SF名文句・迷文句第173集

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月と地球は満ち欠けが逆なんですよ
…今頃 地球ではきれいな満月が見えているはずです

 出典: ナントカ「ミニっき えにっき」  『まんがタイムラブリー』2007年10月号掲載

紹介 :御宗銀砂 様
HP :
http://sfr.air-nifty.com/

コメント:
 名文句第120集でご紹介した月人の幼児が、まだ月にいた頃のお話です。
 地球人が十五夜に「お月見」をすると聞いて、「地球人を見返してやるんだ」と意気込む月人のミニくん。
 ススキの代わりに(形の似ている)ホウキを飾り、巨大オダンゴをお供えして、いざ地球を「見返すぞー」となったところで、このオチは予想していませんでした。
 動物を擬人化したキャラの出てくるファンタジー色の強い作品ですが、妙なところできっちり科学してる、そこがこの作者の魅力だったりします。

駄弁者:
 新月…もとい新地球をにらんでも、むなしいですしねえ。半月ほど(月では1か月という数え方はしないか)ガマンしてもらわないと。まあ、裏側に住んでいるんじゃなくてよかったじゃないですか。



《それは、始原的なものにして、かつ終末的なもの。われわれが通常、意識を定義しているその意味とは違って、言葉をもってはうまく言い表せぬが、<始>にして<終>の、共に極限的な意識進化の両極の<相>が、そこに芽生えかつ沈殿する相。そして互いが撹乱されている<亞>の相……。  即ち、力強い<本能>的な狂暴さと、進化の究極を極めた<智慧>の<智慧>……その両相を兼ね具えている……。それ故に、われわれにとってもこの<海>は、畏怖的存在でありうるのだ……》

 出典: 荒巻義雄「大いなる正午」  短編集『柔らかい時計』に収録 筒井康隆編『’60年代日本SFベスト集成』にも収録

紹介 :垂直応力 様
HP :

コメント:
 これは高次元海(ハイディメンション・シー)の説明です。〈亞〉というのは「時核の硬さで有名な特異点」だそうです。なんのこっちゃ解んないでしょう。作品自体もやたら難解で、筒井康隆も「この作品が完全に理解できたら、まず大天才であろう」と解説に書いています。。無理矢理まとめると高次元海に高次元波堤(ハイディメンション・ウォール)というのを築くのに高次元の種族〈ニ〉と、巻き込まれて協力を求められた三次元(ロウ)の種族、ヒトの話です。想像力の限界に挑むのもSFの醍醐味のひとつですが、これはちょっとやりすぎの様な気もします。
 荒巻義雄といえば今では完全に「ほにゃららの艦隊」の人になっちゃってますが、昔は前衛の最先端を突っ走ってたんだぞ。

駄弁者:
 これがデビュー作品なんですね(私が名前を知ったのは「艦隊」でも「要塞」でもなく、超古代史ネタの「空白」シリーズでしたが)。
 たしかになんのこっちゃよく解りませんが…読む方の想像力が限界なのか、伝えようとしてる言語の限界なのか、どっちでしょう?



イマハ、ダメダ

 出典: ピー・プロダクション制作「スペクトルマン」

紹介 :砂漠の狐 様
HP :

コメント:
 宇宙猿人ゴリによる地球侵略を阻止すべくネビュラ71遊星人は正義の使者スペクトルマンを地球に派遣した……
 な〜んて書くと凡百の特撮ヒーローモノと思われる「スペクトルマン」。この作品が他と違うのは物語当初、主役は宇宙猿人ゴリの方でした。
 タイトルもそのものズバリ「宇宙猿人ゴリ」。スペクトルマンは初登場時いきなり火ダルマになってしまう最悪の出だしでした。
 またゴリが作り出す怪獣は当時問題になっていた「公害」をモチーフにしており、ダストマン、ヘドロンといった子供にも分かりやすいネーミングの設定。 極めつけは交通事故怪獣「クルマニクラス」
 それでも公害ネタが長く続く訳もなく番組後半ではマグニチュード20(!?)の地震を発生させるモグネチュードンといった公害と関係ない怪獣がメインになっていきますが。
 そんなこんなで最初はゴリの地球侵略計画をメインに展開していた物語も徐々にスペクトルマンに出番を奪われていき、タイトルも中盤から「宇宙猿人ゴリ」から「宇宙猿人ゴリVSスペクトルマン」になり、後半は「スペクトルマン」と出世魚の如くタイトルが変わっていきました。
 主人公の立場となったスペクトルマンですが、彼の苦闘は変わりません。
 スペクトルマンの地球上の姿である蒲生譲二はネビュラ71遊星の許可がなければ変身できず、曇りや雨の日といったネビュラ71遊星が目視できない状態でも変身できません。 極めて不便なヒーローでした。 更にスペクトルマンにはゴリを上回る強大な敵との戦いも強いられました。それは裏番組であった「巨人の星」
 最終的には勝利を収めたようですが常に苦戦の連続だったようです。
 色んな意味でバラエティに富んでいた「スペクトルマン」。この作品はもう少し評価されてもいいんじゃないかと、少し思います。

駄弁者:
 「変身するのに上役の許可がいるヒーロー」とは、前に出ていたご投稿でも紹介されていましたが、やはり決裁が下りないこともありましたか(笑)。
 宇宙猿人ゴリがメインのエンディングテーマも、やはり前に出ていました。なんだかんだで人気がある?…局地的に。
>ゴリを上回る強大な敵
 そりゃ強大すぎる敵です。



厚生省をなめるなよ!!

 出典: 大友克洋原作・脚本「老人Z」

紹介 :砂漠の狐 様
HP :

コメント:
 厚生省が開発させた全自動老人介護用ベッドが暴走し、最終的には軍事用ロボットと戦うという荒唐無稽すぎる作品。
 老人介護をテーマにしているので色々考えさせられる事もありますが、基本的にはギャグがメイン。
 しかしながら老人介護問題を真摯に受け止め、何とかしようとした厚生省の役人の叫びが中々に格好いいです。
 91年に劇場公開されていますが、むしろ高齢化社会による問題がより顕著になっている現代にこそ観る価値があるかも。

駄弁者:
 介護用ベッドが実は軍事利用のための実験だったと知ったときの、厚生省職員の叫びだそうですが…。最近だと「なめるなよ!」とは、言うより言われる機会のほうが多いようです。
 どこの組織でも同じように、勤めている人の大半は真摯に仕事をしているハズなのですが。



信長「じゃ、本能寺に戻るわ」
妻夫木「えっ!?どこですって?」
信長「本能寺」
妻夫木「そこには戻らない方が…」
信長「これ、お前にやるよ」
妻夫木「信長さん…」
信長「達者でな」
妻夫木「達者でな…」

 出典: 東京ガス(CM)「ピピットコンロ『信長・本能寺』篇」

紹介 :sengoku 様
HP :

コメント:
 ローカルネタですみません。東京ガスのCMからです。
 妻夫木聡の部屋にあるクローゼットが織田信長の時代に繋がっているという設定です。
「腹減ったー、何か作ってよ」と、妻夫木の部屋へやってくる信長。「相変わらず勝手だなあ・・・」応じつつも料理を振舞う妻夫木。そんな2人の別れの場面です。
「お前にやるよ」と、投げ渡されたのは、2人のツーショットのプリクラが貼られた印籠でした。自分の運命を悟っているような信長の台詞が印象に残りました。
http://home.tokyo-gas.co.jp/pa-cho/tvcm/m2007_10_b.htmlにて、配信中です。
 他に信長篇として2本のCMがありましたが(配信は終了しています)、今回の物が最終回だそうです。

駄弁者:
 CMの配信が終了する前にとのことなので、順番とばしで掲載。
 こっちでは放映されていないCMなのに、なぜか見たことあるような…と思ったら、先日の『ETV特集・21世紀を夢見た日々』で、SFがそれと意識されず世間に浸透している例として、前バージョンが紹介されていたのでした。
 番組中では、
 「これは明らかに洋服ダンスがタイムマシンになっている設定のCMですよね。別にSFという言葉を使わなくても、視聴者にそれが伝わっている。つまりそれほどSFが世の中にもう定着しているっていうことですよね」
 …などとすまして解説されていて、見ているこちらは、妙に恥ずかしいような気分を味わったのでした(笑 …あ、このCMをSFとして紹介されるのが恥ずかしいということじゃないですよ)。



あっ、たいへんだ。腸(はらわた)が動いていない!

 出典: 海野十三「生きている腸」

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 おなかがゴロゴロしていると、その昔「ラジオSFコーナー」で「腸」を飼う話があった事を思い出します。
 あれは牟田悌三氏だったかなと検索。若山弦蔵氏だったようです。
 しかも「青空文庫」に入っています。びっくりです。思わずいろいろ読んでしまいました。いい時代になったものです(って今回初めて知ったのは私だけでしょう)。
 ちょっと「帆掛さん」が入っていますが、「マッドサイエンティスト」の面目躍如な話です。オチがアレだったのは彼の本望だったのかなと思いますが。

駄弁者:
 出典作品はこちらよりダウンロードが可能。青空文庫にはよくお世話になってます。全国の図書館に収録作品のDVDを寄贈するとは、すごい太っ腹。
 風変わりな医学生・吹矢隆二は、刑務所病院の医師を脅して、1メートル余の「生きている腸」を手に入れる。リンゲル氏液に満たされたガラス管の中で蠕動するその大腸で、吹矢は前代未聞の秘密実験を行い成功するのだが…。
 …って、名前を付けるな、名前を!! ディスプレイに向かって吹いてしまったじゃないですか。



お前のところへ行くよ!……すぐ行くよ!……フェニキア女、私はお前の物だ……

 出典: イリヤ・エレンブルグ「トラストD・E」(吉上昭三訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 モナコ王子の隠し子エンス・ボート。彼はあるフェニキア女性に振られたことを契機にヨーロッパを滅ぼすことを決意します。アメリカの3人の富豪と共にトラストD・Eを設立し18760人のエージェントを率いて(D・EはDetoroit EngineeringでありDestruction of Europe、なぜか本部ニューヨーク)。
 1次大戦後、自殺熱とでも言うべき空気の流れていたヨーロッパ各国は再びの戦争、伝染病、内戦、逆精力剤などによって着々と荒廃していきます。
 目的を達した彼は、上記の言葉と共に無人のヨーロッパへ向かいます。
 私はお前の物だ…共感できるせりふではあるんですが、ボートがヨーロッパ破滅を目指す理由が判らないのでどう説明したらいい物やら。作中でも1章を割いて理由を追及していますが、副題として『消すことのできない愛の炎の物語』が提案されているので、独占したいがため、破滅させたと解釈してみましょう。

駄弁者:
 出典作品は、早川書房の『世界SF全集9』にチャペックの「山椒魚戦争」とともに収録されています。最近では海苑社という出版社から違う訳者で出ていたようなのですが…。
 フェニキア女がきっかけでヨーロッパを滅ぼすというつながりが分からず、最初は「?」だったんですが、ギリシア神話でゼウスに連れ去られるエウロペはフェニキアの王女。エンス・ボートの愛憎は特定の女性にではなく、ヨーロッパ全体に向けられたものだったようです。
 「フェニキア女」を独占したいというより、それが自分の理想のように美しくないから、いっそ滅ぼしてしまえ…という感じに思えました。



ギル・ギム・ガン・ゴー・グフォ…ヴィータ!

 出典: サンライズ制作「勇者王ガオガイガー第48話『命』」

紹介 :s 様
HP :

コメント:
 日本ロボットアニメ究極熱血にしておいらのバイブルたる「ガオガイガー」より、ヘルアンドヘヴンの時の凱の決め台詞…ではなく護隊員がZマスターの核を浄化したときの台詞。
 しかしこの作品で一番強烈なのは「勇気で補え!」だよな…やっぱ

駄弁者:
 (相変わらず)見てないので意味が分からないのですが、最強技のときの呪文だそうです。



「しかし美しい献上品です」
「美しいのか」
「いかにも極美です。そしてフランク族の軍勢にとっての破滅の原因となります」
「それはいったいなんだ?」
「それは書物でございます」

 出典: 古川日出男「アラビアの夜の種族」

紹介 :垂直応力 様
HP :

コメント:
 SF大賞からもうひとつ。
 その内容に魅入られ、遂には狂気に至るという「厄災の書」。読書家にとっては悪夢?。逆に本望だという人もいそうですが。

駄弁者:
 ナポレオンの侵攻を間近に迎えたエジプト。圧倒的な敵におびえるイスマーイール・ベイに、若く賢明な奴隷・アイユーブは秘策を告げる。読みはじめるとその虜になる「災厄の書」をナポレオンに献じ、魔の魅力で侵略を阻もうというのである。ベイの許しを得たアイユーブは語り部の美女ズールムッドを見出し、彼女が語る物語を書きとらせていくが…。コメントにもあるとおり、2002年の日本SF大賞受賞作。
 本好きは、それぞれ自分にとってのプチ「災厄の書」を経験してますし、それを切望しているのですが…幸か不幸か、そこまでの作品にはなかなか出会えません。
 ナポレオン自身はといえば「私の人生は何という小説であろう!」なんて言っていたらしいので、彼を他の小説の虜にするのは、それこそ「災厄の書」クラスの傑作でないとムリでしょう。
>読書家にとっては悪夢?
 そんな物語が献上されてフランスに広まった日には、ユゴーやデュマにとっての悪夢になったかも。



ものを言えるようになりなさい、シビル、語れるようになるんだ、我々にはそれしか戦いようがない。

 出典: ウィリアム・ギブスン&ブルース・スターリング「ディファレンス・エンジン」(黒丸尚訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 チャールズ・バベジによる階差機関の開発に成功したもう一つのイギリス。パンチカードと蒸気駆動シリンダーによるコンピュータに管理される世界を作り出していた。
 そのような社会での、ラッダイト運動の架空の指導者は娘に向かって語りかけます。
 さすがに民主主義の生みの親イギリスらしい言葉です。しかしながら、イギリスは資本主義の生みの親でもあり、ラッダイトたちは産業資本家たちによって蹴散らされてしまうのでした。
 ペンは剣より強くとも金には弱いのでした。こんな事を言うと各方面からしかられるのか。

駄弁者:
 スチームパンクの代表作からのご投稿。一度読んだんですが、なかなか手強い内容で、解説がなければ分からなかっただろう部分がありました。その分深く読み込めば面白いのでしょうが。
 シビルは19世紀の大政治家ディズレイリが書いた小説に登場する人物だそうですが、当のディズレイリもこの作品に登場していて、歴史が変わったためか政治家ではなく小説家をやっている、という凝ったつくりになってます(私の記憶ではなく、ここをカンニングしました)。
>ペンは剣より強くとも金には弱い
 うーん、残念ながら名文句。



「今度は何を食おうってのかい?」
「世界中の美食家が求めてやまないもの」
「何かね?」
「ドーナッツの穴です」
「穴?穴だけかい?」
「そうです」
A君はなおもニヤニヤ笑って、「ドーナッツに穴はあるけれども、外側を食べると穴もなくなってしまいます。では、穴から食べようと思っても、外側があるかぎり不可能です。ところが今から案内する店の主人は、ドーナッツから穴だけを残す料理法を発見したんです」
「き、君はもう食べたのか?」
私は生つばを飲んで訊いた。
「ええ、シコシコして美味いですよ」
「行こう。ドーナッツの穴を食べに行こう」
「椅子がまたいいんだなァ」
A君はうっとりと、私は舌舐めずりして、夜の銀座を歩きはじめた。

 出典: 津山紘一「食通入門」 『宇宙料理店』に収録

紹介 :バグ 様
HP :

コメント:
 最初の投稿なのに長文になってしまいスイマセン!
 さて投稿の文は昔コバルト文庫から出た津山先生のSF短編集の中の一つ食通入門の締めの一文で、作家と編集者が銀座の店で食事をするだけの話しなんですがこの店メニューがなかなか個性的でして、パンダの角煮やネッシーのしゃぶしゃぶ、焼き糞、フラ○ス人の肉なんてヤバげなモノまで出てきます。とても美味しそうな描写なんですが中でも一番食べたくなったのは紹介したドーナッツの穴でした。この話しが本に目覚るきっかけでした

駄弁者:
 美食家が求めてやまぬとなると、値段の方もかなり張ることになるんでしょうか。50円玉と5円玉の穴だけでお支払い、というわけには?



「死は消滅だ。再生も救済も輪廻も転生もそんなものはない!
 すべて無に還る!だからこそ!
 生きていることは素晴らしいのだ!」

 出典: 玉井雪雄「オメガトライブ」

紹介 :steel 様
HP :

コメント:
 引きこもりの少年、吾妻晴はセミナーで連れて行かれたアフリカで実の父親に殺されかける。死にゆく絶望の中、晴はWillと名乗る男──現生人類を作り上げたウィルス──と出会い超人類へと”進化”する。
 そして晴は他の5種の超人類との次世代の覇権を賭けた”種の闘争”に巻き込まれることになり、その第一歩として日本にクーデターを起こすために活動を始める。
 台詞は晴がWillに死について尋ねた時のWillの返答

駄弁者:
 超人類になってそのまま超人的な戦いに入るのかと思いきや、その前段として現行の社会で権力を握ろうという展開になるのは、あまり他では見られないんじゃないかと思います。大胆なのか着実なのか、判断しかねるところではありますが…。
>だからこそ! 生きていることは素晴らしいのだ!
 私もまったく同感ですが、「超人ロック」からのご投稿の次に入ってしまうと、少し苦笑がまじってしまいますね。



そんなに長生きできる人間はいないさ

 出典: 聖悠紀「超人ロック 冬の虹」

紹介 :うーちゃん 様
HP :

コメント:
 軌道エレベーターが完成し、エレベーターで人類が始めて宇宙に出るのを、見ながらスーミンが
「あのエレベーターで人間がどんどん宇宙に出ていくんだね!何百年かしたら宇宙は人でいっぱいになるのかな?何千年も先の世界ってどんなだろう?」という問いにロックが答えています。
 まだ、不老不死の自覚がないロックのセリフはロックのその後の人生を考えるとせつなさをかんじさせます。

駄弁者:
 実際に長生きできないからこそ、想像するのが楽しいのかも知れません。不老不死で、いずれ結果を見ることになると分かっていたら、希望をもって思いを馳せることができるでしょうか。



「憎い奴を徹底的に憎みきれない君は、不幸な人間だ」

 出典: 栗田信「醗酵人間」

紹介 :んどらもえ 様
HP :

コメント:
 庫裡色の臭気が立ち籠める、イモイモな所業――。
 古くは鏡明さんが平井和正先生の『超革命的中学生集団』(ハヤカワ文庫SF)の解説で言及し(曰く「信じられぬイモなSF」)、『BOOKMAN』16号(86年10月)では「戦後SF最大の怪作」とまで評された、栗田信の『醗酵人間』からの投稿です。
 この作品は要約すると、「九里魔五郎なる人物が、父親を殺した者たちへ復讐を謀るべく、醗酵人間(別名:ヨーグルト・マン/醗酵性のものを口にすると、体内で悪の芽が醗酵し、ぶくぶく巨大な殺戮魔となるのです)となって復活、世の中を恐怖のどん底に陥れる」てな具合の、実にシンプルな作品です。偽物が出てきたり魔五郎が二人もいたりなどけっこう行き当たりばったりな展開、かと思ったら意外にも普通に楽しめて、ときどきヘンに説教臭く、なんだか尻切れトンボな結末が僕らを待っている……。良作と駄作のいろいろな面が融合した、とにかくミョ〜としか言えない作品でありました。
 投稿の台詞は、醗酵人間こと魔五郎のもの。何かをできないということは、たとえそれが負の領域のものであろうとも、残念なことなのでしょうか?(一概には言えない問題でしょうがね)
 もっとも魔五郎はこのすぐ後、「人を憎むことの出来ない君は不幸だ。と同時に、人を憎むことだけに人生を送つている僕も、決して幸福な男ではない」とも言っており、栗田信先生が殺人その他を認めているわけでは決してないので、ご安心を。魔五郎自身も、復讐に駆られた己れの運命を嘆いているようにも思えます(まあ、それからも殺戮は続くんですけどね)。
 この他にも、「生きていなけりや殺し甲斐がない」というイカす章タイトルなんかもある、奇怪な本でした。
 しかし『貸本小説』の中で末永昭二さんは、「栗田信の奇想は『醗酵人間』だけで、とうてい語り尽くせるものではない」と述べています。彼の作品群でもひときわ異彩を放つという長編『カッポウ先生行状記』(『花婿立候補』57年・豊書房 に収録)を、ぜひ読んでみたいのですが……。

駄弁者:
 「幻の奇書」登場ですね(『カッポウ先生行状記』のほうは、やはり見つかりませんでしたか)。
>憎い奴を徹底的に憎みきれない
 誰かを憎んでいる自分が正しいのかどうか、ふと振り返ってしまうということはあるだろうし、そのほうが精神的に健康だとは思うのですが…。そう思うのは自分がまだそこまで憎んだことがないからかも知れません。



買ったばかりのバットの、なぐりぐあいをためさせろ。

 出典: 藤子・F・不二雄「ドラえもん『コベアベ』」

紹介 :鋼将門 様
HP :

コメント:
 ドラえもんの記念すべき第1巻から。
 音を聴いた人は頭で描いたことと逆の行動をとってしまう横笛「コベアベ」。この道具ののび太の実験過程でのジャイアンの最初の台詞。
 本編ではバットで人や動物を殴る場面が珍しくないジャイアン、彼にとってバットは殴る道具なのね…と印象付けた決定的台詞だと思います。
 砂漠の狐さんがジャイアンが人間に危害を加える存在として扱われているような…と書いていましたが、そういうことになっても無理のない話かと。
 実験台にされて「助けてえ。」と逃げ惑うスネ夫を見て、普段なら金持ちならではの自慢話に眉をひそめる自分がこの時ばかりは同情させられます。

駄弁者:
 このエピソード、オチでのび太のママが「よくもかあさんの言うことを聞いたわね」と(ひみつ道具の効果で)のび太をたたいているのが印象に残っています。



白状などさせるつもりはありません!
殺すつもりでした! 

 出典: 円谷プロ制作「帰ってきたウルトラマン第31話『悪魔と天使の間に……』」

紹介 :砂漠の狐 様
HP :

コメント:
 伊吹隊長の娘・美奈子は教会で知り合った聾唖(聴覚障害)の少年、輝夫と共にMATの基地に見学に来ました。二人を案内する郷に輝夫はテレパシーを発信、自分は地球を侵略しに来たゼラン星人であり、プルーマという怪獣を連れて来た。
お前はウルトラマンとなりプルーマを倒すだろう。そしてウルトラマン、その時こそお前の最後だ。 プルーマを倒した時お前は死ぬのだと、謎が謎を呼ぶ勝利宣言をかまします。
 郷はすぐさま輝夫に掴みかかろうとするも同僚たちにあっさり引き剥がされてしまいました。障害者という社会的弱者の姿を借り、しかも隊長の娘の友人というポジションを最大限利用するゼラン星人。周囲は誰も郷隊員の言葉を信じようとはせず、郷は一人で戦うしかないと決意を固めます。
 しかし、図に乗るゼラン星人は出現させたプルーマに自らを捕らわせることでMATの攻撃を阻止するという悪辣さを発揮。負傷したように見せかけて病院に収容された輝夫は見舞いを装って訪れた郷に対して明日は病院の前にプルーマを出すと挑発、流石にキレた郷は彼を首絞めにかけますが看護婦と美奈子に見つかって未遂となりました。
 隊長に「宇宙人だと白状させようとしたのか」と言われた時の郷の返答がこれ。
 そんで翌日、予告通り病院の目の前にプルーマが出現。郷はウルトラマンに変身し、ウルトラブレスレットを使ってプルーマを首チョンパしますが、その途端にブレスレットは制御不能となりウルトラマンに襲い掛かります。これこそがゼラン星人の真の作戦だったのです。
 ブレスレットに襲われているウルトラマンを見た隊長は前日に郷に言われた「ウルトラマンがピンチに陥ったら輝夫を捕まえてくれ」という言葉を思い出し、単身病院へと向かいます。病院の霊安室(何もそんなところにいなくても……)にいた輝夫を発見するとヤツは隊長に怪光線を照射。 辛くもかわした隊長が輝夫の喉を撃ち抜くと、輝夫は喉からどくどく血を流しながら絶命。するとウルトラブレスレットもウルトラマンの制御下に戻ったのでした。
一件落着後、「僕ならあの少年は遠い外国に行ったと言いますね。お嬢さんの心を傷つけないためにも」という郷に対し、隊長は「いや、君がそう言ってくれるのはありがたいが、やはり事実を話すつもりだ。人間の子は人間さ、天使を夢見させてはいかんよ」と父親として見事な対応。
 「11月の傑作群」といわれる4作品の一つだけあって、見せ場の多いエンターテイメントな作品でした!

駄弁者:
 こっちはウルトラマンよりゼラン星人のほうが(作戦でもあくどさでも)数段勝ってますね…。障害者に化けている相手の、仮面をはがす前に首を絞めてしまっちゃいくらなんでもマズいでしょう。
 病院の霊安室なんていかにもなところにおらず最後まで化けていたら、隊長の支援は間に合わなかったのでは?
>「11月の傑作群」
 伊吹隊長の言葉のほうも、すでに入ってました。また第105集第144集に出ていた「怪獣使いと少年」も傑作群のうちのひとつ。



レオ、あまり腹を立てない方がいい。
君とケンカをしに来た訳じゃない。
僕は君と同じように守りたくて来たのさ。
仲良く頼むよ。

 出典: 円谷プロ制作「ウルトラマンレオ第36話『飛べ! レオ兄弟 宇宙基地を救え』」

紹介 :砂漠の狐 様
HP :

コメント:
 3年前アトランタ星探索中に行方不明となった宇宙船が地球に不時着。MAC最高司令官である高倉長官の娘、あや子の婚約者である内田三郎だけが救出されました。
 ゲンは病院で彼の正体がアトランタ星人であると見抜きますが、アトランタ星人もゲンの正体に気付き、バラすと脅迫。本物の内田はアトランタ星人に殺されたと思われます。まんまとMAC本部に潜入した内田は高倉長官の娘の婚約者ということもありMAC隊員から宇宙パトロール隊へと昇格、さらに新燃料MACウランの運搬という重要な任務まで与えられます。
 アトランタ星人が化けた内田を露ほども疑うことなく、父親として、娘の為に娘の婚約者を盲目的に信用してしまった高倉長官。 この時の彼は長官であって長官ではない一人の父親でした。
 アトランタ星人の目的がMACウランによるMAC本部の破壊と見抜いたダン隊長はウルトラ念力であや子を危篤状態にして内田を病院に向かわせ、任務から外すというかなり強引な作戦を実施。そしてナイスタイミングで登場したアストラの活躍もあり、アトランタ星人は倒されました。
 レオ兄弟にボコられ、ふらふらになった所をダブルフラッシャーでトドメを刺された最期は少し不憫な気もしますが。
 第二次ウルトラシリーズに登場する上官の中で例外的に印象の良かった高倉長官。彼の人間らしさは皮肉にもアトランタ星人の陰謀の被害者という形でより印象的なものとなったのでした。

駄弁者:
 相手も知能犯ですが、それを逆手にとったレオも空手一辺倒のようでなかなかあくどい(笑)。
(逆手にとったのは、レオでなくてダン隊長。指摘を受けるまで読み違いに全く気付いてませんでした。自戒のため間違えたままさらしておきます)
 一番災難だったのは、高倉長官もさることながら、婚約者にすり替わられたうえ、オトリで病気にまでさせられた娘さんですね。



失政は政治の本質だ!!

 出典: 宮崎駿「風の谷のナウシカ」

紹介 :ラウ 様
HP :

コメント:
 物語のラスト近くで、トルメキア国王ヴ王が放った迷言、暴言です。
 確かに、政治政策という奴は、為政者の思い通りに進んだり効果を上げたりする事の方が珍しいもので、後世有能な政治家と評された人でも、在任中は批評家や国民の罵声を浴びる事がしばしばです。ウィルソン然り、チャーチル然り…
 しかしねぇ…
 こういう台詞をはっきり口に出す国王というのも問題ですね。
 政治家の居直り程、見苦しく、また傍迷惑なものも他にありません。
 「暴言は所信表明の本質だ!!」
 「介助枠削減は医療改革の本質だ!!」
 「企業献金は政治基金の本質だ!!」
 などなど、今日びは特に、例文が幾らでも思い付いてしまいます。
 ま、それを言っちゃァおしめえよ、と言う奴で。

駄弁者:
 万人を満足させる政治は難しいから、ある立場の人にとって善政でも、それと対立する立場の人にとっては悪政…ということもできますが、多分陛下はそんな言い訳じみたことを言ってるのではないでしょう。
 「政治につきものだ!!」ならばともかく、「本質」と言い切ってしまうところが、善悪以前に大物すぎます。



休息コマンドへのアクセスに成功

 出典: 「スタートレックTNG 『浮遊機械都市ボーグ』」

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 あぁ、誰か私に休息コマンドを発行してくれないものか。
そんなことはさておき。
 中古屋でえらく安いスタートレックのDVDを発見。「TNG」が2編と「VGR」が1編。思えばカークとスポック以外のモノを見たことがなかったのでほくほくと捕獲。よく見ると、かの「ディアゴスティーニ」の付録ディスクなのでした。
 これが噂のボーグか、と見る事小一時間。ハイ、十分堪能しました。
 で、一番印象に残ったのが上記のセリフ。ハッキングのプローブとして見るならばマトリクスのネオ君みたいですねピカード艦長。
 「休息コマンド」のあとには、「起床コマンド」や「歯磨きコマンド」や「食事コマンド」や「好き嫌いはいけませんコマンド」や「早く食べなさいコマンド」なんかあるのかなぁ、、、。

駄弁者:
 きっとこんなのです、休息コマンド。
 ディアゴスティーニのSTベストエピソード・コレクション、シリーズを横断して「ボーグ」ネタで集めてみるとか「副長」ネタで集めてみるとか、切り口が面白いです。



かなり広い場所に、形も色も実にさまざまな人間の歯が、至るところに散らばっていたのである。輝くばかりに白い歯が、褐色と栗色のあらゆる色調を呈する煙草のみの門歯と対象をなしているかと思うと、模糊とした淡い藁色から、醜悪の限りの黄褐色まで、すべての黄色を取り揃えた歯の奇妙なストックもあった。濃淡取り混ぜた青い歯がこの色の饗宴に加わり、沢山の黒い歯と、うすい、あるいはどぎつい赤の、血にまみれた多くの歯根とが、それを補っていた。

 出典: レーモン・ルーセル「ロクス・ソルス」(岡谷公二訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 パリ郊外、モンモランシーにあるロクス・ソルス荘で披露される、マルシャル・カントレル博士による驚異の数々。それだけのお話なんですが、驚異が本当に驚かされるものばかり。
 上記のように、何で歯を集めているかというと、それを使ってモザイクを作るためなんですが、その作り方がすごい。複雑な時計と組み合わせた、自律式の模型熱気球を使って歯を蒔いていく。
 他にも、特殊な水の中で踊り続けるダンサー、電気刺激によって演説を繰り返す生首(しかも皮剥済み)、酸素の流出によって動く水中人形、薬品によって死に至る間での行動を繰り返す死人たち(冷凍庫内で保存)、音楽を奏でるタロットカード、等々。しかも、仕掛けに一々エピソードをくっつける徹底ぶり。
 このくらくらくる感覚は一読の価値あり、です。

駄弁者:
 なんでそんなに虫歯ばっかり集まってるんだ、と思ったら、そのへんの理由も明かされて入るんですね。前に発明した無痛の抜歯法が大当たりで繁盛したという(溜めておくあたりもマッドというか)。しかし、強力な磁力で一気に抜くというこの抜歯法、無痛ということですが、イメージ的にはかなり怖くて痛そうです。



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