SF名文句・迷文句第323集

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画面が生きてなくて幸いしたな
先輩の姿って頼りなさそうでいまいち士気高揚に役立たないんだよな

 出典: 田中芳樹原作・道原かつみ作画「銀河英雄伝説」(コミック版)

紹介 :土左衛門 様
HP :

コメント:
 アスターテ会戦で、ヤンの指揮権引き継ぎの演説のあと、まわりの人間をさんざん煽ったあとのアッテンボローの心中の声。
 以前出ていたメルカッツ提督の台詞もそうですが、道原銀英伝の魅力ってこういう容赦ない突っ込み芸ですよねー(笑)。

駄弁者:
 声だけなら、滅亡365日前の人類を救えるかのような頼りがいがありますからねー(笑)。
 しかしまあ、いたずら小僧のようなニキビ面した後輩には言われたくはなかろうて。



墓石に記事を刻んでもらうか。それもできないかもしれない。帰れたらシャンパンをおごるよ。いや、灘の酒にしよう。

 出典: 神林長平「戦闘妖精・雪風<改>」

紹介 :秀 様
HP :

コメント:
 初めまして。いつも楽しませて頂いております。雪風からは既に多くの投稿がされていますが、深井中尉のブラックユーモア炸裂の、この発言を推します。

駄弁者:
 この頃はまだ『雪風』もあまり難しく考えずに楽しんで読んでいられましたね。シリーズの最近作だと、おごられた酒が現実のものなのか考え込みかねません。それはそれで楽しくはあるのですが、ご投稿の作品にあったようなスピード感が、ちょっと懐かしくもあります。



海を割ってみたり。(ただ、今回の場合、これで災害を起こす訳にはいきませんから、海を割って、乾いた地面を出し、それを維持し、でも、津波を起こさないために、いやあ、もう、神様、気を遣った遣った。あっちの波を止め、こっちの川が氾濫しないように水量を調節し、むこうの気候を操作して……。こんな細かい作業は、もう二度とやりたくないと神様は思ったのでした。)

 出典: 新井素子「ゲーム」  『SF宝石』2013年号に収録

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 世の中に不信心者が溢れかえったことに絶望した神様は、世界を滅ぼしてもう一度やり直そうと考えますが、前回の洪水ではうまくいかなかったことと、信仰厚い少数者もまとめて滅ぼすことはまずいと、思い直します。
 それでは「神業」で人々の信仰心を引きつけようと、まずは海を割ることから始めます。
 さらには不信心者を塩の柱にしたり(でも、えらい苦労をしてもとにもどす)、イナゴの群れを放って飢饉を起こしたり(でも死者が出ないように非常食のマナを降らせる)と、細やかな気遣いをみせます。
 神様としては信仰心は強制するのではなく、呼び起こすものなのですけども、ひねくりかえった現代人は、「神様」を超越者として認めても、信仰の対象としては認めない。
 かくして自分を認めて欲しい「神様」と、そうは考えない現代人の知恵比べが続いて予期せぬ結果にたどり着くのでした。
 このあたふたした行為の数々、はっきり言って「萌え」ます。神様(しかも少年でも女神でもなくヒゲとロン毛のじいさん)に萌えるなんて思っても見ませんでした。
 神様のやることなすこと裏目に出てしまうのが、何とも可愛らしく、またかわいそうなんですよね。
 神を愛することが、信仰であるなら、私も立派な信仰者ですかね?

駄弁者:
 去年はSF作家クラブ50周年でアンソロジーが花盛りでした。でもこれ買い逃してるなあ。この間近所の本屋に1冊入っているのは見たんですが、まだあるだろうか?
 マーティン『タフの方舟』みたいに、人間が旧約聖書の神を模倣するときは細かいことはお構いなしにやりたい放題やるのが常ですが、さすがに本物の神様は行き届いてますね。
>神を愛することが、信仰であるなら、私も立派な信仰者ですかね?
 神を敬愛するは信仰ですが、慈愛の目で見るのは信仰かなあ(仰いでないし(笑))。



本職の言葉が神に対する愚弄か否かは、本職が天寿を全うした後の天界の審判の席で、キズラサの神を前にした本職自身の弁明により明確にする所存であります。むしろ本職の愚弄の対象は神ではなく、この場にいない神の名を借り、国家に尽くした将兵の名誉を貶め、偉大なる共和国の国威を汚した眼前の小人であることを本職はここで明言しておきたい!!

 出典: S.K「The Islands War  Underwater Warfare」

紹介 :可児歳蔵 様
HP :

コメント:
 そろそろ活字の世界に戻りたいものですが、その前にネット上のSFから。
 キズラサの神を信奉し、神権的共和制を取るローリダ共和国において、頽廃堕落した文化しか持たない野蛮人であるはずの「ニホン族」膺懲が敗北に近い形で終わったことは、国家の政治経済にかなり暗い影を落としていました。共和国元老院の会議中、ニホン攻撃で捕虜となった帰還兵を別の戦線で捨て駒にする法案に反対したルーガ議員は、キズラサ教典を持ちだして「生きて虜囚の辱めを受けず」と主張するラジオ伝道師出身のナシカ議員に対し「軍規によって投降は認められている」と切り返します。これを神への愚弄と噛みついたナシカへの、反駁の形をとった論難が上の名文句。
 批判することを許されない唯一神と共和国を味方につけた、なかなかの名演説だと思います。とはいえ、ルーガ議員もまたローリダの社会では上から二番目の騎士階層にあたり、ここで話題になっている帰還兵たちからみれば、じゅうぶん支配者階級とみなしうる人間ではあるのですが。

駄弁者:
 ネット初出の創作が次々活字化されている昨今ですので、戻ろうとしなくてもすでに地続きかも。
 「生きて虜囚の辱めを受けず」とか「暴○膺懲」とか、異世界に転移した日本にとっては、敵という以上に出来の悪い親戚を見る思いなんじゃないでしょうか…。



「このままではお前達はスクラップじゃぞ!」
「我々の役目は終わったから、それは当然の事です」
「ここだけじゃないぞ、毎日世界中で何千何万ものお前達の仲間がスクラップにされているんじゃぞ! 人間にいいように使われて、壊されて……。悔しくないのか! …(中略)… 使用期限が過ぎたからといって、スクラップにする必要は無い! お前達はまだまだ活躍できる! お前達にも生きる権利があるんじゃ! わしが力になる。人間にお前達が活躍できる事を見せてやろうじゃないか!」
「……あなたの言う通りかもしれない。我々もまだまだ人の役に立ちたい。我々の修理をお願いします」

 出典: カプコン製作「ロックマン9」

紹介 :るーしー 様
HP :

コメント:
 以前に何度か漫画版の名文句を投稿した、ロックマンシリーズからの名文句です。
 ロボット達が突然暴走するという事件が発生し、ロックマンは暴走ロボットを止めつつ原因を調査します。
 暴走したロボット達が耐用年数の問題で廃棄された者ばかりだった事を突き止めたロックマンがさらに詳しく調査すると、彼らはDr.ワイリーによって改造されていた事が明らかになります。
 今回の名文句は、廃棄されたロボットとワイリーの会話です。
 まだ使える物を修理して使う、それがエコロジーの基本ですよね。

駄弁者:
 目指すはエコにかなった世界征服…?



「そりゃそうだなぁ、逆立ちしたって人間は神様にはなれないからな」

 出典: 富野由悠季監督「機動戦士ガンダム 第42話『宇宙要塞ア・バオア・クー』」

紹介 :猫玉 様
HP :
http://ameblo.jp/puneko

コメント:
 今尚、人気を誇る機動戦士ガンダムより。
 説明の必要もないぐらいの作品ですが、人類が宇宙に進出して生活する時代にスペースコロニーの少年少女が戦争に巻き込まれて、否応なく戦わざるを得なくなり、その中で主人公アムロは人の革新と言われるニュータイプに覚醒する…とでも書いておけばいいのかな。
 最終回1話前、敵要塞の最終決戦を前にアムロは勝てるだろうと鼓舞したんですが、実はそれは嘘というか…、まあ場が場ですからニュータイプのアムロにでもそう言ってもらわなければたまらないような状況で、それをアムロから聞いた仲間のカイの発言です。
 力が抜けた感じが彼らしいというか元軟弱者っぽい感じですが、富野監督のニュータイプの「人の革新と言う設定」に対する一つの見方のような気も…。

駄弁者:
 「作戦は成功します」と言ったアムロも、聞いたカイやブライト、セイラも、それが気休めであるとは気付いていた様子。
 気休めとは知っていても、耳にしたい言葉というのはあるものだよな、と今思い出すと感じます。



「驚いたか。改造人間は死なん!貴様にやられた箇所を直せばな!」

 出典: 伊上勝脚本「仮面ライダー 第13話『トカゲロンと大怪人軍団』」

紹介 :W”MONSTER 様
HP :

コメント:
 蝙蝠男と蜘蛛男が原子力研究所を狙うが、バーリアを破れなかった。そのための新怪人トカゲロンの爆弾ボール「必殺シュート」に、ライダーは初の特訓を強いられる…。
 主演の藤岡弘さんが負傷して、変身後の姿のみで終える初期編の最終エピソードは、従来の怪人を超える強敵と怪人総登場のイベント編。とはいうものの、再生怪人軍団はのっけから新怪人のダシとして描かれており、後々その手の集団が雑魚同然に扱われる伝統を見事に打ち立てております。
 そんな連中の物言いですが、泡と消えたり爆発したりもしたやつらが本人として蘇ってきているわけで。倒しても終わらない、死の概念から外れた存在になってしまった恐ろしさがあります。
 ただ、その理屈はライダーの方にも当てはまってしまうわけで。次回作で1号2号が死んでからこんにちのヒーロー大戦に至るまで、理屈すら抜きで蘇ることかくのごとしなのであります。

駄弁者:
 前にご投稿があった「…壊れたところを治せば改造人間は死なないのだ…」のモチーフになったところでしょうか。
 「死ねない体」にされてしまって、そのうえ新人の引き立て役(怪人だけでなく、ある意味ライダーも)に使われるとは…。



機体が私の反応速度についてくる……これがガンダムの力!

 出典: サンライズ制作「機動戦士ガンダム00」

紹介 :クロスケ 様
HP :

コメント:
 310集のOSが備わってればGUNDAMで思い出しまして、今度は動力が基準のGUNDAMです
 この作品の世界観では半永久機関「GNドライヴ」(通称太陽炉)を搭載している高性能MSをガンダムと呼びます。
 第一シーズン物語後半。主人公側のソレスタルビーイングを裏切ったアレハンドロ・コーナーによって国連軍に擬似GNドライヴとそれを搭載するMS「GN-X」(ジンクス)が提供された。
 GN-Xはアンテナもないし四つ目の外見ですが(後継機のGN-XWはアンテナ付きで二つ目)その性能からガンダムと呼ばれソレスタルビーイングのガンダムとの戦闘はガンダム同士の対決と言われました。
 投稿はその機体性能を噛み締める強化人間ソーマ・ピーリスの台詞

駄弁者:
 機体性能に感心しているようで、実は自分の能力を自慢しているんじゃないか?と思ってしまいました。



「全ての戦争」とは烈火さんを巡るヒロインたちのあらゆる次元時空世界異世界を巻き込んだ大戦争なのです!!

 出典: なめこ印原作・長谷川光司漫画「俺がヒロインを助けすぎて世界がリトル黙示録!? 1」

紹介 :山家 様
HP :

コメント:
 漫画版からの引用です。
 この作品の主人公、波乱烈火は多くの「物語」に巻き込まれる体質の持ち主です。そして、その「物語」のヒロイン達に主人公が好意を寄せられた結果、どうなったかというと、めい文句の事態が引き起こされました。ヒロイン達は、主人公には「自分」こそが相応しいと考え、更に主人公がヒロインの1人にきちんと好意を寄せて、正妻を決めなかったために、ヒロイン達の正妻争いは熾烈を極めることになり、遂にはお互いに実力を行使する羽目に。まだ単なる言い争いレベルならよかったのかもしれませんが、何しろヒロイン達は皆、それなりの実力(異世界の魔王に、聖書に出てくるリヴァイアサン、超光速航法を実現させる科学力を持った宇宙人等々)の持ち主で、お互いの実力を示してでも主人公を手に入れようとした結果、あらゆる次元時空世界異世界がヒロイン達の争いに巻き込まれる羽目になります。本当に迷惑な主人公で、迷惑なヒロイン達だなと思わざるを得ませんでした。また、これだけの大戦争だと「全ての戦争」という略称もむべなるかなと思わなくもないのですが、あらゆる次元時空世界異世界を巻き込む戦争の原因が主人公の正妻争いとは、本当に空しい戦争原因に思われてなりませんでした。

駄弁者:
 異性をめぐって大戦争をやらかすのは、トロイの昔から物語上の戦争原因のメインなので、まあよくあることとしておきましょう。「全ギリシア」も「全次元」も、この際たいして変わらないと思います。
 変わったのは、奪う方と奪われる方の性別ですかねー。



課長 部長 偉い
社長 会長 偉い
偉きゃ黒でも白になる

 出典: 山本正之作詞・作曲「シビビーン・ラプソディ」(『逆転イッパツマン』エンディングテーマ曲)

紹介 :ゴジリスト中小路 様
HP :

コメント:
 以前に『怪獣王ターガン』の歌詞(第279集)を投稿した時、駄弁者様から「’60年代〜’70年代のヒーロー&アニメ主題歌は無法地帯だったんでしょうか」といった意味のコメントをいただいたが、’80年代のタツノコプロ作品の主題歌にも無法地帯ソングを見つけてしまった。それが上記投稿の歌詞である。これがなんと、サビ直前の盛り上がりの部分なのだった。
 なんとも生々しいというか、妙にリアルな歌詞である。こういうオトナの世界の「黒い現実」をアニメソングによって幼い子供たちに教え込むタツノコプロという制作会社は果たして良心的なのかそれとも悪魔的なのか、特定団体への批判・攻撃にもなりかねないので、その答えは今ここには書かない。ただ一つ言えるのは「極めてアニメソングらしくない歌詞」だということ、それだけである。

駄弁者:
 これはリアルタイムで聞いていましたね(ベンベン)。…考えて見れば小学生になんて歌聞かせてるんだ。というか、横でメシ食っていた父親はどんな顔して聞いていたんだろう。
 これより5年ほど後の放映になりますが、やはり80年代のアニメ版「おそ松くん」のED曲にあった「終点間近のマイホーム 空気はうまいが街へは遠い」「うちの父ちゃんは日本一 残ったローンも日本一」と共に、記憶に残っています。



精神生命体。まるでアーサー・C・クラークの世界だ。ちなみに真尋はオーヴァロードよりもオーバーロード派、カレランよりもカレルレン派だった。どうでもいいが。

 出典: 逢空万太「這いよれ!ニャル子さん 2」

紹介 :山本弘 様
HP :
http://homepage3.nifty.com/hirorin/

コメント:
 確かにどうでもいいことではあるんですが(笑)。SFファンにとってはこだわりたいポイントなんですよね。個人的にはやっぱりカレランよりもカレルレンです。あと、おそうじガールじゃなく文化女中器だとか、「雷と薔薇」じゃなく「雷鳴と薔薇」だろとか。

駄弁者:
 私も創元が初読なので、カレルレン派です。ついでにターミナスじゃなくテルミナスです。ウフーラじゃなくてウーラです。ニール・パローランじゃなくてナイアル・パロランです。この手のこだわりを上げていくとキリがありません(笑)。
 追記:
 わー、間違えてた!「カレルレン」は創元じゃなくてハヤカワだ!(創元は「カレレン」) すいません、そういうことで、上記は「創元が初読だけどカレルレン派です」ということで。というか間違える程度で「派」とか言うな自分。恥ずかしい。



私がよくわからない時、同じ部分作者もわからないという説だ

 出典: 施川ユウキ「バーナード嬢曰く。」

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 なんちゃって読書家の「バーナード嬢」こと町田さわ子にグレッグ・イーガン作品を貸した熱血SFファン、神林しおり。イーガンわからないよー、と泣きつくさわ子に、自分もよくわかってる訳じゃないと恥を忍んで告白するしおり。
そして彼女は驚くべき仮説を打ち出す。イーガンも自分でも判ってないまま書いてるんじゃないか?と。
 それもそうかもなぁ。作中に出てくる科学理論は、作中の小道具として機能すればそれでいいという考え方も確かに理解できる。
 自分が高校生の時に神林しおりにあっていたら、いい師匠になってくれたかも知れないと思ってみたり(いや男子校でしたけどね)。
 このあとで神林がつぶやく「ハードSF」理解のためのリテラシーは必読です。
 それにしても、イーガンは「SF好きなら誰もが彼の作品を読んでいると思って間違いない」のか?
 古典作品担当に任命された自分としては衝撃の一言。はい、イーガン未読です。

駄弁者:
 下のより、さらに一歩進んだこの仮説(笑)。イーガンはオフィシャルサイトで自身の作品解説もやっているので、分からず書いていることはない…はずですが、そう考えたくなる気分はよーくわかります。
>SF好きなら誰もが彼の作品を…
 まあ確かに私も『宇宙消失』以来、出たら即買いしてますし、職場の図書館でもこれぐらいは…と思って短編集『祈りの海』『しあわせの理由』は入れました。誰もが読んでいるかどうかは分かりませんが、そういえばアンチ・イーガンだという人は寡聞にして知りませんね。



「グレッグ・イーガン。現代を代表するハードSF作家。SF好きなら誰もが彼の作品を読んでると思って間違いはない。
 しかし……しかしだ。
 実は私も結構な部分、よくわからないで読んでいる」
「えっ、私だけじゃない……」
「みんな実は、結構よくわからないまま読んでいる……」
「そうだったの!?」
「……に決まっている!
 そりゃそーだろ! いくらSFが好きだからって誰も彼もが量子力学やら宇宙物理学やら高等数学やら認知科学やら先端医療やらに詳しいワケじゃないんだから!
 でも、わからないからって踏み留まってちゃ前に進めない! 難解な論文っぽいくだりはそーゆーモノだと割りきって読むんだよ!!」

 出典: 施川ユウキ「バーナード嬢曰く。」

紹介 :山本弘 様
HP :
http://homepage3.nifty.com/hirorin/

コメント:
 高校の図書室を舞台に展開する、本を題材にしたうんちくギャグマンガ。
 読書は苦手だけど読書家のふりをしたいというズボラな性格の町田さわ子(自称「バーナード嬢」)。SFマニアの神林しおりから、イーガンの『プラング・ダイヴ』を借りたものの、「全然わからないところだらけだよ!」と泣き出します。それに対してしおりが言うのが上記の台詞。
 あー、あるある! 僕もイーガンでわからないことよくある! 「ボーダー・ガード」の冒頭に出てくる量子サッカーとか、あの世界の構造とか、いくら読んでも頭に入らない。『順列都市』とか『ディアスポラ』とかも途中で挫折しかけました。あれ、全部わかる人間がいたらお目にかかりたい。
 もちろん、しおりは最後に、「グレッグ・イーガンは多少よくわからなくても、すっっっごくおもしろい!!」と強調するのですが。
 他にも、 『ハローサマー、グッドバイ』『エンダーのゲーム』『夏への扉』『ユービック』『合成怪物の逆しゅう』などの名作をめぐる「SFファンあるある」の数々が共感を呼びます。僕も「さもなくば海は牡蠣でいっぱいに」という邦題には腹立ちました(笑)。

駄弁者:
 もうこの際と言っては何ですが、『バーナード嬢』出典は順番飛ばしでまとめて掲載します。
>みんな実は、結構よくわからないまま読んでいる
 私も量子サッカーや『ディアスポラ』の冒頭部分はよく分からないまま読んでました。何となくの理解でも十分面白いんだから困ったものです。『順列都市』は、最初のダラムが実験をしているあたりは分かって読んでいるつもりだったのですが、「都市」ができるあたりから怪しくなって…。ご投稿の最後にある神林女史の読書法は、私もイーガンで会得しました。
 …いや、会得したつもりだったのですが最新邦訳の『白熱光』は、それでもキビシかったです。



「買うに決まっている! だが悩ましげに買わせろ!!!」

 出典: 施川ユウキ「バーナード嬢曰く。」

紹介 :司書の駄弁者
HP :

コメント:
 下の「屈折したプライド」の一例。
 フィリップ・K・ディックの新版短編集について、初訳の収録作が面白いかと聞かれて「ディックが死んで30年だぞ!今更初訳される話が面白いワケないだろ!」と断言するSFファンの神林さん。さらに「表紙はカッコいいけど収録作のタイトルが「トータル・リコール」だと別の人が書いた映画ノヴェライズを連想してしまうので、元の「追憶売ります」のままの方が〜」などとウンチクを語りだす。
 しかし「じゃあ、買わないんだ」と言われると…このセリフ。
 旧作を知っていて、新作に不平を漏らしてみせること自体に当人なりの意味があるんです。
 もっとも『エンダー』の新訳については、私はこれっぽっちも悩みませんでしたが(カバー違いで2セット買うかどうかは悩んだ)。



もうゾンビファンは「ゾンビ中毒」なので「心の静脈」に「ゾンビ注射」を打ち続けなければ生きていけない存在になっていたため、質の悪い、人体に有害なゾンビ注射と知りながら打ち続けてきた歴史があるのです。

 出典: 福満しげゆき「就職難!!ゾンビ取りガール『長い後書き』」

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 刊行中のマンガに後書きがあるのは珍しいと思いますが、この後書きは10ページに及ぶ異例の長さ。
 作者はこの中で、ゾンビ映画とのふれあい、作中でのゾンビの設定、他のゾンビマンガ(アイアムアヒーロー)への思い(妬み?)等語っています。
 投稿した部分はロメロによる「ゾンビ3部作」のあと、ろくなゾンビ映画がなかったものの、泣く泣く支持し続けた胸中を語っています。この心の叫び、わかるなあ。ゾンビを他の言葉に入れ替えれば、どんなジャンルのファンにも共通する心情だと思いませんか。
 良さそうなモノがある→立ち読みorチラ見→希望してたのはこんなのじゃない!→でも、この路線を支えてればピンと来る物が出てくるかも→以下繰り返し…。
 ね、わかるでしょう?

駄弁者:
 わかります。けどSFファンの場合ちょっとニュアンスが違っていて、泣く泣く支持というより質の悪さに文句言いつつ、その文句を口にできることに屈折したプライドを感じていたような…。



それは未来的なホログラム紙でもなければ、フレキシブルタイプのディスプレイでもない。どこにでもある、ディスカウント店で五〇〇枚四〇〇〇円(消費税別)で売っているコピー用紙だった。

 出典: 羅門祐人「平成愚連艦隊」

紹介 :コルド 様
HP :

コメント:
 かなりマイナーな架空戦記からの投稿になります。
 舞台はある平行世界の現代。様々な平行世界を気の向くままに荒らし回る主役組織「愚連艦隊」の総司令部に、ある日タイムパトロールを名乗る小役人チックな男がやってきます。
 そのタイムパトロール氏が、状況説明のために艦隊首脳陣に手渡した書類の描写がコレです。
 こんな事になっているのは、この話に出てくるタイムパトロールが、作中の平成世界も含めた様々な平行世界の一般人がWikipediaのようなノリで運営している組織だからなのですが、
 案外『ドラえもん』に出てくるようなタイムパトロールでも、コピー用紙は普通に現役で使われているような気がしない事もないような……。

駄弁者:
 艦隊の司令官が強欲爺で、ハイテク兵器を使って過去の戦争に勝利し歴史遺産を保護(収奪)しまくる…なんか非常に楽しそうな話です。
>コピー用紙
 どの平行世界でも安定して使用できる記録媒体となると、どうしてもコレになるんでしょうね…。



彼が女性の股ぐらに慰めを求めたのも無理はない。
しょせん人間にすぎないのだから。あのような重荷を引き受けるためには一種の神になる必要がある。

 出典: デイヴィッド・ウィングローヴ「生ける闇の結婚(チョンクオ風雲録16)」(野村芳夫訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 北米の王、マーク・イーガンとその祖父ヨシアの権力争いは、内戦に発展した後に共倒れ。
 北米の王位に就いた李ユアンはふたたびヨーロッパの地を訪れる。デイヴォアとの決着をつけるために。地球における人類の命運が尽きたと考えた彼は、すべてを無と化すディヴォアよりも新しい命「フローラフォーム」が世界を引き継ぐべきと考えた。
 そして決戦に向かった彼はついに倒れる。享年53(2190-2243)。
 かつて反「チョンクオ」のテロリストであり、今は反ディヴォアのゲリラを率いるエミリー・アッシャーは彼を悼み、その孤独と重圧に思いをはせる。
 いくら優秀なスタッフがいても全人類(400億)に対する責任を1人で負わなければならない立場であれば、まともじゃいられないでしょうね。逃避先を求めると言うことも当然と言えば当然ですか。少しでも支えてくれる皇后がいれば、李ユアンももう少し幸せだったかも知れません。
 こう考えると「英雄色を好む」ということわざも、「権力者はやりたい放題!」という意味とは違って受け取るべきか。

駄弁者:
 女性の慰めが不可欠なのに女運が徹底的に悪いというのは、個人としても帝王としても悲劇ですね…(西太后ばりの女傑だったり、別の意味の女王様だったり)。ドラゴンハートベイコンや、若を奈何せん。



「コスモス…僕はもう一度あなたと…一緒に飛びたい、子供の頃のように」
「ムサシ…君はもう…一人で飛べる」

 出典: 根本実樹監督・大西信介脚本「ウルトラマンコスモス 第65話『真の勇者』」

紹介 :猫玉 様
HP :
http://ameblo.jp/puneko

コメント:
 ウルトラマンコスモス最終話より。
 放映当時は怪獣を倒さないウルトラマンという設定が物議をかもしたものの、今となってはファンも多い本作ですが、その最後のコスモスと一体化していた春野ムサシの別れの会話より。
 この作品、映画で前史が語られて、子供のムサシがコスモスの手に乗せられて空を飛ぶ場面があって、テレビシリーズ本編で怪獣が好きな宇宙飛行士を目指す青年になり、そこでコスモスと一体化するという経緯があって、それを踏襲した台詞です。

駄弁者:
 映画を見損ねた人にとっては、ちょっと悔しくなりそうな経緯ですね。
 それはそれとして、ウルトラマンの手に乗って飛ぶのと、彼と一体化して飛ぶのと、自分で操縦する宇宙船で飛ぶのとでは、それぞれに違った魅力があってどれも捨てがたいだろうなあ。



「宇宙は謎と神秘に満ちてるのよ。ちょっとくらいおかしな星があっても不思議じゃないの」

 出典: 鈴木良武脚本「ヤッターマン 第25話『ナゼカ平原の宇宙人だコロン』」

紹介 :るーしー 様
HP :

コメント:
 以前にも投稿した、タイムボカンシリーズ第2作からの名文句です。
 ドロンボー一味の今回のインチキ商売は天文台。子供達から料金を取って、ボヤッキーが吊るしたスルメだのハムだのを星やら宇宙人やらと言い張るえげつない商売を行います。
 当然子供達からはブーイングを受けるのですが、今回の名文句で切って捨てるのでした。
 自分達が知らない事でも存在しうるという名文句は今までにも投稿されてきていますが、流石にここで使うのは無いでしょう!

駄弁者:
 スルメやハムより、そう言っている人の鼻づらのほうが謎だと思います(笑)



「『将来はお父さんみたいになりたい』。そう言ったら叱られたの?…お父さんはあなたにお父さんみたいになってほしいとは思ってないから叱ったんじゃないかしら …(中略)… タロウ、あなたはこの宇宙にたった一人の存在です。もちろんお父さんも。それはあなたがあなたでしかないということです。あなたがお父さんみたいになる事なんて絶対に出来ません。…ですが、超える事は出来ます。お父さんはあなたに『将来はお父さんを超えたい』そう言ってほしかったんだとお母さんは思います」

 出典: 円谷プロ制作「ウルトラマンギンガ 第7話『夢を懸けた戦い』」

紹介 :ザタンゴールド 様
HP :
http://zatangold.blog.fc2.com

コメント:
 天才故に努力をした事が無い上に、父の会社を継ぐことが決まっていたため夢と呼べるものを持っていなかった一条寺友也。だが、友也の父はそんな「夢を持たぬ者に会社を継がせたくはない」と友也を否定する。それ以来友也は夢を憎悪するようになり、夢を持って努力する人間を見下すようになった。異形の手のモノにジャンキラーの力を与えられた彼は、それを使って礼堂ヒカル(ウルトラマンギンガ)と敵対する。
 友也の事情を知ったウルトラマンタロウは、同じ偉大な父を持つ者として共感し友也に接触。少年時代に母から言われた言葉を語るのだった。

駄弁者:
 父さんを超える夢を持て、と言われたタロウの言葉は、夢自体を憎む友也には通じないんじゃないかとも思えるのですが。
 それはともかく、自分の10倍以上年上(タロウ1万2千歳、ウルトラの父16万歳)の人を超えろとは、そこらの会社を継ぐのとは比べ物にならないプレッシャーじゃないかなあ…。



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