味の工作シリーズ〜」。その本の冒頭に書かれている文句がこれです。
 趣味でミサイルを作る、それも身近にあるものでという構造も仰天ですが、何よりこの文句。実に東西冷戦の泥沼がにおってくる文です。
 古今東西その様子が見える話は多数ですが、国家間ばかりか民間規模でもミサイルを作りあう不毛な戦いが行われるんだな、と情けない気持ちになる話でした。

駄弁者:
 身を守る手段がミサイルなのは当時の影響でしょうが、現在でも同じ話が出てきそうな状況にあまり変わりはないような気がします(ミサイルの代わりに衛星だったりナノマシンだったりするかも知れませんが)。



戻ってくれてよかった。危うくコナーがリーダーになるところだった。
別に探しに来たわけじゃない。生物に備えていた。間違えて撃たなくてよかったよ。
さて、君が殴った男をなだめよう。石器時代には訴訟制度がないといいな。

 出典: インポッシブルピクチャーズ制作「恐竜SFドラマ プライミーバル 第2章第5話『砂漠の訪問者』」(古瀬由紀子訳)

紹介 :土左衛門 様
HP :

コメント:
 時空の亀裂に入り込んだ少女を救いに行った対策チームのカッターとスティーブンだったが、どうにか少女を救出して飛び込んだ亀裂の先にあったのは旧石器人の住居。
 現れた石器人を殴り倒したカッターだが、そこはテーマパークで旧石器人はパークの従業員だった。そこに現れた亀裂対策チームのバックアップの役人レスターのセリフです。何のかんのとカッター達の捜索打ち切りを引き延ばした揚句にわざわざ探しに来てこのセリフ……、いい年したイギリスの官僚のクセにツンデレかあんたわ(笑・と思ったらやっぱりネットで彼のことを「ツンデレレスター」と書いてる方がおられて大笑いでした)

駄弁者:
 ツンを表現する言葉が、いかにもイギリス人らしい皮肉でニヤリとさせられます。



「親に捨てられた孤児が、人に傅かれる立場になった。その時感じたのは義務感だったわ。この待遇は、わたしが自分で掴んだものじゃない。どこからか急に降ってきた、借金みたいなものだって。いつか返さなくちゃいけない。」

 出典: 三浦良「銀の河のガーディアン」

紹介 :山家 様
HP :

コメント:
 この作品は、銀河帝国を舞台にしているのですが、ファンタジーかSFか悩むところがあります。何しろ皇帝は最高の魔術の才能と魔力を誇る魔術師で、それ故に皇帝に即位しており、魔術師が貴族になっている一方、魔術と科学が併存した社会だからです。宇宙航法等の科学技術の描写もあり、魔術と超能力とどう違うと言われると困るし、宇宙戦闘も結構あるのでSFと私は考えて、こちらに投稿しました。
 ヒロインは捨て子ですが、魔術の才能を認められて皇帝の養女になりました。自分の魔力は低く、その点に劣等感を覚えており、また、帝位継承の資格は事実上ありません。蒼衣衛(帝国の秘密警察的機関)の一員として彼女は働いているのですが、その理由を相方に話すシーンの一節です(最もこの時には皇女ということまでは明かしていませんが)。帝国では、魔術の才能があれば、貴族の養子となることはよくあることなのですが、皇女となるとさすがに稀みたいで、そのためにヒロインは頑張っているのですが、借金というのが何とも微妙な表現だな、と思いました。人によって戦う理由はいろいろあると思うのですが、義務感から戦う人も確かにいます。でも、義務である以上、それは果たさねばならぬものであり、自分からは決して本質的に終わらせることはできない、と私は思うわけで。彼女の場合は、立場からか義務でも自分から終わらせることはできると考えているのだな、と思いました。

駄弁者:
>その時感じたのは義務感だったわ
 そのように感じるのは、ちょっと堅苦しいけど、非常にできた人物なんだろうなと思います。不遇な生まれの人間が恵まれた立場にたったら、それを義務よりも権利、借金よりも報酬として受け取る方が、ずっと多いだろうから。



 どうしてあの人はこうなのかしら――。
 香代子は、新一のショートショートを読み返すたびにそう思う。人がみんないなくなる。世界は滅んでしまう。静寂が訪れる。すると、機械がカタコトと動き出す。そんな物語ばかり。悲観的で、絶望的で、厭世的で、せつなくて、かなしくて。

 出典: 最相葉月「星新一 一〇〇一話をつくった人」

紹介 :水谷秋夫 様
HP :
http://oikose.at.webry.info/

コメント:
 星新一の伝記から。夫、星新一が亡くなってから妻の香代子が夫の小説を読んでの感想です。思い返せば、確かに星新一の小説にはそうしたものが多いです。
 この伝記を読んで、星新一の過酷な前半生を知った時、これは作者の望む未来なのかもしれない、などと思ってしまいました。人はみんないなくなってほしい、世界は滅んでほしい、静寂が訪れてほしい、と。
 小説を作者の願望とするのは、短絡的にすぎるでしょうか。
 あるいは我々にはこんな未来があるのかもしれません。世界が滅んで人がいなくなります。静寂の中で、やがて機械がカタコトと動き出し、メモリの中にある星新一のショートショートを紡ぎだすのです。

駄弁者:
 私もついこの間読み終わったところです。星「親一」が「新一」になるまでの曲折は、わりと淡々と描かれていましたが、実際はひどい泥沼だったんでしょうね。
 基本的にドライな方だったようなので「お前ら滅んでしまえ!」というような恨みつらみはなかったでしょうが、「もう、滅んでしまってもいいや」的な厭世感はあったように思えます。



クレジットカードを入れるか、金貨や銀貨を入れればいい。

 出典: 星新一「収支」  『だれかさんの悪夢』に収録

紹介 :トオコ・モリエ 様
HP :

コメント:
 SFは、センス・オブ・ワンダーだ、ってことで。
 「SFの中の暮らし」続き。今回は、今月最初に投稿した、星新一氏の作品から。
 日常生活の一切が自動販売機を通じて行われるようになった社会。そんな「便利にしてビジネスライクな」社会での自動販売機での「買い物の仕方」を説明した行が、投稿の文句です。「何でこんな、何でもない文句を投稿するんだよ。」とお怒りのそこの方、その前に投稿の文句をよーく読んで、あなたが慣れ親しんだ自動販売機の「使い方」をよーく思い出して頂けませんか?何か抜け落ちていませんか?そう、「紙幣」「お札」です!
 いやー、このことに気づいたときは大笑いしました。作品を読み直してみましたが、「金」「金額」「貨幣」「ざらざらと音がし、(後略)」という文章は出てきます。でも「紙幣」「お札」という文字は出てきませんでした。星先生、「クレジットカードが使える自動販売機」は想像できても、「千円札が使える自動販売機」は想像できなかったんですか?まあ、この作品が書かれた当時なら、無理もありませんけど。にしても。
 これを読んだ今のお若い方々が「昔は自動販売機では千円札が使えなかった」ことを少しでも実感してくれると嬉しいんだけどな……。

駄弁者:
 単にイメージできなかったのか…あるいはニセ札対策をどうするのかが引っ掛かったのでしょうか。
 現在の自販機は、紙幣の磁気インクなどで判別を行っているそうですが、このショートショートのように高額な商品でも現金決済できる自販機を置くとなると、もっと精巧なニセ札対策が必要でしょうね。



試合かて全部、上手いこといくことなんか、めったにあれへん。失敗するヤツもケガするヤツもおるけど、一生懸命やってたら、それで負けてもしゃあない。結果やない。チーム全員が自分ができること、目いっぱいやれてたら、それでええねん――て、監督がゆーてた。

 出典: 岩本隆雄「夏休みは、銀河!」

紹介 :ぽちぽち 様
HP :

コメント:
 最近、SFという言葉を本の帯や惹句に使ってくれなくなりましたねぇ。この本も、「ハートフルSFの旗手が贈る、懇親の感動ファンタジー巨編」だそうですよ。そりゃまぁ、上巻の前半なんて、全然SFっぽくないから、「ファンタジー」にしといたほうが売れ行きのためにはいいんでしょうけど。ぶつぶつ。
 運動神経はいいのに、過去のいじめられ経験から臆病になってしまっている小学校5年生の女の子が、不思議なメッセージに導かれて、同じ小学校の生徒3人と冒険をする……というのがこの本の始まりです。
 この台詞は、その冒険仲間となった男の子たちの、終わりから4分の1ほどの部分の会話から。冒険で足を引っ張って迷惑を掛けたと気にする一人に、もう一人が言った言葉です(フットサルの監督の言葉らしい)。
 いいなぁ、こういう指導者を持ったスポーツ少年団の子たちは幸せだよねぇ。
 中学や高校の部活では「負けてもしゃあない」は難しいかもしれないけれど、スポーツやり始めの子たちにこういう指導をしてもらえれば、そのスポーツを嫌いになる子はいないでしょうに。

駄弁者:
 いや、ひと頃に比べれば、よっぽどSFの語を使ってくれるようになったと思うんですけどね…。どう読んでもSFなのに「ホラー」としか銘打っていないのがありましたし。
 岩本隆雄の作品は、古き良きジュヴナイルの感触が残っていて年下に薦めるには好感がもてるんですが、自分で読むにはちょっと年を食いすぎたような。



私は腕から電池を抜いて充電装置に入れ、十秒後に腕が動かなくなって初めて自分がしたことに気がついた。
不思議なものだ、と思った。電池充電に伴う諸動作が第二の天性になってしまって、歯を磨くのと同様に、意識的な決断もせずに本能的に行っている。そして、初めて、自分が、少なくとも目覚めている間は、今の自分の左手が、筋肉、骨、血とは全く無縁の金属とプラスティックでできたものであることに対する潜在意識を、ようやく振り払った事に気がついた。

 出典: ディック・フランシス「利腕(ききうで)」(菊地光訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 騎乗中の事故によって左手に障害を負い、引退を余儀なくされた花形騎手、シッド・ハーレー。保険の調査員として第二の人生を送る彼は、事件に巻き込まれ左手を失う。そして彼は、左手に義手を備えたサイボーグとなった。
 ご存じの方も多いと思われるフランシスの競馬シリーズの一作から。上記の紹介は誇張はあってもでっち上げはございません。
 卵が持てるようになれば訓練成功と言われ、訓練中に卵だけでなく電球やたばこの箱を握りつぶしたり、人々から好奇の目で見られたり、いざというときには棍棒代わりに振り回したりと普通の人間がサイボーグとしての自分を受け入れていく様子が所々描写されていきます。サイボーグに順応する過程が描写される作品はかなり珍しいのではないでしょうか。ほかには「マン・プラス」(F・ポール)ぐらいしか知りません(未読ですが)。
 シッドが装着する義手は神経パルスを拾って動作する筋電補綴義手と呼ばれるものですが、このタイプの義手の歴史はかなり浅いようで(実用化時期が調べられない)、小説に取り上げられたのはかなり早いほうだと思います(1979年作品)。
 ちなみにお値段は2000ポンド(当時のレートで約160万円)とかなりのものです。

駄弁者:
 80年代の百科事典にも実用化されていると載ってますので、79年ならあながちSFではなかったかも知れません。先端技術には違いなかったでしょうが。
 しかし『スターウォーズ2』のラスト以降でルークが付けていた、刺激に反応して動く義手は、まだまだ先の話なんでしょうねえ…。



「リアフにやってきたその日に彼に魔法をかけた──あたしにも。あたしを見えなくした。彼女がやってきたその日から、彼にはわたしが見えなくなった」

 出典: ダイアナ・ガバルドン「妖精の丘にふたたび II」(加藤洋子訳)

紹介 :山家 様
HP :

コメント:
 ジェイミーの再婚相手リアリーと、ジェイミーとクレアの一人娘ブリアナが初めて会った際の会話の一節です。(以前の投稿ですが、クレアが怒ったのは、ジェイミーの再婚のことではなく、再婚相手が自分を殺そうとしたリアリーだったことです。言葉足らずで誤解を与えたようですので訂正します。)リアリーは幼い頃から、ジェイミーが好きで何れは結婚したいと思っていて、ジェイミーも好意を持っていると思ってきました。しかし、クレアとジェイミーの出会いが、リアリーの運命を変えます。ジェイミーは、見ず知らずの素性不明のクレアと結婚して、リアリーに見向きもしなくなったのです。そして、クレアが20世紀に帰還した後、リアリーはジェイミーと結婚するのですが、結局、ジェイミーはリアリーを捨ててしまいます。リアリーとしてみれば、本当にクレアがジェイミーに魔法をかけたように思えてならなかったでしょう。(だからといって、魔女として殺そうとするのはどうか、と思いはしますが。)

駄弁者:
 クレアの怒りの矛先については、確かにちょっと誤解していましたが、リアリーにとってはいい面の皮、という点では間違ってなかったんじゃないでしょうか…。
 初恋は実らないもの(まして相手が幼なじみでは実らない方が定番?)とはいえ。



この間まではシリアスな悪役だったのになー

 出典: 御童カズヒコ「電光石火ニトロ」

紹介 :ザタンゴールド 様
HP :

コメント:
 コミックボンボンで連載されていた漫画。
 魔石ダークプラズマイトによって生み出される怪物「ジュエルビースト」を操り、宇宙征服を企てる組織「クラスター」。宇宙連邦警察は特A監獄に収監されていた少年、ニトロにジュエルビーストの退治を要請。右拳に謎の石パワープラズマイトを持つニトロは、必殺技パワーストライカーでジュエルビーストと戦う。
 中盤から作風がギャグマンガにシフトした本作。その結果、クラスターの大幹部もシリアスなグラン・ジイドから、どう見てもギャグキャラなゴルゾフ将軍に代わってしまった。投稿したのは部下のゾデックが、自身もギャグキャラ扱いになってしまったことを嘆いた台詞。

駄弁者:
 今ネットで見ることができた絵柄からすると、ギャグの方が合っていそうな感じですが。作者的には、この部下と同じ嘆きがあったのでしょうか。



「私たちは未来を予測しているんじゃない。未来が何をもたらすかにせよ、読者がその予行練習をする手伝いをしているんだ。」カードは続ける。「SF作家の仕事は、あらゆる可能性を想像し、それを読者の脳裏に生き生きと浮かび上がらせることだ。それがどんな影響を与えるかは常に議論を呼ぶ──最近はますます影響力は薄れているはずだがね。ひどくまずい状況になったときに『だから言っただろう』というのは小さな喜びだ」

 出典: P・W・シンガー「ロボット兵士の戦争」(小林由香利訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 こんな題名ですが、SFアンソロジーではありません。
 様変わりした現代の戦争の有り様を追求するシンガーの傭兵会社、未成年兵に続く第三弾のテーマはロボット兵器。
 この中でSFが軍人たちの想像力を刺激してきたことが1章をさいて紹介されています。SF作家が軍のアドバイザーを務めているのですが、カードの「エンダーのゲーム」は軍事教練における必読書扱いとのことで、著者の一言(ほかにグレッグ・ベアも紹介されています)。
 いわゆる「フューチャー・ショック」に対する心構えという話は「1兆年の宴」でもでてたような気がしますね。議論を呼ぶようなSFがファンダムの外側で語られることがあるのなら、うらやましい事です。それにしてもSF作家が政府のアドバイザーというのは「降伏の儀式」に出てきましたけど、あれが事実だったとは驚きです。

駄弁者:
 ご投稿の出典、今度の職場の図書室にもあったので、借りて読んでみることにしました。
 「遠すぎた星 老人と宇宙2」で兵士が訓練の一環として「エンダーのゲーム」を読んでいるくだりがありましたが、実話だったんですね。
個々の未来技術の予測が重要なのではなく、それに相対したときの思考法が重要なのだというカードの意見には大賛成なのですが、戦争に対する彼の関わり方には、ちょっと引っかかりが…。イラク戦争の当時、カードがアメリカの行動を全面的に肯定していたのを読んで、作品と作者の政治的スタンスは別、とは思いつつ、やはり残念に感じたのを覚えています。



関連情報をバーコードで表示しております。

 出典: 士郎正宗原作・神山健治監督・Production I.G制作「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 第7話『偶像崇拝』」

紹介 :トオコ・モリエ 様
HP :

コメント:
 SFは、センス・オブ・ワンダーだ、ってことで。
 「SFの中の暮らし」続き。今回は、以前にも投稿したTV版「攻殻機動隊」から。
 コンピュータと人間の脳を直接繋ぐ技術「電脳化」により、人間自身がコンピュータネットワークの「端末」ないし「素子」のようになった社会。某国要人が密かに日本に入国している事実が判明。彼は今までに何度も暗殺を生き延びてきた「不死身の英雄」。その彼が何故密かに来日しているのか。しかも、頻繁に……。
 で、投稿の文句は、その「英雄」が暗殺から「また」生還したというTVニュースの中にあった一文。「昔」ながらのTV画面の中、文字で表示されたこの文句の下に、バーコードが並んでいました。どーやって読むんだろーか…いや、人間そのものがコンピュータネットワークの一部になっているような社会だから、スキャナーなんていらないのかな…このTV版第一期第一話でも、QRコードを「人間の眼」で読んでたし、新聞は見出しや写真以外はバーコードだったしな……。以前駄弁者さんは「コンテンツは変わらないんじゃないか」と仰ったけど、一方で「変わるところ」は滅茶苦茶「変わる」のかもしれませんよ。海外ドラマの「二ヶ国語放送」なんて、今時珍しくもないですしね。
 それにしても、前回の「自動販売機」といい、今回といい、何か妙に感傷的になってしまいました。うっうっ、今の若い方は「スーパーやコンビニの商品にバーコードラベルが貼られていない」「スーパーのレジ打ちは、スキャナーに通すのではなく、レジのキーを叩いてレジをうつ」ということを想像することができるのでしょーか……。えーん、さみしーよー。

駄弁者:
 脳とコンピュータを直接接続できるなら、スキャナーどころかバーコードも要らないような気もしますが……せめてエントリー部分だけは旧メディアを残しておかないと、技術的にはともかく心理的、社会的に人間がついていけないのかも知れません。
>スーパーのレジ打ちは…
 引っ越ししてからよくいくスーパーは、人すら省略してセルフのレジだったりします(さすがに全面的ではないですが)。



We managed to separate the human clone from the Con-Human computer environment, but we could still not stop the violence generated by the Con-Human.
Can we call the Con-Human and human clone a new life creation? Are we supposed to be destroy by this creature?
The humans who are fighting against their ominous fate will use their latest strategy resulting in "Operation RAYFORCE".
(和訳)
クローンとの融合を断ちきったものの、既に“Con-Human”の暴走は止まることがなかった。
人と機械の融合した“Con-Human”は新たな生命と呼べるのか? 我々は、排除されるべき存在なのか?
運命に抗う人類は、その答えを最後の作戦に託す…OPERATION RAYFORCEに。

 出典: タイトー「レイクライシス」(ゲーメスト(ゲーム情報誌)訳)

紹介 :アーサー・エリス 様
HP :

コメント:
 パラレルである「ストーム」を除いたレイシリーズの世界では、地球人は「Con-human」と呼ばれる巨大コンピューターと、それが創り上げたネットワークシステムに管理され、より良い生活を送っています。
 しかし、ある日「Con-human」は暴走、人類に反旗を翻し、人類は地球を放棄して宇宙の流浪の民とならざるを得なくなります(この「人類の作ったコンピューターが人類に牙を向く」という展開は最早未来SFの王道ですな)。
 「クライシス」はその「Con-human」の暴走直後の話で、プレイヤーはネットワークを止める緊急停止システムにアクセスすべく、電脳世界へとダイブし、システムのある最深部を目指します。
(以下、ネタバレ)
 「Con-human」は「人類のより良い運営」をプログラムされていましたが、「このまま人類が増え続けたら地球はパンクする」という結論に達してしまっており、「人類を生かすことが自分の使命だが、使命に従えば人類はやがて滅びる」というパラドックスを抱えていました。
 暴走の直前に、Con-humanはある実験のために人のクローンと神経接続されており、その時「人のゴースト」を解析したCon-humanは、意識と機械の融合に可能性を見出し、「電子の世界にこそ人類の生きる道がある」と判断。結果、これが「肉体を持つ人類」の殺戮につながります。
 プレイヤーは緊急停止システムまで辿りつくのですが、すでにそのシステムもクローンの霊魂に侵食され、手のつけようのない状態になっていました。
 やむをえずプレイヤーはシステムを破壊して緊急停止システムを作動。しかし、すでにCon-humanの暴走は止められいレベルまで達しており、結局プレイヤーは大量殺戮を阻止できず、人類は宇宙の流浪の民となります。
 そして、「敵の母星となった地球を破壊する」RAYFORCEへと、話は繋がっていくのでした。

 レイ三部作の中では一番の駄作扱いされる「クライシス」ですが、十分にあれは名作だと思います。皆さんも今一度プレイされてみては。
 あのエンディングがレイフォースに繋がることを思うと、非常に感慨深い。

駄弁者:
 先行作品のプロローグにつながるラストで、しかも現作品にもちゃんと結末をつけなくてはならないということで、かなり話のもって行きかたに苦労したんじゃないでしょうか(スターウォーズのEp3みたいに…)。



地球は自分で軌道を変えられないのかっ
紹介 :鋼将門 様 → 第20集


「今週で『タイムボカン』はおしまい。来週から、このアニメは『タイムガイコッツ』になります」

 出典: タツノコプロ制作「タイムボカン」

紹介 :ゴジリスト中小路 様
HP :

コメント:
 明けましておめでとうごさいます……って、これが掲載される頃には節分過ぎてるかもですが。
 さて、今回は『タイムボカン』シリーズのファースト作品より。悪玉トリオのメカ製作担当・グロッキーが「今週こそ勝てる!」と確信した時に決まって吐くのが上記の台詞。ほぼ毎週のように言っていたイメージがあるが、実際には三回に一回くらいかも知れない。ちなみに「ガイコッツ」とは悪玉タイムメカの骨格と機関部を成す基本ユニットで、この上に種々の武装や外装を搭載してメカを完成させる。しかも頭部(つまり頭蓋骨にあたる部分)の操縦室は非常時の脱出モジュールになっており、タイムボカンに負けて大爆発を起こしても、この部分だけは黒焦げになりながら飛んで行って逃げる。
 一応の経済性と安全性を考慮したスグレモノなのだが、この設定は次回作『ヤッターマン』には継承されなかった。
 グロッキーがガイコッツを発明するまでの苦労話もアニメ化してほしかったが、今となってはそれも夢である……。

駄弁者:
 ふざけて「後のコアブロックシステムである」とか書こうと思ったら、Wikipediaに本当にルーツらしいことが載っていた…本当なんでしょうか?
>この設定は次回作『ヤッターマン』には継承されなかった
 次のボヤッキーさんの脱出システムは、三人乗り自転車に退化してましたね(笑)。



この次世代機、エックス・オス731が完成の暁には、HS3など物の数ではないわ!

 出典: 逢空万太「這いよれ!ニャル子さん 4」

紹介 :山家 様
HP :

コメント:
 株式会社クトゥルーは、宇宙の(ゲーム機業界の)覇権をCCEと争っていて、HS3によって劣勢になった戦況を、新型機の投入によって覇権を奪還しようとします。その新型機を紹介する開発担当者のルーヒーの科白なのですが、これって負け科白では、と。それに、731自体余りいいイメージがないですし。
 最終的にエックス・オス731は途中で開発中止となり、更にとんでもない欠陥まで発見されて、全面的に破壊される始末になり、株式会社クトゥルーは業界から撤退、ルーヒーはその責任を取って会社からリストラされるという涙の結末に。やはり、科白には注意すべきではないかと思うのです。

駄弁者:
>これって負け科白では
 確かに。気持ちドズル中将が入っている感じですし…。リストラのときは「やらせはせん、やらせはせんぞおっっっ!」って叫んでそうです。



別荘を買っている人もある。
スクリーンの風景写真と地図を見て、ここがいいとボタンを押して金を入れると権利書が出てくる。

 出典: 星新一「収支」  『だれかさんの悪夢』に収録

紹介 :トオコ・モリエ 様
HP :

コメント:
 SFは、センス・オブ・ワンダーだ、ってことで。
 今月のテーマは「SFの中の暮らし」。で、日本SF御三家の一人、星新一氏の作品から。
 地球に帰って来た男。男が地球を離れている間、社会は大きく変わっていた。自動販売機の発達と普及により、人々は生活のすべてを自動販売機を通じて行うようになっていたのだ。物の売り買いは勿論、結婚や離婚、裁判、そして犯罪でさえも……。
 で、投稿の文句は、そういう「便利でビジネスライクな社会」の描写の中で、私が一番印象に残った文章です。えー、これってネット通販じゃないの〜〜?星先生、一体あなたは、この作品を昭和何年にお書きになったんですかあ?(私が参考にした文庫版の初版の日付は昭和五十六年)いやー、「未来予測だけがSFじゃない」と駄弁者さんは仰いますが、星先生は、現在の「ネットで何でも買える時代」を予測していらっしゃったのでしょうか?「コンピュータネットワーク」の代わりに自動販売機だけど。
 それと同時に、少し感傷的な気持になりました。今の若い方に「お店に行かないと缶ジュースが買えない」なんてこと、想像がつかないでしょうねぇ……。「熱い飲み物は自動販売機では買えない」「自動販売機では紙幣が使えない」ってことも……。
 ほんとに、ほんとに、ほんっとおおに、「変わらないものは変わらない」かもしれませんが、「変わるもの」が「変わる」ときは、もう、ものすごく変わるんですよねぇ、……寂しい。

駄弁者:
 ネット通販を予測というのは、さすがにうがちすぎじゃないでしょうか。普通に自販機の普及から敷衍したんでしょう。自販機が出始めたのが1960年代、この作品の初出が1969年ということですし(『星新一 一〇〇一話を作った人』文庫版巻末年譜参照)。60年代の状態から自販機で何でも買える社会を想像し、それを数ページの物語に凝縮させる力は、未来予測が当たっているか否かとは全く別に評価されるべきところだと思います。



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