SF名文句・迷文句第186集

名文句トップに戻る

第185集を見る 感想を書く(文句toめい文句) 第187集を見る


われわれが非合理な存在になれば、われわれは消え去るのみで、地球上のフクロウ、カワウソ、シカやサルに実在を支えてもらうことになります。

 出典: イアン・ワトスン「ヨナ・キット」(飯田隆昭訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 「スターシップと俳句」に続き鯨つながりでの投稿です。
 宇宙全体に対していわゆる「観測問題」を適用すると、観測者が失われた場合宇宙そのものは存在しうるのか。観測者は一体何者であるべきなのか。これは「観測問題」というより「人間原理」じゃないかと思いますが、観測者は人間に限らない、というのは当然ですがなかなか気づかない論点だと思いますね。これが伏線となって鯨と意識と宇宙が結びつく驚くべきクライマックス(「スターシップと俳句」によく似た)へつながっていくのです。
 しかし、これも翻訳にアラがあるなあ(恐竜のダイナソアってなんですか)。

駄弁者:
 どういう「観測」であれば波動関数が収束するのかは、きちんと定義されてなかったんではないでしょうか。動物が反応するだけで観測したことになるのか、それとも人間(や他の知的生物)の認識が必要になるのか…



ボン太くん 「ふもふ!ふも、ふもっふ!」
クルーゼ (くっ…あの機体を見ていると私の中の闇が薄れていく…!)

 出典: バンプレスト製作「スーパーロボット大戦W」

紹介 :らりろれる 様
HP :

コメント:
未知との遭遇。それはたぶんSFを支える一大ジャンル。
 戦うきぐるみ ボン太くん@フルメタル・パニック!
             vs
 短命クローン ラウ・ル・クルーゼ@機動戦士ガンダムSEED
本来、いろんな意味で接点がない両者のファーストコンタクトは、御覧の結果となりました。
 少し補足しますと、”ボン太くん”はフルメタル・パニック!の主人公が個人で作成した市街戦用の装備です。
元をたどればとある遊園地のマスコットキャラですが、その実態は最新技術の塊です。量産化もされてます。
チャームポイントは、つぶらな瞳と凛々しい眉毛。
独特のボイスチェンジゃーを有効にしないと、ほとんどの機構が作動しない、という謎の仕様を抱えています。
中の人(第66集の彼と同一人物)の性格を考えると、実際の発言はかなり殺伐と突き放した内容かと思われます。

駄弁者:
こんなこと吼えてた人が、遊園地のマスコットキャラに癒されててどうしますか(笑)。



近い将来
多分 地球には
数百種類の異星人が
飛来していて
地球人も それに
気づいている

 出典: 冨樫義博「レベルE」

紹介 :らりろれる 様
HP :

コメント:
「現在地球には数百種類の異星人が行き交い生活している」
「気づいていないのは地球人だけなのだ………」
と、ありがちなナレーションで幕を開けた作品の、最後の締めがこの一文です。
連載開始から、作中時間にしておよそ十年。
宇宙戦争も人類の進化も統一政府の誕生もすっ飛ばして、
お昼休みはウキウキウォッチン♪ な例の番組にゲストで登場するくらいに
異星人の存在が馴染みきった日常を、見事に表現した名文句だと思います。

駄弁者:
「奴は必ずその少し斜め上をいく」の名文句が(うちでは)非常に人気の作品ですが、投稿があったのはだいぶ久しぶりです。
>宇宙戦争も人類の進化も統一政府の誕生もすっ飛ばして、
 ファーストコンタクトをきっかけに地球が統合というのは割とパターンだと思いますが、実際そんなことにはならないような気がしますしねえ…。結局各国間の政争の具に使ったりして。



ジェイムズ・リンクス
ワタクシの運命のおじ様

 出典: コナミ原作・サンライズ制作「Z.O.E Dolores,i 第1話『ジェイムズの災難』」

紹介 :陸ドム 様
HP :

コメント:
 もう一つDolores,iから。
 眠りこけてたジェイムズは、夢を見ます。5年前、ダイモス事件に巻き込まれて死んだ亡き妻、レイチェルの夢を(イドロを作ったあの人です)
 目を覚ましたジェイムズは子守唄を聞きます。その歌はレイチェルが子供達によく聞かせていた歌でした。
 どこから聞こえてきたのかと探すと、声は火星で積み込んだ中身不明のコンテナから。コンテナは女の声で「あなたはだあれ?」と訊ねてきました。
 答えたジェイムズの前でコンテナが開き、中から現れたのはドロレスと名乗る設定年齢10代前半女の子のピンク色した巨大ロボット!!
 ドロレスの行動は典型的な恋に恋する乙女のそれ。出会い頭に投稿の台詞を言ってジェイムズに付きまとい始めます。その言動はジェイムズはおろか、見ている方も困惑させます。この時点で視聴者の大半が見るのをやめたという曰くがあるほどに(笑)
 その後ドロレスを狙う謎の男の襲撃や、検閲官殺しの濡れ衣を着せられたジェイムズを追う世界警察機構『ワイアード』等から逃げながら、子供達を巻き込んでリンクス一家は一路火星を目指します。
 全てはドロレスのメモリーに記録されていた「ドロレスを誰にも渡さないで」という死んだはずの妻の声を手がかりにして。 レイチェルは生きていたのか?ドロレスを渡してはいけない訳とは?襲い来る陰謀を前に、果たしてジェイムズは家族の絆を取り戻す事ができるのか?
 という展開になります。
 SFの皮をかぶった家族もの…というのがこの作品の評価ですが、そこかしこにニヤリとするネタが仕込まれているので非常にオススメです。

駄弁者:
 …ロボットもので、主人公が49歳のおじ様というのも、結構珍しいんじゃないでしょうか。



『良き父親になる第一条 大人になろう』
ん?
『いや、馬鹿にしてはいけない。いくら歳を取り、子供を持ったからと言って、本当の大人である大人は少ないのだ』 そりゃそうだ。 解ってるねぇアンタ

 出典: コナミ原作・サンライズ制作「Z.O.E Dolores,i 第1話『ジェイムズの災難』」

紹介 :陸ドム 様
HP :

コメント:
 Z.O.Eシリーズ通算三作目のTVアニメから。この作品は脚本に破綻の少ないことで一部で有名です(いかんせん、知名度自体が低いのが…)
 時は2172年、ダイモス事件より5年の後。
 主人公は宇宙の運び屋、ジェイムズ・リンクス49歳。妻に先立たれ、2人の子供からは疎まれ、年がら年中酒ばっか飲んでいる典型的なダメ親父です。
 彼はある日、ブローカーから火星から地球まで、中身不明のコンテナの配達を依頼されます。聞けばその荷はジェイムズを指名していると。とある事情から家族の仲を修復しようと一念発起したジェイムズは、火星から地球までの2週間、良い父親になるための勉強をしようと前金で本を買います。
 父性消失の期限だとか、役に立つのか立たぬのか解らない本を読みながら(当然、ビールを飲みながら!)地球へ向けて航行する宇宙船エンダー号。
 そんな本の中の一冊、『HOW TO BE A DADDY』を読んだジェイムズの反応。
 この本には他にも『できるだけ一緒にいよう』『子供との久しぶりの再会には笑顔で抱きしめてやろう』『悪党とは断固戦うべし』『誰もが嫌がる事は率先してやろう』等々の格言が記されています。
 ジェイムズはこの本をたびたび取り出しては実践し、やがてはそらで言えるほど読み込んでしまいます。
 そして後に著者に会った時には「この本は俺のバイブルなんだ」とまで(笑)
 その時のエピソードがまたいい話なんですがそれは置いといて。
 できるなら子供ができる時までには『本当の大人』になっていたいものです。

駄弁者:
 で、本当の大人になるための条件は書いてあったんでしょうか。
 ところで、宇宙船の名前が「エンダー号」というのは、狙ってやっているんでしょうか。 作者つながりで父親業のテキストには「消えた少年たち」あたりも含めては…?



はっきりしたことはわからないが……やっぱりおれはあの船長をボンディさんのところへ通してはいけなかったのかも知れない!

 出典: カレル・チャペック「山椒魚戦争」(栗栖継訳)

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 物語の中盤、山椒魚を商品として売り出すことを大企業MEAS(メアス)の社長 G・H・ボンディ氏に提案したヴァントフ船長を社長室に送り出した門番 ボヴォンドラ氏の台詞から。この後、世界は破滅に向かって一気に進みます。
 でも、あの時点で世界がこうなるとは誰にも思いもよらないでしょうから、そこまで気にすることも無いのでは、とも思うんですが現実に世界に危機に陥りつつある状態ではそうも言っていってはいられないでしょうね。ちなみにボンディ社長は別の作品「絶対子工場」でもカルブラトールを作って世界を壊滅させそうになりました。…世界を二度滅ぼした?

駄弁者:
 このレベルで責任を感じなければならないとしたら、私もいつか誰かに貸し出した本で、犯罪の片棒を担いだことになってしまうのかも。
>世界を二度滅ぼした?
 というより、どの平行世界でも世界滅亡の引き金を引いてしまう不運な人なんじゃないでしょうか。



「いいこと、人類は地球を破壊してしまったんですからね、いさぎよく死ぬのが最後の名誉なんじゃないかしら?」
…(中略)…
「おれは生きつづけたいんだ。最後の最後まで息をしていられる限り生きていたいんだ!」

 出典: ソムトウ・スチャリトクル「スターシップと俳句」(冬川亘訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 2001年、地球では月をも破壊する全面核戦争<千年期大戦>が勃発した。核の影響によって伝染病や奇形人が日々増加し、確実に破滅に向かう世界。核の直撃から立ち直れないハワイを訪れた日本政府高官の娘イシダ・リョーコは、被害の少なかった日本への密航を考える日系ハワイ人ジョッシュ・ヨシロウ・ナカムラに現実を受け入れるように諭すのだった。
 どうせ死ぬんだからおとなしく、という日本人と、チャンスがある限りしがみつくアメリカ(ハワイ)人。意識の違いというものを鮮やかに描いた部分です。  イシダの父は生存大臣、他にカワグチ慰謝大臣、タカハシ終末大臣が登場するなど、ノリノリでグロテスクな日本というものを描写しています。日本人の「死」の美意識という物はタイ人である作者にとっては格好の風刺のネタなようで、自殺するための土地となった「死国(四国)」や、自殺を決断できない人々を殺して回る鉄仮面のサムライが出てきたりとやりたい放題。
 ただ、死を殉教と捉えれば、おとなしく死んでゆく日本人の態度はそれほど異常なものでは無いと思います。
(ねたばれ:作中では鯨は人類の祖先であり、捕鯨を行う日本人は先祖殺しで、それを弔うための名誉の死となっています

駄弁者:
>おとなしく死んでゆく日本人の態度は…
 殉教そのものは異質でなくても、その手段を様式化する美意識が異常に感じられるのだろうと思います。
 しかし…「死国」が自殺用のテーマパークで、ジェットコースターに乗ってホログラフの富士山を背景に美しく死ぬことができるって、そんな美意識をもってる日本人はいない(笑)。



「あなたのふるさとに帰っているの」
「違うよナディア ぼくらのふるさとさ」

 出典: 庵野秀明総監督「ふしぎの海のナディア 最終回『星を継ぐ者…』」

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 「最終回」は、広げた大風呂敷をきれいにたたんで、すべての謎を全部説き明かして、なおかつあるかもしれない続編への布石を打たなくてはなりません。
 という事で印象的な最終回といえばこれ「ふしぎの海のナディア」。
 出だしはパロディ味たっぷりでした(3悪人が出た時には頭を抱えました)が、畳み掛けるような最終回は中々見応えがありました。ていうか女の子口説くにゃこういうセリフをさらっと言わにゃいかんという事ですかね。
 でもこのタイトルを見ると思い出すのは「お前らだけじゃなくわしら全員が「星を継ぐ者」じゃい!」と言った友人。名セリフだぜダンナ!

駄弁者:
>女の子口説くにゃこういうセリフをさらっと言わにゃいかん
 インパクトにはやや欠けるが汎用性で!? でもこれを真似てすべったら、すごく寒々とした空気になりそうだ…。



「こないな時代やと人生は絶え間なく連続した問題集や
 揃って複雑 選択肢は酷薄 加えて制限時間まで有る
 一番最低なんは 夢みたいな解法を待って何ひとつ選ばない事や
 オロオロしてる間に全部おじゃん 一人も救えへん
 ……選ばなアカンねや!! 一人も殺せん奴に一人も救えるもんかい
 ワシら神さまと違うねん 万能でないだけ鬼にもならなアカン…」

 出典: 内藤泰弘「トライガン・マキシマム」

紹介 :玄剣 様
HP :

コメント:
 最終巻の発売されました、擬音全開SFでたらめガンアクションマンガ、トライガン・マキシマムの、あえて1巻から。……いや、最終巻からは投稿が有るでしょうから。
 究極の平和主義者にして最悪の破壊者、非殺のヴァッシュ・ザ・スタンピード。
 その対極にして本質を同じくする男。唯一対等と言うべき友。必殺を旨とするウルフウッドが、あくまで人の死を拒絶するヴァッシュに言った台詞です。
 大切な者を守る為にはその手を血で汚す事もいとわぬ強い信念に、やり場のない憤りと一抹の悲しみを込めた、魂から滲み出る様な台詞だと思います。
 対するヴァッシュは同じ苦悩から研鑽を積み、大概の人間を“殺さず無力化する”技量を会得した訳ですが……非常識揃いの砂の惑星。範疇外な人外もいる訳で……
 それはそうと、この台詞。殺すのどうのはともかく、日常全般にも言える事だとも思います。難しい選択、多いですよね。ワリと。

駄弁者:
 人を殺さないこと、何か一つを選ばないこと、も選択のひとつと言えるのですが…場合によっては一番苦しく、周りの理解も得られない選択になりかねないと思います。
 前にご投稿をいただいたときにも思ったのですが、このヴァッシュがらみの文句が登場すると、「るろ剣」の剣心を連想してしまいます。



「魔力を生みだすのは意志です!
 それがいかなる形態のものであれ魔法は知的存在の意志に反応します
 特別な機械装置など不要です
 自律機能をもったコンピュータこそが最も優れた魔力機関なのですから!」

 出典: 市川裕文「混淆世界ボルドー 1」

紹介 :玄剣 様
HP :

コメント:
 かつてのサイバーコミック連載コミック、混淆世界ボルドーより。未完。絶賛絶版中。巻末に第五部までのタイトルがあるのが切ない。
 異次元の繭に隠れ地球からは見えないが、月と同じ軌道上に存在し、頭上に地球を抱く星、ボルドー。
 時代も場所も問わない神隠しによって地球から運ばれた人々は、そこに独自の世界を築いた。
 高度な未来科学と霊力子を操る魔法技術。中世を思わせる王政。そして、領地間の諸問題を解決する為の合法戦争。
 領地間で問題が起こった場合、それを解決するのは古式ゆかしい合戦であり、その切り札は数十m級ロボット兵器、龍神兵。
 そんな世界にあって、魔法を否定するキリスト教国家ガルテンが作り上げたロボット兵器ガイムリーは、しかし、強大な魔法の力を求めた。
 そんなガイムリーが、戦いの中で魔法の秘密を知り、パイロットに訴えかけた台詞がコレ。
 まー、たしかに。イメージを物理現象として発現するのが魔法なら、人間よりもよっぽどコンピュータの方が魔法使い向きですよね。

駄弁者:
 ロボットやコンピュータが扱える力なら、それがどんな驚異的なものであっても再現・検証ができるものという意味で、「魔法」でなく「科学」の一種ということになるのでは?



…時代考証するな 二度は言わぬ
時代考証するものは 斬る!!

 出典: 伊藤勢「大江戸防衛軍Z」

紹介 :屋良一 様
HP :

コメント:
 世の中には、自信作を世に問う度に掲載誌が潰れると言う不運を背負った作家がいます。
 伊藤勢もその一人で、この作品は未完に終わった「斬魔剣伝」の仕切りなおしの「羅ごう伝」が結局未完に終わった第二巻に収録されている読みきり漫画です。
 第十代将軍・徳川家治の治世、江戸に指名手配犯を追跡してきた宇宙警察の宇宙船が墜落、搭乗者の一級捜査官ナスタシア・ラミアードは犯人逮捕に原住民の協力を要請します(取調に当たった田沼意次に、そう言えと脅迫されたので)。そして結成された大江戸防衛軍、隊長柳生蝙也斎が、制服として網タイツを支給された事に疑問を抱くナスタシアを三味線糸で縛り首にして言い放つセリフです。色んな場面で使えそうですね。

駄弁者:
 そう言えば江戸時代にUFOが漂着したという話はこの頃だったかな、と思って調べてみたんですが、「梅の塵」や「兎園小説」に出ている有名な「うつろ舟」のエピソードは、田沼意次の時代より少し後でした。
 いかん、こんなことをしてたら斬られる…。



だって…… どうすればテレポートとタイムリープをしながら パジャマに着替えることが出来るの?

 出典: ゆうきまさみ「時をかける学園」  『ぱろでぃわぁるど』に収録

紹介 :水谷秋夫 様
HP :
http://oikose.at.webry.info/

コメント:
 ゆうきまさみのパロディ作品集から。最近読み返してみたら妙な懐かしさを感じました。「あーる」や「パトレイバー」は作品として懐かしいですが、このパロディ集には時代そのものを思い返す懐かしさがあります。
 科白は原田知世版「時をかける少女」のパロディから。いま読むとありがちなツッコミですが、当時は新鮮に感じました。

駄弁者:
 ありがちなツッコミとはいえ、高畑京一郎が『タイムリープ』を書くきっかけになったのが、これであったことをを思えば(SFオンラインのインタビュー参照(WebArchive))、なかなか等閑視できない名文句です。



本、本!おじいさんったら、いつだって本のことばかり!わたしたちの興味を引くのは、結局はわたしたちが住んでいる世界だって事が、いつわかるのでしょうね。わたしたちもその一部であるこの世界、どんなに愛しても愛し足りないこの世界こそが大事なのに。そら、ご覧なさいな!

 出典: ウィリアム・モリス「ユートピアだより」(川端康雄訳)

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 19世紀のイギリスのある夜、眠りについた語り手は21世紀に目覚めた事に気づく。語り手が目覚めたのは、流血をくぐり抜けて築かれた手工業的共産社会。賞賛を報酬とし、個人の趣味・能力にあった仕事に力を注ぐ争いのない社会であった。社会の成り立ちを探る語り手は、大英博物館をすみかとする老人に問いかける。
 老人が語り手との会話の中で、今の社会には過去のように「想像力と知性を発揮させたあんな見事な作品」が生まれないことを嘆くと、老人の孫娘はこう言って窓を開け放つのだった。
 いや、実に美しい光景。世界は一巻の書物に喩えられますからそれに触れることこそが真の読書。本読んでこもってるばっかりじゃいけないと反省する次第です。
 この世界では、読書及び教育は重視されていないのも、実際の役に立つことを重視したモリスの心情が良く出ている部分でしょう(モリスは社会改良家にして一流のデザイナーであり凄腕の家具職人)。モリスは生活にとけ込んだ芸術こそが本物という運動(アーツ&クラフツ)を率いていたので、学問のための学問、読書のための読書というものを嫌っていたのでしょう。
 しかし、モリスは詩人・作家としても第1級であったところを考えるとこの言葉をどう受け取っていい物やら。
 それに、闘争のない社会というのが停滞した(去勢された)社会を意味するので有れば、社会から想像力が失われたとしても当然? なにやら深読みが出来そうな下りではあります。

駄弁者:
 「どんなに愛しても愛し足りない世界」が、必ずしも満足のいくものでないからこそ、「想像力と知性を発揮させた」見事な作品が生まれるんじゃないかと思います。そして作品が読まれることによって、実際の社会もそれに近づいていく…というのが理想でしょう。
 ユートピアが実現してしまえば、そんなフィードバックは必要なくなってしまうんでしょうけど。



俺は、やっと、『魔法の力』の本当の使い方を見つけたんだよ

 出典: コナミ原作・サンライズ制作「Z.O.E2167 IDOLO」

紹介 :陸ドム 様
HP :

コメント:
 スパイのせいで地球軍が基地を襲撃、レイチェル博士とその助手であるドロレスまでもが宇宙港になっている衛星ダイモスに連れ去られてしまいます。
 ラダムはドロレスを救うためイドロを使ってダイモスに乗り込もうとします。
 機密であるイドロを無断で動かせばどうなるか…いや、たとえイドロでも地球軍の拠点であるダイモスに乗り込むなど無茶である。そう言って止めるヴァイオラに語った台詞です。
 力は憎しみを晴らすためでなく、愛する者を護るために使うもの。
 そう気づいたラダムを待っていたのは、とても酷い結末でした。
 あと、以前ラダムはメタトロンを魔法のようだと評していたことを書いておかないと意味が解らないですね。

駄弁者:
 いちど狂気に陥った人間がこういうセリフを言うのは、わりと死亡フラグですね。
 続編の展開を見た感じ、文字通りの死亡フラグだった方が自他ともに幸せだったようにも思えます。



フフッ、フフフアッハハハハハハ
これが、俺の力だ。ククッ

 出典: コナミ原作・サンライズ制作「Z.O.E2167 IDOLO」

紹介 :陸ドム 様
HP :

コメント:
 イドロのテストが順調に進んでいく中、ラダムに起きた変化を示すシーンから。
 台詞の直前に捕まえた蛇の喉をつぶしてます。そして自分の腕がイドロの腕になってる幻覚見ての台詞です。この後遠くから基地を監視している地球軍に気づくという超人的な能力を見せます
 後に彼はイドロに乗っていると今まで燻っていた怒りが突き抜けると語っています。
 それは大きな力を手にしたからなのか、メタトロンという物質に人間の精神に作用する力があるからなのか…

駄弁者:
 出典を見ていないせいか、あまり名文句という感じはしませんが。
 このシリーズ、だいぶ前に名文句集にもご投稿のあった「ANUBIS」と同じシリーズだったんですね(今ごろ気付いているヤツ)。
>それは大きな力を手にしたからなのか
 精神を増幅し狂わせる化学物質とはいえ、なんの種もないころに芽を出させはしないでしょうから、人間の側が全く無罪とも言えないのでは(狂気の種を一つももっていない人間など、かえって異常というものでしょうが)。



ここはあとがきだったんだーっ!──畜生作者の野郎、とうとうやりやがった!

 出典: 時雨沢恵一「キノの旅 -The Beautiful World- X」

紹介 :海並童寿 様
HP :

コメント:
 「キノの旅」シリーズの名物(?)として、各巻の「あとがき」がちょいと普通でない、ということがあります。1巻2巻あたりは大人しいものですが、巻を重ねていくともう何が何だか。(奥付や刊行物リストそっくりに書かれたあとがき、なんてのも……)
 そんなわけで10巻の後書きですが、これまた実にけったいなところにありまして。
 投稿の迷文句は、それに気付いたキノ(の、心中を代弁したエルメス)の台詞です。
 ……えーと、猿の惑星でしたっけか、これは(笑)

駄弁者:
 あとがき作家といえば、有名どころでは夢枕獏とか栗本薫とか…SF関係が多い? 夢枕獏なんか、あとがきだけ集めて一冊本ができるぐらいですし。
>猿の惑星でしたっけか、これは
 「猿の惑星」の話も、人類史のあとがきと言えば言えるような。



解放してあげる時が来ましたよ

 出典: 倉橋由美子「ポポイ」

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 もう一つ、首にまつわる話から投稿します。
 老いたとはいえ、権勢を誇る元首相の祖父を持つ舞(マイ、旧仮名遣いではマヒ)の元に婚約者の「佐伯さん」からある物を預かってもらうように頼まれる。それは、祖父の目の前で声明を読み上げた後、割腹自殺をとげ、仲間に首を切断された青年の首だったのです。
 最新の医療技術によって「活かされている」首は新たにポポイと名づけられ、舞との奇妙な共同生活をはじめます。
 投稿した台詞は物語のラスト、ポポイの生命装置を外すシーンから、一見あっさりしているよう思えますが、この直前にポポイの装置を外すことは殺人ではないかと葛藤している夢を見たりして、自分の行為に完全に納得しているわけではないようです。しかし、これは殺人といえるのか?ポポイは切腹した時点で死んでいる、ともいえるわけですし、どうなんでしょうね?

駄弁者:
 ご投稿をいただいてから、読んでみました。生首との交流というあり得なさ以上に、登場人物に現実感が希薄に感じられました。超VIPの孫という舞さんの境遇のせいもありますが、彼女の淡々とした語り口も一役買っているようです。この人の作品は初めてだったのですが、他のもちょっと読んでみたくなりました。
>これは殺人といえるのか?
 ポポイ自身は首だけになる前の自分を「前世」のような感覚で捉えているようなので、装置を外すことは、やはり首だけになってからのポポイを殺すことになるんじゃないかな、と。ただその生に先が見えていたことを考え合わせると、安楽死的な要素が大きいのだろうと思います。
 …そういえばだいぶ前に、韓国のゲームで生首の美少女を栽培するって妙なのがありましたね。



「これが生きるってことかい?」
「切り株みたいに据えられてさ。壁の穴でも数えろってのかい……」

 出典: アレクサンドル・ベリャーエフ「ドウエル教授の首」(袋一平訳)  『世界SF全集 8』に収録

紹介 :冬寂堂 様
HP :

コメント:
 ロシアSFの始祖の一人であるベリャーエフの作品から投稿します。
 医師の資格を持つマリー・ローランはケルンという人物の元である仕事に就くことになります。その仕事とは、かつてのケルンの上司であったドウエル教授の首の世話をすることで、ドウエル教授が倒れたとき、ケルンは彼の遺言により共同で行っていた研究のために使って欲しい、という遺言によって首だけを切り離して活かしておいているというのだが…。
 投稿した台詞はドウエル教授のあとで首だけの存在になった若い男性、トマの台詞から。
 どれだけ生きたか、が大切なのではなく、どう生きたか、が大切ですからね。とはいえ寝たきりで生きていらっしゃる方もいるからこれは難しい問題なのかもしれません。

駄弁者:
 ベリャーエフが実際に寝たきりの闘病生活を送った経験から生まれたものだとか。
 この題名ではなく、ジュヴナイルで出ていた「合成人間ビルゲ」や「いきている首」で読んだ人が多いのかも知れません。しかし、内容はある程度翻案するとしても、よく子ども向けに出す気になれたなあ…。



「私は伝承者だ。証明は可能だ。」
「いや違う!証明の体現者はこの僕だ。グラドス人と地球人の混血が、なによりの証明だ。違うか!
 グラドスと地球人との混血としての僕を認めるなら、フォロン!お前は記憶回路の奥に引っ込んでいろ!認めないなら僕を殺せ!」

 出典: サンライズ制作・高橋良輔総監督「蒼き流星SPTレイズナー 第22話「フォロンとの対決」」(訳)

紹介 :TEAM NORTH-MOAI(R) 様
HP :

コメント:
 「キレる機械」でふと思い出したのがこの「レイズナー」。自分を守る為には操縦者の意志とは無関係に暴れ回るという、実に傍迷惑な機械です。
 そんな機械(フォロン)との会話ですが、いやぁ、説得するのも命懸けだなぁと。ていうか機械が自分のデータを見せて「これが証拠です。信じなさい。」って言われても改竄可能なものを信用しろっていう方が無理ですよ。

駄弁者:
 本当に蒼い流星になって敵に体当たりとは、すさまじいキレっぷりです。
 このエピソードの後では、キレなくても音声入力一発でその機能を発動できるようになったようですが。



最初から何も入ってないのかも知れんな。受け取り方次第だろう。ただこれをブラックホール缶と言うからには、缶詰自体に超重力を遮断する効果がなければおかしい。趣味人の視点で考えればそこに嘘はつけないはず。

 出典: 田中ロミオ「人類は衰退しました 2」

紹介 :TWR 様
HP :

コメント:
 作品の紹介は165集を見てください。
 巻が変わっても妖精さん達は、そのいたずら心と超科学を無駄に振りまいています。主人公(わたし)の住む村で見つかった、歩くと中に水のたまる長靴、雲の入った瓶(なぜか予備用のラベル)、線が動き出すパステルなど冗談グッズの数々。調べていて最後まで正体の分からないのがブラックホールの缶詰(黒い缶に黒いラベル、ついでに黒い文字)。それをわたしの祖父が評して一言。
 祖父本人も、狩猟に行ったりチャリオットを乗り回したりと、趣味に生きる人間だからこその言葉。
 挙げ句の果てには、ブラックホールの何たるかが判ってないわたしに向かって、中身が本物だったらすべての責任をとると言って笑い出す始末。妖精さんのいたずらについていける祖父のねじのはずれ具合は大したものです。
 それにしても、いたずらでブラックホールの缶詰を造れる妖精さんって一体何なんだか…。

駄弁者:
 第3巻、出ましたね。
>ブラックホール缶
 例え実際にブラックホールが入っていなかったとしても、ただの缶詰ではなくブラックホールを閉じこめることが可能な缶でであるはず。その理論は理解できませんが、その遊び心はなんとなく想像つくような…。



名文句トップに戻る

第185集を見る 感想を書く(文句toめい文句) 第187集を見る