SF名文句・迷文句第310集

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『General
 Unilateral
 Neuro-Link
 Dispersive
 Autonomic
 Maneuver
         Synthesis System』
「ガン…ダム…?」

 出典: サンライズ制作「機動戦士ガンダムSEED」

紹介 :クロスケ 様
HP :

コメント:
 ザフトの地球軍新型機動兵器奪取の作戦に巻き込まれた主人公キラ・ヤマトは炎上するハンガーから脱出するために地球軍士官に新型兵器のコックピットに押し込まれる。
 そしてモニターに映ったOSの頭文字を読んで「ガンダム」とつぶやく
 キラはその後このMS「ストライク」のパイロットになりガンダムと呼ぶようになる
 このシリーズに登場する「目が2つついててアンテナがはえてる」MSのOSは陣営・世代が違っても皆頭文字がGUNDAMとなっています。…いちいちそれらしいOS名を考える設定の人の苦労が伺えます
 ちなみに確か放送当時に雑誌のインタビューで「帰ってきたウルトラマン」のMonster Attack TeamでMATというのがカッコよくてあやかったみたなことが書かれてたと思います。

駄弁者:
 「単方向の分散型神経接続によって自律機動をおこなう汎用統合性システム」(wikipediaより)だそうで。…がんばったなあ。ASIMOやDARYLもびっくりです。
 でも、そうなるとモノアイでもツインアンテナがなくてもOSさえ備えていればGUNDAMを名乗れる…?



レオンは一匹の虫によって微少な卵を注入されてしまった。宿主の体組織を有効物質に変換し、一群の新たなメカノイドが大きく育つようプログラムされた微少な機械が。

 出典: デイヴィッド・ウィングローヴ「血と鉄 (チョンクオ風雲録15)」(野村芳夫訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 ディヴォア支配下のヨーロッパでは、孤児達が兵として徴集され、戦闘訓練に明け暮れていた。ダニエル・ムシダ率いる一隊は機械昆虫の巣くう戦闘地帯「エデン」で実戦訓練を行う。各種火器と特殊装甲服を装備した彼らは、機械昆虫の群れを撃退するが、メンバーのレオンは致命的な一撃を受けていた。
 これは間違いなく迷文句。
 人間の体組織で、機械の原料になる物といえば、鉄、マグネシウム、カルシウムぐらいでしょうか?ナトリウムやカリウムでは難しいような。他にはタンパク質を変換してキチン質の外殻でも作り出すつもりなのか?
ああ、これならば「死」を浮かび上がらせる生物兵器(257集)も一応の説明はつきますね。いずれにしろナノマシンに夢を見過ぎじゃないか(細菌は天然のナノマシンという考えがあるそうです)。
 気の毒なレオンはそうと知らされずにおとり役をつとめ、その生涯を閉じることになります。

駄弁者:
 ナノテクが便利に使われ過ぎなのはチョンクオに限ったことではないでしょう。ニール・スティーヴンスンの『ダイヤモンド・エイジ』とかアンダースン&ビースン『無限アセンブラ』など、90年代SFでは割と何でもありの手段として使われていたような。「血と鉄」も同年代の作品ですね。
 それより、機械昆虫と相対する隊長の名が「ムシダ」というのはわざとなのか(わざとなんだろうなあ…)。



キカイダー「大車輪投げ!!」
ダークアンドロイド「ウギャー!!」
キカイダー「電磁エーンド!!」
ダークアンドロイド「ウギャー!!」

 出典: 石ノ森章太郎原作 東映制作「人造人間キカイダー」

紹介 :ゴジリスト中小路 様
HP :

コメント:
 『仮面ライダー』と並ぶ、石ノ森章太郎原作のSFヒーローものより。
 キカイダーが必殺技をぶちかましてダークアンドロイドを木っ端微塵に粉砕する、あまりにも有名な場面での決まり文句である。ライダーキックのような一撃必殺の技ではなく、投げ技と打撃の合わせ技でやっつけるというのが当時としては珍しかった。しかも「電磁エンド」はダークアンドロイドからの目線の主観映像で、キカイダーが両腕をクロスさせてチョップをお見舞いした次の瞬間にはガラスが割れて画面が真っ赤になるという(つまり「メインカメラを叩き壊されて映像が見られなくなる」という)幼い子供にはちょっと解りにくい凝った描写まで挿入されていた。
 ……ただ残念なことに、このクライマックスを毎回、オープニングのド頭もド頭、主題歌の唄い出しの直前に流してしまうのである。いわゆる「つかみ」と呼ばれる演出だが、当時小学校一年生だった私は酷く興醒めしたものだった。お決まりの必殺技で敵が倒されるのは解りきったことだが、それを本編が始まる前に見せられてしまうのはなんともつまらない。それよりも、主人公ジローの顔の表情のアップとか、ダークアンドロイドのボディパーツの一部(クチバシとかハサミとか触手とか)をチラッと見せて「どんな敵だ?何が始まるんだ?」と期待を持たせてくれるほうが、私としては嬉しい。そぉ。私は「つかみ」効果よりも「引っ張り」効果を好む少年なのだった。そんな幼い頃の思い出とともに、この文句を投稿してみた。

駄弁者:
 ダークアンドロイド「ウギャー!!」の部分は略してしまおうかとも思ったんですが、そうするとイメージが伝わりにくそうなので、あえてご投稿のままで。
 私的には「キカイダー」は、ジローがギターを弾きながら登場するシーンと、彼がギルの笛の音に苦しみつつもそれに耐えて変身するあたりまでのイメージが強すぎて、キカイダ―の必殺技自体はあまり記憶になかったりします。



うおおお!許せねえ!
お前の言う通り、リーダー失格だ…
俺は自分が許せねえ!
…(中略)…
これが俺の大事なもんだってイアンはちゃんと知ってる
俺が余程の事をしない限りこんな事はしないはずだ。
全然身に覚えがない!
情けねえ…

 出典: 東映制作「獣電戦隊キョウリュウジャー 第7話『いかれ!ダイゴのだいピンチ』」

紹介 :ザタンゴールド 様
HP :
http://zatangold.blog.fc2.com

コメント:
 37番目のスーパー戦隊、獣電戦隊キョウリュウジャー。彼らの敵デーボス軍のモチーフは「喜怒哀楽」。未だ封印から目覚めない暗黒種デーボスを蘇らせるため、デーボスが求める感情を人間に抱かせて捧げるのだ。喜のキャンデリラは人間を喜ばせ、怒のドゴルドは人間を怒らせる。そして哀のアイガロンは人間を悲しませるのである(楽のラッキューロはキャンデリラの部下で巨大化担当)。
 今回のデーボモンスター(怪人)はドゴルド配下のデーボ・ヤキゴンテ。鯛焼き器モチーフのこのモンスターは、挟んだ相手を別人の姿に変える能力を持つ。この能力で戦闘員ゾーリ魔を人間の姿に変えたヤキゴンテは、相手の最も気にしている事を言わせて人間同士の仲を引き裂く。別行動をとっていたレッド以外のキョウリュウジャーも術中に嵌って仲間割れを起こしてしまった。
 帰還した桐生ダイゴ(キョウリュウレッド)は、仲間割れを起こしているメンバーを見て驚く。そこにイアン・ヨークランド(キョウリュウブラック)に化けたゾーリ魔が現れ、「こうなったのはお前のせいだ。お前はリーダー失格だ」と罵倒。考古学者のイアンが解析のためにダイゴから借りていた父の形見のペンダントを破壊する。しかしダイゴは投稿の台詞を言い、怒らないのだった。監視していたヤキゴンテはこの予想外の事態に思わず声を出してしまい、彼の作戦がバレてしまう。そして捕まえていた本物のイアンも救出されてしまうのだった。なお、ペンダントも変身によって作られた偽物であり、本物はイアンがちゃんと持っていた。

駄弁者:
 悪の組織では、内省的な性格ではリーダーになれないんだろうなあ…。
 しかし、
>デーボスが求める感情を人間に抱かせて捧げるのだ
 これはわざわざ敵対している戦隊のところに乗り込んでそんな感情抱かせる画策しなくても、元からそういう感情にかられている人間をどこかから拉致るなりして捧げた方が、簡単なんじゃないでしょうか。



「いいだろう、見せてやる。『高校生に戻っちゃったら』マシンの全貌を! 超科学力の粋を集めた高校生型パワードスーツ!! その名の通り、高校時代のお前を完全再現したスリム型パワードスーツ! どうだ! これで身も心も高校生に……」
「なるか!!」
「流石あたし、パワーも完璧だ」

 出典: 大井昌和「一年生になっちゃったら」

紹介 :るーしー 様
HP :

コメント:
 以前にも投稿したギャグ漫画からの名文句です。
 ある同級生から招かれた誕生日パーティーで首尾よく盗撮を成功させ、結女から高校生に戻る発明を渡される伊織。
 しかしそれは高校生時代の伊織を模した搭乗型パワードスーツという代物で、結女はそのパワーを自身の体で体感する羽目になったのでした。

駄弁者:
 小学生女子とはいえ、人ひとりが搭乗できる時点で「スリム型」とは言いにくい気が。



「おっしりの割れ目が左右にわっかっれ〜 ひかーるぅマシーンがぁ あらわれるぅ あらわれるー あらわれるーっ」
「これはカナダでも大人気だった日本の特撮ヒーロー番組のソングデース」
「勝手に歌詞の一部を捏造するんじゃないっ」

 出典: 安永航一郎原作「頑丈人間スパルタカス 第14話『チャレンジせよ挑戦者!!』」

紹介 :猫玉 様
HP :

コメント:
 とても有名な特撮番組の挿入歌の替え歌です。
 インパクトで選定したものの、誤算だったのはこのインパクトが強すぎて、頑丈人間スパルタカスもSF作品だと思い込んでいたのですが、車とぶつかっても傷一つ負わない少女が頑丈人間として、謎のスポーツ団体を調べるエージェントになるという話は今ひとつSFじゃない気がするので、今回もSFに纏わる台詞という事で勘弁してください。
 件の歌は、カナダのエージェントのツーバイ・フォウが入浴中に歌っていたもので、主人公の六条ひとまに突っ込まれています。

駄弁者:
 元ネタは皆さんご存知…なのか知りませんが、私は知らなかった「タックのうた」(ウルトラマンA)。カナダで人気ということは、本当なんですかね?



エンジンをかけるというのは、わくわくする。ガソリンエンジンというのは、電気モーターとは違う。スイッチを入れれば即、回るというものじゃない。コンピュータ制御の燃料噴射装置だと、それを忘れそうになる。ガソリンに着火してエンジンが回るというのは、一種、奇跡的なことだ。それを味わいたい。キャブ仕様にしよう。気化器を設計するんだ。

 出典: 神林長平「魂の駆動体」

紹介 :Yuu 様
HP :

コメント:
 未来に自動操縦の”自動車”ばかりになってしまった世界で、自分でハンドルを握って運転をする”クルマ”を作ろうとした老人のお話です。自分はキャブのバイクに乗っていますが冬に始動性が悪い何て泣き言言ってる場合じゃありませんね!

駄弁者:
 最近のクルマは(私も最近になってやっと自分の車を持ったのですが)本当にボタン一つですから、そういった意味でのありがたみはかなり薄れてますね。…まだキーを挿しこんで回す方が、実感がわくかも。



その世界の何億、何十億のうち、1人でも信じてくれたなら――いや、信じてくれる可能性があるなら、勇者として戦う意味は存在する。違うか?

 出典: 峰守ひろかず「選ばれすぎしもの! 3」

紹介 :山家 様
HP :

コメント:
 先輩勇者が、主人公にどうして勇者として自分は世界を救うために戦ったのかを語った際の一節です。
 ここまで割り切れるのはある意味すごいとしか。ザンボット3だったと思いますが、主人公が救おうとするその世界の住人の一部に敵視され、石が投げられる話がありました。自分だとそんな目に遭ったら戦おうと思う心が折れてしまうと思います。しかし、先輩勇者はその世界のたった1人でも信じてくれる可能性があるなら、勇者として戦う意味は存在する、と言い切れるわけで。だてに1500年も勇者として心が折れずに戦ってきたわけではないなとつくづく思いました。
 この物語では、勇者は滅んだ世界の邪念から生まれた他の異次元世界を滅ぼそうとする(侵食界)と戦う存在なので、ある意味、正義が何かとか悩むことは無く、割り切りやすかったのかもしれませんが、それにしても心が強いな、と思いました。(下手をすると独善に走ってそれはそれで危険かもしれませんが)

駄弁者:
 そんな勇者には、私は遠くから黙って「知的なレベルでその行為に深い尊敬を払う」ことにしたいと思います。



「ちょっとしたズルを思いついた おのが生命を最優先するのは深く人間性に根ざしていると 思わないか?」

 出典: 佐藤史生「夢みる惑星」

紹介 :NAL 様
HP :

コメント:
 緻密に構成された古代地球の人々と世界が魅力の佐藤史生の作品です。
 古代の都アスカンタの滅びの時を迎え、都を運命を共にする勢いだった大神官ですが
 役目を終えたと分かったとたん 逃げ出す算段を始めます。
 人間変わったか? いや 大ペテン師たるこの人らしいセリフではあります。

駄弁者:
 私が読んだコミック文庫は、オフ会でNALさんにいただいたものです。感謝。
 この期に及んで「人間性」云々を言い出すこと自体「ズル」の一環だと…この御仁なら自覚したうえでの発言でしょう。



俺は明日の平和を信じて命を捨てた、その死を犬死にさせる気か?
戦争で儲け、戦争で食う日本人が一人でもいる限り、死んだ我々に平和は無い!!

 出典: 芹川有吾演出・辻真先脚本「サイボーグ009 16話『太平洋の亡霊』」

紹介 :H・I・T 様
HP :

コメント:
 ハワイの米軍基地が零式艦上戦闘機と特殊潜航艇に、やはり米軍の爆撃機が夜間戦闘機『月光』に、米軍の戦艦が『桜花』と『回天』の襲撃に遭い多大な被害を出していた頃、演習中の元特攻隊員源一佐のF104に入ってきた奇妙な通信。
 「東洋永遠の平和を祈りつつ沖縄に向かう。」その声はわずか一日の違いで戦火に散った特攻隊の戦友、平祐太郎のものである事に気づき驚く源一佐。
 戦後から30年経ってなお戦争で生計を立てている事を糾弾する祐太郎、武装した戦闘機に乗っている故か否定しきれず、彼の乗る零式の機銃掃射を投稿の台詞と共に受けてしまう源一佐。九死に一生を得た彼のうわごとから、祐太郎の父親である超心理学者の平博士にたどり着くサイボーグ戦士達ですが…。
 明日の平和のために文字通り命を捧げた者だから許される彼の言葉には、国防のためという名目で軍備増強をはかる政治屋や、戦争当事国の資金源である携帯電話を使って生活する僕達にはとても太刀打ちできないものがあります。
 彼らが現在の日本人の排外運動を見たらどれだけ嘆き怒る事か…彼らが望んだのは明日の平和であって敵国とその人間を憎み殺す事では無かったのに……。

駄弁者:
 間接的なものまで含めれば、戦争で儲けたり食ったりしてきた日本人は結構いたと思うんですよ…古いことを言えば朝鮮特需とかもありましたし。
 排外運動を支持する人たちの中には、特攻隊員を称揚する人も多いんじゃないかと思いますが、それを特攻隊の人たちが皆歓迎するとは、限りませんね。



「No!」

 出典: ルパート・ワイアット監督「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」

紹介 :汗(はん) 様
HP :

コメント:
 チンパンジーを実験台にして人間のアルツハイマー治療薬の開発に心血をそそいでいるウィル・ロッドマン。
 「アルツ112」を投与された雌チンパンジー「ブライトアイズ」に顕著な知能向上が見られたのもつかの間、不測の事故で研究は中断。こっそり家に連れ帰ったブライトアイズの赤ん坊が成長し…。
 引用の文句は、その子「シーザー」が初めて発した言葉。それまで手話で主人公と会話していたシーザーですが、初めての発話シーンはやはり衝撃的です。
 制作者がこの言葉を選択したのは、ドラマチックさから言ってもナイスですが、発声学的(?)にもナイスだと思います。
 「No」は、舌を上口蓋(じょうこうがい)に付けて唇を丸めれば、猿でも発音できそうに思えるから違和感がありません。
 人間が「まさか、今のは言葉か? 偶然かも?」と判断を保留できるのですが、日本語吹き替えの「だめだ」ではもはや聞き間違いではありえず、それでは却って荒唐無稽に感じてしまいかねません。
 あとのシーンで出てくる「シーザー、イズ、ホーム」も、発音しやすそうです。
 「だめだ」以外に、日本語でなにかうまい言い方はないものでしょうか。
(原題:RISE OF THE PLANET OF THE APES)

駄弁者:
 人とチンパンジーの発声器官の比較について書いたページを飛ばし読みしたことろでは、チンパンジーは母音のa、e、oは発音できるがiが発音できない、また母音と子音を組み合わせて発声することも難しい…というようなことが書いてありました。
 知能が向上すれば母音と子音を組み合わせることはできるようになるかも知れないので「No!」はあり得るとして、日本語だったら…。
 「だめだ」よりは「やだ」ないし「や!」の方が言いやすそう。



同じひとつの原因がこんな正反対の結果を引き起こすとは。

 出典: メアリ・シェリー「フランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウス」(森下弓子訳)

紹介 :クロスケ 様
HP :

コメント:
 SFの起源ともいわれる作品より
 フランケンシュタインのもとを逃げ出し彷徨う「怪物」はある日森の中で誰かの残した焚き火を見つける。そこから感じる暖かさに大喜びし手を突っ込むもその痛みに驚く
 だがそれに尻込みすることなく嬉々として火の研究を続け恩恵を得る
 ある本で読んだ「一度火傷をしてもまた火中の栗を拾おうとする動物は人間だけ」というフレーズを思いだし「怪物」は紛れもなく知性と探究心を持つ人間なのだと感じました。
 どんな技術も使い方次第という意味合いもあるのかとも思いましたが「怪物」を造ってからのフランケンシュタインは科学や好奇心への後悔や否定がほとんどを占めてましたね

駄弁者:
>「怪物」を造ってからのフランケンシュタインは〜
 オールディスの『十億年の宴』では、その科学への疑問こそがSFの起源たるゆえんとされてますから…。でも「怪物」の知性と探究心を追求する方向でも、やはりSFの嚆矢となったかも知れません。
 このセリフを発する「怪物」のイメージは、『屍者の帝国』に登場する彼に直結しますね。



白人は、ユダヤの民のごとく、その故地を失った。勢力の反転は眼に見えている。アジアの周辺民には、高温多湿につよい連中も多い。今こそ、長い白人優越の歴史がくつがえり、アジア人とアフリカ人の有色人種連合が──わけてかしこく、歴史も長い、アジア人が、世界の指導権をにぎる新時代が来たのだ。
──これから徐々にそうなるのは、眼に見えている。その条件をくつがえすなんてバカな話があるか!

 出典: 小松左京「極冠作戦」  『小松左京セレクション2−未来』に収録 『物体O』にも収録

紹介 :可児歳蔵 様
HP :

コメント:
 海面上昇によって高温多湿になり、住民全体の知的活動がおちこんでいる地球。この問題を解決し、できれば月面自治政府のさらなる発展をバックアップしてもらうため、地球そのものを長期的に冷却する「極冠作戦」を提案しようと月からやってきたコミュニケーターの飯塚は、本委員会ののち反対派に誘拐されてしまいます。そのとき、中華系と思われる反対派幹部が彼に説いた言葉がこちら。
 小松左京作品には(たぶん)珍しい、直接的な迷文句となっています。連合と言いながら結局のところアフリカ人とコーカソイド系アジア人を排除し、東アジア優越主義と新しい差別社会を創りあげる意志が露骨に見えている、ある意味では言いたいことがはっきりしたセリフですね。大東亜共栄圏主義という悪しき前例は華麗に無視。
 ちなみにこの後、飯塚は「日系はアジアの裏切者」と非難され、反論する気をなくしています。油断すれば誰もが平等に死ぬ月面で生まれ育った彼には、理解不能な論理なのかもしれません。

駄弁者:
 『日本沈没』より5年先立って書かれた、「世界水没」が舞台の短編。温暖化による海面上昇が極端に進んだ世界の話なので、もっととり上げられてもいい作品だと思うのですが。
 22世紀にもなってこんなことをいう人間が……いるんだろうなあ、やっぱり。たぶん海上都市となったトウキョウやオオサカでも、ヘイトスピーチが健在なんだろうと思えます。
 飯塚はこの後、未来への展望をもった若者たちに助けられますが、22世紀にもこういう若者が……いたらいいなあ。



時は21世紀。人間とリモコンの言いなりになってきたテレビが、ついに反乱を起こした。
ブラウン管がかんかんに怒り、カラーバー光線が人々を襲う。
そんなメディアの戦場に、今9人のてれび戦士が立ち向かおうとしていた!

 出典: NHK制作「天才てれびくん」

紹介 :ギムレット 様
HP :

コメント:
 今年でついに21年目に到達した子供向け教育番組『天才てれびくん』初期OPの語りから。
 まぁ、途中で何回か改題して現在は『大!天才てれびくん』ですが。
 ここから始まったんですよねぇ。(遠い目)
 まさかこれほど長く続くとは見ていた当初想像できませんでした。
 好きだったのでいまだOPを歌えます。

駄弁者:
>ブラウン管がかんかんに怒り、カラーバー光線が人々を襲う
 今ならブラウン管の怒りは、人間の言いなりになっていたことではなく、あれほど夢やロマンを見させてやったのにあっさり液晶やプラズマにくら替えして忘れ去られたことに対してじゃないでしょうか(笑)



「オカマ野郎がカタパルトでケツ出して待ってますぜ」
「下品だね、おまえは。コンテナといえ!ヤクは充分ぶち込んであるな?」
「すっかりラリってまさあ!」

 出典: 星野之宣「2001夜物語・第15夜 楕円軌道」

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 地球軌道上に浮かぶ月への物資輸送カタパルト。火薬でコンテナを打ち出すことから通称「ミッドナイトバズーカ」。射出前の係員の会話。
 男所帯というのは、時代が変わっても、バカで下品な話が好きなんですね。ちょっとニヤつかせる一コマでした。OVA版では残念ながらカットされてしまっています。

駄弁者:
 野郎どもの話かと思いきや、実はちょっと切ない親子(ネタバレ)の話なのでした。
>OVA版では残念ながらカット
 NGだったのは「オカマ野郎のケツ」なのか「ヤクでラリってる」なのか。



「いや、伝説と言えども馬鹿には出来ん。調べてみないと何とも言えんぞ」
「荒垣君の言う通りだ。何事も科学的に調査するのがZATの方法だ。…ところで、ゆうべカレー食った者いるか?」
「はいっ!」
「おっ、いいぞぉ…お前は本部で留守番!」

 出典: 田口成光脚本「ウルトラマンタロウ 第6話『宝石は怪獣の餌だ!』」

紹介 :W”MONSTER 様
HP :

コメント:
 車や基地のポップなデザインと和やかな雰囲気から、シリーズ屈指のユルい防衛隊に思われがちなZAT。その風評の原因のひとつとして有名な、食事内容で出動メンバーを決める場面より。科学とは検証であることを説いた後で、運試しじみた選抜方法を持ち出す隊長は、確かに適当に見える。留守番に残った隊員は、調査に必要不可欠なスキルは持っていないのか?
 しかし、逆にこう考えてはどうか?誰が調査に出ても十分な成果を発揮できるし、誰が残っても基地は安心…隊員全員の能力が信頼されているからこそ、あとは運しか結果を左右する要素がない、と。
 ZATは帰ってきたウルトラマンを一度は敗退させたベムスターの改造体を、当時のデータをもとに撃滅成功したほどの凄腕科学集団でもあるのだ。
 なお、伝説を小馬鹿にして調査に不満げな隊員の食事が「ハヤシライス」と聞くと、「ピリッとしたもんが足らんぞ!」と一喝。うん…科学的…か?

駄弁者:
 スプーンを持って変身しようとするお調子者をあらかじめ除いておこうという深いお考えなのでは。
(ウルトラマンでカレーというと、シリーズ関係なしに連想してしまいます)



『月が!! 爆発して7割方蒸発しました!! 我々はもう一生三日月しか見れないのです!!』

 出典: 松井優征「暗殺教室」

紹介 :るーしー 様
HP :

コメント:
 ギャグありハードありの学園漫画からの名文句です。
 ある日、突然月の70%が爆発蒸発して文字通りの三日月形になってしまいます。
 それは驚異的な能力を持ったある生物の仕業だったのですが……。
 今回の名文句は、月爆破を報じたアナウンサーの台詞です。
 いや確かにその通りですけど……、他に言う事は無かったのでしょうか……。

駄弁者:
 最近話題になってきた作品ですね。…しかしこのところ、シリアスがギャグかはさておいて、学校を舞台に殺人ゲームや暗殺が企てられるネタがよく流行っているような(『王様ゲーム』とか『生贄のジレンマ』とか)。
>我々はもう一生三日月しか見れないのです
 新月は見れるんじゃ…って、確かにそういう問題じゃない。『ムーン・ロスト』でも読んでください。



体験した者は誰でもとりこになってしまうような、強力で、魅力的で、美しいものをわたしにつくってもらいたい。
…(中略)…
わたしの求めているのは……もっとも汚れない強い意志をもった人間でさえ、そのねばつく糸から逃れられないほど強力な……『中毒性』をもったものだ

 出典: デイヴィッド・ウィングローヴ「血と鉄(チョンクオ風雲録15)」(野村芳夫訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 空洞病によって崩壊したヨーロッパ。アメリカに脱出した李ユアンに変わってヨーロッパの支配者となったディヴォアは、ヨーロッパにとどまった李ユアンの顧問で<シェル>アーティストのベン・シェパードを訪れる。世界、特にアメリカに更なる混乱をもたらすための<シェル>データの作成依頼のために。
 これってそのまんま「災厄の書」(173集)ですね。ただこちらでは五感全てに働きかけなければならないので、読むだけで効力を発揮する書物に比べるとインパクトに欠ける。
 これは、シェルがしょぼいんだか時代につれて刺激に耐性が着いてきたのやら?

駄弁者:
 私もセリフをぱっとみて『アラビアの夜の種族』を連想しました。
 一人の権力者をターゲットにするなら一冊の「災厄の書」で足りますが、不特定多数の人間を絡めとるには五感すべてに働きかけるヴァーチャル・リアリテイ・マシンが必要、ということではないでしょうか。



逃げ道ってのは甘えの道だ
誰でも楽に歩けるかわりどこにも辿り着けない

 出典: 小山宙哉「宇宙兄弟 #190『Rickの“R”』

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 だから俺は今、こんな所にいるのか。

駄弁者:
 あれ、辿り着いてはいけないところに辿り着いてる…? あってほしくないけど汎用性がある、セリフとコメントです。



この扉を開けてからずっ〜と開ける扉開ける扉つらいものばかりだ
この扉は冬への扉だったんだ
…(中略)…
夏への扉が見つかるのはいつだろう――

 出典: ひらまつつとむ「飛ぶ教室 『夏への扉の巻』」

紹介 :H・I・T 様
HP :

コメント:
 ジャンプ打ち切り名作の一つ、埼玉第八小学校の122名(内1人は教師)の核戦争後のサバイバルを描いた作品より。
 生活拠点を校舎に移したため無人になっていた核シェルターで逢引する主人公オサムと恋人のみつ子、核が落ちてからの1ヶ月を2人でふりかえった後、校舎に戻ろうとしてシェルターの扉を閉めたオサムは思わず投稿の台詞をみつ子に語りかけます。
 「夏への扉」を知らないみつ子に寒がり屋の猫のピートが冬になると夏への扉を探す話だと説明するオサム、そして自分達もピート同様夏への扉を探す努力をしなければならないと決意、みつ子へ今度の夏に一緒に海に泳ぎに行く事を約束します。
 笑顔で校舎への階段を駆け登る二人、その時二人には夏への扉がはっきりと見えたのでした――。
 それにしても何のとりえも無いといいながら将来を約束した恋人(はっきり言って美人)を核戦争前から確保していて、こんな『恋人達のSF』をさりげなくデートの殺し文句に使ってみせるオサム……彼もまた最強の男の資格は充分にあります。

駄弁者:
 「核の冬」とも掛けているんでしょうね。長く続けると冬が続くしんどい話になったような気がします。



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